ウインターシーズン突入「スタッドレスタイヤカタログ 2010-2011」
降雪前に準備しておきたいスタッドレスタイヤ


 残暑が長く続いた今年も、ここへ来て一気に気温が低下。秋は足早に過ぎ去り、冬は目前といったところ。北海道や東北では、すでに初冠雪を記録している。

 年末年始の帰省やウインタースポーツなど、冬場のドライブには、雪対策が欠かせない。もちろんチェーンといった選択肢もあるが、雪上を走る機会が多いなら、スタッドレスタイヤを選ぶのが賢明だろう。そこで、2010年~2011年シーズンの一般乗用車向けスタッドレスタイヤを集めてみた。

 スタッドレスタイヤに求められるのは、もちろん雪上でのグリップ。しかし踏み固められ、さらに一昼夜経った雪はツルツルのアイスバーン状態になってしまう。この状態がもっともグリップしにくく、そのため各社は氷上でのグリップを確保することを基本に開発している。スリップしやすくなる原因としては氷の上にできる薄い水膜が挙げられるので、各社この水膜の除去に積極的に取り組んでいる。

 また、排水性とエッジ効果のため、スタッドレスのトレッド面には細かなサイプが刻まれているが、これが剛性を低下させ、ハンドリングを悪化させる。そこで、立体的なサイプとすることでブロック剛性を高めるなどしている。

 さらに雪上、氷上だけでなく、ドライ路面や高速道路でのフィーリングにもこだわった製品があるので、自分の使い方にあったスタッドレスタイヤを見つけてほしい。


DSX-2

ダンロップ「DSX-2」
サイズラインアップ:135/80 R12~245/45 R19の全93サイズ
ダンロップ:http://tyre.dunlop.co.jp/
製品情報:http://tyre.dunlop.co.jp/tyre/lineup/studless/#/dsx2/
スタパ齋藤 スタッドレスタイヤ購入記:http://ad.impress.co.jp/special/dunlop1011/

 ダンロップの「DSX-2(ディーエスエックス ツー)」は、踏み固められたアイスバーンでもグリップを発揮するため、トレッド面にビッググラスファイバーと、従来モデルの2倍のサイズにした単結晶針状セラミックの「ハイパーテトラピック」を配合。ひっかき効果により氷の上でも高いグリップを確保している。

 トレッド面のサイプには、立体サイプで隣り合うブロックが支えあうミウラ折りサイプを採用。これによりブレーキやコーナリング時などのブロックの倒れ込みを抑制し、設置面積を30%拡大すると言う。また、ゴムにも剛性コントロール剤を配合することで、よれを抑え氷上でのハンドリングにも追従する性能を向上している。

 さらにタイヤショルダー部は剛性を高く、ミドル部では剛性を柔らかく、そしてセンター部ではまた剛性を高くしたトリプルフェイスパターンを採用。柔らかなミドル部で雪を噛み、剛性の高いセンター部でハンドリング性能を確保。雪上性能とハンドリング性能を高次元で両立している。

従来の2倍の大きさの単結晶針状セラミック「ハイパーテトラピック」隣り合うブロック同士が支えあうミウラ折りサイプを採用。ブロックの倒れ込みを抑え、設置面積を30%拡大
剛性コントロール剤を配合したコンパウンド(左列)は負荷時(下段)でも十分な力を発揮するショルダー部とセンター(クラウン)部の剛性は高く、ミドル部の剛性を低くすることで雪上性能とハンドリング性能を両立30km/hからの氷上制動比較では、従来品より制動距離を2m短縮

BLIZZAK REVO GZ

ブリヂストン「BLIZZAK REVO GZ」
サイズラインアップ:145/80 R13~245/40 R20の全85サイズ
株式会社ブリヂストン:http://www.bridgestone.co.jp
製品情報:http://www.blizzak.jp/revogz/

 ブリヂストンの「BLIZZAK REVO GZ(ブリザック レボ ジーゼット)」は、ブリザックとしては初めて同社の基準を満たしたエコ対応商品。それでいて氷上ブレーキ性能は従来比12%アップ、ウェットブレーキ性能では9%向上している。

 その性能を実現したのが、新たに採用されたレボ発泡ゴムGZ。新素材「コンティニューミクロパウダー」を新たに配合することで、タイヤ摩耗時にゴム内の気泡や水路が繋がり排水性をアップ。スリップの原因となる氷上の水膜を効果的に取り除く。

 トレッドパターンはイン/アウト非対称パターンを採用。これは発進時、コーナリング時、ブレーキ時でトレッドの使いかたが異なるため、それぞれに最適化したパターンとしたもの。さらに同社のREGNOやPlayzで採用している非対称形状も搭載。サイドウォールの形状をイン側とアウト側で変更することで、直進安定性を向上している。

 雪やシャーベット、水の上などで効果を発揮するのが、新設計の「スリム&ロングコンタクト」だ。タイヤの接地面の幅を従来より細くすることで、走行時に路面上の雪や水によって受ける抵抗を低減。さらに従来より接地長を長くすることで、接地面積は従来同等としている。これにより路面に対して効果的に力を伝達できるようにしている。

従来品と比べ氷上ブレーキ性能で12%、ウェットブレーキ性能で9%向上摩耗時に気泡や水路が結合し排水性能をアップ加速、減速、コーナリングでのタイヤの接地状況に合わせ、トレッドを左右非対称パターンに
路面の凹凸など外乱によるふらつきを抑える非対称形状接地幅を減らして抵抗を低減。接地長を伸ばすことで接地面積は確保

X-ICE XI2

ミシュラン「X-ICE XI2」
サイズラインアップ:155/65 R13~245/45 R19の全60サイズ
日本ミシュランタイヤ:http://www.michelin.co.jp/
製品情報:http://www.michelin.co.jp/tyre/patterndetail/Winter/X-IceXI2

 ミシュランの「X-ICE XI2(エックスアイス エックスアイツー)」は、従来のX-ICEと比べ氷上でのブレーキ性能とトラクション性能をそれぞれ15%、ウェットブレーキ性能を5%向上している。さらにジョイントレス・ナイロンキャッププライの採用やタイヤ構造の見直しにより、より高速走行に対応。従来の160km/hから190km/hまで対応速度を引き上げている。

 トレッドゴムには常温時は高い剛性を確保しながら、低温時でも柔軟性を確保するシリカベースのフレックスアイスコンパウンドを採用。さらにブロックには、路面を引っ掻くエッジ効果を生むクロスZサイプを採用。このクロスZサイプは縦方向もZ型のサイプとなっており、ブロック剛性を保ち接地面積を確保する。また、ブロックのエッジ部にはサイプの代わりにマイクロポンプを配置。これによりブロック剛性を保ち、排水性とエッジ効果を両立している。

 XI2では、タイヤの接地面積の拡大にも成功している。さらに圧力をトレッド全体に分散することで、優れた氷上性能とともに偏摩耗を抑えてロングライフを実現している。

氷上性能をアップしたX-ICE XI2従来モデルと比べアイスブレーキ性能で約15%向上トレッド面
クロスZサイプに加え、ブロックのエッジ部にはマイクロポンプを採用剛性を確保しながら吸水もするマイクロポンプ左が従来のX-ICE、右がXI2。接地面圧を均一化している

iceGUARD TRIPLE PLUS

横浜ゴム「iceGUARD TRIPLE PLUS」
サイズラインアップ:135/80R12~245/40R20の全104サイズ
横浜ゴム株式会社:http://yokohamatire.jp/
製品情報:http://yokohamatire.jp/yrc/japan/tire/brand/studless/ig30plus.html

 横浜ゴムの「iceGUARD TRIPLE PLUS(アイスガード トリプル プラス)」は、従来のアイスガード トリプルの氷上性能をそのままにエコ性能を加えたモデル。タイヤ構造を見直すことで、転がり抵抗を4%低減していると言う。

 氷上性能は従来同様、吸水ハニカムシリカ、マイクロ吸水バルーン、吸水カーボンを高密度で配合したトリプル吸水ゴムにより氷上の水を吸水し氷を噛む。さらに進化したブラックポリマーIIによりゴムは柔らかさを保ち、氷の表面に柔軟に密着。トレッド面のサイプの密度を上げることでエッジ効果を増加している。また、トレッドセンター部の縦方向に大型化したブロックを3列配置することで、制動時の接地面積を向上している。

 タイヤの柔らかさを確保するブラックポリマーIIは、オイルと比べても分子が大きく抜けにくい。そのため長い間柔軟性を確保することができる。さらに従来のブラックポリマーと比べ、低温環境下での柔らかさを6%多く持続できると言う。

従来モデルと比べ、転がり抵抗を4%低減氷上性能は、トリプル吸水ゴム、ブラックポリマー、高密度サイプ配置、トリプルベルトブロックで高次元を確保
転がり抵抗を抑えながらも氷上制動性能は従来のアイスガードトリプルと同性能を確保オイルよりも抜けにくいブラックポリマー。さらに低温時で硬くならないよう進化を遂げた

GARIT G5

トーヨータイヤ「GARIT G5」
サイズラインアップ:135/80 R12~245/40 R18の全84サイズ
東洋ゴム工業株式会社:http://toyotires.jp/
製品情報:http://toyotires.jp/catalog/grg5.html

 トーヨータイヤの「GARIT G5(ガリット ジーファイブ)」は、トレッドゴムに天然素材の竹炭を使った吸水カーボニックパウダーを配合し、スリップの原因となるミクロの水膜を除去。新素材のナノゲルゴム(マイクロモルフ)により、氷点下でもゴムが硬くならず氷に密着し接地面積を確保、さらにゴムに配合された鬼クルミの殻が氷をひっかき、アイスバーンでも高いグリップを生む。

 G5では新パターン、新サイプ構造も採用している。加速、減速、コーナリングと全方向で路面に追従する360°サイプはバージョンG5に進化。六角形のサイプを大きく前後にずらして配置することにより、接地圧を均一化しグリップを向上している。接地長の長くなるトレッドセンター部には空洞を設けた吸着3Dサイプを採用。これにより、より路面の凹凸に密着し、エッジ効果を生む。さらにトレッドサイド部には排雪性の高いスラッシュスリットを採用している。そのほか、新品のタイヤからグリップを発揮させるため、新ファーストエッジを採用。エッジ加工により全方向に対応する。

 コーナリングやブレーキング時に安定性を生み、ドライ路面でもしっかり感を出すため、ベルト補強構造や高硬度プライトッピング、高剛性サイドウォール、高硬度ビートフィラーを採用。タイヤ自体の剛性を向上している。

氷点下でも柔らかさを保つナノゲルゴムと、水膜を除去する吸水カーボニックパウダー、そして路面をひっかく鬼クルミの殻で氷上でも高いグリップを発揮さらに進化した360°サイプや新品時からグリップする新ファーストエッジなど、トレッド面にも技術が凝縮される
タイヤ自体の剛性を確保することで、コーナリングやブレーキングの安定性を確保従来モデルと比べアイス制動、アイスコーナリングともに性能を向上

ICE NAVI ZEAII

グッドイヤー「ICE NAVI ZEAII」
サイズラインアップ:135/80 R13~235/45 R18の全69サイズ
日本グッドイヤー株式会社:http://www.goodyear.co.jp/
製品情報:http://www.goodyear.co.jp/products/tires/icenavizea2/icenavizea2.html

 グッドイヤーの「ICE NAVI ZEAII(アイスナビ ゼア ツー)」は、天然素材でできたパワフルグラスとイオン結晶体により、氷をひっかきグリップ力をアップ。さらに撥水シリカによりスリップの原因となる水膜を除去。バイオフィラーによって柔軟性を持ったバイオトレッドが氷面の細かな凹凸に密着する。これにより従来品と比べ氷上ブレーキテストでは初速30km/hからのブレーキングで4.7mも制動距離を短縮している。さらにロングライフポリマーの配合により耐久性をアップ。ロングライフを実現している。

 トレッドパターンには4リブ構造としたZEAIIパターンを採用。隣り合うブロック同士が支えあうジグザグ三次元サイプのZEAブレードと併せてブロック剛性を向上し、氷上でのコーナリング性能、ドライ性能を向上。さらにパターンノイズも低減している。また、ショルダーブロックの回転方向に設けたコーナーグリップサイプや、サイプとは別に設けたアイスエッジにより、コーナリング時や新品時からのグリップを約束する。

氷をひっかくパワフルグラスとイオン結晶体バイオフィラーの配合により氷面の凹凸に柔軟に密着ロングライフポリマーで耐久性もアップ
ブロック剛性を保つ4リブ構造を採用立体的なサイプで支えあうZEAブレードアイスエッジにより新品時から高いグリップを生む

WINTER ICECONTROL

ピレリ「WINTER ICECONTROL」
サイズラインアップ:155/65R13~225/45R17の全20サイズ
ピレリジャパン株式会社:http://www.pirelli.co.jp/
製品情報:http://www.pirelli.co.jp/web/car-suv-van/winter_collection/all_winter_prod/default14.page

 ピレリの「WINTER ICECONTROL(ウィンター・アイスコントロール)」は、同社が日本市場向けに開発したスタッドレスタイヤ。コンパウンドには独自のシリカ7を配合。さらにアロマティックオイルを排除し環境性能も向上している。

 トレッドデザインはセミブロック型アローデザインを特徴とした新デザインで、新形状のスクエアショルダーとすることで接地形状と接地圧を改善。サイプやより細かく薄いスレンダーサイプとし、ショルダーとセンターのリブ部で異なる等長&非等長コンビネーションサイプとしている。

 ピレリからは気温低下時のサマータイヤの性能低下を考慮し、冬期の非降雪地域でのデイリーユースも考慮したスタッドレスタイヤ「WINTER SNOWCONTROL SERIE II(ウインター・スノーコントロール・セリエデュエ)」も発売されている。

(瀬戸 学)
2010年 11月 18日