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クリーンディーゼルの「CX-5」で東京〜山口 長距離燃費測定
「エクストレイル」や「プリウスα」と比較

2012年2月23日〜24日



 注目のスカイアクティブ技術をトータルで搭載した「CX-5」。2月16日の発表時には新聞やニュースも賑わせたから、詳細を知る人も多いだろう。2011年夏に登場した「デミオ」の低燃費モデルと、その秋にデビューした「アクセラ」も、「スカイアクティブ」を掲げていたが、今回のCX-5はパワートレーンのみならず、プラットフォームまで含めて「スカイアクティブ・テクノジー全部載せ」と呼べる内容だ。

 そもそも、マツダのスカイアクティブ・テクノロジーとは、低燃費のガソリンエンジン、ポスト新長期規制をクリアするクリーン・ディーゼルエンジン、80%強という驚異的に広いロックアップ領域を持つAT、新設計の軽量・小型MT、さらに軽量かつ高剛性のプラットフォーム、排気系統まで含めた総合的な設計が揃ってこそ、本領を発揮するのだ。

夢のようなクリーン・ディーゼル「スカイアクティブ-D」
 詳細はCX-5の紹介記事に譲るが、最も気になるのは今回登場した「スカイアクティブ-D」なるクリーン・ディーゼルエンジンだ。圧縮比を従来のディーゼルの常識に反する「14」と低めて、より上死点付近のシリンダー内の温度を低減。これにより、上死点で燃料噴射しても着火までの時間が長くなり、空気と燃料が十分に混合される。均質な燃焼ができるようになってNOxやPMの発生を抑えると共に、燃焼の効率も向上する。

 圧縮比を下げたことは、エンジンそのものの小型軽量化にもつながり、回転部分の軽量化に伴ってレブリミットが5200rpmまでという高回転型のディーゼル・エンジンが生まれた。ひと言で言えば、「燃焼の改良とエンジンの軽量・小型化を実現し、尿素SCRもリーンNOx触媒も使わずにポスト新長期規制をクリアし、JC08モードで18.6km/Lという低燃費を実現した」という夢のようなクリーン・ディーゼルである。

スカイアクティブ-D スカイアクティブ-Dは圧縮比を下げることでNOxやPMを抑えた

 ただし、ユーザーにとって重要なのは実用燃費や走行性能といった、カタログには書かれていない部分だ。2月23日から24日にかけて、次世代ガソリン・ディーゼル車研究会の協力を得て、CX-5のクリーンディーゼルを中心に、同クラスのクリーンディーゼルである「エクストレイル 20GT」、対照試験としてガソリンエンジンを積んだ「エクストレイル 20S」とハイブリッドの「プリウスα」の4台で一斉に走って、その実力のほどを検証した。

 燃費を計測した区間は東京・青山〜中国道・山口県・美祢ICの約987kmだ。なおCX-5は量産車が用意できなかったため、開発車両で走行した。

CX-5(開発車両) エクストレイル 20GT(クリーンディーゼル)
エクストレイル 20S(ガソリン) プリウスα

 

実用燃費を計測
 東京 青山を出発し、国道246号を走って、三軒茶屋から首都高速へ。3号線から東名高速に抜けて、西に向かってひた走る。制限速度である100km/hあたりを保ちながら、淡々と走る。

 燃費を測定するといっても、決してエコランではない。最低限度の低い速度を保ち、道路が空く時間帯に最低限の休憩で走り続ければ、より低燃費のデータが出るのは予想できる。しかし、このテストを通じて知りたいのはチャンピオン・データではなく、普段のドライブで走ったときの燃費や実用性なのだ。

 最初の休憩は富士川SA(サービスエリア)。通常のドライブのように、2〜3時間ごとに休憩を挟むのだ。ここまでステアリングを握ってきたガソリン車のエクストレイルでは、制限速度付近を維持しようとすると、エンジン回転数が上がってしまうので少々うるさい。

 次に乗ったのは、ディーゼルのエクストレイル。富士川から浜名湖へは、緩やかに下り坂が続いていることもあって、平均燃費計の数字が徐々に向上していく。駐車場でエンジンをかけたとき、カリカリとディーゼルっぽい音を立てていたが、高速道路で巡航しているときにはむしろエンジン音はほどんど気にならない。トルクが厚くて、加速をしたいときには少々アクセルペダルを踏み増せばいいだけだから、エンジン回転数が低く抑えられて静かだし、速度のコントロールもしやすい。

 ただし100km/h前後の領域で運転していると効率がよくないのか、時折、瞬間燃費計の針が燃費が悪化する方に大きく動く。DPFに煤が溜まったのを燃焼させているのかもしれないが、1800rpm程度のエンジン回転数でクルージングしている状況では考えられないほど燃費が悪化し、ある程度の時間が過ぎると再び、平均的な燃費を示す。

 浜名湖から大津までは、景色のよい道が続く。海沿いを走ることもあれば、険しい山道を抜ける部分もある。いよいよ、ディーゼルのCX-5に乗り込む。エクストレイルと同じ”クリーン・ディーゼル”だが、アイドリング時の静粛性はより高く、音質も洗練された印象だ。ガソリン車のエンジン音よりは高い音なので、すぐにディーゼル車だと分かる。しかし、測定器を使って測定したところ、CX-5のディーゼルは66.3dB、エクストレイルのガソリン車は67.2dB。エンジン音の大きさにほんとど差はなく、むしろ風切り音やタイヤからのロードノイズといった音の影響が大きい。

 

長距離でも疲れにくいスカイアクティブ
 さらに、長距離を走らせたからこそ分かったことがある。振動が少なく、アクセル操作に対する応答性が高いので、長時間の運転でも疲れにくい。この点では、エクストレイルと比べてもCX-5にアドバンテージがあった。

 その理由は、「スカイアクティブ・テクノロジー全部載せ」だからだ。エンジンの排ガスをポスト新長期規制に適合させるだけではなく、エンジン全体を軽量設計し、ロックアップ領域を90%以上まで広げた新型ステップATと組み合わせて、さらにボディ設計を刷新して最適化した排気系と、軽量化した高剛性ボディを手に入れている。

 日本の道は高速道路とはいえ、アップダウンが激しく、制限速度付近を保つためにはアクセル操作による速度の微調整が欠かせない。ガソリン車の場合、速度が落ちそうになると、加速に必要なトルクが出るまでアクセルを踏み増して、エンジン回転数を上げなければならない。

 CX-5のディーゼルは2000rpmで最大トルクの420Nmを発揮する。実用性の面で言えば、100km/hでの巡航時に1800rpm程度を保っている場合に、加速が必要になってアクセルを踏むと、瞬時に約400Nmのトルクが湧き上がる。制限速度が80km/hの場合に1500rpmで巡航していても約360Nmを発揮するのだから、たいていの坂道はアクセルを踏み増さずともぐいぐい登ってくれる。

 燃費の点で最も優秀だったのは、予想通りプリウスαだった。一方で、運転に最も気を使ったのもこのクルマだった。最大トルクの数字だけ見ると、エンジンとモーターの統合した数値はなかなかのものだが、高速での巡航時にはエンジンだけで走らせるシーンが多い。登り坂になってスピードが落ちてきてからアクセルを踏むと、なかなか加速しない。思い切ってアクセルを踏み増すと、ぶーんとエンジンが音を立てて回ってモーターからも力が湧くのだが、日本の道では勾配が変わりやすく、やっと加速した頃には今度は下り坂になってブレーキを踏まなければならない。

 下り坂になると、低転がり抵抗タイヤを履き、前に転がろうとするハイブリッド車ゆえに今度は徐々に加速して、制限速度を保つためにブレーキを何度も踏むことになる。実際、暗くなってから高速道路を走ると、速度の変動が激しいハイブリッド車は、一定速度を保って走りたいトラックのじゃまになるらしく、ヒヤッとする場面も少なくなかった。高速巡航でモーターを使うシーンが少なく、すでにフル充電されているバッテリモニターを見ていると、ブレーキで熱エネルギーを捨てていることに気づいてストレスを感じる。

JC08以上の燃費を記録したクリーン・ディーゼル
 岡山で1泊し、燃料の続く限り西に向かって走る。燃料タンクが45Lと小さいプリウスαの給油インジケーターが最初に灯った。福山で20L追加給油し、次に息が上がったエクストレイル20GT(ガソリン車)には小谷で20L継ぎ足す。宮島で集合した時には、クリーンディーゼルの2台も給油インジケーターが点灯し、20Lずつ追加給油した。

 山口県・美祢ICで高速を降りて、最後の給油を行う。ドキドキの結果は、プリウスα(ハイブリッド)が1位の20.3km/L、2位が17.8km/LのCX-5(ディーゼル)、3位が16.9km/Lという僅差でエクストレイル20GT(ディーゼル)、4位のエクストレイル20S(ガソリン)は13.8km/Lだった。今回の測定ではドライバーの体重差を解消するために体重を量ってバラストを積み、ドライバーが交代することで運転の癖を平均化した。さらに、高速道路にあるポスト表示を使ってトリップメーターの誤差を補正(補正結果はCX-5が+1.2%、エクストレイル20Sが−3.3%)した。

 ユーザーにとって嬉しいのは、クリーン・ディーゼル車の2台はJC08モード燃費との差が小さかったり、JC08モード以上の好燃費だった点だ。ガソリン車も高速巡航時には、モード燃費に近い数値が出ることも分かった。それに対してハイブリッドは、31km/L(10・15モード)、26.2km/L(JC08モード)というカタログ上の燃費を出すのは難しそうに見える。

 もちろん、周囲の交通に配慮せずに低燃費だけを狙ったエコランをすればかなりの数値が叩き出せるだろうが、一般のユーザーにとってチャンピオン・データはあまり意味がない。北米のようにカタログ表記の燃費に対して実燃費が伴わないことで訴訟を起こす人は珍しいかもしれないが、一般のユーザーにとってカタログの燃費データは指標になっているのは事実だ。

ワインディングでもコントロールしやすい
 燃費測定の使命を終えて、最後にワンディングロードに連れ出してみる。高速では息を潜めていたハイブリッドのモーターがトルクを発揮し、ガソリン車のエンジンは高回転域までエンジン回転数を高めていく。

 エクストレイルのディーゼルのレブリミットはガソリンよりはるかに低い4000rpm付近だが、低回転域からトルクがモリモリと沸き上がり、自在にクルマを操れる気持ちよさがある。

 同じディーゼルでもCX-5は、低圧縮比によってエンジンの回転する部品を軽量化できたため、レブリミットは5200rpmとディーゼル車のエンジンとしては高回転型だ。低回転域でも十分なトルクを発揮するが、3000rpmあたりから上も回して気持ちいいエンジンだ。アクセル操作に対するレスポンスが高く、幅広い領域でトルクが厚いので、山道を走っていてもコントロールしやすい。

 ハイブリッド、ガソリン、2台のクリーン・ディーゼルと長時間を伴にして分かったのは、街中でも長距離でも燃費チャンピオンはハイブリッドだが、燃費と走行性能とコントロール性のバランスがよく、長距離の移動に適しているのがディーゼルだった。現在、日本でのディーゼル車の普及率は0.1%という事実を鑑みると、その実力からすればもっと普及していいと思える存在だ。

(川端由美)
2012年 3月 5日