ルノー、トールワゴン「カングー」をモデルチェンジ ボディーサイズと室内拡大で“遊びの空間”をアピール |
ルノー・ジャポンは、トールワゴン「カングー」の新型を9月11日に発売する。1.6リッターエンジンを搭載する1グレードのみの展開で、トランスミッションは5速MTか4速ATが選べる。価格はMTが219万8000円、ATが229万8000円。
1997年に登場した初代「カングー」から初のモデルチェンジとなった2代目モデル。外観のイメージを維持しながら全長で180mm、全幅で155mm、全高で20mm、ホイールベースで100mmのボディー拡大を行ない、室内空間などの増大にあてていることが特徴。
新型ルノー・カングー。従来モデルのデザインを踏襲、カングーとひと目で分かる |
■一気に大型化、高級化したカングー
2代目カングーのボディーサイズは4215×1830×1830mm(全長×全幅×全高)、ホイールベース2700mm。従来は5ナンバーサイズに収まる全幅と、4m未満の全長のコンパクトさが特徴だったが、新形は一気に大型化。ルノーによれば大型化は市場のニーズだとしている。
大型化したものの、CD値(空気抵抗係数)を10%低減しているほか、ドライバーの目線を約100mm高くし、ボンネットのライン改良やドアのウエストラインを低くデザインしたことで、前方と助手席方向の下方視界を改善した。また、社内測定した最小回転半径は旧型よりも0.1m小さい5.1mと、小回りを可能にした。
従来は室内に露出したボディーの金属面が目立ったが、新型では内装材で覆われる部分が拡大した。同社のミニバン「セニック」と同じプラットフォームを使い、2重フロアや遮音材の挿入、防振インシュレーター付きの井桁サブフレーム採用などで、室内への騒音侵入は従来モデルから50%相当の低減を実現したと言う。
エンジンは従来と同じ1.6リッター直列4気筒 DOHCながら出力、トルクともに増大、最高出力は78kW(105PS)、最大トルクは148Nm(15.1kgm)。トランスミッションは従来と同じ5速MTと4速ATが用意され、前輪を駆動する。
ボディーの大型化にともなってブレーキも強化され、フロントディスク径を280mmに大型化、リアは従来はドラムブレーキだったものを274mm径のディスクブレーキに変更した。100km/hからのフルブレーキテストでは、欧州では同型車の中で最短、先代よりも11m短い39mの制動距離で停止することができる。
ボディーライン、ライト形状、サイドモールなどが従来モデルのデザインコンセプトを受け継ぐ。観音開きのバッグドアも継承する。黄色のカラー名称は「ジョン アグリュム」柑橘系の黄色という意味 |
■拡大したボディーは室内空間にあて、多彩な収納スペースを踏襲
拡大したボディーサイズは室内空間の増大にあてられている。1675mmから一気に1830mmまで拡大した全幅は、室内の拡大に貢献、フロントシート部分の室内幅は従来よりも90mm拡大した1510mmに、リアシート部分の室内幅は75mm拡大の1540mmとなった。
ニールームは従来の170mmから210mmへ改善。フランスでショーファー・ドリブンなどに使われる「ヴェルサティス」並みのサイズだという。
また、シートアレンジも改良。後席はフラットに畳めるようになり、助手席も畳んだリアシートとほぼフラットになる機構を採用し、全長2.5mの長尺物を収納することができる。これは「IKEA」(スウェーデンの家具チェーン店)の定番商品の書棚「BILLY」を積んで持ち帰ることができるよう開発したと言う。ラゲッジルームの容量は660~2866L。
収納スペースには合計77Lを確保。従来からカングーの特長でもあった前後席天井の収納スペースも踏襲。特に後席は、子どもを3人乗せた場合に喧嘩にならないよう、3つのフタ付きの収納スペースとした。そのほか、リアシート足元のフロアにも、フタを開けると小さな収納スペースが出現する。
収納スペースが豊富なのもカングーの魅力。リアシートからアクセスできる天井部にはタ付き収納がある | |
リアシートの床下にも収納スペースを持つ | フロントシート裏にも収納スペースを装備、その上には折りたたみ式のテーブルがある |
■キャッチフレーズは「毎日を新鮮にするLUDOSPACE(遊びの空間)」
ルノー・ジャポンでは、広い室内空間を持つカングーを「毎日を新鮮にするLUDOSPACE(ルドスパス)」というキャッチフレーズで展開する。LUDOSPACEはラテン語で遊びを意味する「LUDOS」とフランス語の空間を意味する「ESPACE」を組み合わせた造語で、「遊びの空間」を意味する。人と荷物を満載して出かけるためのニーズに応えたクルマであることを強調していくと言う。
また、遊びの空間であるクルマのボディーカラーは全12色。ボディーカラー名称は先日登場した「コレオス」と同様、フランス語で設定される。標準色としてジョン アグリュム、ルージュ パボM、ブラン グラシェ、ペール カクトゥスM、ノワール メタルM、ブルー ボルガの6色、注文生産色としてグリ シデラルM、ブルー モントM、ルージュ ビフ、ブルー アルジョンM、グリ ベージュM、ブルー メタンの6色。注文生産色は納車まで3~4カ月ほどの期間がかかるがオプション追加料金は発生しない。
白のカラー名称は「ブラン グラシエ」。氷河の白という意味だという | メタリックの濃い緑色は「ペール カクトゥスM」。意味はサボテンの緑 | |
濃いソリッドの青は「ブルー ボルガ」。意味はボルガ川の青 | 注文色の「ブルー モントM」。意味は「ミントの青」 | 従来モデルから人気の黄色「ジョン アグリュム」のカングー |
■日本国内のルノー車販売の半数を占めるカングー。MT車も人気
ルノー・カングーはルノー車の国内販売の半分以上を占める人気車種。ユーザー層は小さい子供がいる30歳代のファミリー層が中心だが、生花店、パン店などの業務利用にも使われている。
新形でもユーザー層などは同様と見込んでおり、リアの観音開きドアや高い天井高、荷物を積みやすいラゲッジスペース形状などは、ファミリー、業務のどちらのユーザー層に受け入れられるとしている。
また、国産ミニバンではMTモデルがほとんど消滅した状況で、新型でもMTモデルがラインアップされているのは、従来モデルではMT車比率が平均では20%前後で推移し、多いときは全体の30%あったからだと言う。
今回のモデルチェンジによってクルマのサイズが若干変わることもあり、MT車比率はわずかに減少する15%を予想している。
なお、来年には、追加ラインアップとして、カングーのショートボディー版「BE POP」の登場を予定している。
2008年のパリ・モーターショーに展示されたカングーBE POP。リアハッチが跳ね上げ式になり、ドアは2枚に、シートは独立4座となる |
(正田拓也)
2009年 9月 1日