日産、GT-Rの認定中古車説明会&試乗会【前編】
GT-R認定中古車のフラッグシップショップ「カーミナル東京」

カーミナル東京に並ぶ、GT-Rの中古車

2011年1月16日開催



 日産自動車は1月16日、日産ユーズドカーセンターが運営する「カーミナル東京」(東京都武蔵村山市榎)において、NISSAN GT-R認定中古車に関する説明会&試乗会を開催した。

 この説明会&試乗会は、「NISSAN GT-R認定中古車 認定プロセス」の実演、認定中古車向けアドバンスキット装着車の試乗、GT-R開発責任者 水野和敏氏&開発ドライバー 鈴木利男氏によるトークショーからなり、報道陣と来場者向けに行われたもの。前編では認定プロセスの模様と、モータージャーナリスト岡本幸一郎氏によるアドバンスキット装着車の試乗記を、後編ではトークショーの模様をお届けする。

GT-Rの中古車。カーミナル東京には14台のGT-Rが並んでいたが、一部商談中の札が付いていた
中古車で一番低価格だったGT-R。580万円平成19年(2007年)のプレミアムエディション。走行距離は8000km

 GT-Rは2007年末に発売され、年度ごとに最高出力の引き上げやサスペンションセッティングなど小変更を実施。2010年11月には、エンジンの最高出力を357kW(485PS)/6400rpmから390kW(530PS)/6400rpmに、最大トルクを588Nm(60.0kgm)/3200~5200rpmから612Nm(62.5kgm)/3200~6000rpmへと大きく向上させるなど大幅な変更を行った11年モデルとなった。

 今後、07/08年モデルは初回車検時期となり、また、11年モデルへの買い換えも進むことからGT-Rの中古車の流通量が増えてくることが予想される。

 日産では、ニュルブルクリンクサーキットでの走行や耐久試験のほか、市場での車両の使われ方を考慮した上で、初年度登録から3年以内・走行距離2万km以内などからなるGT-R中古車認定基準を、初年度登録から5年以内・走行距離10万km以内に改定し、2010年12月1日から運用を開始している。

 また、07年~09年モデルのGT-R認定中古車を購入したユーザー向けに、10年モデル用のフロントショックアブソーバー、フロントスプリング、フロントトランスバースリンクブッシュ、リアエンジンマウント、フロントトランスミッションマウント、ブレーキホース、ブレーキフルードに加え、ボディーサイドウェザーストリップ、サッチャム基準準拠車両防盗システムをパッケージにした「アドバンスキット」も用意しており、価格は工賃別で39万9000円。

 カーミナル東京は、GT-R認定中古車のフラッグシップショップに位置づけられ、GT-Rの認定中古車を複数台常設するほか、GT-Rに関するさまざまな情報を発信していく。今回の説明会&試乗会にカーミナル東京が選ばれたのは、フラッグシップショップということもあるが、店舗内にミニ試乗コースを持つほか、この地は以前日産の村山工場であり、スカイラインのオリジンとも言えるプリンス自動車工業の生産工場であったためとのこと。

展示されていたアドバンスドキット(左下のタイヤ&ホイールは除く)工賃別で39万9000円のキットだが、カーミナル東京では工賃込みで49万8850円となっていたアドバンスドキットの左下に展示されていたタイヤ&ホイールは、ニュルブルクリンクサーキット走行時に使用したもの
ニュルブルクリンクサーキット走行時に使用した、ブレーキキャリパー、ブレーキローター、サスペンションなども展示されていた

NISSAN GT-R認定中古車 認定プロセス
 改訂後のGT-R認定中古車は下記の基準を満たすものとされている。

使用歴:初度登録より5年以内
事故修復歴:定められた時期に法定点検およびGT-R特別点検が全て実施されていること
外観傷:事故修復歴なし(査定協会基準)
故障歴:補修済みの状態
改造歴:2009年10月改訂版以降のオーナーズマニュアルに記載されている内容に従って交換・特別点検されていること
走行性能に関するメンテナンス状況:2009年10月改訂版以降のオーナーズマニュアルに記載されている各走行条件における必要点検整備が実施されていること
走行距離:累計10万km未満

 カーミナル東京で実演された認定プロセスは、時間の都合上簡略化されたものとなっており、実使用状態のGT-Rをジャッキアップするなどして、その模様を紹介した。

 中古車として入庫したGT-Rは、特別なトレーニングを受けたスタッフ(認定TS)によって認定が行われる。最初に行われるのは、外観の検査。フロントまわりやリアまわりなどを目視でチェックし、傷などを確認していく。

 次にエンジンやトランスミッションの使用状態など履歴をチェック。GT-Rに内部モニタリングツールを接続し、パソコンで「CONSULT(コンサルト)」というアプリケーションを起動。モニタリングツールとパソコンはBluetoothで接続され、エンジンのECU、トランスミッションのコントローラーに記録された履歴を読み出す。

 この履歴には、走行距離などはもちろん使われ方も記録されており、たとえばECUを交換したことなども取り外し履歴として残り、どのような走行が行われたかが分かると言う。

 内部履歴の確認と同時にエンジン外観などを確認し、次にジャッキアップしてサスペンションやトランスミッションなどを確認していく。GT-Rは安定した高速走行のために、シャシー下面がカバーで覆われており、このカバーを取り外すことで、各部が見られるようになる。

認定プロセスの実演作業を行う認定TS。認定のための特別なトレーニングを受けたスタッフGT-R開発スタッフに所属する宮原武彦氏が認定プロセスを解説外観の傷などを目視で確認していく
GT-Rのダッシュボード右上にモニタリングツールを設置モニタリングツールをフロントウインドー側から撮影モニタリングツールとはBluetoothで通信。使用していたパソコンは、防塵・防滴性能を備えるパナソニックのTOUGHBOOKだった
TOUGHBOOK上で動作しているのがCONSULT。さまざまなことが診断できると言うエンジンルームを開け、エアフィルターを確認ホイールを取り外すための準備にかかる
軽くジャッキアップ後、ホイールを取り外すさらにジャッキを上げ、フロントサスペンションまわりを確認サスペンションの変更がないか、傷はないかなど各部を確認していく
アンダーカバーを取り外し、シャシー下面のチェックに取りかかる
完全にカバーの取り外されたフロントサスペンションまわりエンジン後方から伸びるマフラー部をペンライトを使って確認トランスミッションが収まる、リアまわりもアンダーカバーを外して確認する

 サスペンションのリンクや、ブレーキキャリパー、ブレーキローター、マフラーなどを目視でチェック。純正以外の部品が使われていないか、異常な状態はないかなどを確認していく。

 通常の中古車では、主に外観の傷やフレーム修正の有無などの確認のみとなっており、これはGT-R認定中古車だけの特別なプロセスだと言う。

 本来はたっぷり時間をかけて行う認定作業とのことだが、プログラム進行の都合もあるため、30分ほどの実演が行われた。


左がアドバンスキット非装着車、右が装着車。いずれも07年モデル

GT-R認定中古車向けアドバンスキット装着車ミニ試乗
 試乗には、アドバンスキットを装着した07年モデルの認定中古車と、非装着の07年モデルが用意された。コースはカーミナル東京内にある200mほどのミニコース。以下に岡本幸一郎氏によるミニ試乗記を掲載する。


アドバンスキットを装着したGT-R認定中古車。サスペンションやマウント類のキットのため、外観からは分からないカーミナル東京の試乗コース。およそ200mほどの小さなコース

 アドバンスキット装着車は、まず、ドアを閉めたときの音が違う。キット非装着車は、ガラスが暴れるというと大げさだが、少し動く感じの音がするのだが、装着後は“ボム”という鈍く深イイ音がして、いかにも密閉される感じとなる。これは、アドバンスキットにボディーサイドウェザーストリップが含まれるためで、走る前から違いが分かる部分だ。

 そして、カーミナル東京の一角に設定された、わずか200mの試乗コースを、50km/hを上限に、攻めるわけでもなく、ごく普通に3周ずつキット非装着車と装着車でそれぞれ走っただけだが、それでも違いは体感できた。


最初にアドバンスキット非装着車に乗り込んだ試乗コースを走行中

 07年モデルで以前から気になっていたことに、ステアリングの中立付近のアソビが大きいことと、乗り心地に荒さがあったのだが、それらは非装着車に乗ってもやはり感じられた。ところが装着車は違った。

 ステアリングを切り始めた瞬間からスッとリニアにノーズが向きを変える。アソビがなくなっただけでなく、足まわりが適度に固められたおかげで、ノーズの動きが軽くなり、回頭性が向上したように感じられた。また、乗り心地もよくなっていた。

 非装着車はフロントとリアで別々に入力を受けてクルマが暴れていたところが、装着車ではクルマが一体となって入力を受け止め、しなやかに吸収する印象となっていた。

 実際にはフロントがキットに含まれる10年モデル用のショックアブソーバーやスプリングなどで固められているおかげなのだが、エンジンやミッションのマウント類が強化されたおかげで、振動が瞬時に収束し、結果的に振動が起こりにくくなっているようだ。固い足まわり=乗り心地がわるい、ではないわけだ。

非装着車の後に、装着車で同じコースを走行試乗は2名乗車で実施。助手席に座るのは、GT-Rの開発に携わる実験技術開発本部の永井暁氏

 同時に、アクセルを踏んだ瞬間の反応も、非装着車はわずかに遅れる印象があったところ、装着車ではそれがなくなっていた。それはごく短時間ではあるのだが、印象としては、駆動系に少しずつある隙間がすべてなくなって、それから加速し始める非装着車、その隙間があらかじめなくなり、アクセル操作と一体でトラクションが得られるようになった装着車といった感じである。おかげでクルマが一気に軽くなったように感じられるほど、走りの印象はまるで違った。

 ブレーキフィールもペダルタッチの剛性感が向上し、装着前よりも微妙なコントロールができるようになった。

 このコースをほんの少し走っただけで、これほどの違いを感じ取ることができるのだから、スポーツ走行をするまでもなく、街中を普通に走るだけでも、キット装着の恩恵にあずかれるはずだ。

 07年~09年モデルの認定中古車のみに取り付けられるアドバンスキット。認定中古車を購入する人は、これを付けない手はないと思う。

ボディーサイドウェザーストリップがアドバンスキットに含まれるため、ドアを閉めただけで違いが分かるGT-R認定中古車を買う際は、アドバンスキット装着がお勧め!!

 後編では、GT-R認定中古車の認定基準改定の背景や、アドバンスキットについて語られた、トークショーの模様をお届けする。

(編集部:谷川 潔)
2011年 1月 19日