「地球温暖化対策基本法案」に対し9団体が提言
国民への負担や雇用、経済への影響が不明瞭

9団体の代表が集まった共同記者会見

2010年2月26日開催



 2020年までに1990年比で温室効果ガスの排出量を25%削減するなどの中期目標を織り込んだ「地球温暖化対策基本法案」が今国会に提出される予定とされるが、これに対し、石油連盟、セメント協会、電気事業連合会、電子情報技術産業協会、日本化学工業協会、日本ガス協会、日本自動車工業会、日本製紙連合会、日本鉄鋼連盟の9団体は、「地球温暖化対策基本法案に関する提言」として、2月26日に共同記者会見を行った。

石油連盟 政策委員会 副委員長 比留間孝壽氏セメント協会 地球温暖化対策特別委員会委員長 福島秀男氏電気事業連合会 専務理事 久米雄二氏
電子情報技術産業協会 理事・環境部長 湛久徳氏日本化学工業協会 常務理事 中田三郎氏日本ガス協会 常務理事 久德博文氏
日本自動車工業会 副会長 名尾良泰氏日本製紙連合会 常務理事 二瓶啓氏日本鉄鋼連盟 環境・エネルギー政策委員長 進藤孝生氏

 9団体を代表して、日本鉄鋼連盟 環境・エネルギー政策委員長の進藤孝生氏が提言を行った。進藤氏によれば、「地球温暖化対策は、将来にわたり国の経済や雇用に大きな影響を及ぼす問題」と言い、にもかかわらず、温室効果ガス25%削減という中期目標が、どれだけ国民への負担や雇用、経済に影響を与えるのか、閣僚委員会の下に設置された「タスクフォース」による分析結果が公開されていないとした。また、基本法案に対するパブリックコメントに対しても明確な解答がなされていないと言い、「そのような状態で基本法案が国会に提出されるのは民主的プロセスとは言えず極めて遺憾」とした。

 さらに、国際的な公平性が確保されない上で「ただ高い目標を掲げることが温暖化の解決には繋がらない」と述べ、「たとえ前提付きであっても、国民の理解と納得を得られない状況で、具体的な中期目標数値を法案に入れることは反対せざるを得ない」とした。

 このような前提がはっきりしない状況下で、中期目標の達成手段である「国内排出量取引制度」や「地球温暖化対策税」「固定価格買取制度」などの施策が、その効果や国民負担の検証もないままに法案に位置づけられることにも反対だとした。

 産業界はその決意として、今後も最先端の技術を導入し、産業分野での世界最高水準のエネルギー効率の向上を図るとともに、民生、業務、運輸分野においてもCO2削減に積極的に貢献するとした。また鳩山イニシアティブに沿い、国際ルールに基づいて、省エネ技術を世界へ普及し、地球規模での温暖化対策にも積極的に取り組む所存だと述べた。その上で、政府への提言として、「我々産業界の技術力を活用し、地球規模での温暖化対策をリードし、我が国が技術立国として発展できるような、環境と経済を両立できる政策を実現できるよう願う」と述べた。

 各団体の代表者らもそれぞれの言葉で政府に対し、今の案では業界への負担が大きすぎ、国内産業の体力と競争力がなくなると述べ、産業界が元気になることで、省エネ技術も発展し、国際競争力を持った省エネの先進国になりえるとした。

 自動車産業を代表する自工会の副会長 名尾良泰氏は、環境大臣の試案に販売台数におけるシェアをハイブリッドカーで約50%、電気自動車で約7%にすると記されていることを挙げ、「実際に50%のシェアを実現するには、工場などの設備投資も必要で、その試算は前政府が出したもので12兆円になる」とした。一方「世界的に見れば乗用車でのハイブリッドカーの割合は、アメリカで4%、EUで1%、今後急成長が見込まれる中国やインドでは、むしろ安いガソリン車の需要が予想される」と言い、「これだけの投資をして売れなければ最悪の場合倒産の可能性もある。買うのはお客様なのであって、本当に実現可能な政策なのかをきちんと議論してもらいたい」と述べた。

(瀬戸 学)
2010年 2月 27日