NEXCO中日本、東名高速の崩落を受け地震災害検討委員会
崩落現場を公開。速度規制に関しては強度確認まで継続

静岡県牧之原市静谷付近にある崩落現場

2009年8月17日開催



 NEXCO中日本(中日本高速道路)は、8月11日の地震による東名高速道路 牧之原地区ののり面崩落を受け、社外有識者を招いた「東名高速道路牧之原地区地震災害検討委員会」を設置し、8月17日、その第1回委員会として現地調査、および討議を行った。

 東名高速道路牧之原地区地震災害検討委員会は、委員長に中央大学 研究開発機構の太田秀樹教授、委員に東京電機大学 理工学部 建設環境工学科の安田進教授、地盤工学会名誉会員 奥園誠之氏ら、計7名の有識者を迎えた委員会。のり面崩落箇所の地質や地形、周辺の震度、降雨状況などからその原因を分析するとともに、その復旧対策工の検討、類似した条件の盛土箇所の抽出とその対策工について検討するというもの。

 崩落が起きたのは東名高速の上り線191.6KP(キロポスト)付近で、1969年に開通した区間。交通量は2008年度の1日平均で上り3万3580台、下り3万3206台。8月11日5時7分ころ発生した駿河湾を震源とする地震により、約40mにわたり路面の一部が崩落した。

 すでに13日0時に下り線で、16日0時に上り線で通行止めは解除されているが、NEXCO中日本によれば、現状は応急的な復旧対策であり、強度的にこれで足りているのかも含めて、委員会で調査、検討していくと言う。

 現場で応急復旧対策工の状況や現地の地質について説明を受けた太田委員長は、「この場所は私がまだ学生だったころにできた道路。これまで同じぐらい雨が降ったこともあるだろうし、それでも問題なかったのだから、強度的に問題があるとは思わない。さまざまな要因が複合的に影響したのだろう」と述べた。また、現場の応急復旧については「今できる最善の状況」としながらも、これで十分ではなく、きちんとした復旧が必要とした。

応急復旧が行われた崩落現場。当初H鋼によって壁を作る予定であったが、地盤の緩みが酷く、また、H鋼が上手く刺さらないといった問題により、土嚢を積み上げ、簡易的なのり面を作ることで対策されている
土嚢の土台部分はコンクリートで固められているが、周囲には、崩落した跡を見ることができる
現場責任者である静岡保全センター所長の安部文彦氏らが保全の状態や地質についての説明を行っていた修復カ所の下流側や下り車線側の視察も行った現地で報道陣の質問に答える太田委員長

 現地調査の後、静岡市内のホテルで討議が行われた。討議では今後の調査すべき項目やその方法について、委員より多くの意見が出たと言う。

 太田委員長によれば、問題の崩落箇所は、盛土をした上に道路が作られた箇所とのこと。盛土は一般的に時間が経てば経つほど強度が上がっていくもので、これまで問題のなかった箇所が崩落するのは珍しいと言う。

崩落現場の空撮写真。問題の箇所が山の尾根に沿っていることが分かる

 また、安田委員によれば、一般的に盛土は谷になっている部分をかさ上げするために行われるが、今回の崩落箇所は、全国的に見ても珍しく、山の上に盛土をして作られていると言う。これは、崩落箇所とその前後が、山の尾根の上にあるためで、山の高い部分では山を削っているが、逆に低い部分には、盛土をしている。今回の崩落箇所は、その盛土をした部分だと言う。奥園委員によれば、崩落の原因が、盛土の部分が滑り落ちたためなのか、その下の地盤から壊れたのか、ボーリング調査によって調べたいとのこと。今回の視察でその部分をはっきりさせたかったが、断定できるだけの情報は得られなかったと言う。

 ほかにも、問題の箇所が長い勾配の谷になっている部分のため、路面に振った雨水が集まる場所になっており、40年分の累積により影響が出たのではないかといった意見や、元の地形によって地震による揺れ方が変わるため、建設時の図面を入手して、元の地形を調べたいといった要望も出た。

現地視察後に委員やNEXCO中日本のスタッフが集まり討議が行われた安田進委員奥園誠之委員

 今後の委員会の予定としては、全3回の開催を予定しているとのこと。今回の要望や意見を元にボーリング検査などを行い、次回は9月上旬~中旬頃に第2回を開催。検査結果を元に原因を分析する。第3回は10月上旬~中旬頃に開催し、本格復旧対策工と、類似した盛土箇所の対策についてまとめると言う。

 本格復旧のための工事の時期については、現状の応急復旧の強度測定なども含めて、今後の調査の結果次第だと言う。9月に大型連休が控えていることも気になるが、車線を規制するような工事や調査があったとしても、そういった連休などを避けて行うとのこと。ただし応急復旧の現状で路面に変化などが現れた場合には、即通行止めをして、対策を行うとした。また、現在の速度規制に関しても、本格復旧を行うか、応急復旧でも十分な強度が確認されるまで、継続するとのことだ。

(瀬戸 学)
2009年 8月 19日