日産、2011年度販売台数は10%増を見込む

日産自動車の田川丈二 執行役員

2011年6月23日発表



 日産自動車は6月23日、2011年度(2012年3月期)の業績見通しを発表、全世界の販売台数が前年度比9.9%増の460万台になるとした。同日、神奈川県横浜市の同社グローバル本社で報道関係者向けに説明会を開催した。

 発表によると2011年度の売上高は9兆4000億円(前年比+7.1%、以下カッコ内は前年比)。営業利益4600億円(-14.4%)、経常利益4410億円(-18%)、純利益2700億円(-15.4%)を予想する。想定為替レートは1ドル80円、1ユーロ115円。

 営業利益4600億円は前年比775億円減となるが、減益要因としては1550億円にものぼる原材料・エネルギーコストの上昇と、1350億円の為替影響が挙げられた。また中国での生産能力向上と海外でのバッテリー工場新設のための設備投資4100億円(前年比+31.4%)、次世代環境技術をはじめとする研究開発費4600億円(前年比+15.2%)も含まれる。

2011年度の全世界の需要は前年比+4.7%の7600万台を予測。日本は-2.2%。そんな中でも日産は日本で+1.7%の成長を見込む2011年度業績見通し。利益は落ちるが売上は目指す
2011年度営業利益の内訳。原材料費・エネルギーコストの増加は購買コストの削減で相殺され、450億円の増益要因としているが、原材料費・エネルギーコスト単体で見れば1550億円もの減益要因。これに1350億円の為替による減益が加わる2011年度のリスクと好機。供給制約とともに、需要面の不安もある

 同社の田川丈二執行役員は「震災の影響を最小化するため、懸命なものづくりの復興努力、関係会社・サプライヤーとの密接な協力、グループ・業界を超えた今までにない危機対応、全従業員・関係者のたゆまぬ努力により、前年比での上昇を見通すところまで来た。台数増が大きく寄与して、為替によるマイナス影響を大きく上回る増収となる」と見通しを説明。

 東日本大震災の落ち込みにも関わらず、2010年の倍となる20円の配当を予定する強気の業績予想の要因をまとめると、「震災の影響を最小化できたこと」「震災による国内の落ち込みを海外がカバーしたこと」「2010年度に19%増を記録した販売の勢いを、2011年度も維持できること」になる。

 第1四半期は日本大震災の影響により国内生産、販売とも落ち込んだものの、「生産・販売は正常に近いところに来ている」「日本の生産・販売は競合他社に比べればマイナスが少なく、5月でも日本国内の生産は前年比ほぼ横ばいというところまですでに来ている。実際に5月はシェア16%、前年比で3.7%ほど上がっていたし、6月も非常に順調で前年に近い数字ができるのではないかと思っている」と、国内では震災の影響が小さく、回復も早いことをアピールした。

 発表では「10月中に国内外の全工場でフル生産を再開」としているが、現状でもすでに前年並みの生産ができる状態になっていると言う。しかしこれは「我々が当初考えていた目標、2010年に販売19%増を達成した勢いで、本当に作りたかったレベルから言えば、まだ足らない。それが解消されるのが10月」としており、震災さえなければより高いレベルの拡大が見込めたとの見方を示した。

 したがって2011年度は、「すべての四半期で生産・販売とも前年を上回る予定でいる。あまり極端に上期や半期が少なくて、下期にものすごく大きな増産して回復するという分け方にはならない」。一方で、「下期は各社かなり販売を増やすと見込んでいるので、そこからが実際には厳しい競争にはなってくる」とした。

 生産台数と販売台数の見通しの、地域別の内訳は次のとおり。日本以外のすべての地域で販売が大きく伸びると見ており、全体として9.9%の成長を予想した。

地域生産台数(台)前年比(%)
日本115万+7.6
北米116万6000+8.7
欧州57万6000+0.9
中国113万5000+12.2
その他58万1000+38.0
460万3000+11.2

 

地域販売台数(台)前年比(%)
日本61万+1.7
北米133万
(米国:104万)
+6.8
(米国:+7.7)
欧州67万+10.4
中国115万+12.3
その他84万+18.5
460万+9.9

(編集部:田中真一郎)
2011年 6月 23日