日産とJAF、EV用充電器付きロードサービスカーを実証運用
EVの電欠に対応、JAF神奈川支部に配備

EV用充電器付きロードサービスカー

2011年6月6日発表



 日産自動車とJAF(日本自動車連盟)は6月6日、電気自動車(EV)普及へ向けて、EV用充電器付きロードサービスカー(レスキューカー)の実証運用を開始することを発表した。

 急速充電器を搭載したEV用充電器付きロードサービスカーは、環境省のグリーンイノベーションの推進を目的とする「平成22年度地球温暖化対策技術開発等事業」の委託を受けて日産が開発したもの。EVの電欠(電池切れ)に対応し、ロードサービスカーの運用はJAFが担当。6月7日より実証実験での運用を行っていく。

 記者会見を行ったのは、日産自動車の常務取締役 川口均氏とJAFの専務理事久米正一氏、環境省 水・大気環境局の自動車環境対策課長 山本昌宏氏の3名。

 日産の川口氏は、「日産とJAFは連携を強化してEV車両のセーフティネットを築いていきます。EVは、家庭で充電を行うのが基本ですが、出先でも充電できるように急速充電器を配備してきました。ロードサービスのレスキュー車が充電器を装備することで、ユーザーにはこれまで以上に安心感を持ってEVに接してもらえるはずです。EVの普及により低炭素化社会やクリーンエネルギー化に貢献できると考えています」とコメント。

 JAFの久米氏は、「自動車メーカーの技術革新や政府のバックアップなどによりEVは普及し始めました。JAF会員の環境問題への意識も高く、JAFとしてもEV車両にサービスができるように、これまでに急速充電器を3個所の支部に配備してきました。ロードサービスカーの導入はその延長線上であって、これまで蓄積したロードサービスのノウハウや経験が活かされるはずです」と語った。

 環境省の山本氏は、「充電機能付きロードサービスカーの導入は、環境省の地球温暖化対策、クリーンエネルギー問題の技術支援の1つです」と言う。CO2を削減する低炭素社会の実現にはEVがさらに普及することが必要であり、このEV用充電器付きロードサービスカーの導入により、EVがより身近な存在になるだろうとの見通しを示した。

日産自動車 常務取締役 川口均氏JAF 専務理事 久米正一氏環境省 水・大気環境局 自動車環境対策課長 山本昌宏氏
EV用充電器付きロードサービスカーの仕様

 EV用充電器付きロードサービスカーは、日産「アトラス」をベースとしている。ボディーサイズは、5470×1900×2240mm(全長×全幅×全高)が通常となるが、上部に設置している警告灯を下げることができ、収納した場合の全高は2065mm。一般的な地下駐車場ならば入ることができるサイズだと言う。駐車場での電欠を想定して、この仕様になったと言う。

 搭載する充電器は、ディーゼルエンジンで発電を行う。発電機は、有効電力28.8kW、電圧AC460V三相、周波数60Hzのスペックを持つ。充電器の定格出力は20kWのため、リーフならば20分の充電で40km以上の走行が可能になる。充電器のプラグは「CHAdeMO(チャデモ)」方式なので、リーフ以外の国産EV車両も充電できる。

 またリーフに採用されているカーナビゲーションをレスキューカーにも搭載しており、これにより近くにある急速充電器を調べることができるという。

EV用充電器付きロードサービスカー発電機はボディー下部に搭載される
CHAdeMO方式の充電プラグ充電器は車両の中ほどにある。充電器の計器類は後方に配備
後方車両に注意を促す警告表示板や散光式の警光灯は車両上部に収納できる
JAF隊員による、リーフへの充電作業

 記者会見後、EV用充電器付きロードサービスカーが公開され、デモンストレーションとして実際にリーフへの充電が行われた。

 JAFの隊員によると、通常のロードサービスカーで作業する場合は、軍手や作業靴を履いているが、このEV用充電器付きサービスカーに乗る場合は、感電など作業の安全性を考慮して、ゴム製の手袋、長靴、専用のゴーグルを身に着けるとのこと。サービスカーで乗務する隊員は、昨年12月に日産教育センターでリーフを用いてレスキュートレーニングを受けている。

 EV用充電器付きロードサービスカーはJAF神奈川支部に1台が配備され、6月7日から年内一杯実証運用を行う。充電サービスは、JAF会員、非会員を問わず無料となっている。

(真鍋裕行)
2011年 6月 7日