メルセデス・ベンツ、電気自動車の将来を語る「スマートEVサミット2011」開催
試乗体験リポーターがEVの使い方、これからの課題を報告

スマートEVサミット2011の参加者

2011年8月27日開催



 メルセデス・ベンツ日本は8月27日、電気自動車の将来を語る「スマートEVサミット2011」を開催した。同イベントには、昨年秋から同社が募集していたマイクロコンパクトカー「スマート電気自動車」の試乗体験リポーター7名が参加し、電気自動車をどのように使ったかなどを報告するとともに、電気自動車の将来について議論した。

スマート電気自動車は乗車定員2名のEVで、航続距離は135km(NEDC:ヨーロッパ測定値)、最高出力30kW/41hp、最大トルク120Nm

 リポーターは、ブログとTwitterを開設しているか、開設してスマート電気自動車について頻繁に書き込みができる人を対象に、「スマート過ぎる巨漢」「都内のデートスポットを100個所以上スマート電気自動車で訪ねる人」「車があれば仕事に行くことができる人」「スマートフォンをこよなく愛する人」「若者の車離れを憂いている人」「日本で一番初めにスマート電気自動車を乗りたおしたい人」という各タイプの該当者が選定された。

 今回のサミットには、そのうち7名が参加。これまでに自身のブログやTwitterでスマート電気自動車の乗車体験をリポートしてきたが、全員が一堂に会したのは初めてのこと。

スマート電気自動車とサミット参加者参加した7名のリポーター

 サミットの開会に先立ち、メルセデス・ベンツ日本の東條和吉マネージャーが、ドイツ本社ではスマート電気自動車を2012年の春より発売することを紹介、今回の取り組みは日本で発売する上で重要なデータになると、この実証実験の意義を語った。

 今回の試乗体験で使用されたスマート電気自動車は、テスラモーターズ製リチウムイオンバッテリー(16.5kWh)を搭載する乗車定員2名のEV。航続距離135km(NEDC:ヨーロッパ測定値)、最高速度100km/h、0~60km/h加速6.5秒、最高出力30kW/41hp、最大トルク120Nmというスペックを持つ。充電時間は200Vで8時間、100Vで16時間。なお、CHAdeMO(チャデモ)規格には対応しておらず、日本で普及する急速充電器は使えない状況だ。

 サミットでは、実際にスマート電気自動車に乗ってきた体験を基にしたリポートを、各人が写真付きで行った。

“鬼羅あきら”氏

“鬼羅あきら”氏
 「河口湖に娘が住んでいるので、そこまでスマートEVで走って行きたかった」と、実際に河口湖までドライブした時の様子を紹介。「役場に無料の充電ポイントがあったのですが、ジョイントがあわなくて断念しました」と、ホテルで充電することになったが、普通の延長コードが合わなかったためスマートEVに付属のコードを繋げるのに苦労したことを語り、「インフラが整わないと日本市場では難しいのではないか」と印象を述べた。

近所の貯水池へ行った時の写真桜の季節に神社で撮影した写真河口湖で撮影した写真

水谷直也氏

水谷直也氏
 「もともと、奥さんがスマートに乗っていたのでスマート電気自動車に興味を持った」のが応募のきっかけと言う。報告では、公開されている充電ステーションでも充電口が異なり充電ができなかったことや、100V電源では物理的にアースが施されていないと充電されないといった事例を紹介。

 また、自宅での充電に関しても100Vでは十分な充電量を得られなかったため、200Vコンセントを新たに用意しなければならなかったと言う。

埼玉県越谷市にある「イオンレイクタウン」での充電風景。実際にはまったく充電できなかったと言うコンパクトな車体の活用例。実際には車止めがあるため、2台駐車では駐車スペースを大きくはみだしてしまった元々自宅に200Vが供給されているので、友人に頼んで200Vコンセントを設置してもらったそうだ

“V.J.Catkick”氏

“V.J.Catkick”氏
 「長期試乗をして色々と試してみたいと思って応募しました」との通り、バッテリー残量ギリギリまで使ってみた様子を披露したほか、「ラフに乗っても150kmは乗れる」「ワイパーやストップライトが意外と電気を食っている」といった体験談を披露。

 また、「音がしないので、歩行者に気づいてもらえないのでヒヤッとした」ことのほか、充電中に点灯するオレンジ色LEDは夜間に“クルマに火がついている”と通報されたことなど、数々の問題点を指摘した。

コンパクトな車体の活用例。駐車枠を大きくはみだしてしまっているバッテリーの充電容量限界まで走行したときのメーターこの状態で夜間に充電していたら「クルマが燃えている」と通報されたと言う

深水大樹氏

深水大樹氏
 自宅に200Vを用意して実験に参加した深水氏は、一晩で十分な充電量を確保できたと言う。コンビニに設置された充電ステーションに関しては「コンビニって10分ぐらいしか用事がないのでインフラとして使えるのか?」「有料になれば車を置いていくなど気兼ねなく利用できる」と、充電ステーションのあり方についての疑問を投げかけた。

 一方で、自宅にある太陽光発電パネルで充電している様子を紹介し、「電気を使いにくい状況ですが、こういう形ならば気兼ねなくEVを使えるので、太陽光で動くEVが増えればいいのかな」と、未来のライフスタイルについての私見を述べていた。

コンビニに用意された充電ステーション同じ道を走行方法を変えて走ってみた様子。左はエコ運転をした際の、右はラフな運転をした際のバッテリー残量太陽光発電パネルで充電している様子。スマートの充電中でも売電できる

“コウ@獅子海老”氏

“コウ@獅子海老”氏
 「スマートEVでスイーツ系のお店を色々と訪ねてみたいです」と、普段自転車で回るところを、スマートEVで訪れてみたと言う。

 また、時間貸し駐車場で提供する充電ステーションを使ってみたところ、充電のために駐車料金がかさんでしまったり、充電ボックスに鍵がかかっていて利用には登録が必要だったりした事例を紹介。充電インフラに不安があるため、近場の買い物に使うことが多かったとした。

スマート電気自動車でスイーツのお店に行ったときの様子時間貸し駐車場で提供していた充電用コンセント時間貸し駐車場では鍵付きの充電ボックスの場合もあり、利用するのに登録が必要だったことを紹介

“suseri”さん

“suseri”さん
 近隣に充電ステーションがないことから、基本的にはスマート電気自動車を街乗りで使用していたと言う。

 報告では、千葉県佐倉市から新宿までドライブしたときの様子を紹介。フル充電で出発し、新宿に到着したときにはバッテリー残量は50%ちょっとになったと言う。そのため、200Vの充電器でお昼を食べながら30分ほど充電したものの、帰宅時は残り10%だったそうだ。「結構危なかった」とそのときを振り返り、最後はエアコンを切っての走行だったことを紹介した。

 そしてこのドライブのあと、17時間ほど充電したが翌日は80%の充電量だったと言い、「半日でフル充電できるといいなと思うが、やはり100Vから200Vに変更しなければいけないのかな」と感想を述べていた。

千葉県佐倉市から新宿に到着したときのバッテリー残量新宿の公共駐車場に設置された充電用コンセント。管理人のおじさんからは「なんで急速充電器を使わないの?」と不思議がられたと言う自宅に到着した時のバッテリー残量

島津健氏

島津健氏
 島津氏は「自分が住んでいる鎌倉という街にスマート電気自動車がぴったりだと思い応募した」と言う。不動産業を営んでいることから物件を回る仕事に活用した事例を紹介、「毎日は乗らないですが、一回に20km走行するたびにバッテリーが20%減っていく感じ。なので一週間に1回充電しておけばいい」と、島津氏ならではの利用スタイルを示した。

 また、充電中のバッテリーを冷却するために回るファンの音に関して「不動産業としては、これは近所迷惑でトラブルになりかねないかな?」とも指摘した。

仕事での活用例物件の修理に使う道具をのせている様子島津氏は鎌倉にある古民家を中心に管理していると言う

司会を務めたジャーナリストの津田大介氏

 その後のディスカッションでは、ドライブの感覚や電気自動車の課題と未来について議論され、参加者からは「充電ステーションの拡充」「充電時間の短縮」「充電場所の提供」「充電場所に関する情報の充実」といったインフラに関する要望が出された。

 その一方で、「一度電気自動車に乗るともう(ガソリン車に)戻れない」「ガソリン車に乗ると罪悪感を感じる」など、電気自動車が持つ魅力に関してはおおむね好意的な意見が述べられ、電気自動車に乗ることによって変わる環境意識や、ライフスタイルの可能性が示された。

 司会を務めたジャーナリストの津田大介氏は、「世界的に電力の問題が注目されているなか、電気自動車に乗ることで人々の意識が変わる、ということが分かったことが最大の収穫。人々の意識が変わり、ライフスタイルが変わり、社会が変わるという議論が今日は深まりました。電気自動車が社会を変える旗印になることを期待したい」と議論を総括した。

メルセデスベンツ日本の東條和吉マネージャーメルセデスベンツ日本の村上茂泰アシスタントマネージャーメルセデスベンツ日本の島川杏子スマートブランドマネージャー

 最後に、同サミットの参加者一同は、3つのステイトメントを発表。今後も電気自動車を通じ、環境問題や新たなライフスタイルの創出について考えていく姿勢を表明した。

ステイトメント
1.「私たちリポーターは電気自動車の実体験をした先駆者として、自動車の未来像やエコなライフスタイルについてソーシャルメディア等を通じ意見を表明していきます」

2.「スマート電気自動車の今後の普及活動を担うMBJとして、試乗体験リポーターから得た意見を踏まえて技術革新に役立てるとともに、積極的に電気自動車のニュースや技術について情報発信を続け、体験できる機会を積極的に作っていきます。また、新しいライフスタイルを提案していきます」

3.「美しい地球環境を次世代に残すべく、日々の活動に“エコ”を強く意識していきます」

(椿山和雄)
2011年 8月 29日