日本海東北自動車道 中条IC~荒川胎内IC間開通
瀬波温泉や村上市へのアクセスが便利に

中条IC~荒川胎内IC間開通パレード

2009年7月18日15時開通



 新潟県と秋田県を日本海沿岸沿いに縦貫する高速道路として建設されているのが日本海東北自動車道(日東道)だ。新潟県新潟市にある新潟中央JCT(ジャンクション)を起点とし、新潟県胎内市の中条IC(インターチェンジ)まで開通していたが、7月18日に新潟県村上市の荒川胎内ICまで延伸された。

 延伸された距離は9.7kmで、日東道を管理・運営するNEXCO東日本(東日本高速道路)によると、この開通で総延長約250kmの日東道のうち、約110km、4割が開通したことになると言う。また、この開通によって新潟県の最北部に位置する村上市の市役所と新潟市役所の移動時間が5分短縮され、地域の医療体制など利便性が向上するとしている。

開通式典で挨拶を行うNEXCO東日本代表取締役会長八木重二郎氏

 7月18日15時の開通に先立ち荒川地区公民館で開催された開通式典において、八木重二郎NEXCO東日本代表取締役会長は、「中条ICから荒川胎内IC間の9.7kmの区間については、平成10年(1998年)に施工命令が出され、本年(2009年)9月末完成の予定だったが『トキめき新潟国体』に間に合うよう建設を進め、本日(2009年7月18日)に無事開通することができた」と語り、10月10日から新潟県内各地において開催される国体にあわせるために前倒しで建設を進めたことを明かした。また「新潟県が提唱する『2009新潟大観光交流年』にあわせて、どら割『にいがた観光周遊パス』の発売や、東京湾アクアライン海ほたるPA(パーキングエリア)での観光PRイベント開催など、新潟県の魅力の発信について県や地元の皆様と連携して取り組んでいる」と語り、この高速道路が有効活用されていくようNEXCO東日本として力を入れていくと言う。

来賓として挨拶に立った新潟県知事の泉田裕彦氏

 来賓として挨拶に立った泉田裕彦新潟県知事は、「この開通によって交通整備の遅れていた(新潟)県北地域にようやく日が当たる。国体の開催を前に開通できたのはよろこばしいこと」と言い、県内の交通整備が進むことで、医療不安のない地域を広げて行きたいとした。この背景として、県内の耕作放棄地が10%近くあり、この耕作放棄地を有効活用することで、日本全体の食糧自給率向上に寄与したいとの考えがある。

 また、日東道はいずれ荒川胎内IC以北が延伸され、新潟県内では村上IC、朝日ICと開通していくことになるが、その先にある山形県の温海ICへの接続へ触れ、早期の開通を望んでいるとした。

開通式展では、NEXCO東日本から日東道 中条IC~荒川胎内IC間9.7kmの事業概要についての説明も行われた時間短縮効果。新潟県庁から村上市役所までの移動時間が5分短縮され約65分になると言う県北各地からの大型医療機関への到達時間も短縮できる
多数の観光資源のある県北地域へのアクセス性も向上するほとんどの区間は盛土で建設され、地面への圧力を軽減するため、道路基盤の内部には大型の発泡スチロールブロックを使用している
地質状況の説明。山や丘陵を避け、平地を走っている盛土の表面には雑草が生えないよう、防草シートなどが貼られる高速道路の逆走車による事故を防ぐため、荒川胎内ICには逆走防止のための警告灯を設置
高速道路の舗装面は、近年の高速道路では標準的に使用されている高機能舗装を採用。水はけもよく、騒音の抑制にもつながる事業概要説明の最後には、地元で行った事前公開のイベントの風景を紹介。中央に写っているのはトキめき新潟国体のマスコット「トッキッキ」

 地元選出の国会議員など多数の来賓を招いての式典後は、高速道路本線上での鋏入れ式(テープカット)や久寿玉開披が行われる予定だったが、あいにくの雨のため公民館での開催に。パレード走行のみが高速道路本線上で行われた。

開通式展の時刻は激しい雨が降っていたため、鋏入れ式や久寿玉開披は公民館内で開催。鋏入れ式の中央に立つのは新潟県知事の泉田裕彦氏
開通パレードは、高速道路本線上で雨の中行われた。警察車両に続くのはNEXCO東日本の「高速人CAR」。その後、県知事の乗る車両などが続いていく

 開通時刻の15時前に開通区間である中条ICを訪ねたところ、すでに開通待ちの車が多数待機していた。今回開通する中条IC~荒川胎内IC間だが、中条IC側は本線を下りた料金所のほかに、本線上に中条本線料金所が設けられている。関東にある、中央自動車道の八王子ICと同様の構造となっており、新潟県側から来た車は、中条本線料金所を通過することで荒川胎内ICへ向かうことができる。

 中条本線料金所前には、あらかじめ抽選で募集していた「一般車両通行セレモニー」の当選者の車5台(中条ICに5台、荒川胎内ICに5台の計10台)が並び、認定書と記念品の贈呈式展を開催。開通時刻となる15時に、警察車両の先導で5台が通過し、中条ICから上ってきた車、新潟方面から向かってきた車の順で、中条本線料金所を通過していった。

15時の開通時刻直前に、中条本線料金所に並ぶ5台の車。一般車両通行セレモニーの当選者の車になる。一番乗りを果たした当選者はうれしそうだった15時になり、ゲートオープン。警察車両を先頭にまず5台の一般車両が通過する中条本線料金所は、37KP(キロポスト)の位置に設けられている。起点は新潟中央JCT
NEXCO東日本の車両に先導され、中条ICから一般車が流入してくる

 中条IC~荒川胎内IC間が開通することで期待されるのは、新潟県北の観光スポットである村上市へのアクセス性の向上。実際に中条IC~荒川胎内ICを通り、村上市中心部まで足を伸ばしてみたが、荒川胎内IC以北は信号もそれほどなく、日本海が眼前に広がる瀬波温泉や、日本最初のサケの博物館「イヨボヤ会館」まで30分強で到着する。

 ETCの休日特別割引を使えば、出発ICにもよるものの荒川胎内ICまで1000円+αで行くことも可能だ。お盆時期の平日適用も発表され、帰省に、海水浴にと便利になった。古い町並みの残る村上市を訪ねてみるのもよいし、新潟以北の日本海側の諸都市を訪ねるのにも便利だ。たとえば、映画「おくりびと」で有名になった山形県酒田市までは、新宿から関越道~日東道経由で約500km、東北道~山形道経由で約500kmとほとんど同距離。日本海方面の旅行に役立ててみてほしい。

中条ICから村上市中心部まで実際に訪ねてみた。中条ICの入口から入り高速道路本線に流入するとすぐにこの中条本線料金所が見えてくる10km弱走ると荒川胎内ICの出口に。中条IC~荒川胎内IC間は対面通行となっている荒川胎内ICを下り、一般道の国道7号を北へ。並行して現在建設中の日東道が見える。一般道から見ると、一段高くなっているのが分かる
村上市中心部にあるイヨボヤ会館。イヨボヤとはこの地方の方言で「サケ」を指すイヨボヤ会館の入館料は、一般600円、小中校生300円。入口近くではサケのオブジェがお出迎えやはり入口近くに置いてある発泡スチロールでできたサケの模型。造形制作は、TVチャンピオン発泡スチロール王選手権初代チャンピオンの太田征吾氏
イヨボヤ会館内部は水族館のようになっており、サケをはじめとしたさまざまな魚を見ることができる秋にはイヨボヤ会館近くの三面川を遡上するサケを見ることが可能な三面川鮭観察自然館。イヨボヤ会館内にあり、実際の川底を見ることが可能だ。訪ねた当日は悪天候のため、川が濁っており、よく見えなかった会館内のミニふ化場では、サケの稚魚を見られる。見られる時期は11月上旬から1月にかけて。訪ねた時期は、アユなどの稚魚を見ることができた
JR村上駅を西に行くと、瀬波温泉がある。瀬波温泉は日本海に面した温泉地で、1kmの海岸線を持つ瀬波温泉海水浴場がある。雨のためか、海水浴客を見かけることはできなかった。これからがシーズンだろう瀬波温泉まで来たので、外来入浴可能な宿を訪ねてみた。写真は、日本海に面する「夕映えの宿 汐美荘」汐美荘のロビーからは、日本海が見渡せる。晴れていれば、遠く佐渡島まで見えると言う
汐美荘のロビーにある「夕映えガイド」。温度や風向・風力のほか、日没時刻が表示され太陽が沈む時刻が分かるようになっている天気がよければ、日本海に沈む夕日がこのように温泉から見えるほか、和室の客室からも望める。外来入浴は10時~20時、料金は1000円。瀬波温泉は恋人の聖地にもなっており、宿泊するなどしてゆっくり訪ねてみたいところだ

 

(編集部:谷川 潔)
2009年 7月 21日