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【インタビュー】ダイハツ車をもっと楽しくする「D-SPORT」の魅力を探る
ディーラーでも販売される品質とトータルコーディネート可能なラインアップを備えるダイハツ車チューンのスペシャリスト
(2014/1/14 12:00)
「Do sprots!」をコンセプトにダイハツ車専用カスタマイズパーツブランドとして2002年に誕生した「D-SPORT(ディースポーツ)」。「ダイハツ車のトータルチューニングブランド」を合言葉に、10年以上にわたってダイハツ車向けのカスタマイズパーツを数多くリリースしている。
ダイハツ車の一般的なイメージといえば、ムーヴやタント、ミライースなどに代表される軽自動車が中心で、「使い勝手のよさとコストパフォーマンスで勝負する実用車」というものだろう。しかし、そんなダイハツ工業の軽自動車でも、かつては2シーターオープンスポーツのコペン、ミニマム軽トラックのミゼットIIといった個性的なモデルを販売しており、コンパクトカーでは「ストーリア X4」「ブーン X4」などが国内ラリーシーンを席巻し、レース好きの人には強烈な印象を残していることだろう。
ここ数年は“第3のエコカー”の呼び名でハイブリッドカーなどに勝負を挑んだ低燃費技術「e:S(イース)テクノロジー」、軽自動車初採用となった衝突回避支援システム「スマートアシスト」といった“実用的なダイハツ車”の面に注力されていたが、2013年11月に開催された「第43回東京モーターショー」にはコペンの後継モデルとなる軽オープンスポーツのコンセプトカー「KOPEN」が出品され、2014年からは“個性的なダイハツ車”も再び脚光を浴びる情勢となってきている。
また、一方でD-SPORTでは前出のムーヴやタントなどにも、コンパクトな車両ならではのダイレクトなドライブフィーリングを磨き上げるためのパーツを多数用意。ダイハツ車オーナーなら車種を問わず注目したいブランドとなっている。そんなD-SPORTにおじゃまして、パーツの企画・開発担当者にD-SPORT製品の開発姿勢や製品特性などについて取材したのでご紹介しよう。
D-SPORTはダイハツ車カスタマイズのファーストステップ
今回の取材で解説してくれたのは、D-SPORTの松尾光洋氏。松尾氏によれば、D-SPORTの基本的な考え方は「ダイハツ車で走りを楽しんでもらうために何が必要か?」というもの。日常シーンでの公道走行から始まり、コペンのようなスポーティモデルに対してはショートサーキットなどでの本格的なドライビングまで見すえたパーツラインアップを展開。軽自動車やコンパクトカーが中心となるダイハツ車の魅力を引き出すべく、軽量、コンパクトな車両が持つダイレクト感をブラッシュアップさせる吸排気系、駆動系、足まわり、ボディー補強などのチューニングパーツを用意している。
製品展開は「ダイハツ車を手に入れた人がクルマをカスタマイズしたいと考えたとき、ファーストステップとしてひととおりのパーツがD-SPORTでそろえられる」というコンセプトをベースに進めており、2002年1月のブランド立ち上げ以来、新登場するダイハツ車向けに数多くのパーツを開発してきた。現在では生産終了となった車両も含めて20モデルほどに対応するチューニングパーツをリリース。前出のコペンのようにカスタマイズの需要が高い車種に関してはファーストステップからさらに踏み込んだ製品も積極的に市場投入している。
また、全国にあるダイハツディーラーのうち、9割ほどの販社でパーツや製品が取り扱われており、ディーラーを経由してパーツが手に入れられるということもD-SPORTの大きな特徴。これに付随して、一部の競技用パーツを除いてD-SPORTのパーツは保安基準適合品となっており、カタログ上では競技用パーツは赤字で表記して注意喚起にも配慮。新車ディーラーでも取り扱われる安定した製品クオリティ、幅広いダイハツ車に対応するパーツラインアップの設定など、これまでにクルマのカスタマイズ経験がないという人でも手を出しやすいブランドとなっている。
フラグシップモデルはこれからも“コペン”?
最近、D-SPORTで製品開発に注力している車種はタントとミライースだという。2013年10月に3代目モデルにフルモデルチェンジしたタントはダイハツの主力モデルの1台であり、軽自動車の販売ランキング上位の常連であるだけにD-SPORTとしても外すことのできないクルマだ。現行型ムーヴと共通のプラットフォームを採用するタントでは多数の共通するパーツやコンポーネントを使っており、共通する部分で使用されているD-SPORTのムーヴ対応パーツは、ストレートに考えればタントでも利用可能のはず。しかし、D-SPORTではそんな状況でも実際の車両にパーツがきちんと取り付けられるかを確認し、装着状態でのフィーリングのよしあしもチェックしてから適合品番を与えるという手順を踏んでいるという。松尾氏は「ただ装着できるからという理由だけでOKとはしたくないんです。実際に装着して、走って評価しなければD-SPORTとして販売できません」と語る。
もう1台のミライースは、個人的には少し意外にも感じるモデル。ミライースといえば、ハイブリッドシステムなどのアシストに頼ることなく33.4km/LのJC08モード燃費を実現し、さらに車両価格の安さでも注目を浴びるというクルマだからだ。しかし、松尾氏はミライースを「以前からあるミラなどと比較してもミライースのポテンシャルは高いですよ。ボディーは剛性と軽量さを併せ持っています。あとはトランスミッションにMTが用意されることがあれば、かつてのエッセに替わるスポーツ走行車になる素養を持っていると思います」と高く評価。ミライースを走行性能の面で評価するという視点はさすがダイハツ車チューンのスペシャリストと感じさせる部分であり、「ダイハツ車で走りを楽しんでもらうために何が必要か?」というD-SPORTの基本姿勢の現れでもあるだろう。
このほかD-SPORTは、2012年で販売を終了したコペンにも2013年12月になって新製品である「コペン用ストリートマスタークラッチキット(10万2900円)」を発売した。実はコペン用となる同様のフライホイール一体型クラッチキットをリリースしていたが、同じ素材での生産が続けられなくなったことで販売を終了。しかし、コペンユーザーから再販を望む要望が多数寄せられたことを受け、使用する素材を一新し、クラッチ機構を新しくするといったリファインも行って発売することになったという。D-SPORTのブランド立ち上げとほぼ同時期にデビューしたコペンはカスタマイズ志向の強いユーザーから高く評価されたこともあり、コペン対応パーツは新車販売中から現在に至るまでD-SPORTの販売の中心となっている。とくにコペンの弱点であるサイドシル強度を向上させる「サイドシル補強バー」はコペンチューニングの定番アイテムとして人気が定着。D-SPORT製品でほかを寄せ付けない圧倒的な販売数を誇り、現在でも定期的に出荷されているという。新車販売の終了から1年以上が経過した2014年になってもD-SPORTの製品カタログでは車種別パーツリストのトップにコペンが置かれ、また新製品もリリースされるなど、D-SPORTにとってコペンは現役のフラグシップモデルなのだ。
そうなれば、やはり気になるのは昨年の東京モーターショー、そして先日の東京オートサロンでも展示が行われたコンセプトカー「KOPEN」、そして2014年中に発売がアナウンスされている“2代目コペン”についてだが、松尾氏には「現時点でお話しできることはありません」ときっぱり情報をシャットアウトされてしまった。しかし、KOPENではダイハツもカスタマイズ性の高さを強くアピールしており、これまでの歴史を考えてみれば、“2代目コペン”が正式にデビューしたときにはD-SPORTが積極的にパーツ開発を進めることはむしろ自然な流れとすら言えるだろう。今後の展開は要注目だ。
このほかにD-SPORTでは、実際に車両を走らせるさまざまな活動を実施。ブランドスタートの1年半後には軽自動車を中心とした耐久レース「K4GP」、ジムカーナ大会の「ダイハツ・チャレンジカップ」といったレースに参戦。自分たちの製品をモータースポーツの真剣勝負で使って走行性能に対する影響や耐久性などをチェック。ここで得た経験を製品開発にフィードバックしてレベルアップを図るといった活動を続けた。しかし、ダイハツがレース活動から撤退した2009年からは路線変更を行い、サーキット走行会の「D-SPORT CUP」を開催するほか、ジムカーナイベントの「D3チャレンジカップ」などに協賛。「ダイハツ車で走りを楽しんでもらうための製品開発」に加え、「ダイハツ車で気兼ねなく走りを楽しんでもらえるフィールドの提供」も行っているのだ。
最後に、D-SPORTのデモカー3台をご紹介する。ここまでで取り上げてきたD-SPORTの取り組みや開発思想が、実際にどのようなパーツとして結実しているのか確認してほしい。
「D-SPORTコペン(AT)」
D-SPORTの最新パーツでフル装備した「D-SPORTコペン(AT)」。“大人のコペン”をテーマに開発された車両で、コペン用に特別に設定されたGT(グランツーリスモ)シリーズのチューニングパーツを中心に装着。エクステリアデザインから走行性能を引き上げる各種パーツまでトータルコーディネートを行っている。
「D-SPORTエッセ」
エッセもD-SPORTで積極的なパーツ展開が行われてきたモデル。また、エッセでは「K4GP 富士1000km耐久エコラン」の2006年、2007年大会でクラス優勝も果たしている。