マツダ「CX-5」ディーゼルは国内でも販売比率50%以上を狙う

CX-5とマツダの山内会長

2012年2月16日開催



 マツダは16日、都内で「CX-5」の発表会を開催した。CX-5の詳細については関連記事を参照されたい。

田中主査

第3のエコカーの真打
 「ドライブをしていたら、楽しくて思いがけず遠くまで来てしまった。CX-5で、このような体験を乗る人すべてに提供したい」とマツダ プログラム開発推進本部の田中英明主査はCX-5の解説を切り出した。

 田中主査はCX-5の魅力を「魅せる歓び」「意のままに操る歓び」「使い切る歓び」「長くつきあう歓び」に分けて解説。魅せる歓びは、同社のデザインコンセプト「魂動(こどう)」を初めて全面的に採用したスタイリングだが、それはカッコよさだけでなく「機能とデザインを統合したものこそが、お客様の高い満足を得る」という開発陣の考えを披露。

会場に展示されたディーゼルモデル「XD」。「スカイアクティブ」のバッヂ以外、グレード名や搭載エンジンを表すようなものは外観にまったくない。「XD」は「クロスディー」と読み、「ガソリンとディーゼルのよさを併せ持ち、無限の可能性を持つ」という意味が込められていると田中主査は言う
リアサイドスポイラー。このほかテールランプも空力に一役買っている

 その例としてリアサイドスポイラーを挙げた。CX-5には空力を考慮してルーフスポイラーが標準装備されるが、その下端がリアウインドウ側面を覆うように伸ばされている。これを「流麗なシルエットを形作りながら、空気の巻き込みを最適化するのに効果的なアイテム」とした。

 意のままに操る歓びは、スカイアクティブ技術でもたらされる操安性のことだが、「クルマと一体となって走る爽快感、快適で安心感の高い乗り心地」を目指したとした。そのためにまず、ステアリングの握り心地やオルガンタイプのアクセルペダルなどを採用してドライビングポジションを改善。スカイアクティブ・エンジンによるパフォーマンス、スカイアクティブ・シャシーによる、ステアリング操作と車体の動きが一致した操作感などを例として挙げた。

高圧縮のガソリンエンジン「スカイアクティブ-G」(左)と低圧縮のディーゼルエンジン「スカイアクティブ-D」スカイアクティブ・シャシーによりヨー応答に対する横G応答の時間遅れを改善し、リニアなハンドリングを実現した
空力のためにアンダーフロアの形状にも配慮。会場には傾けた車両を展示し、鏡でアンダーフロアを見られるようにしていた

 使い切る歓びは「機能性」。CX-5にはリアゲートを開けると一緒に開くトノカバー「カラクリトノカバー」と、リアゲートからリモコンレバーで後席を倒せる「カラクリフォールド」が採用されている。これだけでも十分便利だが、カラクリカバーの半分はメッシュになっており、後席とコミュニケーションを取りながら荷物を積み込めるよう配慮されていることを紹介した。

 長く使う歓びは環境性能と安全性能。スカイアクティブエンジンの環境性能や、低速自動ブレーキ「スマート・シティ・ブレーキ・サポート(SCBS)」などの安全機能を紹介。「第3のエコカーの真打」と締めくくった。

後席は4:2:4の分割可倒式で、後席左右に子供が乗っていても中央だけで長尺物を積めるというデモ。トノカバーの下半分がメッシュになっているため、後席の子供に声をかけながら荷物を積める左手前にカラクリフォールドのリモコンレバーが見える
横滑り防止装置やトラクションコントロールシステムは標準で装備されるSCBSのレーザーセンサーはフロントウインドー上部に
死角になりがちなAピラーだが、Aピラーとドアミラーのレイアウトなどで視界を確保したリアと左ドアミラー下部のサイドカメラは全車標準装備
カメラの映像は、カーナビ装着車以外はルームミラー内に表示されるシフトレバーの前の大きな小物入れはサテンクロームの加飾で縁取られ、小物入れの位置をわかりやすくしている。これもデザインと機能の統合の1つ
ディーゼル車は19インチ(中)、ガソリン車は17インチを標準で履く

 

山内会長

壮大な改革の成果を問うCX-5
 発表会で山内孝会長・社長兼CEOは「マツダは90年の歴史で初めて、開発、生産、調達、販売などあらゆる事業領域を通して壮大な構造改革を行なってきた。厳しい経営環境の中、今日まで経営資源を集中し取り組んできた3つの改革。その成果を問うクルマがこのCX-5」とCX-5への意気込みを語った。

 3つの改革のうちの1つが、「スカイアクティブ」技術。すでに何度も報じてきたようにパワートレーン、シャシー、ボディーのすべてにスカイアクティブ技術を採用した初の製品であり、後処理なしでポスト新長期規制をクリアするディーゼルエンジンをラインアップする。

 山内会長はこのディーゼルエンジン「スカイアクティブ-D」について「日本で販売されているすべてのSUVの中でもっともすぐれた燃費、18.6km/Lを達成しながら、4リッターV8ガソリンエンジンなみの最大トルクを提供する。試乗していただいた方からは、“いままでのディーゼルのイメージを変える異次元の走り”とコメントをいただいた。私も試乗したが、40年以上試乗している私が初めて味わう静かさ、ねばり、圧倒的な加速に魅了された」と紹介。

 「常識をくつがえすスカイアクティブ-Dエンジンのパフォーマンスと燃費、戦略的な価格や免税・補助金の効果を合わせ、日本市場でも勝算ありと確信している」と自信を見せた。

 日本とほぼ同時期に欧州、北米、豪州で発売されるCX-5の、全世界での年間販売目標は16万台。日本では1000台/月、年間で1万2000台を販売する見込みだが、国内でのディーゼルの販売比率50%以上という、意欲的な目標を掲げている。

第3のエコカー、ディーゼルの販売比率は50%以上が目標

必ず成功させる
 残りの改革が「ものづくり革新」と「販売現場の革新」。

 ものづくり革新は、自動車メーカーとしては大きいとは言えないマツダが、世界市場の多様なニーズに応えながら生き残るための改革で、その核となるのが「一括企画」。

 山内会長は例としてスカイアクティブエンジンを挙げ「2015年までにグローバルで必要なエンジンのバリエーションを最初にまとめて企画したうえで、1つの燃焼特性をあらゆる排気量のエンジンに展開できるようにした」「生産面でも、ガソリン、ディーゼルの違いや排気量の違いがあっても、同一ラインで加工できるようにした。その結果、例えばディーゼルの販売比率が予想を超えた場合でも、高い効率を保ったまま柔軟に対応可能」と説明。

 最大限のスケールメリットを発揮できる仕組みを作り、開発効率で30%以上、車両コストで20~30%以上、生産設備投資で20~60%以上の改善を実現、円高で日本から輸出しても利益を出せる体制を築いたとした。「私達が(ものづくり革新に)5年間取り組んできた成果はCX-5に結実しているし、今後すべてのスカイアクティブ車に同様の成果を取り込んでいく」。

 販売現場の革新は「スカイアクティブ搭載車を販売している市場では、商品力に見合った価格でお客様にお届けし、残存価値も向上、お客様の信頼と満足も高まりつつある」と、スカイアクティブによって実現されたと言う。

 「開発から販売まで、メーカーのエンジニアからディーラーのスタッフまで、国内外のマツダグループが心を1つにして、究極のチャレンジを続けている。CX-5はマツダにとって非常に重要なクルマ。必ず成功させると約束する」と締めくくった。

コモンアーキテクチャーにより燃焼特性を統一し、開発を短縮汎用機を徹底活用して工程を削減して生産効率を向上ものづくり革新の成果

(編集部:田中真一郎)
2012年 2月 17日