豊田会長、次期政権に「国民の苦労が分かっていただける方」と要望
11月定例会見より

豊田章男会長

2012年11月16日開催



 自工会(日本自動車工業会)は11月16日、定例記者会見を開催し、豊田章男会長は衆議院解散後の次期政権についてや、尖閣諸島問題に端を発する大規模な反日デモを経た、現在の中国での見通しなどについて語った。

 冒頭、衆議院選挙後に新政権が発足するにあたり、自工会などが訴えている「自動車取得税、自動車重量税の廃止」についての行方が不透明である点や、新政権への期待などについて聞かれた豊田会長は、2税の廃止について、「もともと道路を整備するために始まったこれらの税が、現在は一般財源化している。自動車ユーザーが負担している状況であり、決して自動車ユーザーを優遇して下さいとお願いしているわけではなく、あまりに自動車ユーザーだけへの負担が強すぎる。このアンフェアと言える状況を改善していただきたい」「1990年代のバブル期から20年間、日経225社の時価総額は7~8割の価値を日本全体で失っている。そしてその間も、アセット(資産)の減り分を減らす努力をして、何とかバランスシートのつじつまを合わせてきた矢先に起こったのがリーマンショックと未曾有の円高だった。民間は本当に追い込まれており、猶予は一刻もない状況ということをぜひとも次期政権を担当する方はご理解いただき、我々を正しく導いていただきたいと思う」と所見を述べた。

 また、「ここ数年、6重苦(円高、貿易自由化の遅れ、高い法人税、製造業への派遣禁止、CO2排出量削減、電力不足)により企業収益が悪化し、リストラを避けられない企業が多くある。また(東日本大震災の)被災者は未だに仮設住宅に住まわれておられる方が多くいらっしゃる。こういう中で、政治が混乱するといつも犠牲になるのは国民」であるとし、次期政権には「国民の苦労が分かっていただける方、そして頑張った人が報われる国・社会を作る政治をしていただきたい」と要望を述べた。

 一方、国内自動車メーカーの中国での状況については、「各社の中間決算発表に見られたように、我々自動車業界に多大な影響を及ぼしたと言わざるを得ないと思う。ただ、各社必死に努力しており、少しは明るさが戻ってきたと聞いているが、依然厳しい状況が続いているには変わりない」としつつ、習近平新政権がスタートしたことから「1日も早く元の友好関係に戻って欲しいと思う。我々は、自動車を通じてこれまでと同じようによき企業市民として日本、中国の経済発展に貢献していきたい」と、新政権発足に伴い関係改善を加速させたいとの意向を示した。

 なお、記者会見では10月6日~14日に行われた「お台場学園祭2012」の来場者数についても発表された。

 発表によると、今回初めて行われたお台場学園祭には目標の30万人を超える延べ38万人が来場。特に29歳以下の若者が50%以上を占め、多くの若年層へのクルマの接触機会が得られたと言う。

 この結果を踏まえ、豊田会長は「私も子供たちと一緒にソープボックスダービーに参加したり、各社トップの皆様とトークショーでクルマの魅力を語り合ったりする中で、自動車業界が若者に近づいていく努力を続けていくことで、クルマファン・バイクファンを拡大することができるとの思いを強くした」と、大きな手応えを感じたことを述べるとともに、来年の11月23日~12月1日に開催予定の「第43回東京モーターショー2013」では、「クルマの魅力、楽しさはもちろん、日本のモーターショーの素晴らしさを皆さんに感じていただけるよう関係者一同、力を合わせて取り組んでいきたい」と、抱負を語った。

(編集部:小林 隆)
2012年 11月 16日