STI、新井選手&奴田原選手でインターコンチネンタル・ラリーに参戦
マシンは新規定R4適合のインプレッサを使用し、横浜ゴムがサポート

インプレッサの前に立つ、新井敏弘選手(左)と奴田原文雄選手(右)

2011年4月20日発表



 STI(スバルテクニカインターナショナル)は4月20日、「インプレッサ WRX STI」で2011年シーズンから導入されるR4規定のホモロゲーション(公認)を取得し、インターコンチネンタル・ラリー・チャレンジ(IRC)に参戦することを発表した。

 R4規定は、FIA(国際自動車連盟)のグループN車両に公認されたキットを装着することで、より競争力を確保できる新しいカテゴリー。ホモロゲーション取得申請を行っている車両は、「スバル インプレッサ WRX STI(GRB)」「スバル インプレッサ WRX STI spec C(GRB)」の2車種になる。

 公認されたR4キットは、STIを通じて販売するほか、R4規定に適合したインプレッサで、IRCに新井敏弘選手と奴田原文雄選手が参戦することも発表された。

ホモロゲーション申請中の「スバル インプレッサ WRX STI」写真のカラーリングは新井選手のマシンラリー車としては、5ドアモデルが使われる

 IRCは、FIAが公認するイベントを中心に、ヨーロッパのスポーツ専門放送局であるユーロスポーツが運営するラリー選手権。2011年は全12戦が予定されている。

参戦について語るSTI 嶋村誠主査

新井選手は5戦、奴田原選手は3戦
 IRC参戦に関する発表会は、車両開発を担当するSTI本社で行われた。実際に車両開発を行うSTIの嶋村誠主査は、R4規定適合のインプレッサについて「グループNのインプレッサに、R4規定にするための改造キットを適用する。最低重量が(1350kgから1300kgに)50kg軽くできるため、ドア、リアクオーターおよびリアゲートのガラスをポリカーボネートへ置換し軽量化。ダッシュボードまわりも軽量化し、あわせてヒーターシステムも新しくしてキット化している」と、数々の軽量化を実施していることを語った。

 サスペンションは、強度と剛性の向上を図った新設計部品を使用。取り付け部はピロボール化することでよりシャープなハンドリングが可能となり、さらに、フロント/リアともに20mm程度ストロークアップしている。

 外観は市販車からの変更点は大きくなく、ボンネットに新たに開けられたエアアウトレットが目立つ程度。これについては、「R4規定では、ボンネットに200cm2の穴を2つ開けることが認められており、これが外観上の大きな変更点になる」(嶋村氏)と語った。

外観上の大きな変更点が、ボンネットのエアアウトレット。大きさは、規定によりそれぞれ200cm2サイドウィンドーは軽量化のためポリカーボネイト製のものに変更される。展示車は、量産車と同様のガラス製

 参戦ドライバーは、東京オートサロンでIRCへの参戦が発表されていた新井敏弘選手と、今回新たに発表された奴田原文雄選手。新井選手はインプレッサでPWRC(プロダクションカー世界ラリー選手権)のチャンピオンを2度獲得するなど、スバルのラリー活動の顔とも言える選手。一方、奴田原選手は、全日本ラリー選手権のチャンピオンをランサーで獲得するなど、三菱自動車工業のラリー活動を代表する選手。三菱が海外のラリー活動から撤退したため、今回スバル車で参戦することになった(今シーズンの全日本ラリーには、「ADVAN-PIAAランサー」で参戦中」)。


ターマックでは6位以内、グラベルではポディウムを目指すと言う新井敏弘選手。スバルのラリー活動を代表するドライバー奴田原文雄選手。インプレッサは運転して楽しいクルマと語った参戦発表会に並ぶ、日本を代表するラリードライバー2人

 新井選手は、IRCの全12戦中5戦、奴田原選手は3戦参戦する。

ラウンド開催日国名イベント名路面新井選手奴田原選手
35月12日~14日フランスTour de CorseT
67月14日~16日ポルトガルSata Rallye AcoresG
88月26日~28日チェコBarum Czech Rally ZlinT
99月9日~11日ハンガリーMecsek RallyeT
1110月14日~16日スコットランドRACMSA Rally of ScotlandG
1211月3日~5日キプロスCyprus RallyT/G
※ T=ターマック(舗装)、G=グラベル(未舗装)

 新井選手はIRCの特徴を、「WRC(世界ラリー選手権)と異なり、昔ながらの伝統的なラリーというイメージ。見に来る人も、楽しみながら見に来ている」と紹介。R4規定のインプレッサについては、「昨年からテストを開始しているが、戦闘力は(グループNと比べて)ものすごい上がっている」と語り、とくに軽量化と、サスペンションのピロボール化によるダイレクトな動きが効いていると言う。

 目標については、「ターマックのラリーは6番以内、グラベルはポディウム(表彰台)」と言い、最終戦となるキプロス ラリーでは、マシンの開発も進むことから、「優勝を狙いたい」と語った。

 一方、奴田原選手は インプレッサには2度しか乗っていないとしながらも、「クルマのハンドリングが素直で、ドライバーに積極的に応えてくれる」と、その操縦性を評価。まだ慣れていないせいか、ドライバーの技量が足りないと言いつつも、日本を代表するラリードライバーだけに、その戦闘力を手の内に入れていくことだろう。

 新井選手は、「チームアライ」で参戦、奴田原選手は「アドバン チーム ヌタハラ(仮称)」で参戦することになる。

横浜ゴム PC・LT製品企画部 モータースポーツグループ グループリーダー 関口和義氏

実力チームと組み、好成績を目指す横浜ゴム
 新井選手、奴田原選手とも、使用するタイヤは横浜ゴムのものになる。発表会には、横浜ゴム PC・LT製品企画部 モータースポーツグループ グループリーダーの関口和義氏も出席し、このIRC参戦に対する抱負を述べた。「2007年から横浜ゴムは(IRCの)オフィシャルサプライヤーとして登録をしている。この4年間は、横浜ゴムとして華々しい活躍ができていない。これは、有力チームが他のタイヤメーカーと契約しているため。そんな中、STIから戦闘力のある車両を作るという話があった」(関口氏)と言い、日本を代表する2人のラリードライバーをサポートできることに興奮していると述べた。

 IRCへは、スバル、横浜ゴム、2人の日本人ドライバーというオールJapanのチームで挑むことになる。そのことについて関口氏は「活躍することで、日本に元気を与えられたらなと思っている」と語った。


展示車に装着されていた横浜ゴムのターマック用ラリータイヤ。レーススペックではなく、展示用とのこと
ターマック用タイヤ「ADVAN A006T」グラベル用タイヤ「ADVAN A053」

(編集部:谷川 潔)
2011年 4月 20日