シムドライブとダッソー・システムズ、EVの開発事業で長期提携 EVの先行開発車事業第3号の募集を開始 |
ダッソー・システムズ 代表取締役社長 末次朝彦氏 |
シムドライブ(SIM-Drive)とダッソー・システムズは9月12日、電気自動車(EV)の先行開発車事業において長期提携契約を締結したことを発表するとともに、先行開発車事業第3号の募集を開始。同日、都内において発表会を開催した。
■「CATIA バージョン6」を開発ツールに採用
シムドライブは、インホイールモーター型EVの開発を行っている慶應義塾大学環境情報学部教授の清水浩氏が代表取締役を務める企業。車輪それぞれがモーターを持つインホイールモーター型と、車体床下にバッテリーやインバーターといった走行コンポーネントを収める「コンポーネントビルトイン式フレーム」を核に、EVの普及に向けた技術の開発を行っている。
一方、ダッソー・システムズは3D CAD/CAM/CAE「CATIA」など、3D技術に長けたソフトウェア企業。今回の提携により、開発の基本ツールに「CATIA バージョン6」を用いて技術面からシムドライブのEV開発事業をバックアップする。当面の契約年数は3年。
バージョン6では、インダストリアル・デザインや設計、機構、設備といった分野のモデリングやシミュレーションを行うことができ、さらに遠隔地にいながらデータへのアクセスや開発への参加、進捗状況の確認などが行えると言う。
具体的には、自動車開発に関わる電気系、メカニカル系など複数の設計領域や市場の声を3D化できるようになり、これらは一元的なデータベースですべて管理できるようになるとともに、そこでためた知的財産は会員企業が自由に閲覧できるようになる。
また、バージョン6は、現在開発が行われている先行開発車第2号(2011年中)、来年2月に立ち上がる予定の第3号でも活用されると言う。
発表会では、始めにダッソー・システムズの代表取締役社長 末次朝彦氏が登壇。
末次氏は「我々のお客様は飛行機業界、自動車業界、ハイテク産業、建設業など11の業種に及ぶが、そのほかに3Dモデルは教育の現場や一般消費者の方々にも使って頂けるのではないかと考えている。言葉で説明するよりも、3次元のもので見せたほうが理解が深まるので、日本語、英語と同義語で3Dモデルが位置づけられるのではないか」と、同社が得意とする3D技術の活躍の場や特徴点を紹介。
そうした中で、「清水先生は核となる3Dモデルの情報を公開することでさまざまな意見を集約し、そしてまた新たなものを作っていく、そういう発想を持っている」「我々も世界中の知恵を集めて新たな進化をしていく、そういう仕組みを提供させて頂いているつもりでいるが、そういう意識をもっているのがシムドライブだった。関連企業のみならず、産学が混ざるといったさまざまな人が関わるプロジェクトを実証したいし、それは我々にとって意味のあること」とし、長期提携を結んだ理由を述べた。
ダッソー・システムズについて。日本法人は1994年に設立され、現在は東京、新横浜、名古屋、大阪、豊田の5拠点を構える | 1980年代から3D技術の開発を行っていた |
また、清水社長は「我々の先行開発車事業では参加企業との設計データを介したコミュニケーションが重要」とし、バージョン6がこれに欠かせないツールであるとした。その理由は「バージョン6が自動車開発に関わるあらゆる部門、スタッフにとって利用可能な柔軟性と拡張性、利用のしやすさを備えたシステムである」こと、「シムドライブに参加する企業とのコラボレーションとコミュニケーションを行うために極めて適したシステムである」ことなどを述べたほか、「第3号プロジェクトでもその重要性をますます高め、開発事業に貢献してくれるのではないか」と期待感を示した。
■先行開発車事業第3号の募集開始
同日、2012年2月23日~2013年3月31日を期間とする、先行開発車事業第3号の募集を開始した。30社程度を募集し、応募締切は2012年2月22日。参加費は2000万円。
先行開発車事業の特徴はオープンソースの手法にあるとし、先に述べたインホイールモーター技術とコンポーネントビルトイン式フレーム技術を核としたEV開発を体験することで、ここで得た技術や人的ネットワークを自由に利用できると言う。第3号事業においては、モーター利用の効率化、空気抵抗の低減、転がり抵抗の極小化を目指す。
先行開発車事業第1号~第3号のスケジュール | 先行開発車事業第3号の会費は2000万円 |
(編集部:小林 隆)
2011年 9月 12日