IEEJ、石油供給は来週にかけて回復の見通し
買いだめ防止を呼びかけ

経済産業省による石油供給と輸送の対策図

2011年3月17日発表



 日本エネルギー経済研究所(IEEJ)は3月17日、「東日本大震災による石油需給への影響について」と題したレポートを発行した。この中で東日本大震災(東北太平洋沖地震)によって一時的に低下した石油供給能力が来週に向けて回復の見通しにあることを明らかにし、ガソリン、灯油等の買いだめをしないよう、呼びかけた。

原油処理能力は来週にかけて震災前の水準へ
 これによると、15日現在、国内の原油処理能力(約452万B/D)の約31%にあたる約140万B/Dが処理を停止している(IEEJの石油情報センターによれば、17日現在、停止している原油処理能力は約120万B/Dとしており、IEEJ発表の15日の値よりも若干回復している)。

 このうち約78万B/Dが来週にかけて稼働を再開する見通しであり、その結果、震災直前の原油処理量とほぼ同等の約390万B/Dの能力まで回復されるとしている。つまり、震災の影響で約62万B/Dの処理能力が失われたとしても、実際の需要を満たすだけの能力が残されている。

 また、もともと国内の原油処理能力は実際の需要よりも多く、全国の製油所の平均稼働率は90.4%にとどまっていた。被災していない製油所の稼働率をさらに引き上げて、供給量を増やす余地が残されている。

 さらに、石油会社に義務付けられている備蓄量(備蓄日数)が3日分引き下げられ、追加供給が期待できること、製品化された在庫がガソリン14日分、灯油25日分、軽油18日分あること、石油製品輸入の拡大が期待されることなどを挙げ、供給には心配がないことを明らかにしている。

 この問題に関して経済産業省は17日に、「西日本の製油所の稼働率を95%に引き上げ」「関東圏、西日本の製油所の在庫取り崩し」

 なお、石油元売り各社で構成される石油連盟が17日に発表した製油所の稼働状況は次のとおり。

会社名製油所名能力
(千B/D)
状況備考(見込み等)
稼働停止中
JX日鉱日石エネルギー仙台145停止中復旧に時間を要する
鹿島石油鹿島253停止中復旧に時間を要する
コスモ石油千葉220停止中復旧に時間を要する
小計618
稼働準備中
極東石油工業千葉175製品在庫は通常出荷中段階的に再稼動開始
(数日中に全面稼動予定)
東燃ゼネラル石油川崎335製品在庫は通常出荷中段階的に再稼動開始
(一両日中に全面稼動予定)
JX日鉱日石エネルギー根岸270製品は在庫と海上受入により、陸上出荷中段階的に再稼動開始
(来週中にトッパー2基稼動予定)
小計780
その他の製油所能力3118
製油所能力総合計4516
震災前の原油処理量3950

製品の配送に問題も、徐々に改善
 一方、震災による通行止めなどにより、石油製品の配送ができず、局地的に石油が不足している問題にも触れているが、これは石油元売り各社が特に被災地向けにタンクローリーや内航船による輸送を強化しており、徐々に改善が図られていると言う。

 経済産業省はこの問題に関しても17日に発表、被災地向けには「タンクローリー300台の投入」「西日本と北海道から東北へのガソリン等の大量転送」「東北の主要拠点であるた塩竃油槽所の早期機能回復」「救援車両用の拠点SS(ガソリンスタンド)の整備」といった対策を採る。

 また関東圏に対しても、「西日本からの在庫の転送」「関東圏の在庫の取り崩し」「事業者間連携による円滑な供給体制」により、安定供給を図る。

(編集部:田中真一郎)
2011年 3月 18日