長崎EV&ITSプロジェクトが成果を発表
EV、ITS、情報、エネルギーネットワークを統合した社会を創出

エコアイランド構想

2011年4月28日発表



 長崎EV&ITSコンソーシアムは4月28日、「長崎EV&ITSプロジェクト」の成果を都内で発表した。

 長崎EV&ITS(エビッツ)プロジェクトは、長崎県五島列島において、EVとITS(高度道路交通システム)を活用し、次世代の社会を創出する事業。長崎県は、経済産業省による電気自動車(EV)やプラグイン・ハイブリッド車(PHV)普及の実証実験事業「EV・PHVタウン構想」のモデル地域に選ばれており、同プロジェクトはこの一環として行われている。

 プロジェクトは、五島列島にEVと充電設備、ITSインフラを整備し、「未来型ドライブ観光システム」を実現することで、EVとITS、エネルギーや情報のネットワークを統合した社会を模索する。これにより、地域の振興も図る。

 具体的には、2010年4月から五島市と新上五島町に約100台のEVを配備し、8基の急速充電器を設置。EVのうち80台は観光客向けのレンタカーとして活用した。また、ITSによって観光情報と充電器の案内をレンタカーのカーナビに配信するサービスを行い、4つのワークグループで地域におけるEVと情報、エネルギーネットワークの統合を検討した。

 これらにより、レンタカーの利用率が夏のピークで80%だが、通常は30%程度になること、ピーク時には充電器が足りなくなること、充電器やITS機器の使い方が分かりにくい場合があることなどが分かった。また、EVとITSの通信に必要なデータ、観光情報の提供方法、エネルギーネットワークの構築などについて検討した。

未来型ドライブ観光システムの概要。EV、PHVにITSで観光情報や充電器情報を配信する
4つのワーキンググループが、車両やインフラ、コンテンツ、スマートグリッドについて検討を重ねたEVレンタカーや充電器の利用状況
EVだけでなくITSやエネルギーネットワークを統合した社会づくりを目指す今後の取組ネットワークのプロトコルの提案も
川嶋弘尚会長

 長崎EV&ITSコンソーシアムの会長である川嶋弘尚 慶應義塾大学理工学部教授は、同プロジェクトを「単にEVを多数配備することにとどまらず、情報ネットワーク、モビリティネットワーク、エネルギーネットワークの融合した次世代の社会システムを、長崎県五島列島でエコアイランドとして実現することを目指す」と説明。「いままでITSは交通問題一般をどのように解決していくかということだったが、ITSという道具は同時にローカルな問題を解決する道具になりうる。ITSの新しい可能性を開発するという面からもこのプロジェクトには期待している」と、ITSの可能性を広げるプロジェクトであることをアピール。

 さらに今回の震災に鑑みて「大規模災害時におけるITS技術、情報通信技術、エネルギー管理技術の重要性を痛切に感じ取った。今後はこれらの技術を駆使して、被害を最小限に食い止めるインフラの整備に努める必要がある。EV、ITS、エネルギーが融合した次世代の社会を作ろうとする長崎EV&ITSプロジェクトは、将来の防災対策にも大いに寄与すると確信している」と、防災対策への応用が可能であることを示唆した。

 今後は、EVや充電器を増やし、情報提供フォーマットの構築、スマートグリッド構築のための技術要件の策定などを行い、全国での標準化を目指す。

(編集部:田中真一郎)
2011年 4月 28日