シトロエン、WRCドライバーが来日会見
ローブ選手「ラリージャパンは接戦になる」

2010年9月5日



 2010年WRC第10戦ラリージャパンを控えた9月5日、シトロエンレーシングチームが同チームドライバーによる記者会見を都内で開催した。会見にはプジョー・シトロエン・ジャポンのティエリー・ポワラ社長をはじめ、「シトロエン・トタル・ワールドラリーチーム」からセバスチャン・ローブ選手およびセバスチャン・オジェ選手が、「シトロエン・ジュニア・チーム」からドライバー、ダニ・ソルド選手が出席した。

ドライバーはジーンズにチームシャツとラフな出で立ち

優勝よりもポイントの獲得を目指す
 会見で最初にインタビューに答えたローブ選手は「2010年は残り4戦あるが、全戦で表彰台を獲得するなど、今のところ非常にうまく行っている」と述べ、「ラリージャパンは非常に難しいラリーなので、しっかりフィニッシュしてできるだけポイントを獲得したい。“是が非でも優勝”というよりは、ポイントの獲得を目指していきたい」と、チャンピオンシップを見据えて確実にポイントの上乗せを狙うことを強調。ただ「自分はフィーリングを重視しているので、スタートしてから展開を見て、優勝できるようであれば戦いに参加していくつもりだ」と、チャレンジする姿勢も見せた。

 オジェ選手は「ワークスチームでWRCに参戦して2年目となるが、選手権の2位という非常にいい位置につけている。2位と3位のポイント差があまりないので、残り4戦がんばっていきたい。ラリージャパンは初参戦となるが、事前に調べたところでは道幅が狭く、非常に難しいラリーのようだ。マニファクチャラーズポイントも獲得できるようがんばりたい」と、こちらもポイントの獲得が最優先といった様子。

 一方、シトロエン・ジュニア・チームのソルド選手は「今シーズンのスタートはあまり調子がよくなく不本意だったが、徐々にペースが上がってきている。今回もよい結果が出せればと思う」と、調子のよさをアピール。4回目の参戦となるラリージャパンは、2007年に2位、2008年にリタイアと極端な結果を残しているが、「前回は雨が多く、スペシャルステージでは非常に滑りやすい展開だったが、今年は天候がよさそうなので楽しんで走れると思う。目標は表彰台」と、抱負を語った。

2位に58ポイントの大差をつけて独走状態のローブ選手。残り4戦、確実なポイント奪取を狙う現在、ドライバーランキング2位のオジェ選手。3位とは16ポイント差と激しい順位争い中だシトロエン・ジュニア・チームのソルド選手。ドライバーランキングは現在5位
今シーズンのこれまでのシトロエンレーシングの成績。ローブ選手は全戦表彰台、うち5戦で優勝という盤石の強さを見せるマニファクチャラーズポイントはフォードにすでに86ポイント差をつけている前戦ドイツではシトロエンが表彰台を独占した

 今年の暑さについて尋ねられると、「(東京は)35度と気温が高く、湿度も高いので体にこたえそうだ。ただ、札幌周辺ではここまで暑くはないだろうから、ラリーには影響ないと思う」(ローブ選手)、「車内は外気温より10~15度は高くなる。そのような条件で走るのはキツイため、もう少し涼しくなってほしい」(オジェ選手)と、両選手ともこのところの気温の高さが気になっている様子だった。

 また、昨シーズンはBPフォード・アブダビ・ワールド・ラリー・チームのミッコ・ヒルボネン選手とわずか1ポイント差でタイトルを争ったローブ選手だが、今シーズンは第9戦ドイツを終了した時点でドライバーズポイントで58ポイント、マニファクチャラーポイントで86ポイントと大差をつけることに成功している。その点について質問されると「ヒルボネン選手はシーズンのスタートはよかったが、調子を落として自信を失っているのかもしれない。フォード フォーカスとシトロエン C4の戦闘力に差があるかといえば、C4の開発は進んでいるものの頭打ちになっている状況。この結果はさまざまな要因が重なっており、単純にこれだという理由をみつけることはできない」と語った。

 同席したポワラ社長は「2010年は、今までのレーシングチームの成功にさらなる拍車をかける年という意味で、非常によい年になっています」と切り出し、日本での売り上げについて言及。「8月までの輸入車市場全体の累計は前年比+18.6%。シトロエン単独で見ると+40%、8月単月では+20.8%と、レーシングチームに負けずとも劣らないよい数字を残している。本年度の売上目標は2400台で、過去14年間で最高の数字。これをシトロエンレーシングチームのさらなる世界での活躍につなげていければ」と語った。

3人で表彰台に
 その後、3選手は同社サイトなどで告知・募集が行われた「Specia Night with CITROEN WRC Drivers」に出席。同イベントは、30組60名の募集に対しなんと1600名以上の応募が殺到。当選確率50倍以上というプラチナチケットとなった。

 トークショーでローブ選手は「日本ではタイトルを取ったし、文化的な面でも興味深いことが多く、特別な感情を持っている」とリップサービス。チャンピオンのため、トップで出走することの不利を訪ねられると「(路面の)掃除役にならざるを得ないから、一生懸命走らなければならない。Day3に到達して、勝つことが重要だ」と意気込みを語った。

 また記者会見に次いでC4の戦闘力について訪ねられると「ラリージャパンではフォードもいいパフォーマンスを出しているから、接戦になるだろう。最大のライバルは自分と言っていたが、ラリージャパンではフォードだ」と、ヒルボネン、ラバトラ、(ヘニング)ソルベルグといった役者を揃えるフォード勢への警戒を露わにした。

 そのC4はレギュレーション変更に伴って今シーズンが最後となり、来シーズンには1.6リッターターボの「DS3 WRC」にスイッチする。DS3について訪ねられると「エンジンの出力がC4よりも低いが、クルマのサイズやハンドリングが違うし、電子制御が減っている。比較は難しいが、いいマシンだ」と答えた。

第2部のユーザーイベントは終始リラックスした雰囲気。来場者からの「シトロエン以外のマシンなら、何に乗りたい?」という質問には、「アウディ・クワトロ」「プジョー205ターボ16」といった、ハイパワーなグループBマシンを挙げていた非常に近くで選手のトークを楽しめた。ラリーフィールドやサービスでも、選手やマシンとの距離が近いのが、WRCの魅力の1つ来場者全員と握手するサービスぶり。さらに、3選手のサイン入りパンフレットやミニカーが全員にプレゼントされた

 オジェ選手は「グラベルではトップと互角に走れる。ターマックとスノーのイベントで進歩しなければならない」と自らの課題を明らかにし、「ワークスで参戦しているということは、マニファクチャラーポイントを稼ぐことが重要。より多くのマニファクチャラーポイントを取って貢献したい。ドライバーズポイントは、2位をキープしたい」とラリージャパンでの目標を表明した。

 ソルド選手は「ラリージャパンは結果を出したこともあって、フィーリングはいい。できるだけ高い順位でがんばりたい。目標はシトロエンの3人で表彰台に上がること」と述べた。

 ラリージャパンは9日のラリーショーで開幕、10日から競技が始まり、12日に幕を閉じる。

(安田 剛/編集部:田中真一郎)
2010年 9月 6日