【特別企画】日産「リーフ」で沖縄を走ってみた
沖縄本島の充電設備の“今”と“これから”


横浜DeNAベイスターズが春季キャンプをはっている宜野湾市立野球場。果たして絶好調男・中畑清新監督はいるのか!?

 今年のプロ野球はセ・リーグ、パ・リーグともに3月30日に開幕する。それに向けて、各球団ともすでに春季キャンプインしており、その様子はテレビやスポーツ新聞で連日報道されている。

 筆者はそれほど野球に詳しくないが、今年の春季キャンプについて調べてみると、福岡ソフトバンクホークスと埼玉西部ライオンズを除く全球団が、沖縄(本島、宮古島、石垣島、久米島)でキャンプを行っている。ちなみに広島東洋カープと読売ジャイアンツは宮崎県、オリックス・バファローズは高知県でも実施している。

 「なぜ野球の話?」と思われる方もいるかもしれないが、今回この春季キャンプまっただ中の沖縄で、日産自動車の電気自動車(EV)「リーフ」に試乗する機会を得た。リーフのインプレッションはほかの記事に譲るとして、ここでは沖縄での急速充電器の設置状況を見学するとともに、JTBの観光プロジェクト「キャンプる~ okinawa!キャンペーン 2012」の一環として用いられる、タブレット端末を用いた観光システムを使ってきたので、その模様をお届けする。

 ちなみに春季キャンプはもうすぐ終了するが、キャンプ地は以下のとおりとなっている。

リーグ昨年の順位球団キャンプ日程(1軍)キャンプ地
セ・リーグ1中日ドラゴンズ2月1日~29日北谷公園野球場(沖縄県北谷町)
2東京ヤクルトスワローズ2月1日~28日浦添市民球場(沖縄県浦添市)
3読売ジャイアンツ2月1日~18日宮崎県総合運動公園(宮崎県宮崎市)
2月19日~28日沖縄セルラースタジアム那覇(沖縄県那覇市)
4阪神タイガース2月1日~29日宜野座村野球場(沖縄県宜野座村)
5広島東洋カープ2月1日~14日沖縄市野球場(沖縄県沖縄市)
2月15日~29日日南市営天福球場(宮崎県日南市)
6横浜DeNAベイスターズ2月1日~28日宜野湾市立野球場(沖縄県宜野湾市)
パ・リーグ1福岡ソフトバンクホークス2月1日~29日生目の杜運動公園(宮崎県宮崎市)
2北海道日本ハムファイターズ2月1日~28日名護市営球場(沖縄県名護市)
3埼玉西部ライオンズ2月1日~21日南郷中央公園(宮崎県日南市南郷町)
4オリックス・バファローズ2月1日~17日宮古市民球場(沖縄県宮古島市)
2月18日~21日沖縄県那覇市周辺(沖縄県/練習試合)
2月23日~3月4日高知市東部野球場(高知県高知市)
5東北楽天ゴールデンイーグルス2月1日~14日久米島野球場(沖縄県久米島町)
6千葉ロッテマリーンズ2月1日~23日石垣市中央運動公園野球場(沖縄県石垣市)

※参照:日本野球機構オフィシャルサイト

リーフは最高出力80kW(109PS)、最大トルク280Nmを発生するモーターを搭載。リチウムイオンバッテリーは24kWhの容量を備える。最高速度145km/h、フル充電時の航続距離は200km(JC08モード)

沖縄県でEV普及に向けた取り組みを行っているAECの松本宗久部長

沖縄でEVの普及を目指すAEC
 今回の試乗会では、沖縄県でEV普及に向けた取り組みを行っているエー・イー・シー(AEC)が説明会を開催し、同社の松本宗久部長が充電設備について説明した。AECは、県内の関連企業などが協力し、充電設備や運営を行うことを目的に2010年に設立された企業だ。

 ここで沖縄について触れてみると、沖縄県(本島)は南北に約130km、東西に約30kmと、南北に細長い。人口は約120万人で自動車登録台数は約90万台と、自動車の保有率が高いのが特徴。沖縄本島に訪れる観光客は年間で550万~600万人に上り、そのうち半数がレンタカーを利用すると言う。レンタカーの登録台数は2万台で、うち220台(日本レンタカー100台、オリックスレンタカー50台、日産レンタカー70台)がリーフとなる。

 このような特性を備える沖縄本島は、面積がそれほど広大ではないこと、南北に走る主要幹線道路が少ないことから充電設備を効率的に配置できるため、利用者は航続距離を気にすることなく利用できる。

 その一方で課題もある。リーフで例えると、ベースグレードの「X」の価格は376万4250円(補助金を活用して298万4250円)と、決して安くない。そのうえ、「沖縄県は47都道府県のなかで国民所得が47番目と、もっとも貧しい。その貧しい県にEVを普及させるのはなかなか難しい」と、松本氏は言う。

 そのため、AECはEVレンタカーがその役割を終えたあと、県内の一般ユーザーが中古車としてEVを購入・利用できるようにすることを目標にしている。さらに、沖縄本島には現在27基(18個所)の急速充電器(それに加え宿泊施設や観光スポットに普通充電器が配置されている)があり、その数を2013年までに50台程度まで増やし、さらなるEVレンタカーの普及促進を図る。

 こうした仕組みを構築することで、レンタカー事業者はレンタカーで収益を得た上で売却益も見込めることから、EVの大量導入が可能になるとともに、県内の一般ユーザーにリーズナブルなEVの中古車を普及させていくことができると言う。

AECについて沖縄本島には約120万人の人口、約90万台の自動車登録台数と、自動車の保有率が高いのが特徴
AECは県内の一般ユーザーが中古車としてEVを購入・利用できるようにすることを目標にしている沖縄本島には現在27基(18個所)の急速充電器が整備されている

急速充電器の普及に向けた課題
 さて、AECが提供する急速充電サービスを利用するには、「E-Quick 充電スタンド利用カード」が必要となる。

 充電方法は簡単で、急速充電器が設置してある施設に行き、リーフの充電ポートリッドを開いて充電コネクターを挿入する。そして急速充電器の近くにあるE-Quick端末の認証器に利用カードをかざすと、充電が開始する仕組みだ。

 このE-Quick端末はセンターサーバーとネットワーク回線で繋がっている。これにより、各急速充電器の利用状況がリアルタイムで把握でき、EVレンタカーの利用者に混雑状況を配信できるとともに、1基あたりの急速充電器のデータが蓄積できることで、シーズンごと、時間ごとに混雑予想が可能になると言う。

沖縄県のファミリーマート(11店舗)で充電してみた。まず充電ポートリッドを開いて充電コネクターを挿入する。次に急速充電器の近くにあるE-Quick端末の認証器に利用カードをかざすと、充電が開始される。ちなみに急速充電器の場合、約10分の充電で約50km走行分、約30分で80%充電される
沖縄自動車道 伊芸SA(サービスエリア)でも充電。伊芸SAでは急速充電器の隣にE-Quick端末があるが、2013年3月まではNEXCO西日本による急速充電インフラの実証調査のため無料で利用できる
沖縄美ら海水族館でも充電。ここでは普通充電器が2基用意されている。普通充電器を利用する場合は、車載の充電ケーブルを使って行う。普通充電の場合は車載の充電ポートカバーを使うことができ、充電ポートリッドのロック機構で固定する。このカバーを使えば、水族館を見学している間に充電できる
道の駅 許田やんばる物産センターも急速充電器が設置してある。要所要所の観光地に急速充電器があるので、バッテリー残量で不安を感じることはあまりなかった
今回宿泊したカヌチャベイ ホテル&ヴィラには普通充電器が設置してあった。観光から帰ってきて普通充電器に接続しておけば、翌日にはフル充電で使えるだろう。ちなみに普通充電の場合、約8時間で100%充電となる

 カードは各レンタカー会社で登録することが可能だが、レンタカーでこのカードを使用する場合、利用登録料として2000円(充電時の利用料は無料)が必要になる。無論、ホテルなどに設置されている普通充電器だけを利用するということであれば、AECとの契約を結ぶ必要はないが、沖縄県での積極的な移動を考えているのであれば、やはり急速充電サービスは必要になるだろう。

 利用する側としては少々高い金額に思えるが、それについては「観光客の方は、ホテルに宿泊する際に(普通充電で)充電をしておけば急速充電をしなくてもよいのではないかと思う方が、今後増えるのではないか」「今後バッテリー性能が向上していくなかで、充電回数は確実に減っていく」(松本氏)。そのため「コストのかかる急速充電器を導入した企業が、急速充電のニーズが減少していくなかでどう会社を維持していくかを考えた」。そこで、利用カードを使った認証システムを採用するに至ったと言う。

 また、近年はEV普及に向け各自治体がさまざまな取り組みを行っているが、「我々(AEC)は自治体がインフラ整備をするのは、持続発展性がないのではないかと考えている」と述べる。その理由は、「各自治体が電気を供給するサービスステーションを持つとなると行政サービスになるため、税金で設備を買い、無料で電気を提供することになる。この仕組みが未来永劫持つのかどうか」「急速充電器を維持するのにコストが必要になる。今の電力事業法の中では、電気料金は50kWあたり大体7万5000円~8万円/月くらいかかる。1年でおよそ100万円/基。この金額は電気を使っても使わなくても必ずかかる」と言い、こうしたコストが問題になると指摘する。また、自治体がこうしたサービスに乗り出すと、民間企業が介入できないデメリットが生じると言う。

 そのため、沖縄では急速充電器のような高い設備は民間主導で行い、行政は普通充電器を各施設に増やしたり、県民がEVを購入する際に補助金を出したりするなど、明確な役割分担をしているそうだ。

 ちなみに、急速充電器を導入する費用は1基あたり700万円ほど必要になると言う。内訳は急速充電器が補助金を受けて150万円(本来は300万円)、設置工事費用が250万円、キュービクル式高圧受電設備が300万円。松本氏は「よく急速充電器の価格が下がったというニュースを見るが、設置工事費用と高圧受電設備費が必ず必要になるため、いくら急速充電器の価格が下がっても、ほかにかかる費用が高いため急速充電器の導入を見送る業者も多い」と問題点を指摘していた。

 このように、現在はEV向けの充電器を設置する際、契約容量を低圧から高圧に変更しなければならないケースがあり、その場合はキュービクル式高圧受電設備を新設する負担が生じる。しかし、これを避ける観点から需要地の分割や、1需要地における2引込みの契約を可能にするという政府主導の動きがあり、「それこそ業者側からすると安い値段で充電設備を設置できる。そこが充電設備が普及するブレークポイントになる」と、松本氏は政府の動きに期待を寄せていた。

 このように、急速充電器を導入するには現在は高い設備導入費と維持費が必要になるため、コストがいかに下がるかがインフラが整う重要なポイントになる。その一方で、利用者側から見るとバッテリーの性能が向上することは歓迎すべきことだが、バッテリー性能が向上すると充電回数が減少(=収益の減少)し、その結果、設備を導入する企業が維持できなくなるという側面がのぞく。沖縄のみならず、EV普及に向けた課題はこうした点にあるのだろう。

AECが発行する急速充電器利用カードについてAECの役割は充電インフラの整備と充電インフラのネットワーク構築AECの収入構成
AECが管理するE-Quick端末はセンターサーバーとネットワーク回線で繋がっており、各急速充電器の利用状況がリアルタイムで把握できる急速充電器を導入するには、1基あたりおよそ700万円が必要になる充電事業のハードルの高さについて。月に314台以上の車両が急速充電器を利用してはじめて利益がでる

プロ野球のキャンプ情報をリアルタイムに配信
 さて、レンタカーのリーフを借りると付属してくるタブレット端末についても触れておきたい。

 今回使用したタブレット端末は、JTBの観光プロジェクト「キャンプる~ okinawa!キャンペーン 2012」の一環で使われているもの。レンタカープラン「リーフでキャンプる~」から予約すれば無料で付帯する。リーフの予約は沖縄トラベルナビの特設サイト(http://okinawa.travel/rentacar/searches/camp/)から行える。

 リーフは、専用設計したEV専用情報通信システム「EV-IT」を採用しており、情報集中管理センターの日産カーウイングスデータセンターと、車載のカーウイングス専用車載通信ユニット(TCU)を介して常時通信している。


 キャンペーンでは参加者同意のもと、リーフと日産カーウイングスデータセンターが常時通信することで得られる車両の位置情報を、バンダイナムコゲームスに提供する。これにより、リーフのレンタカーを運転しているユーザーに、走行中の位置周辺の沿線情報をタブレット端末に表示して知らせてくれる。

 具体的には、キャンプ地や急速充電ができる場所などを紹介する「沖縄マップ」、タブレット端末からのリモコン操作による空調管理やバッテリー状態表示などをサポートする「日産リーフガイド」、当日のトレーニングメニューといった情報を配信する「キャンプ情報」、一定の場所を通過するとその土地にゆかりのあるCM曲や民謡が流れる「道うた」、210店舗ある沖縄のファミリーマートに近づくとゲームが自動起動し、そのゲームの点数によって急速充電器のあるファミリーマート(11店舗)でくじ引きできる「ファミマスタジアム」という、5つのサービスで構成されていた。

タブレット端末を使いながら横浜DeNAベイスターズの春季キャンプ地を訪れたところ、ちょうど中畑監督が! この人を見たくてキャンプ地を訪れる人も少なくないだろうと、筆者の勝手な予想
タブレット端末で横浜DeNAベイスターズのキャンプ地についてや、キャンプ中の予定といった情報を得ることができた走行距離のほかCO2削減量まで確認できる各球団のキャンプ情報などをライブで配信
ある場所を通過すると、沖縄の民謡が流れる。突然音楽が流れるので、不意を突かれると少しビックリするかも急速充電器の設置個所を確認できた周辺情報としてグルメ情報も見れた
沖縄のファミリーマートに近づくと「ファミマスタジアム」が自動起動し、そのゲームで得た点数によって急速充電器のあるファミリーマート(11店舗)でくじ引きできる。景品はおむすびやペットボトルなど

 これらはタブレット端末を利用したサービスの一環で、今後はタブレット端末でリーフのバッテリー残量を加味したルート案内や、混雑している充電設備を回避し、空いている充電設備の利用を促すといったサービスを検討している。

 また、リーフはオペレータサービスを備えていて、目的地情報を簡単に知ることができる。オペレータサービスは本来有料サービスだが、沖縄に配備されているレンタカーはすべてオペレータサービスが無料で付帯する。こうしたサービスをうまく活用すれば、沖縄をより効率的に、楽しく観光できるはずだ。

 今回リーフで沖縄を走ってみて、EVならではの加速性能や静粛性を体感できた。そして沖縄の空気や海に触れていると、排気ガスを一切出さないゼロ・エミッション車に乗っていてよかったと思えてくるから不思議だ。これから沖縄に行かれる方は、一度リーフのレンタカーを利用してみてはいかがだろうか。

 ちなみに冒頭で述べたとおり、春季キャンプは2月で終了してしまうため、5つのサービスのうち「キャンプ情報」は期間限定となってしまうが、そのほかのサービスは「リーフでキャンプる~」の実施期間となる3月11日まで利用できる。


(編集部:小林 隆/Photo:堤晋一)
2012年 2月 22日