タイムアタックイベント「DUNLOP DIREZZA CHALLENGE 2010」リポート
サーキットレッスンも前日開催。第2戦は1/100秒台の争いに

午後は雨の中での開催となった「DUNLOP DIREZZA CHALLENGE 2010 第2戦」

2010年5月22日、23日開催
日光サーキット



 ダンロップ(住友ゴム工業)が、ユーザー向けのイベントとして開催しているのが「DUNLOP DIREZZA CHALLENGE(ダンロップ ディレッツァチャレンジ)」(以下、ディレチャレ)。イベント名から分かるように、ダンロップのスポーツタイヤ「DIREZZA」ユーザー向けのイベントで、誰もが参加しやすいようタイムアタックイベントとなっている。

 このディレチャレは全国4エリアで開催。クラスも排気量や駆動方式などにより、4クラスに分けられ、各試合のクラス上位3名が決勝戦への出場権を得ることができるというもの。

DUNLOP DIREZZA CHALLENGE 2010 スケジュール

 日付サーキット名開催地
開幕戦4月18日美浜サーキット愛知県
第2戦5月23日日光サーキット栃木県
第3戦9月19日本庄サーキット埼玉県
第4戦10月17日タカスサーキット福井県
決勝戦11月23日スパ西浦モーターパーク愛知県

 Car Watchでは、5月23日に栃木県の日光サーキットで開催されたディレチャレの第2戦と、その前日にサーキット初心者向けに行われた「ダンロップ・サーキット・レッスン」を取材してきたので、ここにお届けする。

初心者から上級者まで参加していたダンロップ・サーキット・レッスン
 ダンロップ・サーキット・レッスンは、サーキット初心者や自分のスキルを高めたい人向けに開催されているイベントで、2010年は第2戦の前日と、第4戦の前日にディレチャレが開催されるサーキットを使って行われる。

日光サーキット入り口日光サーキットのコース図。逆コの字状のコースに2つのS字コーナーが組み合わされた、高速タイプのサーキット日光サーキットのピットエリア。中央部は屋根付きとなっている
サーキットレッスンのタイムスケジュール。午前中のみとなっているが、走行時間は多く取られており、初心者向けとしては十分以上の内容ピットエリアに置かれていた、DIREZZAのデモカー。手前はCR-Z、奥はシビック TypeRがベース車CR-Zが装着するタイヤは、もちろんダンロップのDIREZZA SPORT Z1

 日光サーキットでのレッスン内容は、フリー走行15分、レッスン走行1、2をそれぞれ20分、レッスン走行3を10分×2となっていて、ブレーキングをしながらのコーナーへの進入、S字コーナーの走行などを中心にレッスンが行われていた。レッスンの講師は、自動車雑誌などで活躍しており、その走りに関する実戦的な記事が人気の高い大井貴之氏と、レーシングドライバーの青木孝行選手、菊池靖選手の3人。

 3人の講師が無線機を使って、参加者の走りをチェックし指導を行っていたほか、参加者のクルマを使って同乗走行を行い、具体的なアドバイスを行っていた。

フリー走行開始当初はデモカーが先導して慣熟走行。その後、デモカーはコースを外れ参加者がタイムを出していくフリー走行中に無線機でアドバイスを行う大井氏フリー走行後、タイムによってクラス分けが行われた。参加クラスが一目で分かるよう、ゼッケン部分に色の異なるテープを貼っていく
ブレーキングの練習のため、8コーナーから9コーナーにかけて並ぶ参加者。1台ずつ走って、プロドライバーから走行アドバイスを受ける1コーナーから2コーナーへと向かう参加者の走行を見守り、無線機でアドバイスをする青木選手
長いストレートを終えての1コーナーから2コーナーへの進入は日光サーキットの攻略ポイント。2コーナーに設けられたパイロンで止まることを何度も繰り返して、その感覚を掴んでいくブレーキング練習のためのパイロンを除去し、コースを周回する練習に移る3コーナーから4コーナーへかけてのS字コーナーをチェックして、参加者へアドバイスを伝える菊池選手
S字コーナーを走行する参加車両。ここも日光サーキットの攻略ポイントのようだ
12時からは同乗走行の時間。3選手は10分間にそれぞれ2台のクルマを担当する同乗走行時の記念写真に、にっこりほほ笑む大井氏多くのクルマに同乗走行を行うため、自分の乗るクルマのゼッケンを確認する菊池選手。「えーと、オレが次に乗るクルマはどれだっけ?」
菊池選手(写真左)、青木選手(写真中)も同乗走行へと向かう同乗走行時間は、レッスン3の走行時間を使って行われれる。レッスン3は、最後の走行時間となるため、各参加者のペースは上がっていた
勢いあまってスピンしてしまう参加者も。後で話を聞いたところ、大井選手のアドバイスにより、レッスン3では姿勢制御装置のVDCーR(ビークルダイナミクスコントロール)をOFFにしたとのこと。これによりGT-Rの動きの理解が進んだと言う自分が走行しない回では、参加者は積極的に講師に質問。講師もその質問に丁寧に答えていた
人の走りを見ながら、自分の走りのアドバイスを受けるのは効果的

 このサーキットレッスンは、翌日のディレチャレと同じサーキットを使い、前日に開催されるということで、初心者はもちろん、ディレチャレで上位入賞を狙う人まで参加。参加者のレベルに開きもあるようで、フリー走行時のタイムにより3つのクラスに分けられていた。

 広島県呉市から参加していた、内藤源氏さんも翌日のディレチャレを見据えて参加していた1人。内藤氏は4月18日に行われた開幕戦でクラス4位となった強者だが、日光サーキットは初めてとなるため、このサーキットレッスンに参加。コースの看板の見え方など、サーキット内の具体的な目標物を元にした、大井氏のアドバイスは大変役に立ったと言う。実際、内藤氏は初めてのサーキットにもかかわらず、40秒を切る人が少ない中で、39秒台半ばのタイムを叩き出し、レッスンが終わる頃には39秒台前半をうかがう勢いだった。

広島県で自動車販売業を営む内藤氏。愛車である「ナイトー自販KYBランサー/CT9A」をキャリアカーに乗せて参加。日光サーキットは想像より高速タイプのサーキットだったため、サスペンションセッティングの方向性を誤ったと言うボディーにはお好み焼き屋さんのステッカーも貼られていたリアサイドウインドーに貼ってあった、実車ベースのステッカー。実車写真を送ると、オリジナルステッカーを作ってくれるサービスがネットにはあるとのこと

 密度の濃いサーキットレッスンは13時30分で終了。それ以降は走行券を購入してのスポーツ走行時間にあてられ、レッスンのおさらいをする人、翌日のディレチャレに向けて特訓を積む人などが見られた。

サーキットレッスン総評を行う大井氏。メリハリをつけたタイムアタックをすることなどをアドバイスダンロップタイヤ営業本部の宮川義宏氏は、今後もこのようなレッスン企画を考えているので期待していてほしいと結んだ
青木選手(写真左)と菊池選手(写真右)。翌日のディレチャレの天候は雨が予想されることから、レッスン後のスポーツ走行においてサーキットのどこにタイヤラバーがあるか確認しておくとよいと言う。これはラバーがあるところでは、雨だと滑りやすくなるため

1本目はドライ、2本目はウェットになったDUNLOP DIREZZA CHALLENGE 第2戦
 5月23日に行われたDIREZZA CHALLENGE 第2戦。当日の天気予報は午後から雨となっており、空は午前中から怪しい雲行き。ディレチャレは、10分の練習走行を1本行い、その後15分のタイムアタックをクラスごとに2本行って、その合計タイムで順位を競う。

 参加者が多かったため、各クラスを2つに分けてタイムアタックが行われた。1本目のタイムアタックは10時20分~12時25分まで、2本目のタイムアタックが13時15分~15時15分まで行われることから、雨の降ってくるタイミングが勝敗を分けることが予想された。

 ディレチャレの受付をすませた参加者は、主催者から渡された参加キットに入っているゼッケンをボディーに貼っていく。同時に主催者側は車検を行い、タイヤが参加規定にあっているか、触媒は取り付けられているかなどをチェックしていた。

朝早くからディレチャレの参加者でピットエリアが埋まっていく
ボディーにゼッケンを貼る参加者タイム計測のためのトランスポンダーは、屋根上に取り付ける参加者が多かったフロントウインドーには「DIREZZA」ステッカーを貼る
参加可能なタイヤは、ダンロップブランドおよびファルケンブランドのタイヤ(Sタイヤは除く)。しかしながら、ほとんどの参加者はDIREZZA SPORT Z1を履く。規定にあっていたら、車検スタッフが「DZC」と書かれたスタンプでマーキングこれは触媒が取り付けられているかどうか確認しているところ。これも重要な車検項目

 競技委員長は、サーキットレッスンでも講師を務めた大井氏。開会の挨拶で大井氏は、タイムアタック時の注意として、「タイムアタック時はヘッドライトを点灯すること。後ろから速いクルマが来て譲るときはウインカーを出すこと」を挙げ、譲るときは明確に譲ることをアドバイスしていた。

 日光サーキットはミニサーキットのため、コーナーで譲るのは難しく、ストレート部分で譲るしかない。コースレイアウトの関係で、右に譲ったり、左に譲ったりする必要があるため、譲る方向を明確にする必要がある。ハザードでは、ゆっくり走っていることは分かるが、譲る方向が分からず事故につながる可能性があり、「必ずウインカーを使ってほしい」と強調していた。

開会の挨拶を行う競技委員長の大井氏。日光サーキットでの追い越しに関する説明も行っていたゲストドライバーとして、青木選手と菊池選手も参加。このディレチャレでも抽選でプロドライバーによる同乗走行が行われた
ディレチャレのスケジュール。雨がどの時点から降り始めるのか、心配する参加者が多かった同乗走行はフリー走行中に行われた。写真は菊池選手会場にはDIREZZA SPORT Z1などダンロップのタイヤが展示されていた

 10時30分、曇天の中フリー走行を終えた各車のタイムアタックが始まった。タイムアタック走行になると、やや無理をしつつの走行となるためか、時折スピンしてしまうクルマも出る。コースからはみ出してしまい、動けなくなるクルマが出るとタイムアタックを中断して回収。タイムアタックの持ち時間は同様とするため、その度にスケジュールがずれていく。ただ、午前のタイムアタックでは、軽く雨が降ったものの、大きな影響は出なかったようで、全車順調にタイムアタックを終えていた。

 雨が本格的に降り始めたのは、昼食時間をはさんで行われた午後のタイムアタック。時折強い雨の降る中、参加者は自分の持てるテクニックを使って15分のタイムアタックを行っていた。

 ドライ路面の午前のタイムアタックでは、39秒台後半から40秒台前半のタイムが出ていたものの、午後のウエット路面のタイムアタックでは、45秒台以降のタイムとなり、各参加者は苦労していたようだ。

タイムアタックを行う各車ヘッドライトを点灯したらタイムアタック中
残り時間が2分から1分の間は、コントロールポストから“フライングD”と呼ばれるダンロップのマークが描かれたボードが掲示されるコースをはみ出すクルマもあり、オイルがコースに出てしまうことも。その場合はスタッフがコースに出て、コース整備を行うチェッカーフラッグが出されて、午前のタイムアタックが終了した
タイムアタックの2本目は雨となった。MR2は駆動輪のトラクションに優れるためか、雨のタイムアタックで好タイムを出していたFR車はマシンコントロールに苦労しながら、タイムを出していく

 総合結果ではドライでよいタイムを出しても、ウェットでのタイムがあまりよくなかったために優勝できなかったり、またその逆に、ドライのタイムがよくなくてもウェットで挽回をして上位に食い込んだりといったドラマチックな展開となった。

 クラスによっては、1位と2位のタイム差が1/100秒台となるものもあり、表彰式では参加者から「エアコンの調子がよくなかったので前があまり見えなかった(から雨でのタイムが落ちた)」「僕のはエアコンを装着していたので勝てた」など、さまざまなコメントが聞かれた。ウェット路面への対策が結果に影響していたようだった。

 表彰式の総評において、競技委員長の大井氏は「みなさんのレベルが高くてビックリした。結果として1/100秒台のバトルとなるクラスもあり、ドライ、ウェット両面でDIREZZAタイヤのよさを実証できたと思う」と述べ、広島や名古屋など天候の悪化している西から来た参加者も多かったことから、帰り道に気をつけてほしいと結んだ。

総評を行う菊池選手。参加者のレベルが本当に高かったとコメント青木選手は、「雨が降ってきてドキドキしながら見ていた。難しいコンディションをうまくマネジメントできていた」と語った大井氏は、徐々に悪化しつつある天候に触れ、参加者の帰りを気遣っていた
ディレチャレの後援を行うダンロップの宮川氏は、ドライからウェットへと条件が変化する中でタイヤの性能を引き出してくれた参加者へ謝辞を述べた1位~6位の入賞者にはトロフィーや副賞など、さまざまな賞品が贈られた参加者全員に配られたUSBメモリー。この中にはプロのカメラマンによって当日撮影された、参加者のそれぞれの走行シーンが記録されている。参加者にとって何よりの思い出になるだろう

 第2戦の結果速報は、「DUNLOP DIREZZA CHALLENGE 2010」のWebサイトにアップされており、タイムや結果に興味のある方はそちらを参照してほしい。また、第3戦、第4戦の参加申込みも同Webサイトで受け付けている。すでにキャンセル待ちとなっているクラスもあるが、サーキットのタイムアタックイベントに参加することで、自分の現在の実力が全国的にどのレベルにあるのか知ることができる。サーキットを走行したことがないという人は、10月16日に福井県のタカスサーキットで行われるサーキットレッスンに参加するのがよいだろう。サーキットレッスンの空きは、まだあるようだ。

(編集部:谷川 潔)
2010年 5月 26日