【インタビュー】首都高に聞く、「50年目の首都高利用アンケート」実施で何を目指すのか?
アンケート調査によって浮かび上がる首都高の実像


1964年(昭和39年)12月4日に実施した、第1回の「首都高利用アンケート」調査票。路線はまだ少ない

 2012年12月に開通50周年を迎える首都高速道路。総延長は300kmを超え、1日に約100万台の利用がある首都圏交通の大動脈となり、読者の中にも毎日、もしくは週末に利用している方もいるだろう。その首都高が、開通50周年を記念して、「50年目の首都高利用アンケート」を11月1日~30日まで実施している(http://www.50th-shutoko.jp/、回答受付は12月10日まで)。このアンケートは何を目的として行われているのか、また、アンケートのデータはどのように利用されているのか、この調査を担当する首都高速道路 計画・環境部 交通調査課の須長順行氏にお話をうかがった。


首都高速道路株式会社 計画・環境部 交通調査課の須長順行氏

 Car Watchの創刊は、約4年前となる2008年9月24日。その創刊当日掲載した「『大橋ジャンクション』の建設現場を公開する『おとなの社会見学』」において、須長氏は大橋JCT(ジャンクション)の建設スタッフとしてCar Watch誌面に登場している。

 その後大橋JCTは2010年3月28日に無事開通(関連記事:首都高中央環状線、3号渋谷線~4号新宿線間が開通)。須長氏は、現在の計画・環境部 交通調査課に異動となった。

 須長氏によると、首都高利用アンケートは、通常はこのような新規路線の開通に伴う交通量の変化を把握するために行っているのだと言う。「首都高は1962年12月20日に最初の路線(京橋~芝浦間4.5km)が開通しました。1964年(昭和39年)は東京オリンピックが10月10日(後に体育の日となる)に開催されるということで、羽田空港とオリンピック会場(国立代々木競技場など)を結ぶ路線などが開通。第1回の首都高利用アンケートは、オリンピック開催から約2カ月後の12月4日に実施しています。現在では、新規路線が開通すると約半年から1年後を目処に今回のような調査をしています。新しい路線が開通すると、首都高のネットワークが変わります。その変化により、お客様がどうやって首都高を使っているのかをアンケートを行って把握しています」とのこと。

 須長氏に見せていただいた第1回の調査票には、複雑な様相を描き始める首都高のネットワークが形成されていく前段階が見て取れ、調査が必要になった経緯が理解できるものだ。とくに、須長氏も携わった大橋JCTと3号渋谷線~4号新宿線の山手トンネル開通によって首都高の渋滞状況は大幅に変化し、その後神奈川6号川崎線の開通(関連記事:首都高、神奈川6号川崎線 殿町~大師JCT間を本日開通)によって、神奈川エリアの交通状況も変化している。

 そのためのアンケートを昨年実施。今年実施する第28回の首都高利用アンケートは、実は初めて新規路線の開通に伴わず実施するものになる。「首都高開通から50年目となる第28回の首都高利用アンケートは、新規路線開通に伴うものではなく、今年の1月1日から距離別料金へ移行したことに伴うものです。この距離別料金の移行に伴い料金圏が撤廃された結果、埼玉エリアから東京・神奈川エリアまで通して走る人などが増えています。首都高では現在9割超のお客様にETCで利用していただいており、利用された入口と出口の把握はできています。ただし、そのお客様がどのようなルートを通って、出口に至ったかは分かりません。この利用経路などを把握するために、アンケートを行っているのです」と須長氏は語ってくれた。

 大橋JCTの開通によって、3号渋谷線から5号池袋線へ向かう場合、大橋JCTで中央環状線(C2)経由で向かう方法と、都心環状線(C1)経由で向かう方法と2通り考えられる。3号から5号だとC2経由が多そうな想像はつくものの、3号から6号三郷線だと、直接ドライバーの利用状況を調査しない限り、交通動向の把握は難しいだろう。

 ETCの普及に伴い、以前は料金所で渡していた紙の調査票による調査から、インターネットでのアンケートに移行。PCはもちろん、スマートフォンや一般的な携帯電話(フィーチャーフォン)で、アンケートに答えることも可能だと言う。

 このアンケートで募集しているのは、11月1日~30日までの平日の利用者を対象としている。11月の平日を対象としているのは、首都高の平均的な交通量は、年末・年始の時期、夏休みなどの長期休暇時のない、9月~11月になると言われているため。9月は連休が増え、10月は東名高速の集中工事が実施され首都高の利用状況も変わるため、11月に実施しているとのことだ。

第1回の利用アンケートから作成されたデータ。新宿入口から入った利用者がどの出口で降りたかが円グラフで示されている

 この調査により集めたデータはどう使われていくのだろう。「首都高の1日の利用台数は約100万台となるのですが、その1日の典型的な利用パターンを再現する作業を行っています。ある場所にいるお客様が、どのルートを通って出口へ向かう可能性が高いのかを再現していきます」と言い、このデータがさまざまな首都高の改善のベースになっていると語る。

 「たとえば、首都高には本線上や料金所入口に2段の文字情報板などがありますが、449基ある文字情報板にどの渋滞情報を表示するのかを決める元データとなっています。文字情報板に表示する渋滞情報は、渋滞距離だけを元に決定しているのではなく、ある場所にいるお客様がどの方向に向かう可能性が高いのかを、アンケートデータを元にして再現しており、その可能性が高い順に表示しています。また首都高では、新規路線の計画や渋滞対策・出入口の追加などを検討する際のデータの1つとしても使われています」とのこと。

首都高 都心環状線 代官町入口。代官町入口の手前には2段の文字情報板があり、代官町入口からの利用者にとって一番有益であろう情報が表示される

 すでにアンケート受付は始まっており、先着5万名の回答者にはもれなくドリンクがプレゼントされるほか、ダブルチャンスとして東北復興支援ギフトが抽選で250名に当たる。アンケートには平日利用した回数分答えることができ、ドリンクは2回までもらえるそうだ。自分自身の利便性の向上にもつながってくるので、利用者は「50年目の首都高利用アンケート」(http://www.50th-shutoko.jp/)から答えてみてほしい。

インターネットで実施している「50年目の首都高利用アンケート」首都高のPAなどでは、アンケートの告知チラシやカードが配布されている

(編集部:谷川 潔)
2012年 11月 12日