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いすゞとユーグレナ、ミドリムシを使った燃料で走るバスを公開

ミドリムシ由来のバイオ燃料を共同研究する「DeuSEL(デューゼル)プロジェクト」

いすゞ自動車 代表取締役社長の細井行氏(左)とユーグレナ代表取締役社長の出雲充氏(右)
2014年6月25日発表

 いすゞ自動車とユーグレナは6月25日、微細藻類ユーグレナ(ミドリムシ)由来の次世代バイオディーゼル燃料の実用化に向けた共同研究契約を結び、「DeuSEL(デューゼル)プロジェクト」を開始すると発表した。

 このプロジェクトでは2つのことを行う。まず1つは2018年までにミドリムシを原料とするディーゼルエンジン向けの次世代のバイオディーゼル燃料の実用化に向けた技術確立を行うこと。もう1つは、世界で初めて開発に成功したミドリムシを原料とする従来型バイオディーゼル燃料を使ったバスを7月1日から運行すること。

ミドリムシ100%の次世代バイオディーゼル燃料を開発

 原料となるミドリムシは「虫」ではなく、ワカメ、コンブ、ヒジキ、ノリといった海藻に近い単細胞真核生物で藻の一種。ミドリムシの中にも100種類が確認されており、その中から燃料に向いた油脂成分を多く含む種類を使って燃料として活用する。

 ミドリムシの大量培養技術を持つというユーグレナは東京大学農学部初のベンチャー企業。社名のユーグレナはミドリムシの学名であるとおり、ミドリムシを大量に育てる技術を発明し、ミドリムシを研究し、ビジネスや社会に還元していくことを使命としている。

 すでにミドリムシ由来の従来型バイオディーゼル燃料は開発済だが、バイオディーゼル燃料の規格として、5%までしか軽油と混合できないため、石油成分のない燃料とはならない。バイオ由来の成分を多くするとスラッジの堆積など、影響があるからだとしている。

 そこで、これから開発を進める次世代型では軽油との混合をせずに使えるものとし、石油を一滴も使わない燃料にする。従来型と同様、既存の軽油向けのディーゼルエンジンに手を加えることなく使用できる特徴は引き継ぐ。ミドリムシは藻であるため、太陽に当たると光合成を行って二酸化炭素を吸収するため、CO2排出量削減にも役立つ。

 ユーグレナはミドリムシ由来の燃料として、航空機向けのジェット燃料の開発を本格的に手がけているが、今回、いすゞとパートナーシップを組むことで、ディーゼルエンジン向けも本格的に研究開発をスタートさせる。一方、いすゞは、次世代型の開発に際し、自動車メーカーとして協力、実際の自動車に燃料として用いた実証走行や性能試験を行い、特にまだ規格が定まっていない石油を一滴も使わない次世代型のバイオディーゼル燃料の規格策定にも協力を行う。

ミドリムシを原料として、手前にあるビンの並びのように加工することで、従来型バイオディーゼル燃料となる
ミドリムシを持ついすゞ自動車 代表取締役社長の細井行氏(左)とユーグレナ代表取締役社長の出雲充氏(右)
「DeuSEL」のロゴ
プロジェクトにおける両社の役割
「DeuSEL」はディーゼルとユーグレナの造語
ミドリムシは「虫」ではなく藻の一種
今回の「DeuSELプロジェクト」

従来型バイオ燃料として、ミドリムシでバスを運行

 また、今回のプロジェクトの2つめのミドリムシ由来のバイオディーゼル燃料を使ったバス運行では、神奈川県藤沢市でいすゞ藤沢工場と湘南台駅の間を往復する従業員と来客向けの送迎バスのうち1台を従来型バイオディーゼル燃料「DeuSEL」で運行する。

 燃料は従来型のためミドリムシ由来の燃料の比率は1%。バスはいすゞの中型路線バスの「エルガミオ」のノンステップタイプで、エンジンや燃料タンクをはじめ、通常の軽油仕様となっており一切手を加えていない。区別のためにボディに「DeuSEL」のラッピングがしてある程度となる。

 「DeuSEL」の製造にはユーグレナが大量培養するミドリムシ粉末を原料とする。途中のFAME化に第三化成、混合と運搬にはバイオ燃料の取り扱い実績のある三和エナジーが協力する。自動車の燃料として使用するためには、燃料にかかる税金の取り扱いなども含め、既存の燃料販売業者の協力が必要だとしている。

従来型バイオディーゼル燃料の製造工程
従来型バイオディーゼル燃料を使ってバスを運行
「DeuSEL」を使ってミドリムシ由来の燃料で運行されるバスの実物。中型路線バスの「エルガミオ」で2011年式。燃料に関する改造は一切行っていない
CO2がミドリムシを作り、燃料となり、燃料を燃やしたCO2がミドリムシへと循環する
まったく無改造のエンジン
給油口には区別のためのシールがあるが、ここも無改造
通常と変わらない運転席
バスはノンステップ仕様
車内には「DeuSEL」使用の掲示がある

「DeuSEL」はディーゼルとユーグレナの組み合わせで命名

 発表会では、両社の社長が登壇、いすゞ自動車 代表取締役社長の細井行氏は、DとSELはディーゼルのDとSEL、ユーグレナ(euglena)のeuを組み合わせた「DeuSEL」の名前の由来を説明、「みなさまに愛されるよう、両社で名前を付けた」と命名から共同プロジェクトであると述べた。

 また、今回のプロジェクトを行う背景として「(ディーゼルは)軽油を使用する以上、CO2の排出は避けられない、資源国でない日本にとって燃料多様性への対応は重要な課題」と理由を述べた。このプロジェクトを全社で共有するために「DeuSEL」を使った送迎バスの運行をするとした。

 ユーグレナ代表取締役社長の出雲充氏は、ユーグレナが2005年12月にミドリムシの大量培養に世界で初めて成功したこと、大量培養技術も世界で唯一のユーグレナの技術であることを強調した。

 バイオディーゼル燃料については「出力と長時間稼働の必要性があり、電気や水素や他の代替エネルギーの代替が困難で潜在的需要が高い」とし、研究開発を進めてきたことを明らかにした。今回のいすゞとパートナーを組むことで、すでに開発を進めているジェット燃料と同程度に「DeuSEL」に力を入れていくとした。

両社の社長は「DeuSEL」燃料のバスに乗って登場した
いすゞ自動車 代表取締役社長の細井行氏
ユーグレナ代表取締役社長の出雲充氏
ユーグレナはバイオジェット燃料を手がけてきた
ユーグレナの燃料の種類別の取り組み

(正田拓也)