イセッタにオデッセイドライバッテリーを装着
過酷な使用環境だからこそよいバッテリーを

バッテリー交換をするイセッタ。クラッチまわりのトラブルのため、この日は数カ月ぶりのエンジン始動

ODYSSEYバッテリー Ultimate LB680:3万8850円
ODYSSEYメンテナンス充電器 12-3T:1万6800円



 本誌で過去にも何度か登場している、デザイナーのりたまこさんのイセッタ。これだけの旧車なので、問題はいくつも抱えているのだが、その1つとして、「バッテリーがシートに触れて出火」という笑えない問題を抱えていた。これは、イセッタがバッテリーをシートの下に配置しているためで、端子の部分がシートのフレームに接触してしまうことでショート、煙がモクモクと上がってあわや車両火災! という事態に陥ったわけである。これより背の低いバッテリーだと容量的にも不安があり、「本当はバッテリーを寝かせて搭載できればよいんだけど……」ということで、寝かせて置いても大丈夫で、性能的にも安心なドライバッテリーを搭載することにした。

オデッセイドライバッテリーを使用
 使用したのは日本ではプロジェクションが取り扱っている「ODYSSEY(オデッセイ)バッテリー」の「Ultimate(アルティメイト)シリーズ」で、サイズは下から2番目のLB680。普通の4輪用としてはかなり小さめのサイズだが、もともと電気の使用量が少ないイセッタなら十分な容量だ。価格は3万8850円とお高めだが、寿命は長く、バッテリー上がりにも強いので、使い方次第ではお得。かくいう筆者も愛用しており、購入してかれこれ7年近くになる。1カ月以上乗らないことも多く、10回以上はバッテリー上がりをしているが、充電すると元気に復活するので、なかなか買い換えられずにいる。

オデッセイドライバッテリー アルティメイトシリーズ。製造メーカーのENERSYSは、英HAWKERと米EXIDEが合併した世界で4本の指に入るバッテリーメーカー。サイズはいろいろあるが、一般的な乗用車ならLB925かLB1200辺りがオススメ端子の形状も、DIN(左)、JIS(右)、M6(下)から選べる

 では、オデッセイバッテリーは、普通のバッテリーと何が違うのか? 簡単に説明すると、一般的な液式バッテリーが、カルシウムと鉛の合金でできた電極が、バッテリー液に沈んでいるのに対し、ハイコンプレッションAGM(アブソーブドグラスマット)方式を採用するオデッセイでは、電極にカルシウム鉛電極と比べ、5~6倍の耐腐食性を持つ純度99%の純鉛を使用。純鉛はとても柔らかいのが問題だが、グラスマットを間に挟んで圧着することで強度を確保している。バッテリー液はこのグラスマットに染みこませた状態となっているため、寝かせて置こうがひっくり返そうが液が片寄るようなことがないのだ。

 そもそもは戦闘機や超音速旅客機コンコルドなどで使われていた技術で、スペースシャトルでも採用されたことのあるもの。現在でもSUPER GTなど、トップカテゴリーのレーシングカーで採用されている。

 また、バッテリーの特性として、マラソンのように電流を少しずつ流し続ける「サイクル放電特性」と、短距離走のように瞬間的に大きな出力を発生する「高効率放電特性」というものがあり、この2つの特性の両立は難しい。一般的な車用バッテリーの場合、スターターモーターを回す瞬間は大きな電力を使うが、その後はオルタネーター任せのため、短距離走タイプの高効率放電特性を優先した設計になっている。一方、エンジンを止めたままライトをつけっぱなしにしたり、テレビやオーディオを使い続けたりするのは苦手。バッテリーがカラっぽになるまで使うと、充電しても完全には復活しなくなる。バッテリー上がりを起こしたバッテリーが、充電しても完全には復活しないと言われるのも同じ理由だ。また、アイドリングストップの様に、エンジンは始動せず、カーナビやオーディオなど少量の電気を使い続けるというのも同様の状況で、マツダのアイドリングストップ技術であるi-stopでは、このために専用のバッテリーを開発したほどだ。

 そして、オデッセイは、車載向けバッテリーでありながら、サイクル放電特性にも優れている。結果、バッテリー上がりのような深い充放電を繰り返しても、バッテリーがダメになりにくいわけだ。

 一方の高効率放電にも優れ、小さいサイズのバッテリーでもエンジンを始動することができる。レースで重宝されるのは、この結果バッテリーの小型化=軽量化に繋がるためだ。

 ただし問題がないわけでもなく、一般的なバッテリーと比べると、絶対的な電気の容量は小さくなる。そのため、筆者のように1カ月程度エンジンをかけないだけでも、バッテリー上がりを起こしてしまうというわけだ。

オデッセイをイセッタに装着
 作業をお願いしたのは、東京都大田区西蒲田にあるテクニカルオート。国産車、輸入車、新車、旧車を問わず扱う修理工場。ない部品はありもので何とかしてしまう頼れるショップだが、それだけに旧車&輸入車の入庫率は高い。

テクニカルオート。入庫している車を見る限り、輸入車や旧車の駆け込み寺的存在のようだ所狭しとパーツや工具が並ぶガレージ内だが、イセッタのサイズなら広さは十分

 イセッタのシートはボルトでフロアに固定されているだけなので、いとも簡単に外れる。もともとのバッテリーが収まっていた場所は、掘りごたつのようにくり抜かれた穴に入っていたのだが、寝かせて置くとオデッセイのPC680が収まるにはサイズが足りないので、ウレタン製のブロックを使って底上げし、LB680を寝かせて置く。LB680は外寸が185×80×170mm(幅×奥行×高さ)で、寝かせて設置すればその高さはわずか80mm。これなら底上げしても従来より高さは低くなる。その分ステーの長さを調整する必要があったが、その辺りはさすがプロ。あっという間に調整し装着完了。

シートを外すとその下にバッテリーが見える。ちなみにイセッタはフロントがドアになっているので、これはドアを開けた状態これまでのバッテリーはフロアの“掘りごたつ”状になった場所に装着されている。上面の端子部がシートのフレームに触れ、ショートしたのだ“掘りごたつ”にLB680を寝かせようと思ったが、サイズが大きすぎた。もう1サイズ小さいLB545なら入ったかもしれない
ということで、適当なサイズのブロックで底上げすることに。のりたまこさん、自ら採寸しホームセンターへ走る硬質なウレタン製のブロックで底上げしたブロックの上に厚手のゴムシートを敷き、その上にバッテリーを横たえる
ステーの長さを調整して締め込めば、固定は完了上げ底してもこれまでより背が低く、バッテリー端子も横を向く形となるので、ショートの心配はなさそうだちなみにバッテリー端子はM6タイプを使用している

 念のため記しておくが、通常の液式バッテリーは、絶対に横倒ししてはいけない。液が漏れる上に空気穴がふさがって破裂する可能性もある。立てて置いたとしても、通常はキャビンには置くべきではない。充電の際にガスが発生するのだが、このガスが可燃性なので、気密性の高いキャビンやトランクには置くべきではないのだ。オデッセイは通常はガスが抜けないようになっているので、車内で使用しても問題ないのだ。

 さて、バッテリーの装着は済んだが、マイナス側の電源ケーブルの長さが足りず、追加することに。さらにアースも追加することにした。本来マイナスは黒いケーブルを使うのだが、ちょうど在庫がなかったので赤いケーブルを使用していた。この辺りはご愛敬ということで。

電源ケーブルの端子もすっかりダメになっていたので、これを機に端子を交換巨大な圧着工具で端子を圧着するマイナス側の電源ケーブルは長さが不足していたため、延長した。ついでにボディーにもアースを落とした

 また、オデッセイは15V以上で充電すると、バッテリーが極端に熱くなるので、注意が必要。特に件のイセッタはオルタネーターではなくダイナモで発電している。ダイナモは回転が上がれば上がるほど電圧が上がるので、レギュレーターを使ってちょうどよいところに調整する必要がある。ただし、低くしすぎると低回転では充電しなくなるので、その辺りのさじ加減はプロにお願いした。

ダイナモからの発電量を調整するレギュレーターエンジンを回してテスターで電圧を測定するこういった作業はプロにお任せする

 さらに、今回はオデッセイ専用の充電器も用意した。オデッセイを取り扱うプロジェクションによれば、バッテリーというのは、普段満充電になることは少ないらしく、定期的に充電することで、より長持ちするのだと言う。「オデッセイ メンテナンス充電器 12-3T」(1万6800円)で、バッテリーに接続すると状態を自動で判断し、バッテリー上がり状態ならリカバリー充電を、通常の状態ならメンテナンス充電を、さらに満充電になったら、その状態を維持するフロート充電を自動で行ってくれる。ガレージに100V電源があるならば、最長2カ月間つなぎっぱなしにすることができ、いつでも満充電の状態から出発することができる訳だ。

オデッセイ メンテナンス充電器。付属のコネクター端子をバッテリーにつないでおけば、カプラーONで充電することができるシートを装着した状態。このままでも問題なく充電することができる充電器にはワニ口クリップも付属するので、ほかの車のバッテリーを充電することもできる

 無事装着完了しエンジンを始動。オーナー曰く、いつもより元気に始動したとのこと。イセッタには電圧計を装備してあるのだが、走行中も15Vを超えることはないとのことで、充電の問題もなさそうだ。しばらくして再び様子を聞いてみたところ、今までのようにエンジン始動の度に不安になることがなくなり、夜間のヘッドライトもとても明るくなったと言う。話を聞く限り、ダイナモの発電力があまり大きくなく、バッテリーの性能の差が出ているようだ。その分バッテリーにとっては過酷な環境ということになるが、定期的にメンテナンス充電をすれば、問題はないだろう。

バッテリー交換後はライトが明るくなったと言う。写真は交換後数日経ってのものだが、その後も元気にほぼ毎日走り回っているようだ電圧計で過電圧になっていないかもチェック。写真はアイドリング中のもので、走行時も12~14Vの間で安定しているとのこと
手にピッタリフィットするニトリルグローブ。従来のものよりも強度をアップしたのが「Black Lightningニトリルグローブ」だ

 なお、現在プロジェクションでは、「ODYSSEYリプレイスサポートキャンペーン」を実施しており、2009年12月31日までにオデッセイバッテリーを買うと、5ZIGENインターナショナルが取り扱う「Black Lightningニトリルグローブ」(1組)をもれなくプレゼントしている。


(瀬戸 学)
2009年 12月 16日