首都高、大橋“グリーン”ジャンクションの換気所を公開
会長と社長による記者会見も実施。開通日は2010年3月半ばから下旬を予定

大橋ジャンクション全景

2009年12月8日



大橋換気所の巨大な送気ファン

 首都高速道路は12月8日、東京都目黒区に建設中の大橋JCT(ジャンクション)の大橋換気所を報道向けに初公開した。「大橋“グリーン”ジャンクション」と愛称をつけて環境対策に取り組む中で、換気設備は重要な設備のひとつとなる。

排気ガスから有害物質を除去して排気
 大橋換気所は、単なる空気の入れ替えではなく、SPM除去装置・低濃度脱硝設備を設置、自動車の排気ガスから二酸化窒素(NO2)や浮遊粒子状物質(SPM)を除去するという設備まで含まれる設備。

 大橋ジャンクションのループ内に設置される換気所の建物は、地上7階地下2階で延床面積は1万4000m2。地上から換気所の上までの高さは45m。

 内部には換気を行うための巨大な排気ファン、トンネル内に外部の空気を導く送気ファン、トンネル内の空気を放出する前にきれいにするSPM除去装置・低濃度脱硝設備のほか、排気ファンの騒音を抑える消音装置や、設備や照明、防災施設へ電気を送る電気設備、停電時の発電機などからなる。

 公開された換気ファンは、地上とほぼ同じ高さに設置され、地下にあるSPM除去装置・低濃度脱硝設備を通る空気を吸い上げて外に放出する仕組みとなっている。

大橋換気所の全景模型換気所の機能を表したカットモデル黄色と赤が排気の経路、青が送気の経路となる
排気の経路にはSPM除去装置・低濃度脱硝設備が置かれる換気のファンを動かすために電圧の高い電気が引き込まれる受電設備がある。停電時でも最低限の換気を行えるだけの発電機も備えられる
排気のためのファン、1基あたりのモーター出力は810kW。口径は2.8m。地上約100mまで排気を放出する力がある
トンネル内に空気を送り込む送気ファン。口径は排気と同じ2.8mだが回転数が遅くモーターの出力は420KW

換気所屋上は目黒川周辺の原風景を再現
 ジャンクションのループ部分の屋上は「目黒天空の庭」として、地元の目黒区と連携した公園整備を行うことになっているが、ループの中にある換気所の建物の上も緑化を実施する。

 換気所の屋上はループ部分の屋上とは別に整備。ループ部分とは違って水平な面もあり、雑木林、草地、水辺、田んぼを再現し、目黒川沿いの原風景を再現するという。緑化の時期は大橋ジャンクションの供用開始の後となる。

現在外壁を工事中の大橋換気所の地上部分。地表から最上部まで45メートルの高さがある
屋上はループ部分と違って平面部分もあり、目黒川周辺の原風景を再現する場所となる
目黒川周辺の原風景の再現予定図。傾斜を活用し、川辺から水田まで再現される予定だ

トンネル部分も環境対策に取り組む
 大橋ジャンクションは中央環状線と東名高速道路に向かう首都高渋谷線を結ぶ重要な分岐点で、渋滞解消にも大きな期待がなされている。開通すれば一気に交通の要となるのは間違いない。そこで、大橋ジャンクションでは環境への配慮をメインテーマとした取り組みがなされている。

 例えばトンネル壁面や換気所内の床面に低VOC塗装を採用して有害物質の排出を削減したり、高架部には接触する窒素酸化物を分解する光触媒塗装、首都高渋谷線との連結路には排出ガスの流出を防止する天井板の設置、その横にはトンネルへ侵入で急に暗闇にならないよう、ルーバー区間を設けて徐々に暗闇に慣れるような仕組み仕組みも導入する。

 また、ループ外壁にはツル性の植物、オオイタビを絡ませコロッセオ風の壁面に風格ある緑を実現する。外壁には絡みやすように筋状の模様が刻まれており、オオイタビの成長にともなって地表面からの緑化が完成する。

トンネル出口付近の吸気口。自動車の走行にあわせて外に出て行く排気ガスをここから吸い取るトンネル入口には徐々に暗くなってくようにルーバーで明るさを調整する排気ガスの流出を防ぐ天井板が設置された出口。右が都心方向、左が東名方向
高架部の外壁は光触媒塗装がなされている道路工事が進むトンネル内
トンネル内の防災設備も公開された。消化器と、誰でも使える泡消火栓天井には初期消火を行う水噴霧設備も備えられるループ部の屋上庭園には、隣接する再開発のマンションから直接行き来できる通路がある
ループ外壁にはオオイタビを絡ませるための模様が刻まれ、成長すれば蔦が絡んだようになる。上の窓のように見えるものはコロッセオ風の外観を実現するためのデザインで窓はない

 

傾斜したループ部の屋上は「目黒天空の庭」をコンセプトとした目黒区の公園となる。大橋ジャンクション供用開始後に整備される

山手トンネル開通は2010年3月下旬ごろ、開通前にイベントを予定
 大橋換気所と工事現場の公開の後は首都高速道路の会長、社長が記者会見を行った。

 代表取締役会長の長谷川康司氏は「今までの中央環状線の開通とあわせて、東京の渋滞は半減するんじゃないか」と効果を期待した。

 高速道路無料化を掲げる民主党が政権については、首都高速や阪神高速は無料の対象になっていないとしながらも、「高速道路全体がリニューアルされることで、首都高にも何らかの影響がある」と予測した。

 代表取締役社長の佐々木克已氏は、中央環状線の構想からすでに50年以上経過して、市街地に高速道路を作ることの難しさを振り返りながら「地元の理解は環境の対応が重要」と環境対策の重要性を語った。

 西新宿JCTから大橋JCTまでの山手トンネルの開通日については、現時点で2010年3月とされているが、3月半ば以降、下旬になるという。なお、日程を決める際には、3号渋谷線を通行止めにせず開通させるため、交通量の少ない曜日(休日)を設定する可能性がある。正式な開通日は2010年1月はじめに発表予定。

 また、大橋JCTの供用が開始されることで、中央環状線の熊野町JCTの通行量が増えることについては、佐々木社長は「いずれ熊野町JCTは改築をしたい」として渋滞解決の施策を示した。

 なお、会見の席上、山手トンネルの開通に備え、12月にブロガー向けや一般向けに現場見学、開通前のプレミアムバスツアー、開通直前の一般開放デーなどのイベントの予定が発表された。

会見を行う代表取締役会長の長谷川康司氏代表取締役社長の佐々木克已氏

(正田拓也)
2009年 12月 9日