NEXCO東日本、佐藤代表取締役会長兼社長の最後の定例記者会見
「グループとしての経営力がついてきた」

NEXCO東日本 代表取締役会長兼社長 佐藤龍雄氏(中央)、管理事業本部長 長尾哲氏(左)、事業開発本部長 窪寺克次氏(右)

2012年6月21日開催



  NECXO東日本(東日本高速道路)は6月21日、6月の定例記者会見を開催。NEXCO東日本 代表取締役会長兼社長 佐藤龍雄氏、管理事業本部長 長尾哲氏、事業開発本部長 窪寺克次氏が、6月の営業概要や新たにオープンするドラマチックエリアなどについて発表を行った。6月一杯で退任する佐藤代表取締役会長兼社長にとっては、最後の定例会見となる。

 5月の通行台数は、日平均264万8000台となり対前年比2.3%減。料金収入は、546億5600万円で対前年比18.7%増となった。通行台数に関しては、昨年は高速道路無料化社会実験があり、その影響により今年は減少、逆に無料化社会実験が終わったことで料金収入は増加している。

 SA(サービスエリア)/PA(パーキングエリア)の売上高に関しては、133億6800万円と対前年比6.2%減。これは、昨年と比べてゴールデンウイーク後半の天候がよくなかったこと、被災地支援のための支援車両の通行台数が減り、ガソリンスタンドの売上高が減ったことなどが影響している。

 NEXCO東日本は、SA/PAに関して「旅のドラマ」感じられるようなリニューアルを進めているが、新たに館山自動車道 市原SA(上り)が「ドラマチックエリア市原(上り)」として7月21日11時に、東北自動車道 菅生PA(下り)が「ドラマチックエリア菅生(下り)」として7月24日10時にオープンする。ドラマチックエリア市原は「房総を食べて旅するマーケット」を、ドラマチックエリア菅生は「みちのく 道しるべ ~新たな東北へ『絆』がつなぐ旅の道標から」をコンセプトとしており、いずれも地元を意識したフードコートが設けられるほか、地域の特産品のショッピングコーナーが設置される。

ドラマチックエリア市原(上り)
ドラマチックエリア菅生(下り)

 そのほか、現在高速道路各社が陸上自衛隊と進めている連携強化についても言及。NEXCO東日本は陸上自衛隊北部方面隊・東北方面隊・東部方面隊と、NEXCO中日本(中日本高速道路)は東部方面隊・中部方面隊と、NEXCO西日本(西日本高速道路)は中部方面隊・西部方面隊と連携実施協定の締結を行っている。

 これは、災害発生時の相互協力を図るもので、連絡体制の確立や情報の共有化、高速道路施設の自衛隊への提供などが盛り込まれている。これに関して、長尾管理事業本部長は「阪神淡路大震災や中越沖地震の経験から自衛隊との連携が必要と思っており、東日本大震災でさらにそういう思いを強くした。自衛隊においても、高速道路が(災害時の救援や物資の輸送で)重要という認識になった」と言い、災害時にはお互いの連携が欠かせないものであるとした。

 NEXCO東日本は、常磐自動車道守谷SAの防災拠点化を図っているが、実際の災害時に役立つためには普段からの訓練や会議の実施が必要とし、「守谷SAで連携を確認する訓練を実施していこうと考えている」と語った。

佐藤代表取締役会長兼社長

6月で任期を終える佐藤代表取締役会長兼社長
 佐藤代表取締役会長兼社長は、2年の任期をこの6月で終え、6月下旬に開催される同社の株主総会(株主は国土交通省と財務省のみ)で正式に退任する。退任についての感想を求められた佐藤会長兼社長は、「2年前の就任日がちょうど高速道路無料化社会実験のスタート日だった」と切り出し、高速道路会社ならではの現場の大変さを実感したと言う。就任期間中に東日本大震災が発生し、それについては「3.11によって、日本社会が変わらなければならないと強く思った。震災発生直後から本社、支社で緊急復旧をやって、まさに現場力があるという実感を持ったのが非常に印象的」と語った。

 また、就任期間中に高速道路の無料化や上限1000円、そして被災地支援、避難者支援など、高速道路料金に関する変更が相次いだ。これらはほとんどが政府からの要望によるものだが、料金については現場となる高速道路会社も参加する形で討議を進めて行けたらと希望を述べた。

 「ある程度の有料化のなかで、そのお金で維持回収していき、日本の経済社会に貢献していく高速道路のありかたがある」「都市部・成長エリアの料金と、地方部の料金は違うと思う」などと語り、長期的に高速道路が日本社会に貢献していくための観点から、料金制度が高速道路会社も参加する形で討議されることが必要であるとした。

 佐藤会長兼社長は、別分野から同社の最高責任者になったが、「経営そのものは一緒、道路に関する知識はなかったので、かなり勉強するしかなかった」「ほかの民間企業と違うのは、非常に法律に制約を受けている」と、高速道路会社特有の事情に苦労した部分もあると言う。

 この2年間で成し遂げたこととして、「旧ファミリー企業を統廃合し、グループ経営が強化された。自分の足で立ち、ファイナンスにおいても、経営戦略によっても自ら考えて実行する体制ができた」と、グループとしての経営力がついてきたとの感想を述べた。

(編集部:谷川 潔)
2012年 6月 21日