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ブリヂストンサイクル、フロントモーターを採用した両輪駆動の電動アシスト自転車「アルベルトe」

独自開発の前輪駆動モーター、回生ブレーキシステム、スリップ制御システム搭載

2015年2月下旬発売

11万9800円~12万1800円(税別)

アルベルトのイメージキャラクター 大友花恋さんと「アルベルトe」

 ブリヂストンサイクルは1月19日、モーターやブレーキシステムを独自開発した電動アシスト自転車「アルベルトe」を発表した。

 前輪駆動の新設計モーターを搭載し、ブレーキ時にバッテリーを充電する回生ブレーキシステムや、前輪が空転しそうになった際にスリップを抑制する仕組みを取り入れた。後輪はベルトドライブで、電動アシスト自転車にベルトドライブを採用したのは国内初としている。発売は2月下旬を予定。価格は11万9800円~12万1800円(税別)。

モデルフレーム種別車輪サイズ変速段数バッテリーカラー価格(税別)
アルベルト eS型27インチ5リチウムイオン
223Wh(6.2Ah×36V)
M.スパークルシルバー
T.アンバーブラック
121,800円
L型27インチ5M.スパークルシルバー
T.アンバーブラック
T.スノーアクア
121,800円
26インチ3119,800円

最大限のアシストを発揮する前輪駆動モーター

 「アルベルトe」シリーズは、従来からある同社の自転車ブランド「アルベルト」のコンセプトをベースに、2014年に台数限定でテスト販売した「エベルト」の技術を組み合わせた、新たな電動アシスト自転車ブランド。

 同社ではすでに電動アシスト自転車として「アリスタ」シリーズも展開しているが、アリスタはセンターモーター方式(後輪駆動)であるのに対し、アルベルトeは前輪駆動のモーターと運転者のこぐ力(後輪駆動)を組み合わせた「BS デュアルドライブ」がコアとなる。

「アルベルトe」の26インチモデル
前輪駆動のモーターとベルトドライブの後輪を組み合わせた「BS デュアルドライブ」
アルベルトeの各部

 この前輪駆動のモーターは、変速機がどのギヤであっても、電動アシスト自転車として定められたアシスト比率の上限まで出力するのが特徴の1つ。後輪駆動の電動アシストでは、主にチェーンなどのパーツの耐久性の面から常に上限までアシストされるわけではない。ところがBS デュアルドライブでは、10km/hまでは踏力とアシスト力が1対2とされている比率を、常時フルに出力することを可能にしているという。

後輪駆動の電動アシスト自転車では、その構造からアシスト用ギヤやチェーンに多大な負荷がかかり、アシスト比率を最大まで高めることが耐久性の面から困難
前輪駆動のBS デュアルドライブは、規制の上限までしっかりパワーを出力できる

 前輪駆動の場合、滑りやすい路面でペダルをこいだ際に前輪が空転し転倒の危険があるという弱点を抱えていたが、BS デュアルドライブでは後輪と前輪の回転速度の差などから前輪の空転を検出し、アシストをカットしてスリップを抑制する「スリップ制御システム」を搭載したのも特徴となっている。

 さらに、リアブレーキをかけた際には前輪のモーターに負荷を加え、軽い力で減速しやすくした「ブレーキアシストシステム」が作動するほか、この時に発生したブレーキ抵抗を電力に変換してバッテリーに蓄電する回生ブレーキシステムも採用している。

スリップを抑制する「スリップ制御システム」を搭載
リアブレーキレバーのセンサーにより減速時に前輪モーターへ抵抗を加え、回生ブレーキとして稼働させる

 後輪の駆動方式はアルベルトシリーズと同様ベルトドライブ。ベルトの芯線にカーボンファイバーを使用した「BS CARBON BELT」とし、耐久性をアップさせると同時にメンテナンスフリーも実現した。タイヤはパンクプロテクターを内蔵しパンク耐性を向上。空気圧が下がると赤く光ってお知らせする空気圧チェッカー「空気ミハル君」をホイールに組み込むなど、常に快適に走行できるようにする工夫が多数盛り込まれた。

 バッテリーは36V 6.2Ahで、航続距離はエコモード時で52km、走行状況に合わせて最適な出力を行うオートモード時で42km、最大アシスト力を発揮するパワーモード時で32km。充電は付属の急速充電器を用い、満充電にかかる時間は約2時間50分としている。

「BS CARBON BELT」によりベルトの耐久性がアップ
パンクプロテクターを内蔵したタイヤを標準装備
ホイールには空気圧チェッカーを備える
高効率のリチウムイオンバッテリーを採用
急速充電器が付属

通学困難地域の学生をサポート

2月末発売予定のモデル一覧。フレーム形状とカラーリングの違いを合わせて計8車種のラインアップとなる

 2月末から発売予定のモデルは、26インチ3段ギヤの女性向けと、27インチ5段ギヤの男性向けの大まかに2種類の仕様を用意。フレーム形状とカラーリングの違いを合わせ計8車種のラインアップで、主に学生をターゲットとしている。

 調査によれば、国内の自転車全体の出荷台数は10年間で200万台以上減少しているのに対し、電動アシスト自転車は2倍近くに増加。一方で、同社の自転車ユーザーの35%は10代が中心となっており、そのうち電動アシスト自転車を使用している人はまだ少ないものの、アンケートに「使ってみたい」と答えた中高生は4割以上を占める。

自転車市場全体で見ると減少しているが、電動アシスト自転車は増加している
同社の自転車ユーザーは35%が10代
電動アシスト自転車を利用したい中高生は多い

 同社商品企画1課の瀬戸慶太氏は、こうした結果から中高生を中心とした学生向けは市場性が高いと見ており、2014年の出荷台数が8万台だったアルベルトシリーズを引き合いに出し、2015年はアルベルトeと合わせて目標10万台、2019年には15万台を目指すと宣言。全国各地で鉄道路線が廃止されるなどして通学困難地域が増えているという現状に対し、電動アシスト自転車という新しい移動手段を提供して「通学に力を与えたい」と語った。

 また、同社代表取締役社長の佐藤慎一氏も、「学生のライフスタイルに変容をもたらしうる商品と考えている」と力強く語り、新しい市場の開拓とアルベルトeがその市場の牽引役となることに期待感を示した。

「通学に力を与えたい」と話す同社商品企画1課の瀬戸慶太氏
「学生のライフスタイルに変容をもたらす」とした同社代表取締役社長 佐藤慎一氏

エベルトの性能が進化。違和感のない快適な走りを楽しめる

 発表会と合わせ、アルベルトeの26インチ3段変速モデルの試乗会も行われた。試乗エリアはコンクリート路面の地下駐車場に設けられ、加速力やスロープを利用した登坂能力を確認できた。試乗した限りではどのシーンでも力強く、軽々と走り抜けることができ、前輪駆動だと影響を受けやすいと考えられるハンドリングにも特に違和感はない。

急坂のスロープを上る大友花恋さん
「こぎ出しが軽くて坂道もものすごく楽。感動するくらい」と感想を口にした

 筆者が普段使用している後輪駆動の電動アシスト自転車と比較しても、踏み出しのアシストのかかり具合、走行安定性などに大きな差はなかった。力の弱い女性でも快適に乗れるようにするためか、かなり軽くこげるようにギヤ比が設定されているようだ。

 下り坂では、リアブレーキレバーの“遊び”を超えたところからスムーズに減速が始まり、同時に回生ブレーキによる充電が行われていることを示すLED表示も確認できる。平地でもリアブレーキをかければすぐに回生ブレーキが働き、坂の少ない街乗りであっても蓄電自体は頻繁に行われるであろうという印象を受けた。

 試乗コースには低μ路になっている個所がなく、スリップ制御システムは体感できなかった。ただ、勢いよく踏み込んで前輪をわずかに浮かせ、再度着地した際にスキール音が聞こえることはなかったため、しっかり空転を検出し、アシストを抑えているものと想像できる。

 瀬戸氏によれば、2014年に限定発売したエベルトから基本的な装備に変更はないものの、ユーザーの意見を踏まえてアシスト比とギヤ比を変更しているとのこと。主に踏み込み時のレスポンスと、ペダルをこいだ時の軽さを向上させるなど、性能面と街乗りでの快適性に関わるブラッシュアップが図られているという。

 なお、同社は今後スポーツモデルも含めた自転車にBS デュアルドライブの採用を広げていきたいとしているが、ヤマハ製のユニットが用いられているアリスタシリーズなどについては、「センターモーターはセンターモーターなりのメリットがある」(同社担当者)として引き続き現在の仕様で販売が継続される。

(日沼諭史)