BMWのサマー・キャンペーンを体験してみた
夏に向けて愛車をチェック

BMW東京 天王洲サービスセンター



 ビー・エム・ダブリュー(BMW)の正規ディーラーでは、6月15日~8月31日の間、「BMW Summer Campaign」を開催している。これは、正規ディーラーで「BMW Fresh Driving Package」と呼ばれる点検を受けるとプレゼントがもらえるというもの。さらに、「TIRE BET」というゲームが用意されていて、こちらでもプレゼントがもらえると言う。なんだが楽しそうな催しなので、Car Watchも車を持ち込んで体験してみた。

キャンペーンでのチェック項目

車に厳しい季節を前に
 BMWはこうしたキャンペーンを夏と冬に行っている。その理由は、夏と冬が車に厳しい季節だから。エアコンでバッテリーに負荷がかかり、路面温度が高い(冬なら低い)ためにタイヤが傷み、パンクするといったトラブルが増える。さらに、長距離走行の機会が多い季節でもある。

 そこで、事前に車をチェックして夏冬のバカンス中のトラブルを予防しようというのがこのキャンペーンの目的。また、ユーザーがディーラーにコンタクトすることで、BMWのディーラーならではの体験をして、満足度を高めるという効果もあると言う。

 キャンペーンで受ける点検・整備の詳細は後述するが、夏のキャンペーンでチェックする項目は27に及ぶ。オイルやブレーキ、タイヤのチェックといった基本的なところから、BMW専用の診断システム「DIS」による故障診断までのテクニカル・チェックを約1時間をかけて行い、洗車、室内清掃などの「クイック・カービューティー」で仕上げる。冬はこれに、スタッドレスタイヤや不凍ウォッシャー液への交換が加わる。

 費用は店舗によって異なるが、テクニカル・チェックとカービューティーをあわせて1万円前後だ。

BMW最新、最大のサービスセンターに入庫
 Car Watchがお世話になったのは、BMWの100%子会社である販売会社「ビー・エム・ダブリュー東京」が運営する「天王洲サービスセンター」。ここはディーラーではなく、サービスを専門に行う拠点で、BMW Tokyoのディーラーから車検や修理、整備のために車が運び込まれる。

 2007年に開設された天王洲サービスセンターは、国内最大にして最新のサービス拠点でもある。その建物は地上7階建で、延べ床面積は6772m2。31のサービス・ベイを備え、1カ月に約850台の車検をこなす能力と、軽板金塗装の設備まで持つ。

 最新の設備により、整備時間を短縮し、待ち時間が短いから、ディーラーを通さず、直接サービスセンターに来るユーザーも多い。首都高湾岸線の芝浦ICなどに近く、りんかい線と東京モノレールの天王洲アイル駅から徒歩5分程度と交通の便のよいところなので、仕事や出張の往き帰りにも立ち寄りやすいのも魅力の1つ。さらに、ショールームが併設されていないので、セールスマンと話をするのがおっくうだとか、新車の誘惑と闘う自信がないといった向きにもよさそうだ。

天王洲サービスセンターの十川正一サービスマネージャー天王洲サービスセンターの受付ロビー
6階のサービスベイ5階の車検ライン
7階の板金塗装設備中央が塗装ブース、左右が乾燥室乾燥室内部
純正塗料。塗料はすべて水性塗料BMW用のスペシャルツールは棚に整理されている
3階、4階は部品室大きな箱はバンパー
アルピナはBMWの正規ディーラーやサービスセンターでメンテナンスできるE30(3代前の3シリーズ)も入庫していた

レセプション・ベイで、愛車のまだ見ぬ部分を見る
 では早速、テクニカル・チェックを受けに行こう。その前に注意することが1つ。サマーキャンペーンで入庫する際には、事前に予約しておく必要がある。

 予約した日時に車を天王洲サービスセンターの駐車場に停め、まずは1階のサービスレセプションで手続きをする。ここではまず、受付にある「キーリーダー」に車のキー(リモコンキー)を差し込む。

 すると、シャシーナンバー、ボディーカラー、インテリアのトリムなどといった車両属性から、走行距離、バッテリー電圧、燃料の残量など、車のコンピューターが記録している最新のデータが受付の端末に表示される。実車を前にしていなくても、基本的な車のデータを確認して、レセプションデスクのアドバイザーと整備についての相談ができるようになっている。

天王洲サービスセンターのサービスアドバイザー、土屋靖孝さんキーリーダーにキーを差し込んだところキーに記録された情報が表示される

 

レセプション・ベイ

 こうしている間に、車は駐車場から、サービスレセプションのすぐ脇にある「レセプション・ベイ」に移動されている。レセプション・ベイは一見、ちょっときれいなサービス・ベイという趣きのスペースだ。通常のベイ同様にリフトを備え、車両を持ち上げて下回りなどを確認でき、さらに診断システムに車を接続することもできる。

 違うのは、ガラスのパーティションで周囲から仕切られていて、床がタイル敷きになっていて歩きやすいこと。さらにユーザー向けに純正ケミカルやポスターがディスプレイされていること。

 ここは、ユーザーとアドバイザーやメカニックがコミュニケーションしながら、実車の状態を確認するためのスペースなのだ。そのために空調設備も整っていて、快適な環境で車を見ることができる(もっとも空調は、メカニックの作業効率が上がるよう、サービスセンター全体に入っている)。

 アドバイザーの土屋さんとともに、レセプション・ベイに入る。土屋さんは、シートとステアリングホイールにカバーを付け、まずは外観をチェックしていく。ボディーの傷などを確認し、リフトを操作してまずは車のホイールが目線の高さに来るように持ち上げる。これで、立ったままホイールやタイヤ、ブレーキなどの状態を確認できる。

シートとハンドルに汚れ防止のカバーを付けるまずは外観のキズやヘコミをチェック車を少し持ち上げて、足まわりを見る

 次に車をさらに持ち上げて、下まわりを見る。持ち込んだ2008年式の320i(E90)は、エンジンルームの下にカバーが取り付けられ、その他の部分も全体にフラットに作られている。これも空力性能を上げ、燃費をよくする「ダイナミック・エフィシエンシー」の1つ。さらに、底面はやや前傾していて、ベンチュリー効果で車体を路面に吸い付けるようにもなっていると言う。

 土屋さんは電動ドライバーでエンジン下のカバーを取り外した。エンジン下面を剥き出しにして、オイルの漏れやにじみ、各部のブッシュの状態をチェックするためだ。

 ユーザーも、アドバイザーと一緒に車の下に入って、自分の車の下まわりをじっくりと確かめることができる。車好きには非常に面白く、得難い機会だ。もちろん、このようなことに興味がなければレセプションのロビーで飲み物を飲んだり、雑誌やBMW製品を眺めたりしながら待っていてもよい。

車の下に潜り込む。エンジン下のカバーをはじめ、全面的にフラットに作られていることが分かる。電動ドライバーでネジをはずし、アンダーカバーを取る
タイヤの前などのリップも空気抵抗を減らす効果がある外したアンダーカバーハンディライトでじっくりと下部をチェックする

メカによるチェックと洗車
 外観チェックがひととおり終わると、アドバイザーからユーザーに車の状態と、問題があればどのような処置をするかが伝えられる。

 ここからの作業はメカニックにバトンタッチされる。車はエレベーターで上階のベイに運ばれ、テクニカル・チェックの続きを受ける。ユーザーはここでロビーに戻ってチェックが終わるのを待つのだが、今回はレセプション・ベイで作業を続け、Car Watchもそれに立ち会わせていただいた。

 メカニックの入江さんはまず、診断システムのケーブルを車につないだ。これで車の各部のメモリに、故障が記録されているかどうかをチェックする。システムが自動的に走査していくのだが、これには10分ほどかかるので、この間に車体各部のチェックを行っていく。

 内容は冷却水やオイル、ウォッシャー液、タイヤの状態と空気圧、バッテリーの電圧、車体各部のより細密なチェックだ。

トランクリッドオープナーの下にあるのがテスターを接続する端子テスターを接続したところ診断システムの画面。緑色の部分がチェックを終了したブロック。ドイツのBMW AGにも繋がっていて、修理履歴が品質管理に活かされる
ウォッシャータンクを点検し、液を補充するエンジンルーム内もハンディライトで子細にチェック。ハンディライトは各ベイに標準で装備されているタイヤの空気圧をチェックする
冷却水タンクをチェックするバッテリーをチェックする320iにはオイルゲージがなく、車載ディスプレイで確認する
下まわりとエンジンルームのチェックタイヤの残溝をゲージで測るアンダーカバーを戻す
タイヤを浮かせて全周の状態をチェックする純正オイルを補給する装置

 

洗車は3階で

 テクニカル・チェックが終わると、エレベーターで3階に運ばれ、洗車となる。まず2人がかりで掃除機を使って室内を掃除する。

 次に、ボディーに傷を付けない布ブラシの自動洗車機にかけると、次は4人がかりでケミカルによる掃除が始まる。使用するケミカルはサービスセンターによって異なるが、ここではBMW純正のインセクト・リムーバーを使った。

 取材したのは金曜日の夕方で、実はこの時間帯は洗車のラッシュアワーだ。ほとんどの車は月曜日に入庫して、週末にユーザーの元に返る。洗車はすべての整備が終わって、ユーザーの元へ向かう前に行われるから、金曜日の夕方に集中してしまう。だが、3階のスタッフはてきぱきと作業を進め、車を入れ替えて次々に車を洗い上げる。Car Watchの320iは10分ほどですべてが終了したが、ホイールの鉄粉やボディーにこびりついていて気になっていたタールなどがすべてきれいに落とされていた。

室内を掃除する
棒なども使って細かいところまでゴミや汚れを取る
洗車機に入れるBMW純正のインセクト・リムーバー
インセクト・リムーバーと同時にホイールや室内の拭き掃除も行う

プロのサービスは違う
 こうして仕上がった車をレセプション・ベイで引き取る。見つかった問題点などの説明を受け、仕上がりを目で見てチェックする。

 持ち込んだ320iは、前述のように2008年式。納車は2009年の1月で、走行距離は約5000km。この程度の走行距離で、このくらいのチェックならなにも発見されないだろう、と思っていたら、エンジン制御プログラムのエラーと、フロントクランクシールのオイルにじみが見つかってしまった。前者はごく軽微なものですぐに書き換える必要はなく、後者はパーツのあたりがまだ取れていないために起きた可能性が高いとのことで、どちらもすぐに手当はしないことになった。

 テクニカル・チェックの内容は、診断システム以外は、ユーザーによる点検が可能な基本的な検査だが、これらをまめにきっちりこなしているユーザーが何人いるだろうか(Car Watchもやっていないクチである)。車に厳しい季節を前に、プロの目でチェックをしてもらい、車をきれいにしてもらうことの意義は大きいと感じた。ユーザーは是非、ディーラーやサービスセンターに出かけられたい。

テクニカルチェックの結果。フロントクランクシールのオイルにじみが発見されたキャンペーンで入庫するとプレゼントされるフラッシュライトタイヤの残溝の深さをあてる「TIRE BET」。あっていたらさらにプレゼントがもらえる

【お詫びと訂正】記事初出時、十川サービスマネージャーと入江メカニックのお名前を誤って記述しておりました。お詫びして訂正させていただきます。

(編集部:田中真一郎)
2009年 7月 1日