フェラーリ、「458イタリア」「599GTO」を日本初披露 富士スピードウェイで開催した「フェラーリ・フェスティバル・ジャパン2010」で発表 |
フェラーリ・アジアパシフィック/フェラーリジャパン プレジデント&CEOのエドウィン・フェネック氏(左)とフェラーリS.p.A.コマーシャル&マーケティングディレクターのエンリコ・ガリエラ氏(右) |
2009年5月29日発表
フェラーリ・フェスティバル・ジャパン2010では2001年モデルのF1マシンがデモ走行を行った |
フェラーリ・ジャパンは、5月29日、30日に「フェラーリ・フェスティバル・ジャパン2010」を富士スピードウェイで開催した。そのなかで、かねてから予告されていたV8ミッドシップ「458 イタリア」「599GTO(グラン・ツーリスモ・オモロガータ)」の記者発表会を開催した。日本における披露はこれが初。
フェラーリ・フェスティバル・ジャパンは、2009年からフェラーリ・ジャパンが主催しているフェラーリオーナー向けのイベントで、フェラーリ全車種を対象としたフリーランのほか、348、355、336、430を対象にしたエキシビションレース、F1(2001年モデル)によるデモ走行、クラシック・フェラーリの展示などが行われ、一般来場者を含め、多くの参加者がイベントを満喫した。
今回行われたフェラーリ・フェスティバル・ジャパンのなかでのトピックは、やはり458 イタリア、599GTOの発表だ。発表会にはフェラーリ・アジアパシフィック/フェラーリジャパン プレジデント&CEOのエドウィン・フェネック氏、フェラーリS.p.A.コマーシャル&マーケティングディレクターのエンリコ・ガリエラ氏、フェラーリS.p.A.プロダクトマネージャーのアンドレア・バッシ氏が出席。エドウィン・フェネック氏は「今日は大きなニュースがある」と述べ、アンドレア・バッシ氏が両モデルの概要を説明した。
フェラーリ・アジアパシフィック/フェラーリジャパン プレジデント&CEOのエドウィン・フェネック氏 | フェラーリS.p.A.コマーシャル&マーケティングディレクターのエンリコ・ガリエラ氏 | フェラーリS.p.A.プロダクトマネージャーのアンドレア・バッシ氏が出席。エドウィン・フェネック氏 |
■458 イタリア
458 イタリアの名称は、同社のルカ・ディ・モンテゼーモロ会長が458 イタリアに搭載する技術、創造性、スタイルに敬意を表し、フェラーリの伝統である排気量と気筒数を示すモデル名に祖国イタリアの名前を加えたと言う。
最高出力425kW(570PS)/9000rpm、最大トルク540Nm/6000rpmを発揮する4499ccV型8気筒エンジンを搭載し、これに奇数ギアと偶数ギアを個別に制御する7速デュアルクラッチATを組み合わせる。フェラーリ・カリフォルニアでも採用された7速デュアルクラッチだが、改良を施したことで反応時間はさらに短縮されていると言う。レブリミットが9000rpmに設定されるエンジンは、ロードカーとしては初と言い、およそ8割のトルクを3250rpmから発生させることでピックアップ性を高めている。
パフォーマンスを数値でみると、最高速度は325km/h以上、0-100km/hは3.4秒未満、0-200km/hは10.4秒、0-400mは11.3秒、0-1000mは20.3秒。100km走行に必要な燃料は13.3Lとしている。
458 イタリアのパフォーマンス | CO2排出量は他のモデルと比較してもっとも低い | エンジンスペック |
トルクパワー曲線 | スプリット・インジェクションを採用し、シングル・インジェクションよりも低回転域でのフレキシビリティを確保する | エンジン効率 |
ボディーサイズは4527×1937×1213mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2650mm。シャシーはまったく新しく開発されたもので、従来のアルミニウムボディーに加えて新合金を使用。さらに、航空産業向けに開発された高剛性アルミ成型材や熱成型などの製造工程が取り入れられている。その結果、重量低減に成功したほか、フェラーリ・F430よりもねじれ剛性で15%、ビーム剛性で5%の剛性が高められている。乾燥重量は1380kg。
サスペンションはフロント/リアともに新開発のもので、フロントはダブルウィッシュボーン、リアはマルチリンク式。フェラーリ・599に搭載されていた磁性流体サスペンション・コントロール・ショックアブソーバー・システムを進化させた第2世代のシステムを採用。ダンパー内のピストンロッドブッシュを刷新して、内部摩擦抵抗を従来より35%低減させ、小さな凹凸でのコントロール性と乗り心地を向上していると言う。
ブレーキシステムはブレンボ製(カーボンセラミック・ブレーキ)で、フロント6ピストン/リア4ピストンのアルミ製キャリパーを装備する。ブレーキパッドとディスク間のキャップを最小限に抑えることを目的とした同社独自の技術「プレフィル・ロジック」も進化し、制動距離の短縮にも成功(100~0km/h:32.5m、200~0km/h:128m)したと言う。
ボディーサイズ | フロント/リアサスペンションは新開発 | リアのサスペンション構造はマルチリンク |
エクステリアデザインはピニンファリーナによるもので、ノーズ部にフロントグリルとサイドエアインテークを共有する開口部が設けられ、これはラジエーターの冷却とアンダーボディーに空気を流すためのもの。開口部は小型空力弾性ウイングレットと呼ばれる翼端板を装着し、ダウンフォースを得るとともに速度の上昇に応じて変形し、ラジエーターインテークの開口面積を縮小させることで空気抵抗を減少させる。
エアロダイナミクス | ||
シャシー設計は新開発のアルミ製スペースフレームを採用 | ボディーシェル |
インテリアでは、レースの世界を想起させると言うドライバー志向のコクピットが与えられる。ダッシュボードはレザー張りで、リバース/サブギアボックス・スイッチ/ローンチ・コントロールボタンを備えるセンターコンソールは立体的なアルミ成型とした。また、独特の形状をしたエアコン吹き出し口は、F1マシンのエグゾースト・アウトレットのデザインを模したものだと言う。
458 イタリアには、レーシング・アンド・トラック、エクステリア・アンド・カラー、インテリア・アンド・マテリアル、エクイップメント・アンド・トラベルの4つの主要カスタマイズパッケージのほか、さらにオプションではダイアモンド仕上げの鋳造合金ホイール、カーボンファイバー製の超軽量シートなども用意される。
■599GTO
599GTOは、サーキット専用に開発された実験車両「599XX」をベースにしたモデルで、同社は「フェラーリ史上最速のロードゴーイングカー」と呼ぶ。アンドレア・バッシ氏は「599GTOは高いパフォーマンスと快適性を求めるユーザーの要望に応えたモデル」だと述べる。599GTOの名称はエンジン排気量(5999cc)と「599XX」にちなんだもので、かつての250GTO(1962年)、288GTO(1984年)など、同社にとって特別なモデルにのみ与えてきた「GTO」の呼び名がつけられた。
5999ccV型12気筒エンジンを搭載し、最高出力493kW(670PS)/8250rpm、最大トルク620Nm/6500rpmを発生する。最高速度は335km/h以上で、0-100km/hが3.35秒、0-200km/hが9.8秒というスペックを誇る。燃料消費量は100km走行あたり17.5L。
599GTOのエキゾーストマニホールドは、1シリンダーごとに1つの触媒コンバーターを備える、新開発の6-1集合レイアウトが採用され、規制の厳しい欧州の排出ガス基準のEURO5とLEV2排出ガス基準をクリア。エキゾーストシステムは、ハイドロフォーミング製法と呼ばれる成型工法を用いたことで、パイプの肉薄化と重量削減に成功したと言う。599GTOの開発にあたっては、重量低減が命題だったと言い、最終的に599よりも100kgの軽量化に成功(乾燥重量は1495kg)している。
エクステリアでは、空力性能を高めるべくフロントバンパーのワイド化や、気流の幅を抑える形状をノーズ部に施したほか、大型リアスポイラーなどを採用。左右のフロントホイールの間に設置したスプリッターや、フロントホイール前方のアンダーボディーのフロントセクションおよびリアセクションに設けられたディフューザーにより、高いダウンフォースを得ることに成功したと言う。
インテリアでは、キャビン内でエンジンサウンドを楽しめるよう、インテークノイズをフィルターケースを介してキャビン内部に導くという工夫がなされる。これにより音響レベルは従来よりも8db増加していると言う。
インストゥルメントパネルはタコメーター、スピードメーターのほか、車両パフォーマンスの情報提供を行う「バーチャル・レース・エンジニア」と呼ばれる技術サポートツールが設けられる。状況に合った走行モードを選択できる「レーシング・マネッティーノ」を搭載し、モードは路面が滑りやすい際に使用する「ローグリップ」、グリップ状態が良好な場合に使用する「スポーツ」、サーキット走行に適した「レース」、トラクションコントロールを解除する「CT-OFF」から選べる。
ボディーサイズは4710×1962×1326mm(全長×全幅×全高)で、ホイールベースは2750mm。
458 イタリアは昨年行われたフランクフルトショーで、599GTOは今年4月に開催した北京ショーでそれぞれ初披露したモデルで、いずれも披露した段階で受注を受け付けているが、599GTOは世界限定599台ですでに完売していると言う。
フェラーリ・フェスティバル・ジャパン2010には多くのフェラリスタが集まり、スポーツ走行やエキシビジョンレースを楽しんだ |
サーキット専用モデルの599XX/FXXも走行した |
2001年モデルのF1マシンがデモ走行。ドライバーは桧井保孝選手が務めた |
ピレリブースでは公道走行が可能な新型セミレーシングタイヤ「P ZERO TROFEO(ピー・ゼロ・トロフェオ)」を展示。WRC用タイヤ由来のトレッドデザインを採用し、19インチを中心に展開。そのほかのサイズは今夏発売予定 |
(編集部:小林 隆)
2010年 5月 31日