ホンダ、SUPER GTニューマシン「HSV-010 GT」披露
目指したのはNSXを超える究極のコーナーリングマシン

「HSV-010 GT」とプロジェクトリーダーの瀧敬之介氏

2010年1月18日開催



 本田技研工業は1月18日、2010年シーズンのSUPER GTシリーズGT500クラスに参戦する「HSV-010 GT」の発表会を鈴鹿サーキットにて開催した。ベース車両は2007年にデトロイトモーターショーで発表されたアキュラアドバンスドスポーツカーコンセプトで、現段階では市販されていない車両となっている。13年間でポールポジション50回、優勝37回を記録したNSXの跡を継ぐ期待のマシンが正式公開された。

最初に挨拶に立った本田技研工業モータースポーツ部の村松慶太部長

 まず最初に挨拶に立った、本田技研工業モータースポーツ部の村松慶太部長は、「ホンダは昨年で、レースに参戦して50年。半世紀に渡り求めてきたのは“速さ”でした。HSV-010 GTのVはベロシティ、つまり速さを追求したマシンとなっています。昨年の最終戦に続き、今年の開幕戦も勝利を目指したい。これによりレース界のさらなる活性化に寄与し、モータースポーツ活動を通してお客様に夢と感動を提供していきたい」と意気込みを語った。

GTアソシエイション代表取締役の板東正明氏

 続いて壇上に立ったGTアソシエイションの板東正明代表取締役は、「HSV-010 GTの参戦は大変に喜ばしい。厳しい環境の中、自動車産業にとっても明るい話題となることは間違いない。レースはホンダのDNA、HSV-010 GTがサーキットで大暴れすることは言うまでもないと思っています」と語り「一部の報道では相当ポテンシャルの高い車両と聞いています。お客さんからブッチ切りでつまらないレースだったと言われないように、少しは手加減してほしい」と会場を笑わせた。
 続いてニューマシンを覆っていたベールが取られ、ついにHSV-010 GTが正式に公開された。隣には搭載するエンジン「HR10EG」も置かれていた。

ついにHSV-010 GTが正式公開された

 マシンの詳細については、本田技術研究所四輪R&DセンターのGTプロジェクト プロジェクトリーダー 瀧敬之介氏が登壇し、スクリーンを使用して詳細が語られた。今回はその資料の画像をすべて掲載しよう。

技術的解説は本田技術研究所GTプロジェクト プロジェクトリーダー 瀧敬之介氏が行ったNSXで培った13年間の技術で速い車を作りたいという気持ちでやってきた。HSV-010 GTのコンセプトは「扱い易い高性能を技術で創る」目指したのはNSXを超える究極のコーナーリングマシン。ベロシティはスピードとは違い方向性のある速度
すでに扱いやすさは確認できたと言う。トリッキーなNSXを乗りこなしてきたドライバーには武器になるだろう全高はレギュレーションにあうようフラットフロアから1100mm以上となっている。エンジンはフォーミュラ・ニッポンのエンジンをGT用に改良した。出力の500馬力はほぼ達成できている。ギアボックスはRICARDO製の6速、パドルシフトはZYTEK製HSV-010 GTはすべてレギュレーションに準拠、リアにボリューム感のあるデザインになっている
基本構造はNSXを継承。ミッドシップ(MR)からFRになったので、プロペラシャフトは実績のあるCTG製のカーボンコンポジットを選択した。メインフレームと排気系は一番こだわった部分となっているエンジンは回転数制限のフォーミュラ・ニッポンに対し、リストリクター(流量制限器)により吸気制限のかかるGT用に最適化。今年から義務づけとなるキャタライザー(触媒)は昨年フォーミュラ・ニッポンで使われたもの。外観の特徴となっているリアウィングステーには追突された時に排気系を保護する狙いもある素直な特性のフレームはセッティングの幅が広がる。ボディーのねじれ角が少ない高剛性なボディーと部分的に弱いところのない綺麗にねじれるボディーを作り上げた
2007年のボディーでは、カーボンによる剛性アップでサイドインパクトバーの廃止により軽量化。NSXの集大成ボディーの思想を継承、進化させた。フロントウィンドーV字パイプは、横転時の安全性の向上、素直な特性のフレーム実現に効果がある。視界を遮るが、ドライバー側は事前のテストで22mm径まで視界を確保できるとしたのに対し18mmで性能を満足できたHSV-010 GTは音にこだわった。開発途中で馬力が出ても音がよくないとNGとした。NSXのV6エンジンに対し、V8エンジンなのでさらに官能的な音を実現。触媒は1000℃を超えるので、エンジンから最も遠いテールエンドへの配置となったHSV-010 GTは3月の開幕戦からGT500に参戦
HSV-010 GTとHR10EG正面中央はラジエター、中央上部はエアインテーク、左右はブレーキ冷却ダクトにつながる
ボンネットが低く見えるのはリアが高さのあるデザインだからだと言うボリューム感があるリアデザインフェンダー、ボンネットまわりは威圧感があるデザイン
前後輪ともサイズはNSXと同じLEDは車幅灯、下の角張ったライトはウィンカー
素直なねじれ特性を実現したV字パイプ。視界の妨げにならないようドライバーと相談しつつ位置を決めたリア視界はビデオシステムによって確保。ダクトは後輪のブレーキ冷却用だリアバンパーに繋がる形の特徴的なリアウィングのステー
エンジンはフォーミュラ・ニッポンのエンジンをGTに最適化したもの。SUPER GTでは吸気制限により高回転が狙えないので、トルクを重視したと言う
関係者と記念撮影

 期待の高まるHSV-010 GTで参戦する5チームも紹介された。ARTAチーム(ゼッケン8)は伊沢拓也選手に代わり井出有治選手がラルフ・ファーマン選手とペアを組む。リアルレーシングチーム(ゼッケン17)は昨年と同じ金石年弘選手と塚越広大選手。童夢レーシングチーム(ゼッケン18)は道上龍選手に代わりロイック・デュバル選手が小暮卓史選手とペアを組み、昨シーズンのフォーミュラ・ニッポンのチームメイト同士の組合せとなる。ナカジマレーシングチーム(ゼッケン32)は道上龍選手と中山友貴選手のペア。チームとしては初の日本人同士の組合せだ。チームクニミツ(ゼッケン100)はエースに昇格した伊沢拓也選手と新人の山本尚貴選手と言う若手コンビで戦うことになる。

HSV-010 GTで参戦する5チームの監督、ドライバーが集合したARTA、右から鈴木亜久里監督、ラルフ・ファーマン選手、井出有治選手リアルレーシング、右から金石勝智監督、金石年弘選手、塚越広大選手
童夢、右から中村卓哉監督、小暮卓史選手、ロイック・デュバル選手ナカジマレーシング、右から中嶋悟監督、道上龍選手、中山友貴選手チームクニミツ、右から高橋国光監督、伊沢拓也選手、山本尚貴選手

 HSV-010 GTは鈴鹿サーキットで3月6日より行われる「第22回 2010モータースポーツファン感謝デー」でデモ走行を予定している。デビュー戦となるSUPER GT第1戦「SUZUKA GT 300km」は3月20日、21日に鈴鹿サーキットで開催される。

(奥川浩彦)
2010年 1月 19日