SUPER GT第2戦富士は、逆転に次ぐ逆転でDENSO KOBELCO SC430がGT500クラスを制す
GT300クラスは、0号車 GSR 初音ミク BMWが優勝

GT500クラスで優勝した39号車 DENSO KOBELCO SC430(脇阪寿一/石浦宏明組)

2012年5月4日決勝開催



 5月4日、2012 AUTOBACS SUPER GT第2戦「FUJI GT 500km RACE」の決勝レースが富士スピードウェイ(静岡県小山町)で開催された。スタートとゴール直前に降った雨による波乱のレースを、GT500クラスは39号車 DENSO KOBELCO SC430(脇阪寿一/石浦宏明)、GT300クラスは0号車 GSR 初音ミク BMW(谷口信輝/片岡龍也)が制し、ともに今季初優勝となった。

 観客数は、予選日が雨で2万6000人、決勝日がくもり時々雨で5万7000人。合計8万3000人と、ここ数年ではもっとも多い観客数となった。その多くの観客の前で、ドラマチックなレースが展開された。


GT500クラス
 昨年は震災の影響もあり300kmに短縮されたが、今年は500km、110周の長丁場の決勝レースが復活した。2回のピットイン、ドライバー交代が行われるため、通常のレースとは異なる戦略での戦いとなる。

 決勝前日、雨の中行われた予選を制したのは、ダンロップタイヤを履く32号車 EPSON HSV-010(道上龍/中山友貴)。タイムアタックした中山友貴選手は初のポールポジション獲得となった。

 決勝日の朝に行われたフリー走行はウエット路面。セッション終盤にレコードラインはドライになったが、完全なドライ路面での走行はコースイン直前の8分間だけとなり、決勝でのタイヤマネージメントに不安を残したままスターティンググリッドにマシンが並べられた。

 ところが、スタート直前にパラパラと雨粒が落ちてきた。急遽スタート方式がセーフティーカー(SC)先導に変更となり、多くのチームがレインタイヤをグリッドまで運んだが、交換するほどの雨量にはならず、全車スリックタイヤのままSC先導によりスタートした。

SC先導でレースはスタート(Photo:Burner Images)コース後半も1周目はそれほど路面は濡れていなかった

 コース前半は雨が弱く、コース後半がやや強め。1周目の路面コンディションはまだまだスリックタイヤで充分と思われた。しかし、1周目で36号車 PETRONAS TOM'S SC430(中嶋一貴)がピットイン、レインタイヤに交換するギャンブルに出た。GT300クラスも数台がレインタイヤに交換した。

36号車が1周目にピットイン。レインタイヤに交換しコースに復帰GT300クラスの後方に追い付いた

 雨は次第に強くなり、SC先導の2周目にはコース後半は路面に水が浮きスリックタイヤでは厳しい状況となった。36号車 PETRONAS TOM'S SC430のギャンブルは成功、2周目にはほとんどのマシンがピットイン、ピットは大混乱となった。

 参加車両の多いSUPER GTは隣同士のピットに同時にマシンがピットインするのは難しい。斜めにマシンを停め、押し戻して発進するなど作業時間のロスが発生する。運よく前後にピットにマシンが入らないチームは素早くマシンを送り出せるが、同じクラスが並ぶピットのマシンはピットで順位を落とすこととなる。当然、予選順位はリセットされた。

2周目になると路面に水が浮き始めたステイアウトしたGT300の最後尾に続く36号車。その後方はレインタイヤに替えたGT300車両

 ほとんどのマシンがタイヤ交換を行う中、GT500クラスでは8号車 ARTA HSV-010(ラルフ・ファーマン)がスリックタイヤのままコースに留まった。状況は一転しこちらがギャンブルとなった。GT300クラスでも3台がスリックタイヤのままステイアウトとなった。

8号車だけがスリックタイヤでステイアウト。ピットは大混雑に(Photo:Burner Images)GT500では1台だけのギャンブルとなった
6号車を先頭にピットアウト(Photo:Burner Images)ステイアウトはGT500 1台とGT300 3台。その後方に36号車

8号車を先頭に1コーナーへ(Photo:Burner Images)

 SC先導3周目は8号車 ARTA HSV-010の後ろにGT300マシンが3台、そのすぐ後方に1周目にレインタイヤに交換した36号車 PETRONAS TOM'S SC430が続くこととなった。その後方のGT500クラスの順位は6号車 ENEOS SUSTINA SC430(大嶋和也)、23号車 MOTUL AUTECH GT-R(本山哲)、38号車 ZENT CERUMO SC430(立川祐路)、39号車 DENSO KOBELCO SC430(石浦宏明)、32号車 EPSON HSV-010(道上龍)、100号車 RAYBRIG HSV-010(伊沢拓也)、12号車 カルソニックIMPUL GT-R(ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ)となった。

 セーフティーカーは3周でピットに入り、4周目から事実上のスタートとなった。スタート直後の1コーナーでスリックタイヤの8号車 ARTA HSV-010が大きく膨らみ、レインタイヤの36号車 PETRONAS TOM'S SC430があっさりにトップに立った。8号車 ARTA HSV-010のスリックタイヤの選択は失敗しこの周に最後尾まで後退してしまった。GT500、GT300マシンが混じり合ってのスタートだったが大きなアクシデントもなく500km、110周のレースが始まった。

スタート直後の1コーナーで8号車は膨らみ36号車がトップに
GT300、GT500が混走で1コーナーへ36号車はトップに立ち4周目のコカ・コーラへ。8号車はGT300車両にも抜かれていく
36号車がダンロップをトップで通過。8号車は最下位に落ちたGT300クラスのマシンにも抜かれた8号車

 事実上の2周目となる5周目、5位から2位にジャンプアップした38号車 ZENT CERUMO SC430が1コーナーでコースアウト、12位までポジションを落とした。他にも滑りやすい路面でコースを外れるマシンが続出した。

38号車がオーバーランし順位を落とした
続々とコースアウトするマシン36号車、6号車、32号車、23号車と続く

 スリックタイヤで走行を続けた8号車 ARTA HSV-010は5周目のダンロップコーナーでGT300クラスの4号車 GSR ProjectMirai BMWに激しく追突。右フロントを大破しピットに戻りそのままリタイヤとなった。

8号車は4号車に追突。リタイヤとなった

 雨の予選でポールポジションを獲得した32号車 EPSON HSV-010はスタートダッシュを決め7位から4位に浮上。38号車 ZENT CERUMO SC430の後退で3位までポジションを上げるが、雨足が弱くなると急速にペースダウン。8周目の最終コーナーで23号車 MOTUL AUTECH GT-Rに抜かれ4位に後退、9周目にはズルズルと順位を下げ9位までポジションダウン、上位争いから脱落した。

3位~7位32号車が後退、39号車が12号車を抜き4位へ
4位~8位32号車は9位まで後退した3位~9位

 10周あたりで雨は止み、路面は急速に乾き始め、スリックタイヤへのタイヤ交換が近付いてきた。10周終了時の順位は36号車 PETRONAS TOM'S SC430、6号車 ENEOS SUSTINA SC430、23号車 MOTUL AUTECH GT-R、39号車 DENSO KOBELCO SC430、12号車 カルソニックIMPUL GT-R、100号車 RAYBRIG HSV-010。

 14周目、上位陣で最初にタイヤ交換を行ったのは39号車 DENSO KOBELCO SC430。続く15周目に36号車 PETRONAS TOM'S SC430、23号車 MOTUL AUTECH GT-Rがタイヤ交換を行った。ピット作業で23号車 MOTUL AUTECH GT-Rが36号車 PETRONAS TOM'S SC430を抜きコースイン。1周早くコースインしタイヤの暖まった39号車 DENSO KOBELCO SC430が追い付き3台のバトルとなった。この争いに勝ったのは39号車 DENSO KOBELCO SC430。その後方は36号車 PETRONAS TOM'S SC430、23号車 MOTUL AUTECH GT-Rとなった。

ピット作業で23号車が逆転し、36号車の前に出た23号車、36号車、39号車が接戦。100号車と17号車がピットからコースへ復帰
39号車が36号車を抜き23号車の背後へ39号車、36号車、23号車の順となった

 16周目には100号車 RAYBRIG HSV-010がピットイン、ここで戦略が分かれた。100号車 RAYBRIG HSV-010はこのピットインでタイヤ交換に加えドライバー交代、給油も行った。天候の変化がなければ2回のピットインだが、タイヤ交換のみのチームはスタート直後と15周前後のスリックタイヤへの交換はルーティーンのピットインに加えず残り2回、合計4回のピットイン。ここでドライバー交代を行ったチームは、残り1回のピットインで計3回という戦略となる。ピットインのタイムロスは減らせるが、残り90周以上を2スティントで走るためタイヤマネージメントが難しくなる。この戦略の違いがレース終盤にドラマを呼び寄せることとなる。

 17周目には6号車 ENEOS SUSTINA SC430がピットインしタイヤ交換のみでコースに復帰した。コースイン直後の1コーナーで冷えたタイヤでブレーキロック、GT300クラスの0号車 GSR 初音ミク BMWと接触しコース外へ押し出すこととなりドライブスルーペナルティを受け上位争いから後退した。

6号車はピットアウト直後の1コーナーでブレーキをロック0号車と接触しペナルティが課せられた(Photo:Burner Images)

レインで粘った12号車がピットアウト。アウトラップで100号車、17号車に抜かれる

 レインタイヤで粘った12号車 カルソニックIMPUL GT-Rは21周目にピットイン。100号車 RAYBRIG HSV-010と同じくタイヤ交換に加えドライバー交代、給油も行った。

 全車がスリックタイヤに交換を済ませた段階でトップは39号車 DENSO KOBELCO SC430。2位以下は36号車 PETRONAS TOM'S SC430、23号車 MOTUL AUTECH GT-R、100号車 RAYBRIG HSV-010(山本尚貴)となった。レインタイヤで粘った12号車 カルソニックIMPUL GT-R(松田次生)は10位まで順位を落としたが、35周目には100号車 RAYBRIG HSV-010に次ぐ5位へ浮上、39周目には100号車 RAYBRIG HSV-010を抜き4位までポジションを上げてきた。

39周目、12号車が100号車を抜き4位に浮上

 40周を過ぎ序盤でドライバー交代を行わなかった4ピット作戦のチームのピットインが始まった。41周目に3位の23号車 MOTUL AUTECH GT-R、45周目にトップの39号車 DENSO KOBELCO SC430、2位の36号車 PETRONAS TOM'S SC430がピットイン。タイヤ交換、ドライバー交代、給油を行った。

ピット作業で23号車が36号車を逆転

 上位3台のピットインでトップに立ったのは12号車 カルソニックIMPUL GT-R。2位には100号車 RAYBRIG HSV-010。全車がドライバー交代を済ませた段階で3位には39号車 DENSO KOBELCO SC430(脇阪寿一)、23号車 MOTUL AUTECH GT-R(ミハエル・クルム)、36号車 PETRONAS TOM'S SC430(リチャード・ライアン)となった。

 GT500クラストップの12号車 カルソニックIMPUL GT-Rが63周目に突入するタイミングで、GT300クラスの15号車 ART TASTE PORSCHEがピットロード出口のガードレールに激しくクラッシュ。破損したパーツを撒き散らしながらコースを横切りアウト側のグリーンに停止した。

 ここでセーフティーカーが入り、5周にわたりSC導入となった。SC導入中の65周目にトップの12号車 カルソニックIMPUL GT-Rと2位の100号車 RAYBRIG HSV-010がルーティーンのピットイン。ドライバー交代も行い残り35周を走りきる作戦だ。


SC先導となりトップの12号車 カルソニックIMPUL GT-Rが続いた

 レース再開後に元気な走りを見せたのが17号車 KEIHIN HSV-010(塚越広大)だ。トップ2台のピットインで4位で再スタートをすると71周目に36号車 PETRONAS TOM'S SC430を抜き3位、76周目に23号車 MOTUL AUTECH GT-Rを抜き2位に浮上。79周目にはトップの39号車 DENSO KOBELCO SC430の背後に迫った。

17号車は中盤で快走を見せた。51周目に38号車を抜き6位浮上レース再開後、17号車は23号車も抜き39号車に迫った

 トップ2台は数周にわたりテール・トゥ・ノーズのバトルを展開するが、ベテラン脇阪選手がヤングタイガー塚越選手を封じ込めトップのまま82周目に最後のピットへ向った。39号車 PETRONAS TOM'S SC430、17号車 KEIHIN HSV-010の2台が同時ピットイン、続く83周目に23号車 MOTUL AUTECH GT-R、36号車 PETRONAS TOM'S SC430も最後のピットインを行った。

 上位4台のピットインでトップに立ったのは12号車 カルソニックIMPUL GT-R(ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ)、2位には9秒差で100号車 RAYBRIG HSV-010(伊沢拓也)。ここまでは3ピット作戦のチームが有利にみえた。3位にはトップから42秒差で39号車 DENSO KOBELCO SC430(石浦宏明)、4位には51秒差で23号車 MOTUL AUTECH GT-R(本山哲)、5位には58秒差で36号車 PETRONAS TOM'S SC430(中嶋一貴)が続き、ピット作業で時間を要した17号車 KEIHIN HSV-010(金石年弘)は1分1秒差の6位に後退した。

 残り周回は25周。上位2台は後続との差があり逃げ切るかに思われたが、いたずらな富士の天気は最後にまたレースを大きく動かした。残り20周でサーキットに再び雨が降り出し、徐々に路面が濡れヘッドライトが反射し始めた。上位陣のラップタイムは90周目には1分36~38秒台だったが、100周目には39~40秒台に落ちた。

 その中で3位の39号車 DENSO KOBELCO SC430と4位の23号車 MOTUL AUTECH GT-Rはペースの落ち込みが少なく徐々にトップとの差を詰め始めた。39号車 DENSO KOBELCO SC430は42秒あったトップとの差を90周目には36秒、100周目には33秒に短縮。23号車 MOTUL AUTECH GT-Rは51秒差を42秒、38秒と短縮した。

 残り10周、雨はさらに強くなり各車ペースダウンを強いられた。65周目にタイヤ交換しすでに35周以上周回しているトップ2台のタイヤのグリップが落ちてきた。12号車 カルソニックIMPUL GT-RはGT300クラスのマシンにも抜かれる状況となり、102周目にたまらずピットイン。レインタイヤに交換しコースに戻ると4位まで後退した。

残り10周を切り、路面が反射するほど濡れてきた。12号車は後方のGT300車両にも抜かれたレインタイヤに交換し、4位に後退した12号車。すぐ後方に36号車

 103周目、104周目に雨はピークを迎え100号車 RAYBRIG HSV-010は1分52秒台、39号車 DENSO KOBELCO SC430は1分46秒台、23号車 MOTUL AUTECH GT-Rは1分1分50秒台、36号車 PETRONAS TOM'S SC430は1分49秒台、17号車 KEIHIN HSV-010は1分55秒台までタイムを落とした。

 105周目にレインタイヤに履き替えた12号車 カルソニックIMPUL GT-Rが1分42秒台と上位陣ではトップタイムを記録するが雨足は急速に弱くなり、スリックタイヤでステイアウトしたマシンのラップタイムもすぐに1分40~43秒台に回復。12号車 カルソニックIMPUL GT-Rのギャンブルは失敗した。

100号車を抜きトップに立った39号車

 ラップタイムの落ち込みが少ない39号車 DENSO KOBELCO SC430がトップに立った100号車 RAYBRIG HSV-010との差を一気に縮めた。100周目に23秒あった差を101周目に21秒、102周目に17秒、103周目に13秒、104周目に6秒、105周目に1.9秒と縮め、106周目の1コーナーでオーバーランした100号車 RAYBRIG HSV-010を抜き、ついにトップに浮上した。

 一方、レインタイヤに交換した12号車 カルソニックIMPUL GT-Rは雨が弱くなるとラップタイムが1分46秒台に落ち、残り2周で36号車 PETRONAS TOM'S SC430に抜かれ5位に後退。たらればを言ってもしょうがないが、もし雨が降らなければ優勝、もしスリックで我慢していたら表彰台は確保できたのではなかろうか。

こぶしを挙げウィニングラップを走行する39号車の石浦選手GT500クラスの表彰式(Photo:Burner Images)

 トップに立った39号車 DENSO KOBELCO SC430はそのまま100号車 RAYBRIG HSV-010を突き放し優勝。2位の100号車 RAYBRIG HSV-010は2戦連続の2位でポイントトップに。3位には23号車 MOTUL AUTECH GT-Rが入った。優勝したSARDチームは2004年第3戦セパン以来8年振りの優勝となった。最終順位とドライバーズポイントは以下のとおり。

GT500クラス最終順位

順位号車マシン(ドライバー)
1位39号車DENSO KOBELCO SC430(脇阪寿一/石浦宏明)
2位100号車RAYBRIG HSV-010(伊沢拓也/山本尚貴)
3位23号車MOTUL AUTECH GT-R(本山哲/ミハエル・クルム)
4位36号車PETRONAS TOM'S SC430(中嶋一貴/リチャード・ライアン)
5位12号車カルソニックIMPUL GT-R(松田次生/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ)
6位17号車KEIHIN HSV-010(金石年弘/塚越広大)
7位1号車S Road REITO MOLA GT-R(柳田真孝/ロニー・クインタレッリ)
8位38号車ZENT CERUMO SC430(立川祐路/平手晃平)
9位18号車ウイダー HSV-010(小暮卓史/カルロ・ヴァン・ダム)
10位6号車ENEOS SUSTINA SC430(伊藤大輔/大嶋和也)
11位32号車EPSON HSV-010(道上龍/中山友貴)
12位35号車KeePer Kraft SC430(国本雄資/アンドレア・カルダレッリ)
13位19号車WedsSport ADVAN SC430(荒聖治/アンドレ・クート)
14位24号車D'station ADVAN GT-R(安田裕信/ビヨン・ビルドハイム)

GT500ドライバーズポイント

順位号車マシン(ドライバー)ポイント
1位100号車RAYBRIG HSV-010(伊沢拓也/山本尚貴)30
2位38号車ZENT CERUMO SC430(立川祐路/平手晃平)23
3位39号車DENSO KOBELCO SC430(脇阪寿一/石浦宏明)22
4位23号車MOTUL AUTECH GT-R(本山哲/ミハエル・クルム)19
5位17号車KEIHIN HSV-010(金石年弘/塚越広大)16
6位36号車PETRONAS TOM'S SC430(中嶋一貴)14
7位36号車PETRONAS TOM'S SC430(リチャード・ライアン)8
8位12号車カルソニックIMPUL GT-R(松田次生/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ)7
9位1号車S Road REITO MOLA GT-R(柳田真孝/ロニー・クインタレッリ)7
10位36号車PETRONAS TOM'S SC430(ロイック・デュバル)6
11位18号車ウイダー HSV-010(小暮卓史/カルロ・ヴァン・ダム)6
12位8号車ARTA HSV-010(ラルフ・ファーマン/小林崇志)5
13位6号車ENEOS SUSTINA SC430(伊藤大輔/大嶋和也)1


66号車 triple a Vantage GT3

GT300クラス
 今年のGT300クラスははAudi R8、Mercedes-Benz SLS AMG GT3、スバルBRZなど新車投入が目立つ。第2戦の富士では66号車 triple a Vantage GT3(吉本大樹/星野一樹)が新たに投入された。外観はGT2車両とあまり差がないが、カラーリングが白ベースからオレンジベースに一新された。

 決勝前日の予選日は雨となった。午前中のフリー走行では4号車 GSR ProjectMirai BMWがダンロップコーナー手前でクラッシュ。5号車 マッハGoGoGo車検Ferrari458はコカ・コーラコーナー手前でクラッシュ。4号車 GSR ProjectMirai BMWはマシンを修理し決勝を走ることができたが、5号車 マッハGoGoGo車検Ferrari458は損傷が激しくコースに戻ることはできなかった。

クラッシュした5号車 マッハGoGoGo車検Ferrari458

 雨の予選でポールポジションを獲得したのは11号車 GAINER DIXCEL R8 LMS。平中選手は自身初のポールポジション獲得となった。GT500に続き、GT300もダンロップタイヤがポールポジションとなった。

 決勝はスタート直前にパラパラと雨粒が落ち急遽スタート方式がセーフティーカー(SC)先導に変更。全車スリックタイヤのままSC先導によりスタートした。

88号車、30号車、86号車は1周目でピットイン。ピット出口には2周目にタイヤ交換したマシンが並んだ(Photo:Burner Images)

 1周目に88号車 マネパ ランボルギーニ GT3(青木孝行)、30号車 IWASAKI MODAクロコ apr R8(岩崎祐貴)、86号車 Verity BOMEX ランボ RG3(松田秀士)の3台がピットインしレインタイヤに交換した。2周目にはほとんどのマシンがタイヤ交換を行ったが、20号車 Racerbook Audi R8 LMS(野田英樹)、22号車 R'Qs Vemac 350R(和田久)、4号車 GSR ProjectMirai BMW(番場琢)がスリックタイヤのまま走り続ける選択をした。

 4周目にセーフティーカーが退きレースがスタートするとレインタイヤに交換した88号車 マネパ ランボルギーニ GT3がスタートダッシュに成功した。これに続いたのが15号車 ART TASTE PORSCHE(ヨルグ・ベルグマイスター)。2周目に入ったピットでの作業が早く、GT500マシンに混じって良いポジションからスタートを切り2位を確保。予選1位の11号車 GAINER DIXCEL R8 LMS(平中克幸)が3番手となった。

15号車 ART TASTE PORSCHEはピット作業でよいポジションを確保しピットアウト(Photo:Burner Images)スタートでGT500の8号車後方にステイアウトした20号車、22号車が続いた(Photo:Burner Images)1コーナーでは22号車のアウトからいち早くレインに替えた88号車が並びかけた
序盤、トップを快走する88号車。はるか後方に15号車2位の15号車。はるか後方に3位の11号車が見える11号車の後方に86号車、66号車、3号車、0号車が続く

 GT500の8号車 ARTA HSV-010がスタート直後に後退し、直後のクラッシュでリタイヤしたためスリックタイヤの選択は失敗だったかにみえるが、GT300クラスのその後の展開をみると、スリックタイヤでステイアウトも間違っていなかったことが分かる。

スリックでステイアウトした22号車は17周目から20周目まで2位を快走。後方に33号車、11号車、3号車が迫る

 スリックを選択した3台は序盤は大きく順位を落とした。4号車 GSR ProjectMirai BMWは8号車 ARTA HSV-010に追突される不運もあって順位を上げられなかったが、22号車 R'Qs Vemac 350Rは8周目に16位まで後退したものの、路面が乾き始めると徐々に順位を上げ10周目には11位、レインタイヤに交換したマシンが再びピットインすると13周目に6位、17周目には2位までポジションを上げている。その後は強豪マシンに抜かれ徐々に順位を落としたが、スリックタイヤでステイアウトの作戦は成功したと言える。

 路面が急速に乾いたため9周目には15号車 ART TASTE PORSCHEがピットイン。ドライバー交代はせず4ピット作戦を選択。10周目には11号車 GAINER DIXCEL R8 LMSがピットイン。こちらもドライバーズ交代はしなかった。

 11周目にピットインした43号車 ARTA Garaiyaは高木選手から松浦選手にドライバーも交代、残るスティントは長くなるが3ストップの作戦を取った。13周目にピットインした66号車 triple a Vantage GT3(星野一樹)はドライバー交代なし。同じく13周目にピットインした88号車 マネパ ランボルギーニ GT3はここまでトップを快走したが、ピット作業違反のペナルティが課せられ後退した。

 14周目にピットインした0号車 GSR 初音ミク BMWは谷口選手から片岡選手にドライバーも交代、16周目にピットインした2号車 エヴァンゲリオンRT初号機アップル紫電も加藤選手から高橋選手に交代し3ストップ作戦を選択した。

33号車と11号車は、長時間にわたりバトルが続いた

 序盤の混乱が落ち着いた20周目の順位は、15号車 ART TASTE PORSCHE、22号車 R'Qs Vemac 350R、33号車 HANKOOK PORSCHE(影山正美)、11号車 GAINER DIXCEL R8 LMS、3号車 S Road NDDP GT-R(関口雄飛)、66号車 triple a Vantage GT3、88号車 マネパ ランボルギーニ GT3、0号車 GSR 初音ミク BMWとなった。

 35周目、上位陣で4ピット作戦を選択したチームで最初にピットインした15号車 ART TASTE PORSCHEはヨルグ・ベルグマイスター選手からティム・ベルグマイスター選手にドライバー交代した。代わってトップに立った66号車 triple a Vantage GT3は44周目にピットインし星野選手から吉本選手にドライバー交代。次にトップに立った11号車 GAINER DIXCEL R8 LMSは50周目にピットインし平中選手から田中選手に交代した。

 これでトップに立ったのは0号車 GSR 初音ミク BMW。GT500クラスの周回数は110周だが、GT300クラスは104周あたりでゴールとなる。折返しの52周目の順位は1位 0号車 GSR 初音ミク BMW、2位 15号車 ART TASTE PORSCHE、3位 43号車 ARTA Garaiya、4位 66号車 triple a Vantage GT3、5位 11号車 GAINER DIXCEL R8 LMS、6位 2号車 エヴァンゲリオンRT初号機アップル紫電となった。

2位の15号車と3位43号車トップを快走する0号車。4位66号車の後方に11号車が見える

 上位陣では2号車 エヴァンゲリオンRT初号機アップル紫電の高橋選手の健闘が光った。ドライバー交代直後の11位から一時は14位まで順位を落とすが、その後着実に順位を上げ6位まで浮上した。この時点でトップ6台の残りピット回数は1回。3ピット、4ピット作戦によりスティントに差はあるがこの中から優勝チームが決まる可能性が高い。

 レース後半に入り、3ストップ作戦を選択したチームのドライバー交代が始まった。57周目に43号車 ARTA Garaiyaがピットイン。高木選手に交代しコースにピットを後にした。43号車 ARTA Garaiyaがコースインしようとした目の前でアクシデントが発生した。

 2位走行中の15号車 ART TASTE PORSCHEがピットロード出口付近のガードレールに激しくクラッシュ。マシンはそのままコースを横切りアウト側のグリーンゾーンで停止した。マシンは大破、ドライバーも自力では降りられない。コースには破片が散乱した。

 これでセーフティーカーが入り、5周にわたり先導した。ドライバーのティム・ベルグマイスター選手はヘリで病院に搬送され、命の別状はないが肋骨を折る重傷を負った。

 クラッシュが発生した周にトップの0号車 GSR 初音ミク BMWがピットイン。谷口選手がゴールまで長いスティントを担当した。61周目に2号車 エヴァンゲリオンRT初号機アップル紫電もピットイン。加藤選手に交代した。これで3ピット作戦のチームはピット義務を消化。ゴールまでコース上で戦うだけだ。

 レースもいよいよ終盤。80周目の順位は1位が66号車 triple a Vantage GT3、35秒差の2位が11号車 GAINER DIXCEL R8 LMS。この2台はもう1回ピットインする必要がある。トップから42秒差の3位に43号車 ARTA Garaiya、48秒差の4位に2号車 エヴァンゲリオンRT初号機アップル紫電、54秒差の5位に0号車 GSR 初音ミク BMWとなった。0号車 GSR 初音ミク BMWは、3位走行中にGT500の18号車 ウイダー HSV-010にぶつけられスピン、5位に後退していた。

 タイム差をみるとトップ2台はピットインすれば4位以下に後退する。3位から5位の3台は12秒差に中の争いなので残り20周以上で逆転は充分に可能。トップ5台全てに優勝の可能性はありそうだ。

 83周目、トップの66号車 triple a Vantage GT3がピットイン。星野選手に交代し5位でコースに復帰した。この頃からコースには雨が降り出し波乱の予感。一気に雨が降り出せばこれからピットインを行う11号車 GAINER DIXCEL R8 LMSに有利と思われたが、85周目にピットイン。ピットタイム短縮を狙いフロントタイヤは交換せずリアだけスリックタイヤに交換、平中選手にドライバー交代しコースに復帰した。ところがコースインした直後の1コーナーでリアを滑らせスピン。作戦が裏目に出てしまった。

 90周目、トップに立った43号車 ARTA Garaiyaとのタイム差は2位 2号車 エヴァンゲリオンRT初号機アップル紫電が5秒、3位 0号車 GSR 初音ミク BMWが7秒、4位 66号車 triple a Vantage GT3が45秒、5位 11号車 GAINER DIXCEL R8 LMSが1分20秒。残り14周、雨はさらに強く降り出した。

 戦前には不利といわれたJAF-GT勢、その中でも古いマシンである43号車 ARTA Garaiyaと2号車 エヴァンゲリオンRT初号機アップル紫電は大健闘。雨で難しいコンディションの中、最新のFIA-GT勢、BMW、アストンマーチン、Audiとの最後の決戦が始まった。

 ここで勢いがあるのが0号車 GSR 初音ミク BMWと66号車 triple a Vantage GT3。上位との差をガンガン縮めていった。0号車 GSR 初音ミク BMWが93周目の1コーナーで2号車 エヴァンゲリオンRT初号機アップル紫電を抜き2位に浮上。そのままの勢いで96周目のダンロップコーナー手前で43号車 ARTA Garaiyaも抜きトップに立った。

0号車が2号車との差を一気に縮めるあっさり抜き去り……すぐに差を広げた
43号車にもヘアピンで追い付き、ダンロップ手前で抜き、すぐに差を広げた

 2位に落ちた43号車 ARTA Garaiyaのタイムの落ち込みが激しく、後続が一気に差を詰めた。2号車 エヴァンゲリオンRT初号機アップル紫電は8秒の差を2周で削り取り98周目に2位に浮上。3位に後退した43号車 ARTA Garaiyaの背後には66号車 triple a Vantage GT3が迫ってきた。

 タイヤ交換したばかりの66号車 triple a Vantage GT3は毎周5~10秒差を縮め40秒を一気に短縮、101周目に3位の座を奪い取った。66号車 triple a Vantage GT3は、その勢いで2位の2号車 エヴァンゲリオンRT初号機アップル紫電を追走した。

ペースの落ちた43号車に2号車が迫る43号車を抜き66号車は2位の2号車を追走する

 2号車 エヴァンゲリオンRT初号機アップル紫電と66号車 triple a Vantage GT3の差は残り10周で32秒あったが、残り7周で21秒、残り5周で14秒、残り3周で8秒と縮め、3秒差で最終ラップに突入した。

 加藤選手と星野選手、ベテランドライバー同士の争いは、1.5秒差で加藤選手が逃げ切り、2号車 エヴァンゲリオンRT初号機アップル紫電が2位を死守、66号車 triple a Vantage GT3はデビュー戦で3位表彰台を獲得した。

最終ラップ、66号車が2号車の背後に迫るが2号車が逃げ切った後方では11号車と31号車の5位争い
GT300クラスの表彰式(Photo:Burner Images)

 0号車 GSR 初音ミク BMWは後続を引き離しそのままチェッカーを受け今期初優勝。ドライバーズポイントでもトップに立った。43号車 ARTA Garaiyaは4位、11号車 GAINER DIXCEL R8は5位。6位には初完走した31号車 apr HASEPRO PRIUS GT(新田守男/嵯峨宏紀)が入った。

 スタートとゴールを雨に翻弄されたレースだったが、谷口選手、加藤選手、星野選手、高木選手、平中選手といったGT300を代表するドライバー同士が素晴らしい戦いを見せてくれたレースとなった。10位までの最終順位とドライバーズポイントは以下のとおり。

GT300クラス最終順位

順位号車マシン(ドライバー)
1位0号車GSR 初音ミク BMW(谷口信輝/片岡龍也)
2位2号車エヴァンゲリオンRT初号機アップル紫電(高橋一穂/加藤寛規)
3位66号車triple a Vantage GT3(吉本大樹/星野一樹)
4位43号車ARTA Garaiya(高木真一/松浦孝亮)
5位11号車GAINER DIXCEL R8 LMS(田中哲也/平中克幸)
6位31号車apr HASEPRO PRIUS GT(新田守男/嵯峨宏紀)
7位87号車JLOC ランボルギーニ GT3(山西康司/山内英輝)
8位911号車エンドレス TAISAN 911(峰尾恭輔/横溝直輝)
9位61号車SUBARU BRZ R&D SPORT(山野哲也/佐々木孝太)
10位52号車GREEN TEC & LEON SLS(竹内浩典/黒澤治樹)

GT300クラス ドライバーズポイント

順位号車マシン(ドライバー)ポイント
1位0号車GSR 初音ミク BMW(谷口信輝/片岡龍也)31
2位11号車GAINER DIXCEL R8 LMS(田中哲也/平中克幸)26
3位2号車エヴァンゲリオンRT初号機アップル紫電(高橋一穂/加藤寛規)19
4位911号車エンドレス TAISAN 911(峰尾恭輔/横溝直輝)18
5位43号車ARTA Garaiya(高木真一/松浦孝亮)13
6位66号車triple a Vantage GT3(吉本大樹/星野一樹)11
7位15号車ART TASTE PORSCHE(ティム・ベルグマイスター/土屋武士)8
8位33号車HANKOOK PORSCHE(影山正美/藤井誠暢)6
9位31号車apr HASEPRO PRIUS GT(新田守男/嵯峨宏紀)5
10位87号車JLOC ランボルギーニ GT3(山西康司/山内英輝)4
11位30号車IWASAKI MODAクロコ apr R8(岩崎祐貴/坂本雄也)3
12位21号車ZENT Audi R8 LMS(都筑晶裕/シンディ・アレマン)2
13位61号車SUBARU BRZ R&D SPORT(山野哲也/佐々木孝太)2
14位27号車PACIFIC NAC イカ娘 フェラーリ(山岸大/井口卓人)1
15位52号車GREEN TEC & LEON SLS(竹内浩典/黒澤治樹)1

 このレースの模様はテレビ東京系列で毎週日曜23時30分からの「SUPER GTプラス」(BSジャパンでは毎週日曜10時30分から)で放送される。次戦は6月9-10日にマレーシア、セパンサーキットで開催される。

 (奥川浩彦 / Photo:奥川浩彦 / 報道専用レースフォトデータベース Burner Images / 清宮信志)

2012年 5月 10日