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愛媛県、ヤマト運輸およびANA Cargoと愛媛県産品の流通拡大に向けた連携協定を締結

愛媛県の養殖マグロが翌日に香港の寿司屋にならぶルートを確立

2015年1月28日開催

愛媛県産品の流通拡大に向けた連携協定の調印式では、ANA Cargo 代表取締役社長 岡田晃氏(中央左)、愛媛県知事 中村時広氏(中央)とヤマト運輸 取締役会長 木川眞氏(中央右)が出席。ほかにもヤマト運輸のキャラクター(右から1番目)や愛媛県の公式イメージアップキャラクター「みきゃん」(左から1番目)、新制服を着た愛媛県出身のANAキャビンアテンダント(左右2番目)が盛り上げた

 愛媛県、ヤマト運輸、ANA Cargoは1月28日、愛媛県産品の流通拡大に向けた連携協定を締結。愛媛県庁にて締結式が行われた。なお、このように都道府県とヤマト運輸、ANA Cargoの3者が協定を締結するのは全国でも初めてのケースとなる。

 この協定は、集荷と現地への配送をヤマト運輸、空輸をANA Cargoが連携して担当することで、愛媛県の農林水産物を、出荷した翌日に香港などの東南アジアの各都市に到着する輸送ルートを構築するために結ばれたもの。すでに宇和島産の養殖マグロはこのルートを使って香港に出荷された実績があり、愛媛県産の農林水産物がより鮮度を保ったまま輸出できるようになる。愛媛県では、県内の特産品の開発や販売に対して官民が一体となった熱心な取り組みが行われており、ものを作るだけではなく、輸送時間を短縮させることで「鮮度」という付加価値を付け、アジア圏などの海外に向けてさらに販路を広げていく狙いがある。

 今のところ、このルートを利用した具体的な流通金額や物流量は未定とのことだが、愛媛県は県が関与した特産品の売り上げ目標を100億円と掲げており、この目標を達成させるための施策の1つであるのは間違いない。なお、この協定は1年ごとに自動更新され、最大で10年間締結される。

 1月28日の締結式には、愛媛県知事 中村時広氏、ヤマト運輸 取締役会長 木川眞氏、ANA Cargo 代表取締役社長 岡田晃氏が出席し、協定書への調印が行われた。

ANA Cargo 代表取締役社長 岡田晃氏(前列左)、愛媛県知事 中村時広氏(中央)、ヤマト運輸 取締役会長 木川眞氏(前列右)がサインした協定の調印文書を交換した
愛媛県知事 中村時広氏

 愛媛県知事の中村時広氏は「3年前から実需の創出のため、愛知県庁に営業本部を立ち上げて県内の生産物の販売に取り組んできた。ビジネスはどんな業種でも“引き合い”“契約”“受け渡し”“決済”“サポート(クレーム処理)”が必要になるが、どの部分で県がサポートできるか検討したところ“引き合い”“受け渡し”の分野で行うのが適切だと判断した。“引き合い”という分野では、すでにアジア各国にセールスを行っている。しかし、“受け渡し”という分野では生産物の輸出はさまざまなハードルがあり、2~3年前から養殖のマグロをなんとか鮮度を保ったまま空輸できないかと検討していたところ、今回のルートが出来上がったことで、ようやく養殖マグロを輸出することができた。この仕組みには24時間体制で通関手続きができる那覇空港をハブとして活用しており、愛媛県の特産品が翌日に東南アジアの都市に届けられるというスピーディな物流が実現できた。マグロに限らず、ほかの特産品でも大いに活用していきたい。このルートの構築は、愛媛県の経営戦略に大いに寄与するだろう」と語った。

 また、記者からの質問に答えて「この協定のきっかけは2014年の12月に、ヤマト運輸とANA Cargoから申し出があった。愛媛県が流通業者と協定を結んだのは初めて。現場レベルで調整を終えた品目から、順次この仕組みを導入していく予定だ。最初の目標は、香港、シンガポール、台湾など政情が安定しつつ、富裕層で日本食への関心が高いところをターゲットとしている。将来的にはほかの東南アジアはもちろん、欧米にも市場を広げていきたい。日本は人口の減少に伴い市場が縮小しているため、東アジアに販路を開拓しないと未来がない。愛媛県は海面養殖の生産量が日本一であり、世界的に天然魚の漁獲規制が広がっている昨今では、養殖が水産資源の保護と安全面において大きなポイントとなる。昨今の養殖技術は飛躍的に進化しており、世界に出していけるレベルとなっている。さらに県としての取り組みとして、農林水産省に対して他国の輸入規制を緩和できるようにアプローチしている。また、今回締結した3者が主催する商談会なども行っていく予定だ」と述べた。

ヤマト運輸 取締役会長 木川眞氏

 次にヤマト運輸取締役会長 木川 眞氏は、「このような新しい関係が成立して光栄に思う。ヤマト運輸はあと5年で100周年を迎える企業であり、日本国内ではすでに生活インフラとして定着している。そしてさらに新しい宅急便が世界に広がりつつある。アジアに展開を進めているネットワークと、愛媛県の48拠点1000名が展開するネットワークを有機的に繋いでいくつもりだ。ANA Cargoと連携し、那覇空港をハブ空港として使うルートが確立したことで、昨年の10月から世界初の国際クール宅急便がスタートしており、いよいよ日本の新鮮な食べ物がアジアの食卓に翌日に配達できるようになる」と述べた。

 また、「生産者の方が日本の宅急便を出すのと同じように、通関手続きなどの面倒がないようサポートしていくことで、新しい販路の拡大のお手伝いをしていきたいと考えている。さらに一次生産品だけではなく、今治タオルなどさまざまな品種を扱い、中国・四国地方の全体の活性化に繋げていき、安部政権の掲げる“地方創生”を地域インフラとしてお手伝いしたい」とのこと。さらに、災害時や地域協力について記者から質問されると「災害時は物流の確保が重要。経営資源を持って協力する。また、過疎地における高齢者の見守り、お買い物支援や御用聞き、観光イベントのサポート、外国人が手ぶらで観光をするサービスなどに取り組んでいきたい」と語っている。

ANA Carg o代表取締役社長 岡田晃氏

 最後にANA Cargo 代表取締役社長 岡田晃氏は「ANA Cargoは日本で唯一、旅客機と貨物機の双方で貨物輸送を行っている会社であり、旅客機は1000便、貨物機は250便のネットワークをアジアを中心に構築している。那覇空港をベースにした貨物ハブは2009年10月よりスタートしており、アジアの中心的な位置にある那覇空港の立地的な優位性を活用してスピーディな輸送体制を作ってきた。愛媛県の特産品は、羽田行きの最終便に積んで羽田に集積し、そこから沖縄を経由して香港などへ輸送する。一度、羽田に集積するのは逆を行くようで違和感を覚えるかも知れないが、これが一番早い経路となる。先般もこの経路で宇和島の養殖マグロを香港の寿司屋に送ったが、先方からは養殖とは思えない“新鮮で品質のよいマグロ”として高い評価を得た。私は愛媛県出身だが、愛媛県では当たり前の食材も、海外では驚くほど高く評価される。日本食のニーズが高まるアジアに、愛媛県の産品を愛媛県とヤマト運輸と連携してスピーディに提供していきたい」と語った。

 また、協定を結んだきっかけについての記者からの質問には「愛媛県は、県に営業本部というユニークな組織があり、商材の開発・開拓に積極的に取り組んでいる。県が生産者と一体になってよい物を売り込んでいくという機運があり、外へ向かっての発信力や行動力が凄い。また、特産品のラインアップも凄いものがある。こうした推進する組織や人、そして人の想いがこの大きなプロジェクトのきっかけになった」と回答。これに対し、木川氏が「岡田氏が愛媛県出身というのも大きい。私も広島県出身の人間として広島県に対してアプローチしたい」と自らの想いを語った。

ヤマト運輸のキャラクターが登場
愛媛県の公式イメージアップキャラクター「みきゃん」
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那覇空港の貨物運用のスケジュールと、ヤマト運輸との連携に関する解説

(シバタススム)