志賀自工会会長、TPPへの参加表明について「大きな第一歩」
11月定例記者会見より

志賀俊之自工会会長

2011年11月15日開催



TPP交渉参加について

 自工会(日本自動車工業会)は11月15日、定例記者会見を行い、志賀俊之自工会会長からTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)、円高、タイ洪水問題についての意見が述べられた。

 TPPについては、11月11日に野田総理から参加交渉に関する基本方針が発表されるとともに、先週末にハワイで開催されたAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の首脳会議において、TPP参加交渉に向け関係国と協議に入る旨が表明された。そのことについて、志賀会長は「長年にわたり、アジア太平洋地域で事業活動を行ってきた日本の自動車業界にとって、これは大きな第一歩と評価している」と述べるとともに、今後、TPPの実現によって同地域におけるビジネス環境の整備と自由貿易の進展が期待されることから、「協定の早期実現に向け、日本政府の積極的な取り組みを引き続きお願いしたい」とした。

 また、TPPに参加するメリットについて「我々自動車業界にとってはまず関税が撤廃されるメリットがあるが、それよりも自由貿易の中にはルールがある。そのルールが実際にどういう形で作られるか、あるいはどう設定されるかということについて、まったく蚊帳の外にいるのはリスクが非常に大きいと思う」と説明。その一方で、「輸出産業と農業が対抗軸になってしまったのは残念」との見方も示した。

各社の為替影響額は合計で約3300億円に膨れ上がっている

 長期化している円高問題についても触れ、為替水準が記録的な最高値の更新が相次いだことから10月末に政府・日銀が為替介入を行ったが、「その効果は一時的に現れたものの、原価の水準は厳しさを増してきており、私どもは今後の為替水準の先行きについて非常に憂慮している」と不安視する。また、先ごろ発表された国内の自動車各社の中間決算を見るとほとんどの企業が減収減益となっており、「これには大震災による減産の影響もあるが、長期化した円高、行き過ぎた円高が業績の下押し要因になっているのは言うまでもない」「各社の為替影響額は極めて大きく、乗用車8社合計で約3300億円(2011年度第2四半期決算)に膨れ上がり、各社業績に大きな重しとなっている」ことから、政府・日銀に対し「回復傾向にある景気が腰折れしないよう、また、国内空洞化阻止のためにも思い切った金融緩和策を含む、実効性のある円高対策といった諸施策などを早急に実施していただきたい」との要望を述べた。

 また、タイ洪水問題については、依然として予断を許さない状況が続くものの、日産を含め6社は一部で生産活動を11月14日に開始した。タイは100万台規模の市場を有しており、さらに日本メーカーのシェア率が高いこと、輸出基地としての位置づけも担うことから日本の自動車メーカーにとって重要な拠点となる。

 しかし直接的な被害を受けた工場では未だ目処が立たない状況となっており、志賀会長は「我々として一刻もはやく復旧していただきたいと切に望んでいる」と述べるとともに、「自工会は現地で被災したサプライヤー約300社に対しての情報収集、その情報を会員間で共有しており、その情報を元に代替部品の調達を検討し、生産再開に向けた目処を立てることになる」と、その対応策についても触れた。

(編集部:小林 隆)
2011年 11月 15日