映画「湾岸ミッドナイト THE MOVIE」プレビュー
9月12日より新宿ミラノほか全国ロードショー

「湾岸ミッドナイト THE MOVIE」の主人公、朝倉アキオ(左)と、湾岸の帝王「ブラックバード」を駆る島達也(右)

2009年9月12日より全国ロードショー



 講談社から発行されている週刊ヤングマガジンで連載中の「湾岸ミッドナイト」(原作:楠みちはる)の映画版「湾岸ミッドナイト THE MOVIE」(脚本:村川康敏・室賀厚、監督:室賀厚)が、9月12日より全国公開される。8月10日に試写会が行われたので、そのストーリーと見どころを紹介したい。

アキオは悪魔のZと決別するよう、島から再三忠告を受けるが、すでにその魔力に魅せられてしまっていた

湾岸ミッドナイトのストーリー
 高校に通う主人公の朝倉アキオは、ある日解体所でスクラップ寸前のS30型フェアレディZと出会う。このS30は、所有者が次々と事故を起こしてしまうため、「悪魔のZ」と呼ばれていた。しかし、アキオはこの悪魔のZに魅入られ、同級生の高橋正輝の兄・高橋功太と一緒に悪魔のZを復活させる。そして、ストーリーの舞台である首都高速湾岸線で走り出す。

 一方、この悪魔のZには永遠のライバルがいる。漆黒のポルシェ911ターボ、通称「ブラックバード」である。オーナーの島達也は外科医で、彼の恋人である朝倉エリコの兄は、悪魔のZの前オーナーの朝倉晶夫。奇しくも前オーナーと現オーナーの名前は同じだったのだ。その朝倉晶夫は悪魔のZを運転中に死亡。エリコは兄の死を悲しみ、2度と悪魔のZが走り出さないことを願った。しかしそのZに再び火が入れられ、走り出したことを知る。そして島は悪魔のZが2度と走ることができないよう、ブラックバードをチューンアップし、Zと再び“最高速”という舞台で戦うのである──。

キャスト紹介
 物語は、朝倉アキオ、島達也、朝倉エリコ、この3名を中心に展開していく。主役である朝倉アキオ役には若手俳優集団D‐BOYSに所属する中村優一氏を抜擢。原作上では、アキオは硬派なイメージが強いのだが、実は登場当初は同級生の高橋正輝と一緒にナンパをするなど、その印象は意外と軽い。印象が変わってくるのは、悪魔のZと出会ってからで、映画上でもその悪魔のZに取り憑かれていく様をしっかり演じている。

 アキオが乗る悪魔のZは、L28改3.1リッターのツインターボという設定で、ナンバーは「横浜33」と、公認をとっているのが分かる。“ロングノーズ・ショートデッキ”という言葉が似合う車である。

朝倉アキオを演じるのは中村優一氏。ドラマ「仮面ライダー響鬼」、「仮面ライダー電王」、「太陽と海の教室」などに出演する人気の高い役者。映画では原作上のアキオの名言「油温OK、水温OK、アイドルOK、OKZ!」の言葉も聞くことができるアキオが悪魔のZに乗る前の愛車、Z32。原作上ではZ31が愛車だったが、今回の作品では悪魔のZとブラックバード以外は現代版にリメイクされているそうだアキオの現愛車、S30型フェアレディZ。通称「悪魔のZ」

 悪魔のZのライバル、ブラックバードを駆る島達也役を演じるはアーティストとして活躍する加藤和樹氏。島は非常にクールなキャラクターで、職業は医者(外科医)。悪魔のZの前オーナーの朝倉晶夫が事故死した際に一緒に走っていたこともあり、2度と悪魔のZが走らないよう解体所に持って行ったのも彼である。そうした因縁があることから、現オーナーのアキオが悪魔のZを直して湾岸線を走ることを止めさせようとする。その島の愛車はポルシェ911ターボで、「湾岸の帝王」と呼ばれる湾岸線の絶対王者。

島達也役は加藤和樹氏が演じた。ドラマ「ホタルノヒカリ」や映画「恋極星」などに出演するほか、歌手としても活躍しているポルシェ911ターボ、通称「ブラックバード」

 そして、前オーナーの朝倉晶夫の妹である朝倉エリコ役は、実力派女優 小林涼子さんが演じる。エリコは兄の死をまだ乗り越えられずにおり、再び悪魔のZが走り出し、同姓同名の人間がオーナーということについて動揺を隠せないでいた。そしてその“悪魔”と再び出会った彼女は、ある行動に出ることを決断する。果たして、その決断とは?

 そのほかにも、原作上の主要キャストも登場する。モデルを職業とする秋川零奈(松本莉緒さん)は、ドラマにも抜てきされる注目の新人で、脚光を浴び始めているが、売れれば売れるほど本当の自分とかけ離れていくことに葛藤していた。唯一、素の自分を出せるのは、愛車GT-Rに乗って湾岸線を走ること。そこでアキオと出会い、アキオと悪魔のZに魅入られて行く。また、零奈の仕事仲間でカメラマンのイシダヨシアキ(袴田吉彦氏)も、同様に悪魔のZの魅力にはまった1人。売れっ子カメラマンでフェラーリF355に乗っており、零奈のよき理解者でもある。

前オーナーの朝倉晶夫の妹、朝倉エリコを演ずるは小林涼子さん。ファッションモデル出身でドラマ「砂時計」「魔王」に出演するほか、舞台「ロミオとジュリエット」で活躍を見せた実力派女優零奈の愛車、R34 GT-R。原作はR32 GT-Rカメラマンのイシダヨシアキ氏の愛車、フェラーリF355。原作ではフェラーリテスタロッサだった
島に抱えられるアキオの身にあったのは……? 結末は映画館でのお楽しみ

「湾岸ミッドナイト THE MOVIE」の魅力
 「湾岸ミッドナイト THE MOVIE」の魅力は、なんと言っても実車による迫力のバトルシーンなのだが、それぞれ登場する車のエキゾーストノートをしっかり収録していることも大きい。フェアレディZ、ポルシェ、GT-R、フェラーリから音取りをしているので、映画館のように音響設備が整っているところで聞くと鳥肌ものである。

 また、同作品に登場する人物たちは、実に“人間臭さ”がある。アキオはこれだと思ったもの(悪魔のZ)に対して、なんの躊躇もなくハマっていく。若者の自動車離れが言われる日本において、アキオのような存在は少数なのかもしれない。しかし、高校にもほとんど行かずに昼も夜もアルバイトに明け暮れ、すべてZに注ぎ込むという思い入れの強さには頭が下がるし、強い共感を覚える。

 ブラックバードを駆る島についても、クールに装いながらこと「最高速」においては誰にも負けない熱いハートを持っているし、零奈は誰もが羨むトップモデルにもかかわらず、「仮の自分」と「本当の自分」の狭間で葛藤するという一面を見せてくれる。そしてアキオの同級生である高橋正輝は、実に女好き(笑)。単純に車一辺倒のストーリーのみならず、それぞれの人間性や感性が豊かに描かれているのも、この作品の魅力だと思われる。

 そんな彼らの共通点は、「速いのは誰だ?」の1点。職業も年齢も違う彼らが魅せられた世界がどんなものなのか? ぜひ映画館に足を運んで、その目で確かめて欲しい。

(c)楠みちはる/講談社・「湾岸ミッドナイトTHE MOVIE」製作委員会

(編集部:小林 隆)
2009年 8月 11日