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【メディア4耐】高橋学のキヤノン EOS-1D Xでモータースポーツ撮影に挑む
高速・大容量メモリーカードの組み合わせて万全の体制


キヤノンのフラッグシップデジタル一眼レフカメラ「EOS-1D X」と、単焦点望遠レンズ「EF300mm F2.8L IS II USM」

 9月1日に、筑波サーキット(茨城県下妻市)において開催された「第23回 メディア対抗ロードスター4時間耐久レース」(以下、メディア4耐)。Car Watchチームは初参戦ながら、完走13位と当初目標の完走を果たせたのは既報のとおり。完走できるかどうかも心配していたが、当日に速報を掲載する予定をたてていたため、16時〜20時というレース時間の中で、あの暗い筑波サーキットでレース写真を撮影できるかどうかが一番の懸念だった。

 そのため、メディア4耐の報道に、取材機材として標準ISO 100〜51200(拡張で最大204800)という高感度性能を持つデジタル一眼レフカメラ「キヤノン EOS-1D X」を、手ぶれ補正機能のある最新の望遠レンズ「EF300mm F2.8L IS II USM」とともに投入。実用的な連続撮影速度である最高約12コマ/秒の性能をフルに発揮させるため、100MB/sのサンディスク エクストリーム プロ コンパクトフラッシュ 128GBをデュアルで使用。片側をRAW、片側をJPEG記録に記録する形で使用した。128GBのサンディスク エクストリーム プロ コンパクトフラッシュにしたのは、4時間という長丁場のレースを、メモリーカードの交換なく撮影できるとありがたいと思ったからだ。

 また、撮影に関しては、日本レース写真家協会(JRPA)に所属する高橋学カメラマンに依頼。Car Watchでも、スバルBRZの参戦リポートなどを寄稿していただいているほか、普段の撮影機材が、EOS-1D X(以下、1DX)の先代モデルであるEOS-1D Mark IV(以下、1D4)だからということも加味してお願いした。以下、高橋学カメラマンによる、EOS-1D X、EF300mm F2.8L IS II USM、サンディスク エクストリーム プロ コンパクトフラッシュの使用リポートをお届けする。


1D4ユーザーが1DXを、夜間走行を含むさまざまなシーンで検証
 キヤノンのフラッグシップモデルは、これまでフルサイズセンサー搭載の高画素モデルEOS-1Dsシリーズと、APS-Hサイズのセンサーを搭載し高速連写に対応したEOS-1Dシリーズという得意分野の違う2系統のラインアップで発売されてきた。

 モータースポーツの現場では高速連写が可能で、かつAPS-Hセンサーを採用することで実質1.3倍の焦点距離を得られる1Dシリーズは、プロカメラマンの間でも高い人気を誇るモデルであったが、この2系統のモデルが今度のモデルチェンジで高画素かつ高速連写可能なモデル「EOS-1D X」として一本化された。

 1DXの画素数はEOS-1Ds MarkIII(2110万画素)と1D4(1610万画素)のほぼ中間の1810万画素。サイズはフルサイズセンサー。1DXの連続撮影速度は、1D4の10コマ/秒をもしのぐ12コマ/秒(なお、14コマ/秒の超高速連続撮影モードというものもあるが、RAWモードが使えず、ピントと露出は1コマ目の値で固定された上でミラーアップ撮影となってしまうのでモータースポーツ撮影には不向きと考え今回は未使用)というスペックを持つ。

1DX+ 300mm F2.8L IS U USM 標準ズームはEF24-70 F2.8L USMを使用した。9月6日には、後継モデルのEF24-70mm F2.8L II USMが発売された UDMA7対応で最大100MB/秒の転送速度を持つサンディスク エクストリーム プロ 128GB。1DXなのでデュアルで使用

 このスペックがどんなメリットを生み出すのかを検証すべく、今回は1D4+EF300mm F2.8L IS USMで筆者が通常行っている撮影を、1DXと最新モデルのEF300mm F2.8L IS II USMとの組み合わせに持ち替え、100MB/sの転送速度を誇るUDMA7規格のCF(コンパクトフラッシュ)カード サンディスク エクストリーム プロ 128GB×2を使用し撮影にのぞんだ。

第一印象
 編集部からはレース前日に機材が届いた。初めてボディーを持ったが「大きなボディーだな」と感じた。スペック程の重量増こそ感じないもののやはり重い。逆に新型のEF300mm F2.8L IS II USMは驚くほど軽い。200g程の軽量化だが劇的に軽く感じ、組み合わせると旧型比でそれ程変わるわけではないが重量バランスが変わったせいか体感的にはかなり軽く感じ、筑波サーキットの現場でも、パドック〜各コーナーへの徒歩での移動も心持ち楽に思えた。

 軽いといえば、1DXのシャッターフィーリングは実に軽快だ。今までフルサイズセンサー機は機構上大きなミラーを動かさなければならず、それがフィーリングにも影響していると感じていたが、この1DXのフィーリングはとても軽く振動も少なく感じた。秒12コマを達成する為にミラーなど高速動作するパーツの制御に、最新のテクノロジーが投入されているのだろう。非常に気持ちよいフィーリングだ。これだけでずい分撮るのが楽しくなる。この“撮るのが楽しい”というのはプロにとっても大きなファクターなのだ。

 ちなみにカメラの設定だが、基本的にはデフォルトの設定のまま。ピクチャースタイルはニュートラルを基調に、当日現場で調整なしにどんどん納品しなければならないことを考え、シャープネスだけ高めに設定した。それをユーザー設定1に登録。ホワイトバランスはオート、AFの測距点は選択した1点にまわりの8点を加えた領域拡大AFを使用した。

高感度時における驚きの高画質
 メディア4耐の仕事は、朝6時30分に筑波サーキットに集合することから始まった。レースは20時までだったが、撤収やら何やらを含めると作業が終わったのは22時過ぎ。朝から晩まで、一日中使ってみて最も印象的だったのは夜間での撮影だ。大きなフルサイズセンサーに1810万画素という、ある意味贅沢なCMOSセンサーのポテンシャルは自分の想像以上。まずは画像を見てほしい。

ISO16000(写真をクリックすると5184×3456ピクセルの画像が開きます)

 感度はISO16000を使用。1D4の上限12800を超える感度だ(1D4でもH1、H2、H3という感度拡張モードでISO12800を超える感度は設定可能ではあるが)。筑波サーキットの照明は決して明るいものではなく、撮影時にも正直言って何号車が向かってきているのかすら判別しにくい程で、そのままのイメージだと写真として成立しないと思っていた。1DXで撮影した写真は、見た目以上に明るく撮れているが、画質(ノイズ処理や高輝度側の描写)、そして低照度下におけるAF、どちらも1D4から確実に進化している。

先に掲示した写真を挟む連続した5コマ。低照度下でのAF性能も問題ない。AFはcase1で使用

ISO20000
 さらに感度を上げISO20000でトライしてみた。絵柄や条件が違うので一概にいえないが、この辺からノイズはグッと増えてくる。以下の3枚の画像おのおののノイズの違いが見られるが、このノイズと引換に筑波屈指の高速コーナーで暗闇の中を疾走してくるマシンを撮影することがまったく苦にならなかった。

ISO20000 1/80秒 F5.6 ホワイトバランス:太陽光(写真をクリックすると5184×3456ピクセルの画像が開きます)
ISO20000 1/80秒 F5.6 ホワイトバランス:AUTO(写真をクリックすると5184×3456ピクセルの画像が開きます)
ISO20000 1/50秒 F7.1 ホワイトバランス:AUTO(写真をクリックすると5184×3456ピクセルの画像が開きます)

ノイズリダクション
 先にも述べたように、今回の撮影ではデフォルトの設定に近い撮影を行うようにしていたので、ノイズリダクションは「高感度撮影時のノイズ低減→標準」とした。ノイズリダクションをOFFにすると以下のようになった。

元の写真
月の部分の切り出し、ISO25600 NR-ON 月の部分の切り出し、ISO25600 NR-OFF
スタンドの金網部分を切り出し、ISO25600 NR-ON スタンドの金網部分を切り出し、ISO25600 NR-OFF

 上の写真から分かるように、ノイズリダクションも過度な不自然さもなく実用的。サーキットの撮影はコース上のクルマがすべてではなく、その雰囲気やちょっとしたスナップ、時には応援している人々など、さまざまな被写体にあふれている。

 無理のない手持ち可能なシャッター速度を保ち、機動力をそこなわず撮影が可能になることはプロ、アマチュア問わず表現の可能性は大きく膨らむだろう。本来、35mmフィルム一眼レフカメラは、機動力を最大の武器に発展してきた製品だ。その遙かなる末裔である1DXは、三脚なしで撮れる領域を拡大しており、カメラマンにとって最も価値ある進化と言っても過言ではない。

非常に優秀な露出制御と優秀な画質
 1DXでは、夜間撮影だけではなく、太陽光下での撮影も進化している。まずは、写真を見てほしい。

(写真をクリックすると5184×3456ピクセルの画像が開きます)
(写真をクリックすると5184×3456ピクセルの画像が開きます)

 露出、色調ともオートでもイメージどおりの安定した仕上がりを得られた。ただ、この辺りについては撮影者の好みの部分も多いので、異なった感想を持つ人もいるかもしれない。

 撮影時刻は17時23分。すでに日も大きく傾き風景も車も表情豊かになってきたので逆光気味に狙ってみた。シャッター速度優先でホワイトバランスはオート、露出補正なし、と露出や色調をカメラまかせにしてみたが見事にイメージどおりの写真が撮れたしだいだ。

 このようなシュチュエーションで逆光気味のボンネットが強く光っても、また光らなくても終始安定した仕上がりを得られたことは驚きだ。ロードスターのボディーの質感や、背景で流れる芝生の表現。わずかに見える光った路面の描き方など画素数を欲張らずフルサイズ化したセンサーの恩恵だろう。とにかく絵作りに無理がない。ちなみに逆光時のAFの動作も何ら問題はなかったことを付け加えておく。

 また、このような状況でも、全カットで1枚もフレアやゴーストが確認できなかったEF300mm F2.8L IS II USMの出来も見事なものだった。

連写性能と高速メモリーカード

最大転送速度100MB/sのサンディスク エクストリーム プロ 128GB

 1DXは、キヤノンで初めてコンパクトフラッシュのダブルスロットを備えた機種だ。いずれのスロットも、最新の転送規格であるUDMA7対応している。

 今回はそれにあわせUDMA7対応で最大100MB/秒(667倍速)の転送速度を持つサンディスク エクストリーム プロ 128GBをを使用したが、やはり高性能なメモリーカードは高速連写モデルの強い力になるようだ。

 12コマ/秒の連続撮影速度と、ゆとりあるバッファ容量をうたう1DXだが、1810万画素のRAWデータの書き込みの負荷は大きく、バッファがフルになるまでの時間はわずかだ。

 筆者の手元にあった2004年ぐらいに購入した同じサンディスク ウルトラIIと簡単な比較をしてみたが、バッファフルになるまでの撮影枚数はエクストリーム プロが40〜50枚程度に対し、ウルトラIIは、その約半分程度しか撮影できなかった。

 大概の撮影では20枚もの連写の機会はそう多くないであろうが、問題はその先にある。バッファが完全に開放されるまでの時間(今回はアクセスランプが消灯するまでの時間)に大きな差が出たのだ。ウルトラIIが実に1分程度もかかったのに対し、エクストリーム プロは何度試しても10秒もかからないのだ。常に臨戦態勢のモータースポーツの現場でバッファ不足は致命的。最新型の高速連写機には、それにふさわしいメディアは必要とあらためて感じた。

 今回のメディア4耐の撮影でバッファ不足に見舞われることは一切なかった。余談ではあるがファイルサイズがさらに大きくバッファ容量も少ないであろうEOS 5D MarkIIIでは相当効果が体感できるのではないかと思う。筆者自身、先月EOS 5D MarkIIIでモータースポーツ(ラリー)を撮る機会に恵まれたが、古いメモリーカードとの組み合わせでは相当ストレスになった事を付け加えておく。

その他気に入った変更点
 細かい点だが、1D4ユーザーとして、1DXで気に入った部分を書いておく。まずは、再生画像の拡大方法が「拡大/縮小/インデックスボタン(虫眼鏡のマーク)」を押した後、メイン電子ダイヤルで操作する方法に変わった。旧型からの乗り換えユーザーは当初慣れが必要かも知れないが個人的にはこちらの方がスムーズに感じた。これは○。

 また、背面表示パネルの左にカード/画像サイズ選択ボタンが追加された。メニュー画面を開くことなく画質や画像サイズの設定が出来るのは、撮影内容によって画像サイズを変える機会が比較的多い筆者には便利な装備。

1DXでは、再生画像の拡大方法が変更された 小さな液晶が背面表示パネル。その左に追加されたカード/画像サイズ選択ボタン

さらなる進化、もしくは改善を希望する点。
 よいことづくめの1DXだが、1D4ユーザーとしては不満点もある。1DXは35mmフルサイズセンサーで、1D4はAPS-Hサイズセンサーという差はあるものの、AFフレームの範囲が狭まったことだ。これは1DXに限らずフルサイズセンサー機に多く見られる傾向で、今までの1Ds系よりは改善されているが、1D4ほどのエリアはカバーされていない。普段から1D4を使っていると、少し物足りないのが正直なところ。画面の隅にある被写体にもピントを合わせたいときはある。

1DXのAFセンサー配列
1D4のAFセンサー配列。こちらのほうが天地方向に広い

1DXで撮影。写真の左上に見えるスタート/フィニッシュゲートをもっと見せたかったが、下端のAFセンサーを使っても下が大きくあいてしまった。ちなみに12コマ/秒だとこのくらいの間隔で連写できる

 また、この先マット面でのマニュアルフォーカスによるピント合わせをしそうもない筆者としては、ファインダー倍率をもう少し抑えてほしい。ファインダーの隅々まで覗くのに視線移動が少々大きく感じ、ホンの少し目が離れただけで像がケラレてしまう。この辺りについては、個人差も大きいだろうが、筆者的には残念な点だ。

 そのほか、機能が増えて、12コマ/秒で駆動することを考えると仕方がないと言えるが、大型化や重量増も挙げられる。今回の撮影ではレンズが筆者の手持ちのものより進化して軽量になっていただけに、バランスの違いですんだが、ボディーはもう少し軽量化されるとありがたいのが本音だ。1台1台はわずかな重量でも、複数のカメラとレンズを持ち1日サーキット内を歩き続けるカメラマンにとっては大きな差になることもある。

左が1DX、右が筆者愛用の1D4。フルサイズ化、12コマ/秒を考えると仕方のない部分であるが、約1180g(本体のみ)から約1340gへと重量も増加している 300mm F2.8L IS II USMの三脚座のレボルビング機構に90度毎のクリックストップが付いたのはうれしい改良だった。しかしそのロックつまみがストラップと近すぎるため干渉することがあり、そこはちょっと残念

総評
 軽快なシャッターフィーリングに精度の高いAF、そして何よりシーンを選ばぬ高画質。モデルチェンジごとに確実にステップアップしていくEOS 1Dシリーズにおいても今回の進化は特に大きいと感じる。テクノロジーでカバーしながら高画素化を突き進んだデジタル一眼レフが、軌道を少し変え、フルサイズ約1810万画素、12コマ/秒の1DXは、従来の1Ds系オーナーにも1D系オーナーにも受け入れられる魅力を備えている。

 特に高感度撮影時の画質の大きな向上は個々のカメラマンの可能性をも広げてくれそうな進化だ。1Ds系の後継機種でもありながら画素数を抑えたその効果は、筆者の想像をはるかに超えたメリットを生んでいる。

 モータースポーツは基本的に野外の日中に行われることが多いが、実は夜間や悪天候時の夕方、ドームのような室内競技なども意外に多い。ラリーにおけるサービスパークでのメンテナンス風景なども、夜間撮影が少なくない。耐久レースなども夜間撮影がある。これからの季節、日照時間がどんどん短くなってくるのでそういう機会も日に日に増えてくるだろう。

 今までの撮影がハードウエアの向上でワンランク上の領域にステップアップするだけではなく、諦めていたり躊躇していたりした領域の撮影まで踏み込めるであろうこの1DXは、少々(いや、かなり)高価だが、満足度における費用対効果はそれ以上のものであろう。

 また、この最新型カメラを支える300mm F2.8L IS II USMも素晴らしかった。そのクリアで逆光(逆境?)にも強く、そして軽い。既存のAPS-Hユーザーは画質の劣化が最小限にとどめられている最新型EXTENDER EF1.4×IIIと組み合わせ、失った1.3倍の焦点距離を埋めるのもよいだろう。

 標準域はEF24-70 F2.8L USMを使ったが、もうすぐ旧型になるこのレンズにも実は特に不満を感じなかった。それゆえ最新モデルは如何に変わるのかにも興味も湧いた。

 プロ、アマ問わず期待に応えるであろう今回の一連のキヤノンの最新モデル。価格を考えると、購入に二の足を踏む部分はあるが、きっと“モータースポーツを撮る”ことがもっと楽しくなると思う。筑波サーキットでのメディア4耐の撮影は長時間にわたるものであったが、実際その撮影は想像していたより楽しいものであった。

(高橋 学)
2012年 9月 7日