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【インタビュー】フォルクスワーゲン 電子・電装開発部門担当専務タンネベルガー氏に聞く

「自動運転はプレミアムブランドのアウディが担当し、自動駐車はフォルクスワーゲンが担当する」

2015年1月14日実施

フォルクスワーゲン 電子・電装開発部門担当専務 フォルクマル・タンネベルガー氏

 1月14日〜16日の3日間にわたって東京ビッグサイト(東京都江東区)において「オートモーティブワールド2015」が開催されている。その基調講演に参加するために独フォルクスワーゲンの電子・電装開発部門担当専務 フォルクマル・タンネベルガー氏が来日し、日本の自動車関連記者向けに共同インタビューを開催したので、その模様をお伝えする。

──1月にラスベガスで開催された「International CES」ではフォルクスワーゲングループの自動運転が話題になっていた。自動運転を実現するあたり、今後のシナリオやロードマップに関して教えてほしい。
タンネベルガー氏:フォルクスワーゲングループとしては、基本的な考え方として自動運転と自動駐車を区別して考えている。このうち自動運転に関してはグループのプレミアムブランドであるアウディが開発を行い、フォルクスワーゲンは自動駐車の方を担当している。フォルクスワーゲングループとしてはモジュール戦略をとっており、アウディで開発した技術をフォルクスワーゲンで使うことができるし、その逆も可能だ。自動運転に関してだが、技術の進化だけで実現できるものではなく、法改正などを含めてトータルで考える必要がある。これに対して自動駐車に関しては車庫入れや縦列駐車に関してはすでに(ハンドル操作が必要ない半自動化)を「パークパイロット」で実現できており、自己学習機能のあるタイプの半自動の駐車に関してもどの製品に搭載したらよいかを検討している段階だ。

 ロードマップに関しては、まずは半自動駐車を実現し、その後外部のスマートフォンなどからコントロールなどの順で実現され、最後に完全な自動駐車という順になっていくと思う。フォルクスワーゲンとして重視しているのはそれが妥当なコストであるかどうかだ。現在使われているセンサーは非常に高価で、それを大衆車に搭載できるようなコストにしなければボリュームブランドで採用することはできない。

 自動運転に関しては、アウディがすでにテストドライブに成功しており、すでに技術としてはかなり成熟しつつある。しかし、自動運転に関しては法律の問題が大きく、技術というよりはそちらが問題だと考えている。ボリュームブランドとなるフォルクスワーゲンに採用するには、すでに述べた通りコストが大きな課題になっている。自動運転を実現するには1つのセンサーだけでなく、2つ、3つ…と多くのセンサーを搭載する必要がある。そうしたセンサーの多くはこれまで航空機などに使われてきた技術だが、それを搭載して安全で高いセキュリティを実現した自動運転を実現しないといけない。アウディのようなプレミアムブランドではそれは可能だが、ボリュームブランドでは別の話だと思う。

──そうしたセンサーはいくつあればいいものなのだろうか?
タンネベルガー氏:何個あれば十分かというご質問にお答えするのは非常に難しい。というのは、自動運転にとっては、センサーから来る情報は多ければ多いほどよいのはいうまでもない。いくつあればいいのか、あるいはどのセンサーがあれば満足できるのかなどに関して現時点ではお答えするのは非常に難しい。言うまでもないことだが、現時点では自動運転車が許可されている国はないので、今回アメリカでのテストで得た経験から様々学んで行かなければならない。ただ、現在リサーチしている車両ではセンサーを2つ搭載しており、そこから得たフィードバックを元に解析していきたい。

──現在Googleが無人の自動運転車を開発しているが、今後Googleと協力していくことはあり得るのか? また、日本では燃料電池自動車が話題になっているが、フォルクスワーゲンの取り組みは?
タンネベルガー氏:自動運転において自動車メーカーが最重要視しているのは安全だ。これに対して、Googleは別の観点、具体的にいえば彼等のネットワーク技術のような点から自動運転に取り組んでいると思う。ただ、これまで別の業界として発展してきた2つの業界が、今同じフィールド、同じ顧客をカバーするようになりつつあるということだ。その中で自動車メーカーは、安全な車を顧客に届けるという点でアドバンテージがあり、そのビジネスにGoogleのような異業種のビックプレイヤーが参入してくることは歓迎していい。

 燃料電池自動車についてだが、トヨタ自動車が深くコミットメントしているのは存じ上げているが、フォルクスワーゲンとしてコメントすることはできない。一般論としての弊社の認識は、電気自動車は都市での移動に、燃料電池車に関してはより長距離のドライブにという分類をしている。このうち電気自動車に関しては充電ステーションや充電装置の規格などといったいくつかの小さな問題はあるがすでに実用段階だ。これに対して燃料電池自動車に関してはまだ解決すべき大きな課題がある。例えば、水素をどうやって作るのかが問題だが、再生可能なエネルギーを使って作らなければならないが、現状ではコストが非常に高く、大規模にインフラを作らないといけないが現状ではそれができていないのが現状だ。

 しかし、フォルクスワーゲンとしても技術に関しては開発を続けており、そうした基本的な問題が解決されればいつでも実現できる準備ができている。

──テスラが電気自動車の特許を公開したり、トヨタ自動車が燃料電池自動車の特許を限定公開したりして、仲間を作ることで新しいデファクトスタンダードを作っていくという動きが潮流になりつつありますが、フォルクスワーゲンの見解を聞かせてほしい。
タンネベルガー氏:ご質問に答える前に、1つ強調しておきたいのは、現在自動車業界にとって重要なことはエコシステムを作り上げるという点だ。しかもそれは1つの市場だけでなく、グローバルに受け入れられるものでなくてはならない。現在自動車業界ではインターネットに接続していることが重要になりつつあるが、それも市場によって状況は違う。例えば日本ではAppleのスマートフォンが大変受け入れられているが、中韓ではそれがAndroidになっているなど市場によって傾向が違う。すでに自動車業界だけで何かを作り上げるのは難しく他の業界からも大きく影響を受けるようになっているのが現状だ。

 例えば、今後はセンサーから作られるデータが大きな価値を持つようになり、それをビッグデータとして活用していく大きなトレンドがでてくるだろう。そうなると、スマートフォンビジネスで大きな力を持つGoogle、Facebook、AmazonなどのIT業界の大手企業が自動車向けのビジネスを開始するだろう。それだけでなく今後は家電ビジネスを展開する企業も自動車向けビジネスに参入してくることになる。フォルクスワーゲンとしては新しいプレイヤーからの要請にはできるだけ応じていきたいが、どこか1社がプラットフォームを独占するなどということはなくオープンなビジネスとして展開することが大事だと考えている。また、顧客のデータのセキュリティを確保することも大事で、そうしたことにも注力をしていきたい。

 ご質問の特許に関してだが、トヨタ自動車の件は発表されてから間もないため現時点では精査できておらずコメントすることはできないが、テスラの特許に関しては我々もすでに調査したが新しいものは何もないというのが結論だ。

──トヨタ特許に関してはかなり広範囲に公開されていますが、同じようなことをフォルクスワーゲンがする可能性はあるのか?
タンネベルガー氏:すでに述べたとおり、トヨタの特許に関してはまだ精査できていないのでコメントはできない。一般論としてお答えするのであれば、フォルクスワーゲンのやり方としては、必ず競合する技術が他社が持っているのかは常時チェックしており、その上で競争がどこにあるのかをチェックしている。我々のやり方は、特許を2年遅れて公開するというやり方ではなく、技術の標準化が必要なら最初から標準化を行っていくというやり方だ。電気自動車の充電方式がいい例だ。欧米で導入されているCCS(筆者注:Combined Charging System、欧米で導入されている急速充電の方式、日本で導入されているCHAdeMOとは異なる規格)では、業界各社がノウハウを持ち寄って1つの規格を作った。自動運転もおそらくそのようになっていくと思う。もちろん日本の自動車メーカーとも話し合いをしており、早くから協力が必要な分野では協力し、その上で自分達の差別要因で競争していくというのがよいと考えている。

 特許に関してだが、特許をオープンにするというストーリーはメディアにとってはよいストーリーなのかもしれないが、より重要なのはサプライヤーの動向だ。現在複数の自動車メーカーがサプライヤーを共同で利用している状況が起きており、サプライヤーが同じ方向を向いていくことがより大事だと考えている。

──米国ではタカタのエアバックの欠陥が問題になっており、サプライヤーの技術に依存することは、問題が発生したときに原因の究明を難しくするのではないだろうか?
タンネベルガー氏:それは重要なポイントだ。サプライヤーとはボリュームとコストの観点から、ビジネス上のメリットがある。しかし、おっしゃるとおり問題が発生した場合には、それにどのように対処するかが大きな課題で、場合によってはメリットを上回ってしまう場合がある。我々にとってコアとなるのはシステムインテグレーションで、そのクオリティをどのように上げていくかが大事だと考えている。実際我々は片側で統合を行う一方で、もう片側では試験や互換性検証などにも多くのエンジニアを割いており、そこに力を入れていくべきだと考えている。

──フォルクスワーゲンのユニークな技術とは何か?
タンネベルガー氏:いくつかあるが、タッチを利用したHMIは他社に差をつけていると考えている。そのほかにも超音波のシステムを利用したパーキングアシストの機能や、足で触れるとテールゲートを開けられる機能などもユニークだ。これらに共通することはローコストで実現していることで、半導体メーカーなどと協力しながらコストを削減しながら新技術の導入を実現している。

【お知らせ】自動駐車に関する部分などを変更しました。

(笠原一輝)