初開催のEV・ハイブリッド車の技術展「EV JAPAN」開幕
モンスター田嶋のEVスポーツ+風力発電機などに注目

2010年1月20日~22日
東京ビッグサイト 西ホール
入場料5000円(事前登録で無料)



 「第2回国際カーエレクトロニクス技術展」(カーエレJAPAN)と「第1回EV・HEV駆動システム技術展」(EV JAPAN)が1月20日、東京ビッグサイトで開幕した。会期は1月22日まで。

 カーエレJAPANは2009年に初開催された、文字どおりカーエレクトロニクスに関する展示会。EV JAPANはカーエレJAPANから派生した展示会で、電気自動車やハイブリッド車の電動パワートレーンに焦点を当てた展示会だ。会場は西ホールに同居しており、どちらの展示会も同じチケットで入場できるため、1つの同じ展示会と見ることもできる。

 どちらもメーカーなどの開発者やマーケティング担当者向けの展示会で、半導体製品や樹脂成形品、計測機器やテスト機器といった製品について商談する場であり、直接エンドユーザーに向けた製品はほぼない。

 しかし、電動車やカーエレクトロニクスのトレンドを押さえられるという点で、いくつかはエンドユーザーにも興味深い展示もある。ここでは写真を中心に、そうした展示を紹介する。

電動スポーツカーを発売したモンスター田嶋、風力発電機も
 会場の隅ながら多くの人を集めていた電気自動車の特別展示コーナー。その中で最も注目を浴びていたのが、あのモンスター田嶋(田嶋伸博氏)のタジマ・モーター・コーポレーションが1月15日に発売した小型電動スポーツカー「EV MINI SPORT」。先週末に開催された東京オートサロンでも大人気だったと言う。

 このEV MINI SPORT、1人乗りのフォーミュラカー風だが、ちゃんとナンバーを取って公道を走行できる。バッテリーはリチウムポリマーと鉛を選べるほか搭載量や搭載位置も選択できる。207万9000円のベースモデルに価格を上乗せしていくことで、ボディーカラーやカーボンパーツなどのオプションを装着できる。

 タジマ・モーター・コーポレーションは、EV MINI SPORTとともに小型の風力発電機も展示。一見、EVであることをアピールするための飾りかと思うが、実はこれも今年中に発売を予定していると言う。

 風力発電は太陽電池よりもコスト的には厳しいが、24時間電力を得られるメリットがあると言う。会場に展示してるのは最高出力150Wのモデル。この出力では家庭の電源としては能力不足だが、教育用を想定しており、家庭などでも実用になる出力3kW、5kWのモデルも計画していると言う。

 タジマ・モーター・コーポレーションが風力発電機を開発しているのは、メカや空力、制御などの点でクルマの開発リソースをそのまま応用できるからで、同社の本業だったラリーなどに携わっていた人材が、開発しているそうだ。

タジマ・モーター・コーポレーションのEV MINI SPORTS。よく走りそうなクルマにも期待できるが、ブース奥に置かれた垂直羽を持つ風車にも注目

 

電気自動車コーナーにはi-MiEV、プラグイン・ステラといった常連とともに、燃料電池車のシボレー・エクイノックス(左)や、タケオカ自動車工芸による1人乗り電動ミニカーも展示。タケオカ自動車工芸の試作車は、リチウムイオンバッテリーと鉛バッテリーを選べる

 

北陸電力のブースにあった低床電動バス。日野ポンチョをベースとし、富山市内で2月から実証運行試験を行う。ブースにはこのバスのための急速充電器なども展示されていた

設置コスト低減にも力が入る充電スタンド
 電気自動車に欠かせないインフラの一端を担う充電スタンドもいくつかのメーカーが展示。

 ハセテックや高岳製作所は、従来より出力を落とした“中速”充電スタンドを展示。最大出力50kWで15分程度で満充電にできる急速充電スタンドは設置面積をとり、コストもかかる。充電時間が30分~1時間に伸びるものの、12kW~20kWに出力を落として小型化し、コストを下げたのが中速充電スタンドだ。

高岳製作所の充電スタンド。左が従来からある急速充電スタンド、中がコストを下げたモデル。新しいモデルは非接触ICカード(Suicaなど)で課金やユーザー管理ができるオプションを備える
ハセテックのブース。写真左の左が急速充電器、右が中速充電器。中速充電器はハセテックの用語だ。写真中と右は、マンションの駐車場などに設置する通常充電スタンド。メカニカルキーで充電ケーブルを保護できる
関西電力の急速充電スタンド。やはり非接触ICカードに対応し、カーシェアリングへの展開などを考慮している
アルバックの急速充電器。太陽光発電などとのセットでの展開を予定

カーエレJAPANエリア
 SMKは「フォースフィードバックタッチパネル」を展示。タッチパネルは、パネル上に表示されたボタンを押しても、ちゃんと押せたかどうかがよく分からず、自動車を運転しながらの操作には向かない。フォースフィードバックタッチパネルはパネル表面を振動させて、ボタンを押した感覚を指先に伝えるもので、ハーツ・レンタカーのカーナビ「ネバーロスト」で採用されている。

 同社はこれを一歩推し進めて、2段階入力フォースフィードバックタッチパネルを開発。パネル上のどこかを長押しすると、メニューが表示され、違う画面に遷移でき、操作の幅を増やせる。メニューや遷移先では振動のさせ方を変えて、指先の感覚だけで今どんな操作をしているのかが分かるようになっている。

フォースフィードバックタッチパネルを採用しているハーツの「ネバーロスト」カーナビ
2段階フォースフィードバックタッチパネルを使えば、違う画面にスムーズに遷移できる

 

住友ベークライトの「ルミキング サンルーフ」は、透明な樹脂製サンルーフのエッジからLED光を当て、サンルーフ全体を車室照明にできる
自動車に使われている様々な素材を見せる東レの展示
騒音が少なく、組み付け調整が容易なうえに軽い樹脂製ギアは、ステアリング機構のラックや、エンジンのバランスシャフトギア、補機ギアに使われている住友ベークライトの樹脂製ターボチャージャー コンプレッサーハウジング。軽量化による燃費向上と、コストダウンが可能
安川電機の電動車向けモータードライブシステム。自動車駆動用モーター1方向に回ることが多いので、磁石の配置を特定の回転方向に最適化し、効率を上げた新神戸電機のアイドルストップ用バッテリー。高密度活物質で寿命を200%以上伸ばし、新添加剤で性能も50%アップした
新神戸電機の産業用リチウムイオン電池。EV用電池をベースに開発された

(編集部:田中真一郎)
2010年 1月 21日