エーモン工業、デッドニングアカデミーに参加してみた
マッキントッシュ付き「レガシィ」をデッドニング

スーパーオートバックスかわさきで開催されたデッドニングアカデミー

2009年8月22日開催
スタンダード:8800円(現在は9800円)
ハイグレード:1万9800円
内張りデッドニング:8300円



 DIY向けの部材や工具を多数発売するエーモン工業では、オーディオのデッドニングをメーカースタッフなどが実際にアドバイスし、DIYを支援する「デッドニングアカデミー」を開催している。特に今年からはオートバックスセブンとコラボレーションし、全国のスーパーオートバックスなどで、積極的にイベントを展開。Car Watchでもレガシィオーナーと共に参加してきたので、その模様をお届けする。

 デッドニングという言葉自体ご存じない方も多いと思うので、まずはデッドニングについて簡単に説明しよう。

 一般的に、ホームオーディオのスピーカーと言えば、スピーカーユニットがスピーカーボックスに収まっている。そしてこのスピーカーボックスに使う木材やその形状は、音質を追求する上でとても重要な要素となる。

 しかしカーオーディオ用のスピーカーは、スピーカーユニット単品でこそ、高品質なものが売られているものの、スピーカーボックスはと言えば、クルマのドアを代用して使っている状態。もちろんドアの形状が、音のために変えられたり、素材が選ばれたりするようなことはない。スピーカーのよしあしを決めるスピーカーユニットとボックスの内、ボックスに関してはおざなりになっている状態なのだ。

 そこでドアのサービスホールをふさいだり、あるいは制振、吸音をすることで、ドアをスピーカーボックスとしてより適した状態にし、音質を向上しようというのがデッドニングの目的になる。

 実際の作業と言えば、ドアの内張りを外して、その内側や外側に専用の部材を切って貼り付けるだけ。スピーカー交換をDIYでできる人なら問題なく施工できるレベルだ。ただし、きちんと施工するためにはいくつかポイントがあるのと、ていねいに作業しようとか、より効果的に施工しようとこだわり始めると、1日あっても終わらなくなる。しかし好きなだけ時間が掛けられるのがDIYの醍醐味でもあるので、時間に余裕を持って、それぞれのペースで進めるのがよいだろう。

 Car Watchが参加したのは8月22日にスーパーオートバックスかわさき店(神奈川県川崎市川崎区港町)で開催されたデッドニングアカデミー。デッドニングアカデミーは作業スペースの都合で台数に制限があるため、事前申込が必要となるが、デッドニング用の部材がお得な価格で手に入る上、作業スペースも確保でき、作業で分からないことがあれば、エーモン工業やオートバックスのスタッフのアドバイスやサポートが受けられるというのがうれしい。工具などの持参は必要だが、不足しているものがあれば、すぐに店頭で調達できるというのもメリットだ。なお、1人でも作業できなくはないが、できれば2人以上で作業したほうが効率がよいだろう。

 当日はオートバックスグループ全店のオーディオ部門をまとめる小林信二氏も訪れ、オートバックス流のデッドニングの施工方法を指南。オートバックス流では、エーモンでアウターパネル用としている制振材をインナーパネルに、インナーパネル用をアウターパネルに貼り付けるのだと言う。これは、インナーパネル用制振材の接着力が強すぎて、後でメンテナンスが必要になった際、はがすのが大変だからとのこと。ただし逆にはがれやすくなりすぎるので、アルミガラスクロステープで補強をすると言う。今回は我々もこのやり方にのっとって作業することにした。

オートバックスセブンの小林信二氏。店舗のオーディオ担当者に音のことを教えるプロのための先生エーモン工業のスタッフやスーパーオートバックスのスタッフもアドバイスしてくれるデッドニングに必要な部材から内張り外しまでそろって、足りない物はその場で調達できる

 施工をするのは先代モデルの「レガシィB4」。オプションのマッキントッシュサウンドシステム搭載車だ。筆者の経験から言うと、このようなオプション扱いのオーディオユニットではなく、標準装備のオーディオユニットにデッドニングすると、かえってオーディオのダメぶりが露呈してしまうことがある。それまでドアが共振することでごまかされていたものが、デッドニングによって本来の性能の低さが明らかになる状態だ。デッドニングをするなら、オーディオユニット自体もある程度のレベルのものがあったほうがよい。もちろん標準装備で高級オーディオがおごられるクルマもあるので、標準装備だから必ずデッドニングに向かないということではない。

 記者らが選んだのは、エーモン工業の「AUDEA デッドニングキット スタンダード」を使ったスタンダードコースだ。このほかにも、より効果の高い部材が入ったハイグレードコースなども選択できる。なお、現在のスタンダードコースではこのAUDEAのキットの代わりにオートバックスセブンオリジナルのキットを使用している。

 工具は、プラスドライバーと内張り外しが2種類、はさみやカッター、マーカー、そしてラジオペンチと先のとがったニードルドライバー。あとは軍手とブレーキクリーナー、そしてガムテープ(布)を用意した。内張り外しはどちらもエーモン工業のもの。ニードルドライバーは小さなマイナスドライバーでもよい。軍手も必ず用意すること。素手で作業していると、デッドニングの部材で手を切ることがある。車種によってはほかに工具が必要な場合もあるだろうが、最近の国産車であれば、これでほぼ問題ないはずだ。

記者らが使用したデッドニングキット。最近オートバックスセブンから同様のキットが発売されたため、現在のスタンダードコースでは、そちらを使っており、価格は9800円使用した工具。見慣れない工具と言えば右から2番目の「内張りはがしDX」と上の緑色の「パネルはがしロング」。どちらもエーモン工業製の内張り外し。決して高い物ではないので買っておきたい。その他はごく一般的な工具だ軍手とブレーキクリーナー、写真には写ってないがガムテープも必須。ブチルクリーナーという専用品もあるがブレーキクリーナーで代用できる

 最初はドアの内張りを外していこう。外し方が分からない人は、ディーラーで整備書をコピーしてもらうか、アルパインが同社製品取付用として展開している「車種別取付け情報」(http://www.alpine-fit.jp/index.cgi)で検索してみよう。最近の車の傾向としては、ネジはあまり使わず、大部分がクリップで止まっているが、ドアグリップの両端とドアオープナー周辺はネジ止めされている場合が多い。そのネジも見える場所にはなく、目隠しのふたがされていたり、パワーウインドースイッチのユニットを外すことで見えたりする。

 レガシィの場合は、ドアグリップの飾りカバーを外したところに2カ所と、オープナーの奥側の隠しぶたの裏に1カ所ネジがあった。あとは内張りの下側から隙間を作り、手前に引っ張って内張りのクリップを外したら、上方向に持ち上げると内張りがドアから外れる。パワーウインドースイッチのコネクターや、オープナーのワイヤーなども外せば、内張りの取り外しは終了だ。と、文章で書くのは簡単だが、今回は初めて内張りを外すということで、すべててのクリップやツメが硬く、予想以上に時間と労力を使ってしまった。

レガシィのドアの内張り。ドアグリップの上下と、ドアオープナーのふたの裏にネジが隠れているドアランプにも配線があるので、外すのを忘れないようにレガシィの場合、ツイーターカバーも別体。引っ張れば簡単に外れる
ドアグリップのカバーを外す。内張り外しで上部のツメを逃がしながら手前に引っ張るのだが、とても硬いガムテープで持ち手を作ってみるが、ガムテープのほうが切れてしまった最後は金属製の内張り外しで力技。先端にガムテープを巻いているのは、内張りに傷をつけないため
カバーの下に隠れていた2カ所のネジを外すドアオープナーの裏の隠し蓋を内張り外しで外す蓋の裏にネジが隠れているので、こちらも外す
ツイーターのカバーを引っ張って外したら、ツイーター自体も引っ張って外す。裏側にコネクターがあるので外してしまおう内張りとドアのすき間から手を入れて、強く手前に引っ張ると、クリップが外れる。本来は一つ一つ内張り外しでクリップを外すべきだが、最近のクルマはすき間が少ないのでこうするしかないクリップがすべて外れたら、上に持ち上げるようにすると内張りがフリーになる
内張りには、パワーウインドーのスイッチやオープナーのリンケージなどが繋がっているので、それらを外す。オープナーはドア側に残る場合も多いが、レガシィの場合、ワイヤーで繋がっている形だったので、ワイヤーを外す。ここの付け方を間違えるとドアが開かなくなるので、外す前によく観察しておこうパワーウインドーのコネクターも外す。硬い場合は、ラジオペンチでツメを抑えながら内張り外しでこじってみよう

 次にドアのインナーパネルに付いているビニールをはがし、ブチルゴムをきれいに除去する。このビニールはサービスホールから雨水が車内に入るのを防ぐもの。サービスホールはデッドニングでふさいでしまうので、再利用することは考えず、破いてしまおう。ビニールはブチルゴムで接着されているが、このブチルゴムは、ガムの様に伸びてベタベタとくっ付くものなので、はがしたらビニールの内側に巻き込むようにしておいて、服などに付かないようにしよう。

 特に気温の高い季節は、ブチルゴムが柔らかく、ビニールをはがしたあと、ドアパネル側に多くのブチルゴムが残ってしまう。その場合は、ガムテープをブチルゴムの上に貼って、一気にはがすとガムテープにブチルゴムが付いてくる。おおかたのゴムがとれたら、最後はブレーキクリーナーやブチルクリーナーで残ったブチルをきれいに取り除こう。

内張りを外したドア。なんとレガシィはビニールの上から防音スポンジが貼られていた。さすがマッキントッシュ仕様だビニールを引っ張ってはがして行く。ガムの様に伸びているのがブチルゴムだ
ビニール側に付いたブチルゴムは、ビニールで包むようにすると汚れなくてよい。ワイヤーや配線が通っている部分は、ビニールをカットしてしまおうスコーカーの裏などにもビニールが残ったため、スコーカーを外してビニールを撤去した。ただし多少残っていても問題はないので、外すと問題が起きそうなネジの場合は、そのままにしておいたほうがよいだろうドア側にもたっぷりとブチルゴムが残っている。服などに付くとやっかいなのでこれも撤去する
残ったブチルゴムは、上からガムテープを貼って、勢いよくはがすとガムテープに付いてくる。これを繰り返したら、最後にブレーキクリーナーで残ったブチルゴムを拭き取ればOK

 続いてスピーカーを外す。スピーカーの周囲や背面はもっとも振動が出やすい部分なので、特にデッドニングが有効な場所だ。ただし最近ではスピーカーがリベット止めされている場合もある。その場合は、スピーカーは外さず、近くのサービスホールから作業するしかない。

 ここからようやくデッドニングに入る。まずはサービスホールの内側のアウターパネルに制振材を貼る。キットには2種類の制振材が入っているが、アルミとブチルゴムでできた「レジェトレックス」という制振材をアウターパネルに貼る。キットに付属のマニュアルでは、これはインナーパネルに貼ることになっているが、先にも述べたとおり、今回はオートバックス流で施工した。

 まずはレジェトレックスを適当なサイズに切る。なお、レジェトレックスはアルミの切断面で手を切ることがあるので、軍手をして作業すること。キットには3枚のレジェトレックスが入っていたが、まずは1枚を湿布ほどの大きさ(15cm×10cm程度)にカットし、スピーカーの奥側や、手の甲で叩いて、軽い音のするところを特に重点的に、全体に貼り付けていく。このとき貼り付け面をブレーキクリーナーできれいにしておくこと。湿布サイズで大きすぎれば、適当なサイズにカットして貼ればよい。貼ったら、付属のヘラでゴシゴシと擦るようにして制振材を圧着させていく。レガシィでは3枚の内の1枚も使い切らずにドア1枚が貼れてしまった。

ブチルゴムをきれいに落としたらドアスピーカーを外す。リベット止めされている場合は外さずに作業しようレジェトレックスを貼りやすい適当な大きさにカットするレジェトレックスのアルミの切断面はとても手を切りやすいので、かならず軍手をして取り扱うこと
サービスホールなどからレジェトレックスを入れて貼っていく。その前にブレーキクリーナーで貼り付け面をきれいにしておこうポイントは気泡を残さず面全体で貼り付けること。そのために付属のヘラで気泡やすき間を作らないようこすって圧着する全体的にレジェトレックスを貼り付ける。白いのは純正で貼られていた制振材だが、その上からも制振材を貼っていく

 次にスポンジ状の吸音材をスピーカー奥側に貼る。スピーカーというのはコーンを振幅することで空気を動かし、音を出す物だが、同時にスピーカー裏側でも空気が振動している。ここに吸音材を貼るのは、スピーカー裏側から出る音をスムーズに吸収することで、背面の圧を減らし、効率よくスピーカーを動かすのが目的だ。

 スピーカーの奥側はすでにレジェトレックスを貼った場所になるが、その上から貼ればよい。今回は18cm×18cmほどのサイズにカットして貼ったが、スペース的に問題がないならもっと大きくてもよいだろう。また、今回はスピーカーの下面になる部分にも吸音材を貼ってみた。

 ちなみにハイグレードキットの場合、スピーカー奥側に貼る「吸音ダンパー」という専用の部材や、ドアの中にあるサイドインパクトビームとアウターパネルを接着することで、補強ができる「サウンドシーラント」などもセットされているので、このタイミングで施工しよう。

吸音材をカットし、スピーカーホールの奥側を重点的に貼る。吸音材は1枚しか入っていないので、片側のドアで使い切らないこと今回は奥側だけでなく、下側にも吸音材を貼ってみた
これでアウターパネル側の作業は完了。サービスホールをふさぐ前にやり残したことがないかよくチェックハイグレードキットに付属しているサウンドシーラントはインパクトビームとアウターパネルを接着することで制振するもの。サービスホールをふさぐ前に施工する

 サービスホールからできる作業がすべて終わったら、もう1種類の制振材でサービスホールをふさぐ。ちなみにこちらはアスファルト系の制振材で、レジェトレックスと比べると重く、素材も硬い。そのため曲面に貼りにくく、自重ではがれやすい。冬場はドライヤーなどで温めて、軟らかくしてから施工するとよいだろう。また、大きなサービスホールに貼る場合は、裏面から補強を入れて、よりしっかり固定するのも手だ。

 まずはサービスホールよりひと回り大きめに部材をカットする。サービスホールの型を取ったら、多少余裕を持って切り出し、必要に応じてさらに切り込んで貼り付ける。貼る前にブレーキクリーナーで脱脂するのも忘れずに。ドアロックのリンケージなどは、張り付いてしまわないように付属のコルゲートチューブをかぶせておき、制振材に切れ込みを入れてリンケージを通すようにする。サービスホールから配線が出ている場合なども同様だ。

 インナーパネルはアウターパネルに比べ、凸凹が多いが、温めれば制振材は軟らかくなるので、極力パネルに密着するように貼っていこう。注意点は、ドアの内張りのクリップが刺さる穴をふさいでしまわないこと。最後に内張りが付かなくなってしまうぞ。

制振材の入っていたビニールを使ってサービスホールの型を取り、制振材をカット。のりしろが必要なので、少し大きめに切ること大きなサービスホールは、裏側からもブリッジ状にレジェトレックスを貼って強度をアップするはく離紙をはがしてサービスホールに貼り付ける。このはく離紙は、もう一方のドアの型紙になるので捨てないこと
インナーパネルは凸凹が多いが、ピッタリと着くようにヘラで圧着する。寒い季節はドライヤーで温めると制振材が軟らかくなって作業しやすくなるドアロックのリンケージはコルゲートチューブで張り付かないようにする必要があるが、レガシィはワイヤー式だったので、ワイヤーに無理がかからない形で制振材を貼り付けたサービスホールからはハーネス類が出ているので、状況に応じて制振材をカットしよう

 ここまで作業を終えたら、一度手を止めてキットに付属している音楽CDを鳴らしてみる。このCDには、楽曲のほか、高音から低音までの音が収録されているので、これを鳴らしてみる。低音から徐々に高音になっていくスイープ音を鳴らし、特定の音域で起こるビビリ音などがないかチェック。ビビリが発生している場合には制振材を貼る。ハーネスやカプラーなどが振動する場合は、付属の「防音テープ」(スポンジテープ)を貼るのもよいだろう。

 さらに音を鳴らしながらパネルを触り、特に振動の大きい部分に、「ポイント制振シート」を貼って行く。一般的にはスピーカー周辺が振動しやすく、施工することが多いとのこと。レガシィではあまりスピーカー周辺がひどくなかったので、サービスホールに貼った制振材の上に、さらに補強するようにポイント制振シートを貼った。

この状態で1度ドアスピーカーを装着し、音を鳴らしてみる。手で触って振動が大きい部分を中心にポイント制振シートを貼り付けるサービスホールを塞いだ部分の振動が大きいと言うことで、そこを中心に貼り付けるさらに余っているレジェトレックスを、振動の気になる部分に追加した

 続いてキットには含まれないが別売の「アルミガラスクロステープ」を制振材の上から貼って、制振材の補強とはがれの予防をする。今回はていねいに全面を覆ったところ、1本では足りず2本クロステープが必要になった。安く抑えたいなら縁やハーネスの取り出し部分など補強の必要な部分だけに施行するのでもよいだろう。

別売のアルミガラスクロステープ。とても頑丈だが伸縮性がないので、曲面への貼り付けには慣れが必要特に大きなサービスホールを塞いだところや、ハーネスを通すためにカットした部分を重点的に、テープで補強する。全面を覆ったら1本では足りなくなったので、縁を覆うだけでもよかったかもしれない

 ちなみにレガシィのマッキントッシュの場合、スコーカー(中域用のスピーカー)がインナーパネルに装着される形になっている。そこでスコーカーの背面にあたる部分にも余っている吸音材を貼ってみた。

 あとは、内張りとドアのインナーパネルの接触する部分や、内張りと干渉しそうなハーネスなどに防音テープを貼って、共振などによるビビリの発生を予防する。

余った吸音材をスコーカーの背面にも貼ってみた。また、レガシィでは純正で施されていたが、スピーカーの縁を防音スポンジで覆って、スピーカーグリルとのすき間を埋めるのも効果が期待できる今回のアカデミーでは、防音テープのセットに含まれていたので、それを使って干渉しそうなハーネスなどに巻き付ける。これはビビリを防止するため防音テープは、内張りとのすき間をふさぐのにも使えるが、最近のクルマは純正でも密閉度は高いので、状況に応じてでよいだろう

 今回は時間がなかったので行なわなかったが、余った制振材はドアの内張りに貼るのも手だ。内張りを装着した状態で音を鳴らしてみて、振動が大きい場所があれば、その裏側に貼ってみるのがよいだろう。また、フロアなどに貼ることで、ロードノイズの侵入を防ぐこともできる。記者のこれまでの経験で言うと、荷室の床や、ハッチバック車のリアゲートなどは鋼板が薄い場合が多く、静粛性アップが期待できる。

余った制振材は内張りの制振に使うのもよいだろう。写真の内張りは会場に展示していたデモカーのもの荷室のフロアなどは、鋼板が薄い場合が多いので、余った制振材を貼ると静粛性がアップする可能性がある。フロアをノックして、薄そうなところを優先して貼ってみよう

 最後に外したスピーカーや内張りを元に戻せば完了。もし内張りが上手く付かない場合は、クリップの刺さる穴を制振材などでふさいでいないかよく確認しよう。また、一度外したパーツなどをチェックし、正しく元の位置に戻っているかも確認。今回の場合、一度外したツイーターを上下逆に付けてしまっていて、内張りがはまらないというミスをしてしまった。デッドニングは、作業自体の難易度は低いものの、こうしたうっかりトラブルは少なくない。あせらずじっくり作業することが重要だ。

最後は内張りを戻して終了だが、特によくあるミスが、クリップが刺さる穴をふさいでしまっていること。内張りのクリップの位置と照らし合わせてよく確認しよう記者らも最後に内張りが付かないトラブルに見舞われたが、原因はツイーターを取り付ける向きを間違えたことにある。トラブルが起きたときは、落ち着いて作業した手順を振り返るのが、原因究明の近道だ

 それと、内張りを付けたら、ドアを閉める前にドアのオープナーやロックの作動に問題がないかを確認しておこう。もし手応えがなかったり、引っかかったりするような場合は、一度内張りを外して、リンケージの動作を確認する。確認しないままドアを閉めてしまうと、二度と開かなくなってしまうかもしれない。なお、そうなってしまった場合は集中ドアロックや、キーレスエントリーを操作してみると開く場合もある。

 内張りを付け終わったらいよいよオーナーの持っている音源で試聴。オーナー自身によると、「よくなったと感じる曲もあるが、そうでない曲もある」とのこと。聞かせてもらうと確かに音がよくない。素のマッキントッシュでさえもっとよい音が鳴るはずだ。そこで音源について聞いてみるとMP3の圧縮音源で、ビットレートは覚えていないとのこと。MP3音源であっても高ビットレートであれば、もう少し期待もできるのだが、件の音源は低いビットレートのようだ。そこで、ちょうど手元にあったデッドニングキットに付属のCDを鳴らしてみると、明らかに明瞭でツヤのある音が鳴った。特に低域にしっかりと芯が通っていて施工前よりよく鳴っている。標準オーディオユニットだと、デッドニングによって低域がやせてしまうこともあるのだが、今回の場合は、マッキントッシュのポテンシャルの高さをより引き出す形になったようだ。

 レガシィのマッキントッシュシステムは、防水のビニールに防音スポンジが貼ってあるなど、純正でもある程度デッドニングが施されてはいる。しかしそれでも量産でできる範囲には限度があり、今回の施工によって、マッキントッシュの性能をより引き出すことができた。さらに言えば、スピーカーケーブルや電源ケーブルなども純正ではかなり細い物が使われているので、これらをある程度しっかりしたものに交換すれば、さらに音質向上を狙うことはできると思う。

 オーディオのデッドニングは、エンジンまわりやサスペンションまわりのDIYに比べれば、必要な工具も少なく、失敗しても車が動かなくなる可能性は少ない。少しでも音をよくしたいと思っている人は、スピーカー交換などとあわせて、それらの性能を十二分に引き出すためにも、ぜひ気軽にチャレンジしてもらいたい。

(瀬戸 学)
2009年 10月 29日