トヨタ、プラグインハイブリッド「プリウスPHV」発表会
「平成23年度のCEV補助を使えば、275万円から購入できる」

トヨタ自動車 代表取締役副社長 内山田竹志氏(左)と、同代表取締役副社長 佐々木眞一氏(右)

2011年11月29日開催



 トヨタ自動車は11月29日、プラグインハイブリッド車(PHV)「プリウスPHV」を2012年1月30日に発売することを発表。同日、受注受付を開始し、都内において発表会を開催した。プリウスPHVは、これまで限定リース車など、ごく限られた市場への投入が行われていたが、一般に購入できることになる。

 量販版となったプリウスPHVは、性能面での改良が行われており、とくに環境性能などが進化。その詳細などが発表会において説明された。本記事では、その発表会の模様をお届けする。グレード構成などは、関連記事を参照いただきたい。

 プリウスPHVの開発については、同社で技術面を統括する代表取締役副社長 内山田竹志氏が、販売戦略については代表取締役副社長 佐々木眞一氏が解説。車輌概要については、開発責任者である田中義和氏が、説明を行った。

トヨタ自動車 代表取締役副社長 内山田竹志氏

トヨタの環境対応車戦略
 内山田副社長は、石油の需要と供給量の将来予測グラフを掲示。新興国の石油需要の高まりから、石油代替燃料が増えるとし、「燃料の多様化に対応するため、自動車のパワートレインも多様化していく」「トヨタはこれら多様化する燃料に対応する自動車を開発している」と言う。しかしながら、石油は使いやすく便利な燃料であるため、しばらくの間は石油が主流の時代が続くと予測している。

 そのため、「まずは、石油を節約して使うこと。すなわち、自動車の燃費を向上していくことが重要」と言い、「燃費向上技術の中で、トヨタがもっとも重要と考えているのがハイブリッド技術である」と語った。

 このハイブリッド技術は、電気自動車(EV)、PHV、燃料電池車(FCV)の要素技術を含むコア技術とトヨタでは考えている。

 脱石油への対応は、EVとFCVが有望と考えているものの、EV、FCVとも充電ステーションや水素スタンドなど社会インフラの構築が必要で、現状では、短距離をEVとして走行でき、長距離をHVとして走行できるPHVが「いつでも安心して制約なく使用可能」なクルマだと位置づけた。


石油供給能力と代替燃料の拡大自動車用燃料・パワートレーンの多様化ハイブリッド車の販売台数推移
ハイブリッド技術の展開「脱石油」への対応
PHVの位置づけPHVの特徴

 その上でトヨタの選択を紹介し、電池搭載量はラゲッジルームが広く使え、低コストな「中容量」のものを搭載。エンジン排気量は、HV走行時でもEV走行時と同等な走りを実現可能な「適正サイズのエンジン」とし、HVシステムは燃費効率のよい「シリーズ・パラレルハイブリッド」が、車両価格を考慮した上で最適な方式だと言う。

どんなPHVが優れているか
電池搭載量PHVの構成要素
HVシステム方式トヨタの選択

 国土交通省の調べによると、日本の乗用車の走行距離は、過半数が日あたり20km以下であり、EVと比較してPHVでも十分な石油消費量削減効果があると言う。トヨタでは、豊田市でPHVの実証実験を行っており、25台を3カ月間一般ユーザーに使ってもらった結果、平均燃費は44.8km/L、毎日こまめに充電する人では249km/Lを記録した。また、長距離走行の頻度が高い人でも41km/Lを記録しており、ユーザーの声としても好意的なものが多かったと紹介。改善要望としては、「もう少しEV走行距離が欲しい」「充電ケーブルの盗難が心配」などがあることも紹介していた。

 これらのことから、トヨタのPHVは航続距離の不安なく安心して長距離を走行可能で、家庭のコンセントから充電できるため、急速充電インフラも不要。総電力量4.4kWhのリチウムイオンバッテリーを採用し、電池量の適正化を図ったことで、手の届く価格と荷室・乗員スペースを確保したトヨタのPHVは、HVとEVの長所をあわせ持つクルマであるとした。

1日あたりの走行距離分布各方式による、石油消費量削減効果
豊田市での実証実験結果
ユーザーの声トヨタPHVの特徴プリウスPHVはHVに次ぐ次世代環境車の柱

代表取締役副社長 佐々木眞一氏

プリウスPHVは“つながるサービス”の第一歩
 佐々木副社長は、プリウスPHVを同社が3月9日に発表した「グローバルビジョンを具現化する最初の車」と紹介。プリウスPHVで、「将来のスマートコミュニティづくり、“つながるサービス”の第一歩を踏み出して行きたい」と語り、同社の未来を占うクルマであるとの意気込みを示した。

 スマートコミュニティは、トヨタスマートセンターというバックエンドサービスを中心に、エネルギーの需給を管理するもので、風力や太陽電池などクリーンなエネルギーからの電力供給、電力供給のピークシフトなどを提供する。

 また、“つながるサービス”は、同じくトヨタスマートセンターを中心に、クルマとユーザーと販売店が情報を共有できるサービス。クルマと販売店、ユーザーがつながることで、万が一故障した際もすぐに情報を共有でき、それがユーザーの安心感に結びつく。


プリウスPHV導入の意義日本での販売目標スマートコミュニティづくりの第一歩
ピークシフトや、クリーンエネルギーの活用を行うトヨタホームによる電気工事のサービス体制
電力利用をマネジメントするトヨタスマートセンターを中心に、クルマ、ユーザー、販売店がつながる

 これらは将来的な構想として語られたが、プリウスPHVでは具体的なサービスとして、スマートフォンを使った「eConnect」、SNS「トヨタフレンド」、「バッテリーいたわりチェック」「オーナーズナビゲーター」「充電サービス」の5つをパッケージにした「PHV Drive Support」が3年間無償で購入者に提供される。

 スマートフォンを使ったeConnectでは、充電情報やESPO(エコ運転サポート)などを知ることができ、SNS「トヨタフレンド」では、クルマからの電池残量などに関する“つぶやき”を受け取れる。また、バッテリーいたわりチェックでは、バッテリーの使用状況がトヨタスマートセンターに蓄積され、販売店に入庫した際に、ユーザーに使い方をアドバイスできる。オーナーズナビゲーターは納車前からPHVの使い方を知ることのできるコンテンツで、充電サービスはディーラーなどに設置された充電器「G-Station」の利用権になる。

 これら新しい領域に取り組むことで、グローバルビジョンの実現を目指していくと語った。

eConnectサービスイメージPHV Drive Supportを3年間無料で提供

開発責任者の田中義和氏

4点の商品強化を図ったプリウスPHV
 開発責任者の田中義和氏は、「開発途中で得られたお客様のご要望を反映し、4点の商品強化を図った」と言い、「手の届く価格」「さらに高めた環境性能」「使い勝手の向上」「次世代環境車にふさわしい“つながる”機能」を紹介。

 価格に関しては、プリウスPHVは3,200,000円から購入できるが、平成23年度のCEV補助(クリーンエネルギー自動車等導入費補助)を使うことで、45万円の補助を受けられ、2,750,000万円から購入できると言う。

リース版から、量販モデルへの変更点補助を使えば2,750,000円からとなり、手の届く価格を実現したとする

 環境性能については、「すべての面で、以前のリース用プリウスPHVを上回っている」と言い、「車体の軽量化、走行抵抗の低減、システム効率の改善により、EV走行距離は23.4kmから3km伸びた26.4kmになり、プラグインハイブリッド燃費(JC08モード)についても57km/Lから61.0km/Lに向上している」と、その進化について語った。また、プリウスPHVは燃費だけでなく、電費にも優れており、EV電費(JC08モード)114Wh/kmは同クラスのEVを凌ぐ値だと言う。

 EVの電力を使い切ってしまった後は、ハイブリッド走行に移るが、ハイブリッド燃費(JC08モード)も、ハイブリッド車「プリウス S」の30.4km/Lを超える31.6km/Lを実現。「よい燃費で安心してロングドライブを楽しめるクルマ」であるとした。

環境性能EV走行距離を拡大プラグインハイブリッド燃費の計算方法。国交省によって定められたUF(ユーティリティファクター)を使い、算出する

 また、PHVであるため充電時の使い勝手にも配慮。ワンタッチで充電リッドが開くようになり、夜間の充電時にも便利なようLED照明が取り付けられている。そのほか、バッテリーの小型化を図ることで、プリウス同等の443Lの荷室容量を確保。リアデッキ下の収納スペースも4.7Lから40.5Lに拡大している。

 次世代環境車にふさわしい“つながる”機能としては、スマートフォンとの連携機能を紹介し、外観についても加飾を施すことで、プリウスとの差別化が図られている。

 「1997年に世界初の量産ハイブリッド車としてプリウスが誕生し、今日のハイブリッド車普及の牽引役となったように、プリウスPHVが電動車両普及の牽引役として、クルマと人、社会全体にイノベーションを起こし、次の時代のために、新たなモビリティ社会の扉を開くきっかけになりたい」と、発表を締めくくった。

充電リッドを改善し、使い勝手の向上を図った充電ケーブルも変更
動力用のバッテリーも小型化したプリウスと同等の荷室容量を実現
EV/HVを切り替えるスイッチを装備EV走行をサポートするディスプレイスマートフォンを使った“つながる”機能
プリウスとの変更点

プリウスPHV GのコクピットHV/EV切り替えボタンは、セレクトレバー左上に装備マルチインフォメーションディスプレイ
エネルギーモニター表示ハイブリッドシステムインジケーターEV走行比率表示
プリウス同等の容量を実現したラゲッジルームラゲッジルーム下の収納スペース
充電ケーブルAC200VのコネクターAC100Vのコネクター
ルームランプ中央にあるのが、Bluetoohのペアリングボタン。このボタンを押してスマートフォンと接続する充電表示ESPO表示
充電ポイントを持つディーラーなどを地図から探すことができる充電ポイントとなる「G-Station」
カットモデルの展示などが行われていたラゲッジルーム下には、リチウムイオンバッテリーが収まるリアゲート側から見た、リチウムイオンバッテリー
冷却用のファンを2基装備している充電リッドを開いたところ充電リッドの車体側は、このような配線がされている
バッテリー単体の展示も行われていたバッテリーは、パナソニックグループの三洋電機製車体内に設置されている充電器の単体展示

(編集部:谷川 潔)
2011年 11月 30日