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「楽ナビ」を圏央道 相模原愛川IC~高尾山IC開通対応データにアップデートしてみた

圏央道延伸対応で30分~45分程度の短縮ルートを提案可能に

6月18日に開通した圏央道 相模原愛川IC~高尾山IC間。東名と中央道、関越道が高速道路でつながった

 「つながる。東名と中央、関越」とのキャッチコピーがつけられ6月28日15時に開通した圏央道(首都圏中央連絡自動車道)相模原愛川IC(インターチェンジ)~高尾山IC間(延長14.8km)。開通から1週間以上が過ぎ、すでに新規開通区間を走られた読者もいるだろう。キャッチコピーから分かるように、この圏央道延伸は、東名高速道路と中央自動車道、そして関越自動車道を一気に高速道路でつなぐものであり、東名の渋滞の名所である大和トンネルや首都高速を使わずに埼玉、東京、神奈川の行き来が可能となるものだ。そのため、14.8kmという開通距離を超えた影響を道路ネットワークに及ぼすポテンシャルを持っている。

今回の開通区間など。首都圏では今後も多数の開通が予定されているのが分かる

 1つは並行して走る国道129号や、国道16号の渋滞緩和。そしてもう1つは東名の大和トンネルの渋滞緩和だろう。前者は並行区間であるため地元利用の人を中心にすでに効果が出始めており、後者は圏央道延伸が多くのカーナビに反映されてからになるだろう。カーナビの新車装着率は高く、週末旅行に出かけるドライバーのほとんどは、まずカーナビに目的地をセットして、そのルートを頼りに運転している。もちろん、筆者も「出かけるときには、まず目的地セット」だ。そのため、圏央道延伸が反映されていないカーナビが多数を占める現状では、東名の渋滞緩和効果がすぐに出にくく、折角開通した区間を使うメリットを多くの人が知らないままとなってしまう。渋滞を回避できる、より短距離で行けるルートがあるのにそれが知られないことは社会的な損失だし、約3000億円の建設費を投じられた延伸区間が宝の持ち腐れになってしまうだろう。と、大げさに書いてみたが、より短距離で、より渋滞のないルートがあるなら、それをカーナビは提案すべきだし、それがカーナビの大切な機能だと思っている。

カーナビを圏央道延伸に対応させるには?

今回バージョンアップ例として取り上げたカーナビ「楽ナビ AVIC-MRZ099」。月ごとにバージョンアップを行っており、最大3年間無料で最新データにすることができる

 交通の流れを大きく変える圏央道延伸にカーナビを対応させる一番簡単な方法は、“対応したカーナビに買い換える”ことだろう。しかしながら、2014年度内だけを見ても、首都高速 中央環状品川線開通、圏央道 海老名JCT~寒川北IC開通が控えている。直近では、7月20日に舞鶴若狭道が全線開通したばかりだ。

 毎年買い換えるという豪快な方法もあるが、一般的には地図のバージョンアップサービスなどで対応するのが望ましいだろう。そこで、今回はカロッツェリア(パイオニア)のミドルクラスカーナビ「楽ナビ」を使って無料バージョンアップを実施。圏央道開通反映によりルート検索などがどう変わるのかを見てみた。使用した楽ナビは、上位機種となるAVIC-MRZ099。サイバーナビシリーズほど多機能ではないが、カーナビの本質である地図やルートにおいては同等の機能を持つ。この楽ナビシリーズでも、サイバーナビシリーズと同様に発売時から3年の無料アップデートが保証されており、ここ1~2年の開通ラッシュには無料で対応可能だし、その後の有料アップデートデータの提供も、これまでのカロッツェリアの対応を見る限り比較的長期にわたって行われていくのだろう。

バージョンアップ前の楽ナビ画面。圏央道 相模原愛川IC~高尾山ICの開通が反映されていない
圏央道 相模原愛川IC~高尾山IC間を走行中。画面に道路は標示されていない
バージョンアップ前のステータス

 6月28日に開通した圏央道 相模原愛川IC~高尾山IC間への対応だが、さすがに当日とはいかず2日遅れの30日昼にバージョンアップデータを提供開始。超優秀な対応速度だが、実はこれには訳がある。楽ナビでは道路データについて毎月更新データを提供しているものの、半年に1度、アプリケーション、地図データ、道路データ、地点データ、渋滞予測データなどすべてのデータを新しくする全更新データを提供している。本来はこの全更新データは5月に予定されていたが、圏央道開通日が当初の3月(2013年度内)から6月28日にずれたため、その重要性を考慮して延期。そのため、道路の新規開通ラッシュとなる2013年度末のデータをすべて採り入れたものとなっている。

●マップチャージ更新情報
http://pioneer.jp/carrozzeria/support/map_charge/index.html

 変更点は上記のページを見てもらえば分かるとおり、非常に多岐にわたっている。高速道路を見ても、北は八戸久慈自動車道 八戸JCT~八戸是川ICから、南は東九州自動車道(宮崎区間) 日向IC~都農ICまでさまざまな個所が開通している。パイオニアはこうした更新情報をしっかり提供しているので、実は道路の開通チェックやスポットの変更チェックにも便利なWebサイトだ。

全更新データによる更新は、しっかりした計画を立てて行おう

 30日に更新データが配信されたため、早速ダウンロートしてアップデート!!というわけには行かないのが全更新データだ。筆者は圏央道開通記事作成と本記事をまとめて作ろうと思って中央道 石川PA(下り)で昼過ぎにアップデートデータを受信しようとしてPCからアップデート機能のある「ナビスタジオ」を起動。しかしながら、約7.3GBもあるデータのためかダウンロード予約が必要となっていた。30日の夜にダウンロード予約が可能となっていたため、ナビスタジオでダウンロード時間帯を予約。石川PAでのアップデートはあきらめた。

 圏央道開通記事の取材を終え自宅に帰宅。自宅は光回線のため、約7.3GBくらいはすぐだろうと思ったら、それも甘い予想だった。おそらくダウンロードサーバーの転送容量の問題や、SDカードのチェックの問題もあるのだろうが、約7.3GBをダウンロードするのにかかった時間は3時間程度。7.3GBに配慮してデジタルカメラで一度使った16GBのSDメモリーカード(空き容量11GB程度)を使ったが2分割転送となっていた。

 これはダウンロード容量には問題なかったものの、このダウンロードデータは圧縮データのためデータを展開する容量が必要となるためだ。そのための空き容量が足らず2分割転送になったと思われる。安易にデジタルカメラから使い回してしまったのが2分割の原因。16GBのSDメモリーカードの価格はすでに安価になっているため、楽ナビのアップデート専用に用意しておくのがよいだろう。16GBの空き容量があれば、1度のダウンロードでアップデータを用意できる。

バージョンアップのためPCから「ナビスタジオ」を起動。するとナビスタジオそのものもバージョンアップされた。しばらく使っていなかったことを思い出した
ナビスタジオでアップデータを確認すると全更新データが見つかった
すぐにダウンロードできなかったので、夜の時間帯を予約
夜に自宅の光回線でダウンロードした
SDメモリーカードにダウンロードしたデータの整合性をチェック。非常に安心できるダウンロードツールだ
16GBのメモリーカードを用意したが2分割ダウンロードとなった
約3時間後にアップデートデータが入った2枚のSDカードを作成できた

 アップデートデータを準備できれば、あとはそのデータの入ったSDカードを楽ナビに入れればよいだけだ。楽ナビがSDカードを認識し、アップデートが始まる。しかしながら、さすが全更新データだけあってバックグラウンドで処理というわけにはいかない。アップデート中は、楽ナビの画面がアップデート残り時間画面に切り替わり、アップデートが終わるまでの時間を表示し、カーナビとしては使えない。最初に表示された時間は「1時間30分」だった。この1時間30分という数字は結構正確で、カーナビなしでのドライブがいかに不安なものか再認識するよい機会となった。

アップデートデータの入った1枚目のSDカードを楽ナビにセットする
プログラム更新データを入れていたため、最初にプログラム更新が行われた
楽ナビ再起動
楽ナビの再起動画面。この時点では2013年バージョン
プログラム更新後、全更新データによるバージョンアップを行う
1時間30分待つ
ほぼ時間どおりにバージョンアップが終了
楽ナビ再起動。コピーライト表記が2014年になっている
全更新データ適用後のバージョン表記。地図データが2014年になっている

 バージョンアップが終わったら、バージョン情報を確認。楽ナビ AVIC-MRZ099の場合は、プログラムバージョン「2013年度版」、地図データ「2014年 第1.0.0版」、検索データ「2014年 第1.0.0版」と表示されているはずだ。次に地図が変更されているかどうか確認してみよう。お勧めのチェックポイントは高尾山IC。高尾山ICの南にもトンネルが延びていれば、新規開通区間が反映されていることになる。

手軽な更新のチェックポイントである高尾山IC。南北にトンネルがあれば圏央道開通に対応したデータ。この高尾山ICは幾何学的に美しいICとしても知られる

 この圏央道新規開通区間を、カーナビで利用できるメリットは非常に大きい。今回は汎用性が少しでも出るように、東名高速 海老名SA(下り)駐車場で、世界遺産となった富岡製糸場までのルートと、「南アルプスの天然水」で知られるサントリー白州工場までのルートを検索してみた。前者が関越道使用の、後者が中央道使用の観光スポットになる。

 圏央道新規開通区間を使えることにより、富岡製糸場は2時間52分(159km)から2時間22分(146km)に、白州工場は3時間10分(167km)から2時間15分(142km)に時間短縮された。30分~50分程度短縮できたほか、距離的にも短いものとなる。また、距離が短縮され一定速度で走行可能な高速道路を使うためか、いずれも最も環境に優しいエコルートとなったのがポイントだろう。残念なのは、6月30日という開通直後にリリースされたバージョンアップデータのため圏央道の料金が反映できていないこと。これは高速道路料金が開通日直前まで発表とならないため仕方のない部分。早期に新規開通区間が正しく反映されたカーナビになったことを素直に喜びたい。圏央道の料金については、8月のアップデートでの対応が予定されている(こちらは差分更新のため、バックグラウンド更新が可能だ)。

●富岡製糸場 更新前ルート2時間52分→更新後ルート2時間22分

海老名SA(下り)で富岡製糸場を検索してみた
バージョンアップ前は、東名高速を戻って環八→関越というルートが案内された
お勧めルートは2時間52分かかるものだった
バージョンアップ後のルート。圏央道(外回り)を使用するものとなった
お勧めルートは2時間22分となった。30分の短縮のほか、もっとも環境によいルートでもある

●サントリー 南アルプス白州工場 更新前ルート3時間10分→更新後ルート2時間15分

海老名SA(下り)でサントリー天然水 白州工場を検索してみた
お勧めルートとして提案されたのは、圏央道を相模原愛川ICまで行き、国道129号→八王子バイパスを使うルート
6ルートリストでほかのルートを確認してみると、3時間0分の最速ルートがあるようだ
これが最速ルート。御殿場ICまで進み、東富士五湖道路を北上。国道358号→甲府南ICと進むものだ。これは予測していなかっただけに、驚きのルートだった
バージョンアップ後のお勧めルート。圏央道(外回り)→中央道(下り)と、極めて素直なルートになっている
6ルートリスト。お勧めの3時間10分と比べて55分の、最速だったお勧め2の3時間0分と比べても45分の時短を実現できている。実際の走行時はドライブの疲れの軽減など、さまざまなメリットを得られるだろう

 手順はそれほど面倒ではないものの、更新にかかる時間は“結構長いかも”というのが正直なところだ。しかし、その結果得られる正しい道路データ、最短ルート、新たな検索スポットは、ドライブをより楽しくしてくれることは間違いない。無料でバージョンアップできるならば、手間暇惜しまず積極的にバージョンアップするのがお勧めだし、有料バージョンアップとなるならばバージョンアップ料を検討し、新機種に買い換えるのもありだと思う。ドライブする機会の増える夏休み前に、しっかりバージョンアップをすませておきたい。

 なお、7月20日に開通したばかりの舞鶴若狭道 小浜IC~敦賀JCTに対応するデータは現時点で提供日がアナウンスされていない。いずれ対応するのは間違いないが、高速道路の開通はルートに対する影響力が大きいため、できるだけ早期の対応を期待したい。

多数の更新が行われているが、個人的にツボにはまった更新を紹介。イオンモールは建物の外形が表示されるようになった
環状2号(通称マッカーサー道路)も、しっかり収録されている
カーナビに開通したばかりの道路が正しく表示され、走行時もきっちりサポートしてくれるのは素直にうれしい。バージョンアップデータをしっかり提供し続ける体制があることは、楽ナビやサイバーナビなどカロッツェリアナビの商品力の高さにつながっている

(編集部:谷川 潔/Photo:安田 剛)