国交省、ハイブリッド車等の静音性対策を検討 メロディーを流してプリウスなどが走行 |
国土交通省は8月5日、交通安全環境研究所(東京都調布市)内において、「ハイブリッド車等の静音性に関する対策検討委員会」(以下、静音性対策委員会)の第2回目を開催し、あわせてその実験内容を報道陣向けに公開した。
静音性対策委員会は、ハイブリッド車や電気自動車が普及するに従って、「これらの自動車は構造的に音がしなくて危険と感じる」という意見が、自動車ユーザーや視覚障害者団体などから寄せられていることに対応して設けられたもの。
すでに第1回目が7月2日に開催されており、「何らかの対策は必要であろう」という方向性が出されている。それを受けて開催された第2回目では、実際にハイブリッド車や電気自動車を走行させて、「どの程度気がつきにくいものか?」「どのような対策をすればよいのか?」という部分を体験し、それを踏まえた上で今後の対応を検討するもの。
実験では、トヨタ自動車「プリウス」、本田技研工業「インサイト」、三菱自動車工業「i-MiEV」、日産自動車「アルティマ ハイブリッド」の4台に加え、内燃機関のみで走る自動車を代表してトヨタ「カローラ アクシオ」が持ち込まれていた。
それらの車を使って、停止からの発進、25km/h程度の中速走行、10km/h以下の低速走行を実施。車両が走行する脇に被験者が立ち、後方から来る車両にどの時点で気がつくかというデモを行った。デモは、ガソリンエンジン車であるアクシオから開始。アクシオはやはりエンジン音などが聞こえ、近づいていることに気がつきやすい。プリウスはアトキンソンサイクルの内燃機関も持つハイブリッド車だが、モーター走行モードで実験。モーター走行モードにおいては、アクシオよりは気がつきにくいようだった。
アクシオ10km/h以下走行
プリウス10km/h以下モーター走行 (発音なし)
プリウス10km/h以下モーター走行(発音あり)
また、この実験においては、音を出しながら走行する発音走行も行われた。これは、前回の会議で出された「何らかの対策」にあたるもので、プリウスやアルティマ、i-MiEVに発音装置を搭載し走行させ、発音装置を使わない場合との比較を行うもの。音は、大きめのモーター音に近い単音や、チャイム音で、使わない場合と比べると早い時点で車の存在に気がつきやすい。
そのほか、複数の車を並べ、同時に音を出すことでどのように感じるかという実験も行われた。これは、発音装置搭載車が複数存在するときに、不快と感じるのはどの程度かということを確認するため。信号で停止した場合などを想定している。
車両が後方から接近したときにどの時点で気がつくのかというデモも行われた。アクシオの場合、比較的遠方でも気がついている人が多かった | プリウスの場合モーター走行のため、真横にならないと気がつかない人が多い | |
i-MiEVのナンバープレート下部に取り付けられていた発音装置。このスピーカーからチャイム音などを出していた |
発音のロジックについては、「速度に応じて音を大きくする」「走行中は音を出し、停止時は音を止める」などいろいろ考えられるが、それらについては何も決まっておらず、これからとのこと。これまで自動車の騒音が問題になり、騒音規制などが設けられてきたが、いずれ何らかの結論が出され、ハイブリッド車や電気自動車が街中を走る際には音をあえて出すという時代が来るのかもしれない。
複数の車で発音する実験。左がプリウス、右がアルティマ
発音装置の付いたi-MiEV。途中で音を切り替える
(編集部:谷川 潔)
2009年 8月 5日