ボルボ、EV向けのレンジ・エクステンダーを3種開発
テクニカル・コンセプトI~III

2011年7月12日発表



 ボルボ・カー・コーポレーションは7月12日、電気自動車(EV)戦略における次のステップとして、複数のレンジ・エクステンダーのテスト・カーを製作すると発表した。

 スウェーデン・エネルギー庁とEUの協力により実施されるこのプロジェクトは、3つの技術コンビネーションを採用しており、車両のテストは、2012年の第1四半期から開始される予定。

C30エレクトリック

 ボルボは、前輪を駆動する電気走行を補完するため、3気筒のガソリンエンジンを装備。その上で3つの異なる技術コンビネーションを網羅すると言う。3つのバリエーションすべてにおいて、ブレーキ・エネルギー回生システムを採用し、エンジンはガソリンとエタノール(E 85)の両方で走行することができる。また、テクニカル・コンセプトIとIIはC30エレクトリックをベースにしており、両方式ともC30エレクトリックよりも小さな電池パックを搭載して、エンジンと燃料タンクのスペースを確保している。




テクニカル・コンセプトI

テクニカル・コンセプトI:C30シリーズ(直列)方式レンジ・エクステンダー搭載
 C30エレクトリックをベースにし、60馬力(45kW)の3気筒ガソリンエンジンをリアの荷室のフロア下に搭載。40Lの燃料タンクも搭載する。

 ガソリンエンジンは40kWのジェネレーターとつながり、その出力は主に111馬力(82kW)の電気モーターを稼動させるのに使用される。ドライバーはジェネレーターでバッテリーをチャージすることで、電気での走行距離を増やすこともできる。レンジ・エクステンダーによって、EVの走行距離は搭載されている電池パックによる110kmの航続距離に加え、最大1000km走行距離を増やすことができる。


テクニカル・コンセプトII

テクニカル・コンセプトII:C30パラレル(並列)方式レンジ・エクステンダー搭載
 リアに、コンセプトIよりパワフルな3気筒ガソリンエンジンと、40Lの燃料タンクを搭載。コンセプトIIとコンセプトⅠの違いは、エンジンとモーターが並列で接続されていること。ターボ付き190馬力のガソリンエンジンは6速ATを介して後輪を駆動し、これによりガソリンエンジンで高速道路を走る状況では、燃料効率よく走行することができる。また電池を40kWのジェネレーターから充電することもでき、電力だけでの走行距離を伸ばすことができる。電気モーターは111馬力(82kW)。パワーソースはトータルで300馬力以上、0-100kmは6秒以下。

 また、レンジ・エクステンダーによって、EVの走行距離は1000km増え、車の電池パックでさらに最大75km走ることができる。


テクニカル・コンセプトIII

テクニカル・コンセプトIII:V60 パラレル(並列)レンジ・エクステンダー搭載
 すべてのドライブパッケージをボンネット内に納める。111馬力(80kW)の電気モーターは190馬力(140kW)を発生する3気筒ガソリンターボエンジン、2ステージのATと40kWのジェネレーターに補われている。ガソリンエンジンはギアボックス経由で前輪を駆動し、必要に応じて電池パックを充電できる。

 50km/hまでは常に電力だけで走行し、ガソリンエンジンはそれよりも高い速度で稼動する。充電量が予め決めた水準を下回った場合、エンジンは電池パックを充電するのに使われる。

 電池パックはリアのラッゲージスペースの床下に設置され、電力のみで50km走行できる。また、ガソリンもしくはE85用の45Lタンクを装備する。この技術で、レンジ・エクステンダーはトータルで1000km以上走行距離を伸ばすことができる。

 C30のシリーズ方式のハイブリッド・レンジ・エクステンダーは、EUプロジェクトの一環であり、パートナー8社の中、ボルボ・カー・コーポレーションが唯一の車メーカーとして参画する。2つの並列ハイブリッド・レンジ・エクステンダー・ソリューションはスウェーデン・エネルギー庁からの1080万スウェーデンクローネ(約1億3300万円)の補助金を受けて開発している。

 パワートレイン・エンジニアリングのバイス・プレジデントであるデレク・クラブ氏は、「ボルボは、この3つのプロジェクトにより、レンジ・エクステンダーのあらゆる可能性を評価することができます。C30エレクトリックとV60 プラグイン・ハイブリッド同様、快適さ、ドライビング・プレジャーと実用性など、お客様のご要望に妥協することなく、極限までCO₂を削減した車を作ることがボルボが目指すゴールです」とコメントしている。


(編集部:谷川 潔)
2011年 7月 12日