「ぶつからないミニバン?」を7人乗りで体験
EyeSight(ver.2)搭載のスバル「エクシーガ」動画リポート


 7月3日に改良が行われたスバル(富士重工業)の7人乗りミニバン「エクシーガ」。ロングストロークタイプの水平対向エンジン「FB型」やCVT、アイドリングストップ機構の搭載など数多くの変更が行われているが、もっとも注目となるのが、同社の運転支援システム「EyeSight(ver.2)」の搭載だろう。これまでもエクシーガにはEyeSight(アイサイト)を搭載するグレードが存在したが、今回搭載されたEyeSightは、プリクラッシュブレーキ時に車両停止制御などを加えたver.2になる。

EyeSight(ver.2)搭載した7人乗りミニバン「エクシーガ」「ぶつからないミニバン?」を実現するEyeSight(ver.2)のステレオカメラユニット

 スバルはこのEyeSight(ver.2)を、レガシィ、インプレッサと順次搭載。新たにエクシーガが加わり、3車種をラインアップしたことになる。

 ただ、スバルは常にこのEyeSight(ver.2)の改良を行っており、同じEyeSight(ver.2)という名前でも、細かな認識・制御面での差が存在する。エクシーガに搭載されたEyeSight(ver.2)は、先頃一部改良が行われたレガシィと同等の制御が行われる最新版。この最新版のEyeSight(ver.2)では、遅い車両への追いつき時の応答性向上、カーブ時の前走車認識性能の向上などが行われている。ただし、エクシーガはレガシィと異なり電動パーキングブレーキを持たないため、先行車追従走行時に先行車が2分以上停止した場合に行われる電動パーキングブレーキでの停止保持制御は持たない。この点については、電動パーキングブレーキを装備しないインプレッサと同様の制御となる。

 レガシィやインプレッサと大きく異なるのが、エクシーガは7人乗りであること。クルマは重くなればなるほど、同じ速度から停止するまでの距離が長くなるなるのはよく知られているところ(運動エネルギーは、質量に比例して増大する)。7人乗りでの車両停止制御は、それだけ難しいものだと予測される。

 今回、その7人乗りでのEyeSight(ver.2)を、スバルの東京事業所内で体験する機会を得た。東京事業所は、スバル発祥の地とも言える中島飛行機の三鷹工場跡地に立地し、隣にはスバル最大のディーラー「CAR DO SUBARU 三鷹」がある。

 本来は東京事業所内の直線路を使って行うはずだったが、一旦雨が降り路面がウエットになったため、東京事業所の倉庫内に特設コースが設置されていた。「ぶつからないミニバン?」と「?」がついて訴求されているように、EyeSight(ver.2)は必ず停止することを保証するものではない。EyeSight(ver.2)では、車両停止制御が加わっているが、衝突時の被害を軽減するプリクラッシュブレーキの延長線上にあるもので、自車の速度や先行車との距離は認識しているものの、路面状況は考慮されていない。極端な話、雪道など非常にμの低い路面ではABSの制御もあり停止距離が伸びるため、「ぶつからない」を実現する速度は非常に低いものになってしまうだろう。

 今回は「ぶつからないミニバン?」の基本性能を体験してもらうため、ドライ路面の倉庫内で実施された。

 エクシーガの突入速度はおよそ20km/hほど。7人乗車とするために、本誌でもおなじみの岡本幸一郎氏など複数のモータージャーナリストと、スバルのスタッフが乗り込む。すべて大人で、女性は1人という陣容だ。停止実験結果は、以下の映像と写真を見てほしいが、目標物との隙間はわずかなものだった。


スバル エクシーガ EyeSight(ver.2) 7人乗りテスト。途中大声が入るので音量設定に注意

停止までの連続写真。急ブレーキのためフロントサスペンションが沈み込み、停止後伸び上がるのが見てとれる

 このようにギリギリでの停止となった理由として、スバルスタッフは倉庫内の環境が影響しているという。この倉庫は、数mおきに明かり取りの窓が開いており、走行する車から見ると、明るい場所と暗い場所が交互に現れる。また、目標物のある場所は暗い場所で、これらがEyeSight(ver.2)のカメラ認識に影響している可能性を語っていた。通常暗い場所に先行車が停止している場合は、テールランプが点いており、EyeSight(ver.2)ではその認識も行っているとのこと。今回の目標物は板に描かれた絵のため当然ながらテールランプは点灯しておらず、そういったこともこの結果につながったのだろう。

テスト環境。暗い倉庫内で、なおかつ明かりが一定間隔で入るなど、複雑な環境目標物。暗い倉庫内ながら、テールランプは点灯していない最終停止距離。見れば分かるようにギリギリだ。EyeSight(ver.2)の車両停止制御は、万が一のためにある機能

 映像では、大きな叫び声が入っているが、これはスバルスタッフの女性によるもの。スバルスタッフですら驚いてしまうほどの制御が行われるという結果になった。

 実際に7人乗りで体感してみたが、一部改良されたD型レガシィ(3人乗りで体験)と比べてもギリギリで止まるという感じが強い。その原因としてテスト環境などはあるのだろうが、一番は7人乗りで止めるということにあるのだろう。止まる際も映像を見てもらえば分かるとおり、激しいブレーキ制御が自動で行われている。シートベルトを装着して座っていても、飛び出してしまうのではと思ってしまうほどだ。なお、シートベルトに関しては、今回の一部改良で2列目シートの中央部席も3点式ELRシートベルトとなり、7席すべてが3点式となっている。

 プリクラッシュブレーキ時の車両停止制御は、万が一の際のシステムのため、そもそも映像のような状況にならないような運転を心がけたい。ただ、クルマを運転する限り、いつ何が起こるか分からないのは事実でもあるため、EyeSight(ver.2)搭載車の選択肢が増えるのはうれしいことと言える。

(編集部:谷川 潔/Photo:清宮信志)
2012年 7月 19日