三菱、ポスト新長期規制に適合したクリーンディーゼル説明会
パジェロに搭載した4M41型クリーンディーゼルエンジンを紹介

クリーンディーゼルエンジンを搭載したパジェロ SUPER EXCEED(ロングボディー)

2010年9月2日開催



 三菱自動車工業は、オールラウンドSUV「パジェロ」を改良し、9月16日に発売する。今回のトピックは、3.2リッターコモンレール式ディーゼルが改良され、ポスト新長期規制に適合するクリーンディーゼルになったこと。これに伴い東京都内にある同社の本社で、クリーンディーゼルの概要説明会が開かれた。

 これまでクリーンディーゼル車は、メルセデス・ベンツの「E 350 BlueTEC」「ML 350 BlueTEC 4MATIC」、日産自動車の「エクストレイル」の3モデルのみだった。パジェロの4M41型ディーゼルエンジンは従来から搭載されてきたモデルで、もともとPM(粒子状物質)排出量はポスト新長期規制値以下だった。今回の改良では吸気系や燃焼室の形状変更などを行い、NOx排出量を低減。これにより、PM、NOxともにポスト新長期規制に対応することに成功した。

 このエンジン改良とともに、トランスミッションの制御最適化、減速エネルギー回生システムの採用などによって、10・15モード燃費は従来よりも0.6km/L改善された10.6km/Lとなった(SUPER EXCEEDのみ0.7km/L改善の10.2km/L)。

 こうした改善により、クリーンディーゼル搭載モデルはエコカー減税(環境対応車普及促進税制)により自動車取得税と自動車重量税が免税になるとともに、クリーンディーゼル自動車導入費補助金(上限額20万円)が受けられる。

 このほか、V型6気筒 SOHC 3.8リッター ガソリンエンジンの燃費向上も図られたほか、走行中にアクセルペダルとブレーキペダルを同時に踏むとブレーキを優先する「ブレーキオーバーライド」制御を全モデルに採用。あわせてHDDカーナビ「MMCS」のミュージックサーバーの容量が2000曲から3000曲となった。

クリーンディーゼルエンジン搭載のパジェロ EXCEED(ロングボディー)。ボディーカラーはブラックマイカとアイガーグレーメタリックの3ウェイ2トーン4M41型クリーンディーゼルエンジン。最高出力140kW(190PS)/3500rpm、最大トルク441Nm(45.0kgm)/2000rpmを発生
SUPER EXCEED、EXCEEDはディスチャージヘッドランプを標準装備SUPER EXCEEDに装着するアルミホイールは18インチ。タイヤサイズは前後とも265/60 R18ブレーキランプはクリアタイプ。装備面では走行中にアクセルペダルとブレーキペダルを同時に踏むとブレーキを優先する「ブレーキオーバーライド」制御を採用
テールゲート右下にはディーゼルエンジン搭載をあらわす「DI-D」のプレートライセンスプレート一体型のスペアタイヤガーニッシュは全グレード標準装備
SUPER EXCEEDのインテリア2眼タイプのメーター。スピードメーターは220km/hまで刻まれているトランスミッションはロングボディーのGR、ショートボディーのVR-Iを除き、全グレードとも5速AT「INVECS-IIスポーツモード5AT」を採用。左のレバーはトランスファーレバーで、後輪駆動の「2H」からローギヤ直結4WDの「4LLc」まで、4パターンからセレクトできる
SUPER EXCEEDは本革シートを標準装備SUPER EXCEEDは7インチワイドディスプレイのHDDカーナビ「MMCS」とロックフォードアコースティックデザイン プレミアムサウンドシステムを標準装備
後席は6:4分割可倒式

RV商品開発プロジェクト プロジェクトマネージャー 中島嘉宏氏

 パジェロの商品説明は、RV商品開発プロジェクト プロジェクトマネージャー 中島嘉宏氏より行われた。

 同社は2009年6月に、低炭素社会の早期実現に向けた中長期的な環境への取り組み「環境ビジョン2020」を公表した。環境ビジョン2020の目標の1つには、走行時のCO2排出量を50%削減(2005年比)することが盛り込まれており、それを実現するために「電気自動車」「プラグインハイブリッド車」「既存エンジンの燃費改良」を柱にさまざまな開発・取り組みが行われている。4M41型クリーンディーゼルエンジンの開発は、「既存エンジンの燃費改良」にあたる。

 中島氏によると、1995年あたりまでパジェロの販売比率はディーゼル車が80%前後を占めていた。これは同排気量のガソリンエンジンと比較して、燃焼効率のよさから15~20%程度燃費に優れていたことや、低回転時から大トルクを発生するエンジン特性がうけたためだと言う。

 しかし、1993年の自動車NOx法を皮切りに1997年に施行された長期規制、2005年の新長期規制といった厳しい規制のほか、ディーゼルエンジンの汚い、臭い、うるさいといったネガティブなイメージ、環境意識の高まりなどによって日本でのディーゼルの需要は激減した。

 一方で、エンジンの各シリンダーに高圧で燃料を供給するコモンレール式燃料噴射システムや、DPF(ディーゼル微粒子除去装置)といった技術の進化により、欧州でCO2排出量が少ないと評価された2009年型ディーゼルエンジンを日本国内でも投入。これを進化させたのが、2011年型となる今回の4M41型クリーンディーゼルエンジンとなる。

 4M41型クリーンディーゼルエンジンの特徴は、ポスト新長期規制に対応しながら、動力性能を向上させ、さらには燃費向上、CO2低減など、相反する要素を両立させた点にあると中島氏は言う。

 性能、燃費、CO2排出量のそれぞれで新長期規制に対応した2010年型ディーゼルエンジンと比較してみると、まず最高出力は12%向上の140kW(190PS)/3500rpm、最大トルクは19%向上の441Nm(45.0kgm)/2000rpmとなる。

 燃費は10・15モード燃費で6%向上の10.6km/L、JC08モード燃費で4%向上の10.6km/Lとなった一方で、CO2排出量を6%削減の247g/km(10・15モード燃費)とし、各項目の性能面を向上させていることを紹介した。

ディーゼルエンジン車の販売推移。年々下降しているのが見てとれる。また、旧型パジェロなど三菱車のディーゼルモデルは現在も20万台以上だと言い、こうしたユーザーに向けてクリーンディーゼルを訴求していく4M41型クリーンディーゼルエンジンの特徴4M41型は厳しい規制のポスト新長期規制に対応した
今回の改良で改善された機能面月販目標台数は150台とし、ディーゼルモデルは55%のシェアを目指す

EV・パワートレイン要素研究部 部長 竹村純氏

 EV・パワートレイン要素研究部 部長 竹村純氏は、4M41型クリーンディーゼルエンジンや欧州向けの乗用車用ディーゼルエンジンについて説明を行った。

 ポスト新長期規制に適用させるべく、4M41型クリーンディーゼルのエンジンは燃焼室形状の変更により圧縮比を従来の17から16に下げたほか、燃料噴射ノズルの噴孔数を6から8に増やすとともに噴孔径の縮小、燃料噴射パターンの最適化などが図られたと言う。

 また、排気系に備えられるNOxトラップ触媒のNOx浄化効率を高めたほか、規制物質のHC(炭化水素)をNOx浄化に有効利用するため、NOxトラップ触媒のほか最後部にHCトラップ機能付きの酸化触媒が新たに設けられている。こうした改良により、NOxはポスト新長期規制値の0.08g/km以下に抑えられたと言う。

 そのほか、燃費効率やエンジン出力性能の向上などを含め、「走りに関しても、車両性能に関しても、十分満足していただける仕様になった」と自信を覗かせた。

NOxトラップ触媒の特徴。NOx規制の厳しい国内規制に対応するため、NOxトラップ触媒が必要だったと言う4M41型クリーンディーゼルエンジンの改良ポイントNOxトラップ触媒は貴金属の増量に頼らず性能を向上させたと言う
燃焼改善と高効率NOxトラップ触媒によってポスト新長期規制に適合させたM41型クリーンディーゼルエンジンは、平成27年燃費規制基準値を大きく上まわる燃費性能を達成エンジン出力を向上させるために用いられた技術
会場に展示されていたNOxトラップ触媒(写真左)、DPF(ディーゼル微粒子除去装置、写真中)、HCトラップ機能付きの酸化触媒(写真右)

(編集部:小林 隆)
2010年 9月 3日