首都高、節電で消灯・減灯するも事故件数は低下 震災で損傷した大黒JCT連絡路は本復旧済み |
首都高速道路は7月27日、定例会見を行い、代表取締役会長兼社長の橋本圭一郎氏が、最近の通行台数や、震災後の対応、新たな取り組みなどについて発表した。
3月は通行台数が激減したが、徐々に回復し、6月には前年並みまで増加している |
■震災の復旧状況や節電対策による事故への影響
最近の通行台数は、震災直後は大幅に落ち込み、3月~5月と前年を下回る通行台数であったが、6月は前年並まで回復したと言う。7月は22日までの平均では前年を下回っているが、これは先日の台風の際に通行量が減少したためとのこと。
震災で損傷していた大黒JCT(ジャンクション)連絡路と湾岸線荒川湾岸橋の復旧状況は、大黒JCT連絡橋は、6月10日21時からの通行止めにより本復旧工事を実施、同月21日5時には通行止めを解除している。耐震補強工事中だった荒川湾岸橋は、2012年度内に完了する耐震補強工事とあわせて本復旧工事を実施するとした。
また、節電対策として、首都高総延長301.3kmの内、約75%で消灯や減灯を行っていると言う。節電実施後の交通事故発生状況については、3月15日~6月14日の3カ月間で2029件。過去3年の平均と比較した場合、通行量が約9万台減少(-8%)し、事故件数は668件減少(-25%)、夜間(18時~翌6時)の事故件数では、292件減少(-32%)していると言う。
その上で「一部利用者からは暗くて危ないといった声も上がっており、特に夜間の事故状況について、今後も注意深く見ていきたい」(橋本氏)とした。
被災地支援の取り組みとしては、首都高PA(パーキングエリア)ごとにオリジナルのスタミナメニュー(義援金メニュー)を販売するほか、川口PAでの東北物産フェア、八潮PAでのつくば市物産フェアを開催。また、首都高サービス会社の夏ギフトカタログには被災地応援商品を取り扱い、売り上げの一部を義援金として寄付していると言う。
そのほか、被災地における水難回避訓練の実施や、経済同友会の「IPPO IPPO NIPPONプロジェクト」や政府の復興アクションキャンペーンに参画しているとした。
震災による損傷個所の復旧状況と節電の実績。前年比で20%近く削減している | 節電による事故状況の変化。夜間の事故を形態別で見ると過去3年の平均と比べ追突事故の割合が8ポイント減少 | 被災地支援として、SA(サービスエリア)、PAで物産フェアなどを実施 |
■中央環状品川線と横浜環状北線の進捗状況
現在進行している建設事業は、中央環状品川線と、横浜環状北線の2個所。大橋JCT~湾岸線大井JCTまでを繋ぐ9.4kmの品川線は、シールドトンネル延長約8kmの内、5.4kmまで進んでおり、今年度内にはシールド掘進を完了する見込み。また大橋連結路のシールド工事は、下層トンネルの掘進を6月に完了し、現在上層トンネルの掘進にむけてマシンを準備中。2013年度には全線開通する予定となっている。
横浜環状北線は、シールド全延長5.5kmの内、1.1kmまで進んでおり、2012年度中にはシールド掘進が完了する見込み。新横浜や馬場出入口の工事では、焼夷弾や高射砲、縄文式土器などが出土したと言う。遅れていた用地買収は約90%が完了し、予定通り2016年度開通の見込みだと言う。
中央環状品川線の路線概要と工事進捗状況 | |
横浜環状北線の路線概要と工事進捗状況 |
■利用者の声を反映し、上半期で131件の改善
首都高では「お客様第一」の経営理念に基づき、Webサイトに設けた「グリーンポスト」や電話による「首都高お客様センター」で利用者の意見を聞き、随時改善を図っているとした。今年1月~6月の上半期では、それら意見を元に131件の改善を実施したと言う。
具体的な改善事例としては、三ツ沢線(上り)横浜駅西口料金所先の合流部において、合流部が危険との声を反映し、区画線を変更し左側から合流する形へ変更。羽田線(下り)において、平和島出口と平和島PA入口が分かりにくいとの声を反映し、路面案内表示を設置。羽田線羽田入口において、入口案内標識が分かりにくいとの声を反映し、矢印案内標識を導入。中央環状線(内回り)において、中央道方面を案内する看板が少ないとの声を反映して、100m手前と500m手前に案内看板を設置など。
利用者の声を反映し、上半期で131件の改善を実施 | 三ツ沢線(上り)横浜駅西口料金所先の合流部の改善事例 | 羽田線(下り)平和島出口と平和島PA入口の改善事例 |
羽田線羽田入口の改善事例 | 中央環状(内回り)西新宿JCTの改善事例 |
■環境への取り組みや海外駐在所の開設など
そのほか、業務執行体制を強化するための取締役・執行役員体制の見直しや、地震などの災害時の参集体制の強化として責任者が30分以内に本社に駆けつけられるようにするなど、組織体制の見直しを行ったと言う。
また、海外事業体制を強化するため、バンコク、ジャカルタに海外駐在事務所を開設。今後高速道路会社5社共同で、海外道路事業を推進する新会社を設立すべく準備を進めていると言う。
役員体制の見直しや災害時体制の強化を実施 | バンコクとジャカルタに駐在員事務所を設けるなど海外事業の強化を進めている |
海外展開の基本方針 | 海外事業への専門家の派遣やコンサル業務の受注など |
そのほか、大橋JCTでの田植えと言った環境への取り組みや、首都高が東京都の特定緊急輸送道路として指定されたことによる耐震診断を実施しているほか、新たな取り組みとして、PAで若手芸術家の作品を展示する「パーキングでアート」などの紹介も行われた。
環境への取り組み | ||
首都高の建物耐震診断 | PAを芸術空間にするパーキングでアート |
なお、次回の記者発表では、首都高の距離別運賃に関する発表をすると締めくくった。
(瀬戸 学)
2011年 7月 28日