首都高、1号羽田線の老朽化個所を公開
大規模更新のあり方についてはは年内に結論

老朽化の進む首都高 1号羽田線

2012年5月2日公開



 首都高速道路は5月2日、老朽化の進む1号羽田線 東品川桟橋部と、耐震対策を進める1号羽田線 芝浦JCT(ジャンクション)付近を報道陣向けに公開した。

 1号羽田線 東品川桟橋部とそれに続く鮫洲護岸埋立部は、1963年(昭和38年)10月に供用を開始。1962年(昭和37年)12月に開通した首都高のなかでも古い区間になる。供用開始から50年ほど経過し、各部が老朽化。東品川桟橋部は、上部が主にRC桟橋構造で作られており、下部がPC杭とセルラー(円形鋼矢板)に組み合わせで作られており、その延長は1200m。PC杭とセルラーの組み合わせにより、地震の揺れに抵抗する構造になっている。

現場説明資料桟橋構造となっている1号羽田線
主な損傷個所今後の補修予定

 東品川桟橋部は、水面からの距離が近いため船で確認。この区間は東京モノレールと併走している区間になる。首都高の普段の確認作業でも水面との距離が近いため、船を用いているとのことで、この距離の近さがメンテナンス上の難点になっている。桟橋部にはメンテナンス用の金属製の通路が取り付けられているものの、すでに錆の進行が進んでおり今では使われていない。桟橋下部に入る場合は、小さなゴムボートで進入し、点検を行っているとのことだ。

芝浦JCT付近の船着き場から船で現場まで移動
首都高 1号羽田線が見えてきた。奥に見えるのが1号羽田線で、手前の橋脚は東京モノレール

 実際に見た感じでは、外部にはコンクリートのひび割れ後のシール跡、多くの赤錆などが見受けられ、50年という時間に対応した老朽化が進んでいるのが分かる。ただ、この老朽化が道路を運営する上で支障のあるものなのかどうなのか、大規模補修をするのか新規に作り直すのかなどは、今後首都高の補修を検討する有識者会議「首都高速道路構造物の大規模更新のあり方に関する調査研究委員会」で論議していく。最終方針については、年内を目処に結論が出る予定だ。

桟橋構造を持つ1号羽田線。白い筋はコンクリートの補修跡円柱状になっているのがセルラー。地震の水平力を受け持つ役目がある場所によっては、桟橋と水面の間隔が狭まる。これが補修作業のネックになっている
桟橋構造の下部に見える錆びた橋がメンテナンス用の通路。すでに大幅に錆びてしまっているため現在は使用していない水面との距離が短く、ゴムボートでしか入っていけないと言う一部コンクリートの崩壊した橋脚も多数あった

耐震対策のため支承部を取り替える芝浦JCT付近
 耐震対策を進める1号羽田線 芝浦JCTについても、その内部が公開された。1号羽田線 芝浦JCT付近は、1962年(昭和37年)12月供用開始。つまり、首都高で最も歴史を持つ区間となっている。

 この区間では、1968年(昭和43年)と1989年(平成元年)に床板補強を実施。1982年(昭和57年)~1983年(昭和59年)には高欄を補強。1997年(平成9年)~1999年(平成11年)には、阪神・淡路大震災により阪神高速で橋脚の倒壊が起きたことで、首都高は全面的に橋脚の耐震補強を実施。この区間においても鋼板を橋脚に巻き立てることで、補強が行われている。

 現在行われているのは、炭素繊維格子によるコンクリート床板補強、橋脚とコンクリート床板をつなぐ支承のゴム支承への変更、そして床板下部のコンクリートが地震などで落下しないような剥落防止工事だ。これらの工事を、2年ほどの工期で行っている。

現場説明資料
支承取り替え工事概要炭素繊維格子による床板補強

 これまで、コンクリート床板の補強は、鋼板を接着しボルト止めすることで行われていたが、この区間では鋼板より軽くて強度に優れる炭素繊維格子を使用。エポキシ系の接着剤で、床板に貼り付けていると言う。

 また、ゴム支承化については、支承の老朽化対策と地震対策の意味合いがあり、ゴム支承になることでより耐震強度が上がると言う。想定している地震は阪神・淡路大震災で、同程度の地震が首都で起きても耐えうるものとしている。

 従来の支承をゴム支承に取り替えるにあたっては、既設支承のまわりをジャッキアップするために鋼板ブロックを設置。このブロックに300t耐荷重の油圧ジャッキを4つ設置し、1個所で500tを支える既設支承への荷重をなくし、ゴム支承に取り替えていた。

 ゴム支承は、ゴム部の上部にステンレスの板が貼られ、テフロンシートを介して同様にステンレスの板が貼られた橋脚と接することになる。これにより、水平方向の揺れを滑ることで吸収し、ロールやピッチ方向の揺れについては、ゴムによって吸収する仕組みだ。

芝浦JCT付近の1号羽田線。上部に見えるのは、すでに工事が終わった部分塗装もすんでおり、首都高開通時から使用されている個所とは思えない
1号羽田線の内部。高架橋の内部には、人が歩ける空間が存在する上部を見上げると、鋼板とそれを止めるボルトが見える。これは、開通後強化された部分
既設支承。逆L字型の金具は、ジャッキアップするための足場を作っている既設支承のアップ。ボルトやコンクリートを見ることができる
逆L字型の金具に鋼板ブロックを乗せ、さらに油圧ジャッキで支えられた支承部。既設支承が取り払われ、ゴム支承が取り付けられている1基で300t支えることが可能な油圧ジャッキ新設されたゴム支承部。ゴム支承部の下部はこれから作られる。現在は油圧ジャッキで高架部を支えている
上部に見えるのが高架部の床板。そこにスチールブロックが取り付けられ、ステンレスプレートを接合。テフロンシートを介して、ステンレスプレートが乗せられたゴムでゴム支承は構成されている

 コンクリートなどで固定された既設支承から、水平方向は滑ることで揺れをキャンセルするゴム支承へ変更することで、騒音や振動対策になるようにも思えるが、それについては特に大きく変わらないとのことだった。

 「首都高速道路構造物の大規模更新のあり方に関する調査研究委員会」は、すでに第1回の検討会を開催。第2回の検討会は5月8日に開催する予定だ。

(編集部:谷川 潔)
2012年 5月 7日