SUPER GT、今週末に富士スピードウェイで開幕
29日は1000円で入場可能。“痛車”の争いにも注目


 市販車をベースに改造したGTカーレースであるSUPER GTは、東日本大震災の影響で第1戦の岡山ラウンドが延期(5月21日、22日に開催)されたが、今週末(4月30日、5月1日)に行われる予定の富士スピードウェイで行われる第2戦「FUJI GT400kmRACE」は予定通り行われ、今シーズンも全8戦で熱い戦いが繰り広げられる予定だ。

 本来は第2戦なのだが震災の影響で開幕戦となる、FUJI GT400kmRACE。昨シーズンよりもさらに熱い戦いが繰り広げられそうだ。そうしたSUPER GTの今シーズンを占ってみたい。

GT500 ゼッケンエントラントエントリー車両名称第1ドライバー第2ドライバータイヤ
1ウイダー ホンダ レーシングウイダー HSV-010小暮卓史ロイック・デュバルBS
6LEXUS TEAM LeMans ENEOSENEOS SUSTINA SC430伊藤大輔大嶋和也BS
8AUTOBACS RACING TEAM AGURIARTA HSV-010武藤英紀小林崇志BS
12TEAM IMPULカルソニック IMPUL GT-R松田次生ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラBS
17KEIHIN REAL RACINGKEIHIN HSV-010金石年弘塚越広大BS
19LEXUS TEAM WedsSport BANDOHWedsSport ADVAN SC430片岡龍也荒聖治YH
23NISMOMOTUL AUTECH GT-R本山哲ブノワ・トレルイエBS
24KONDO RACINGADVAN KONDO GT-R安田裕信ビヨン・ビルドハイムYH
32NAKAJIMA RACINGEPSON HSV-010道上龍中山友貴DL
35LEXUS TEAM KRAFTD'STATION KeePer SC430脇阪寿一アンドレ・クートBS
36LEXUS TEAM PETRONAS TOM'SPETRONAS TOM'S SC430アンドレ・ロッテラー中嶋一貴BS
38LEXUS TEAM ZENT CERUMOZENT CERUMO SC430立川祐路平手晃平BS
39LEXUS TEAM SARDDENSO SARD SC430石浦宏明井口卓人MI
46MOLAS Road MOLA GT-R柳田真孝ロニー・クインタレッリMI
100TEAM KUNIMITSURAYBRIG HSV-010伊沢拓也山本尚貴BS


BS:ブリヂストン、YH:横浜ゴム、DL:ダンロップ、MI:ミシュラン

昨シーズンのチャンピオンマシン「ウイダー HSV-010」(写真は、昨年最終戦時のもの)

昨年の勢いそのままに、2年連続チャンピオンを狙うホンダ陣営
 昨シーズンのGT500クラスは、シーズン初めにデビューした本田技研工業のHSV-010 GTが、初年度チャンピオンを獲得できるかどうかが焦点の1つだった。デビューしたばかりの新車は他車に比べて設計も新しいためそれだけ有利で、日産自動車がGT-Rをデビューさせた2008年も、レクサス(トヨタ自動車)がSC430をデビューさせた2006年も、いずれもデビュー初年のマシンがチャンピオンになっているからだ。そうした意味では、ホンダのワークスカーであるウィダー HSV-010 GT(小暮卓史選手/ロイック・デュバル選手)がチャンピオンになったのは、順当な結果だったと言えるだろう。

 今年は、いずれのメーカーも昨年と同じ車両を利用するため、基本的にホンダ HSV-010 GTが有利という構図は変わらないものと考えられている。ホンダはHSV-010 GTのパフォーマンスを改善するため、フロントの重量物の1つであるラジエターの位置を両サイドに移動して慣性モーメントを小さくすることでコーナーでのターンインをシャープにするなど改良を加えている。これにより、HSV-010 GTの性能はさらに改善されていると見られており、現時点では死角が見当たらないほどだ。

 アメリカインディカーシリーズから帰国し、心機一転SUPER GTに参戦を再開する武藤英紀選手と、昨年の全日本F3 Nクラスチャンピオンの小林崇志選手というフレッシュなコンビに一新されたARTA HSV-010を除けば、ホンダの5台はいずれの陣営も昨年と同様。継続性の観点から考えても強力な布陣になっていると言ってよいだろう。

 昨年のチャンピオンであるウィダー HSV-010 GTは、昨年と同様、どちらもファーストドライバーを務められる強力な組み合わせで、今年もチャンピオン最右翼だと言ってよい。また、M-TECがメンテナンスを行う、ホンダワークスの2台目と考えてもよい、チーム・クニミツのRAYBRIG HSV-010は、チーム・リーダー2年目の伊沢拓也選手と、GTデビュー2年目で気合いの入る山本尚貴選手という組み合わせは成長著しく、ホンダ勢の中で成長株と言えるだろう。ほかにも、KEIHIN REAL RACINGのKEIHIN HSV-010(金石年弘選手/塚越広大選手)は、昨年の菅生で初優勝を記録しており、こちらもチーム・クニミツと同様ウィダー HSV-010 GTの強力なライバルとなるだろう。

2008年以来のチャンピオン奪還を目指すNISMOチーム

大きな変更のあったニッサン、トヨタ陣営
 そのホンダに対抗して、2008年以来のチャンピオン奪回に燃えるのが日産陣営だ。日産は一昨年、参戦チームが3台に減ってしまい、しかもタイヤがミシュラン、ブリヂストン、ヨコハマと3メーカーに別れてしまったためデータも共有できない状況になるなど厳しい状況になった。今年は昨年までGT300を戦っていたMOLAがGT500にステップアップし、 S Road MOLA GT-Rとして参戦することになったため、4台となり、他メーカーにも台数で見劣りすることはなくなりつつある。しかも昨年はミシュランタイヤで戦ったワークスチームのNISMO MOTUL AUTECH GT-Rがブリヂストンになり、チーム・インパルのカルソニック IMPUL GT-Rとデータを共有することが可能になり、昨年までのデータ共有ができにくかった状況からは、改善される可能性が高い。

 ドライバーに関しては、ニスモチーム(本山哲選手/ブノワ・トレルイエ選手)は継続されたものの、他のチームは大きく変更があった。昨年までコンドーレーシングに在籍していたJ.P.オリベイラ選手はインパルへ移籍して松田次生選手と組み、インパルに移籍していたロニー・クインタレッリ選手はMOLAへと移籍し、GT300からの復帰となる柳田真孝選手と組む。なお、オリベイラ選手が抜けたコンドーレーシングのシートには、トヨタからの移籍となるビヨン・ビルドハイム選手が座り、安田裕信選手と組むことになる。

 その日産よりも大きな変更が行われたのがトヨタ系のチームだ。レクサスSC430でのレースはおそらく今年が最後になるであろうトヨタ陣営では、不動のエースと考えられていた脇坂寿一選手が、トムスを離脱しクラフトへと移籍。D'STATION KeePer SC430をアンドレ・クート選手とドライブする。脇坂選手が抜けたトムスでは、F1ドライバーだった中嶋一貴選手が国内レース復帰し、アンドレ・ロッテラー選手と組み、PETRONAS TOM'S SC430をドライブする。この他にも、平手晃平選手がセルモへ、石浦宏明選手がサードへ、大嶋和也選手がルマンへと移籍を果たしたほか、GT300から井口卓人選手がステップアップして新天地で戦うことになる。従来のレーシングスーツに見慣れたファンには、慣れるまで時間かかりそうだが、こうした移籍によりモチベーションを新たにする底上げ効果をトヨタ陣営としては狙っているのだろう。

 さらにトヨタ系チームには6台目となる新規参入チームがある。チーム・ウェッズスポーツ・バンドーがそれで、昨年まではIS350でGT300に参戦していたチーム・バンドーがついにGT500にステップアップした。車両名はWedsSport ADVAN SC430で、ドライバーは、昨年もバンドーで走っていた片岡龍也選手と昨年はFIA GTでGT-Rを走らせていたルマンウィナー荒聖治選手。荒選手は国内復帰となる。

 このように、日産、トヨタ陣営はドライバー構成が変わったり、そもそも新規参入のチームがあったりと、多くのチームが新体制という状況だ。そうした意味では、その新体制にいち早く慣れたチームが力を発揮することになるだろう。

全日本痛車選手権と化しつつあるGT300だが、競争もより激化
 これに対してGT300の方はさながら“痛車選手権”のような状況になりつつある。初音ミクがスポンサーになることに始まった萌系キャラクターの会社がスポンサーになり、車体に萌系キャラクターを描くトレンドは、昨年aprチームのカローラにエヴァンゲリオンの絵が描かれたことで人気が爆発。ピットウォークでファンが増えたりなどアピール力の向上が認められたこともあり、多くのチームが多くのキャラクターを採用している。

GT300 ゼッケンエントラントエントリー車両名称第1ドライバー第2ドライバータイヤ
2Cars Tokai Dream28エヴァンゲリオンRT初号機アップル紫電高橋一穂加藤寛規YH
4GSR&Studie with TeamUKYO初音ミク グッドスマイル BMW谷口信輝番場琢YH
5TEAM マッハマッハGOGOGO車検RD320R玉中哲二黒澤治樹YH
7DIRECTION RACINGエヴァンゲリオンRT弐号機DIRECTIONカルロ・ヴァン・ダム水谷晃YH
11JIMGAINERJIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458田中哲也平中克幸DL
14Team SG CHANGISG CHANGI IS350折目遼アレクサンドレ・インペラトーリYH
22R'Qs MOTORSPORTSR'Qs Vemac 350R和田久城内政樹YH
25SAMURAI Team TSUCHIYAZENT Porsche RSR都筑晶裕土屋武士YH
26Team TAISAN CINECITTAVerity TAISAN Porsche松田秀士峰尾恭輔YH
27LMP MOTORSPORTPACIFIC NAC イカ娘 フェラーリ山岸大山内英輝YH
31aprハセプロMA イワサキ aprカローラ嵯峨宏紀岩崎祐貴YH
33HANKOOK KTRHANKOOK PORSCHE影山正美藤井誠暢HK
34HANKOOK KTRハルヒレーシングHANKOOKポルシェ高森博士マイケル・キムHK
41Team TAISAN CINECITTANetMove TAISAN Ferrari山路慎一小泉洋史YH
43AUTOBACS RACING TEAM AGURIARTA Garaiya高木真一松浦孝亮BS
62R&D SPORTR&D SPORT LEGACY B4山野哲也佐々木孝太YH
66A speedtriple a Vantage GT2吉本大樹星野一樹YH
69ThunderAsia Racingサンダーアジア MT900Mメルビン・チュー吉田広樹YH
74aprCOROLLA Axio apr GT新田守男国本雄資YH
86JLOCJLOC ランボルギーニ RG-3坂本祐也青木孝行YH
87JLOCリール ランボルギーニ RG-3余郷敦織戸学YH
88JLOCJLOC ランボルギーニ RG-3井入宏之関口雄飛YH
360TOMEI SPORTSRUNNUP SPORTS CORVETTE田中篤岡村和義YH


BS:ブリヂストン、YH:横浜ゴム、DL:ダンロップ、MI:ミシュラン

 実に参加台数の多いGT300だが、この中で、2号車「エヴァンゲリオンRT初号機アップル紫電」、4号車「初音ミク グッドスマイル BMW」、7号車「エヴァンゲリオンRT弐号機DIRECTION」、27号車「PACIFIC NAC イカ娘 フェラーリ」、34号車「ハルヒレーシングHANKOOKポルシェ」には、キャラクターの絵が描かれている。

2号車「エヴァンゲリオンRT初号機アップル紫電」4号車「初音ミク グッドスマイル BMW」7号車「エヴァンゲリオンRT弐号機DIRECTION」
27号車「PACIFIC NAC イカ娘 フェラーリ」34号車「ハルヒレーシングHANKOOKポルシェ」

 このGT300では、今シーズンはMOLA、バンドウという2つの有力チームがGT500にステップアップしたことに加えて、フェアレディ Zで昨シーズンのチャンピオンを獲得したハセミモータースポーツ、2006年のチャンピオンでRX-7で参戦してきたRE雨宮が参戦中止を決定しおり、有力チームが4チームも減る結果になった。そうした意味ではGT300は戦国時代に突入したと言えるだろう。

 チャンピオンの最右翼と考えられるのは、来年以降の車両規定の関係で今年がGaraiyaとしては最後の年となるARTA Graiyaだろう。今年はメンテナンスを自社に変更し、ドライバーは従来からドライブしている高木真一選手と、新加入となる松浦孝亮選手との組み合わせとなる。さらに、タイヤをブリヂストンに変更するなど大幅な体制変更を行い、最終年での悲願のチャンピオン獲得を目指している。GT300には初参戦となるブリヂストンは、Garaiya1台だけというハンデをどのように解決していくのかがカギになるだろう。

 もう1台チャンピオンの最右翼と言えるのがエヴァンゲリオンRT初号機アップル紫電だろう。紫電も来年以降は車両規定の変更により、パフォーマンスが大きく下がることが予想されており、チャンピオンを狙える最終年となる今年には気合いが入っていることだろう。昨年、HASEMI Zでチャンピオンを獲得したヨコハマタイヤとのマッチングはすでに証明済みで、後は2年ぶりにフル参戦となるオーナードライバーである高橋一穂選手の進化次第と言えるのではないだろうか。

triple a Vantage GT2は、吉本大樹選手/星野一樹選手という有力ドライバーの組み合わせ

 この他、GT300で最大勢力となりつつあるFIA GT仕様のポルシェに関して注目したい。ハンコックタイヤを履くHANKOOK PORSCHE、SAMURAI Team TSUCHIYAのZENT Porsche RSRなど、ストレートだけが速いと見られているポルシェだが、徐々に戦闘力が上がってきており、上位4台がごそっと抜けた今シーズンはチャンスだ。また、同じくFIA GT仕様だが、FIA GT2の仕様となるtriple a Vantage GT2に関しても、2年目を迎えドライバーも吉本大樹選手/星野一樹選手という実績も、スピードも十分な2人の組み合わせでこちらも大きな飛躍に期待したいところだ。


金曜日には練習走行、土曜日に予選、日曜日に決勝というスケジュール
 なお、今週末に富士スピードウェイで行われる開幕戦は、やや変則的なスケジュールが組まれている。通常のSUPER GTは土日の2日間で行われるのだが、今回は東日本大震災の影響で事前テストが中止された影響で、金曜日(4月29日)に練習走行が行われる。

 この練習走行日は土日のSUPER GTとは別途に行われるため、入場料1000円(大人)で誰でも観覧することができ、パドックへも行くことが可能になる。金曜日とはいえ祝日なので、御殿場方面に観光に行く予定があるユーザーなら、ついでに立ち寄ってみるのもよいだろう。

 国内のモータースポーツで、最も人気を集めるSUPER GT。間もなく開幕となる。なお、観戦チケットは前売り券が大人5500円(当日券は6500円)で、中学生以下の子供は無料だ。チケットは、富士スピードウェイのWebサイトのほか、コンビニ・プレイガイドなどで販売されている。

(笠原一輝)
2011年 4月 28日