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塗装・乾燥工程の効率を改善する「3M クイックドライシステム」をネッツトヨタ富山が国内初導入

水性塗料で従来の1/4という工程時間を現場で検証し、お客さまに価値を提供

2015年12月1日 キックオフミーティング開催

ネッツトヨタ富山本店に導入されたスリーエムジャパンの自動車用塗装乾燥装置「3M クイックドライシステム」。見上げているのは、ネッツトヨタ富山株式会社 代表取締役社長 笹山泰治氏

 2014年11月にCar Watchで紹介した近赤外線を利用する自動車用塗装乾燥装置「3M クイックドライシステム」。この装置は、従来の乾燥装置と比べ、近赤外線で直接塗料を乾燥させることで乾燥時間を短縮するとともに、乾燥のための送風も必要ないので塗装に含まれるブツ(ホコリなど)を減らすことができるというものだ。

スリーエム、近赤外線による自動車塗装乾燥機「3M クイックドライシステム」を開発

http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20141128_678053.html

 この3M クイックドライシステムが、初めて国内の自動車ディーラーに納入され、導入に伴うキックオフミーティングが開催された。国内初導入ディーラーとなったのは、富山県富山市にある「ネッツトヨタ富山本店」。国内でも有数の大規模ディーラーで敷地面積は1万坪だという。このネッツトヨタ富山本店では、ネッツトヨタ富山で引き受けるBP(ボディ&ペイント)サービスを一括して行なっており、月に300台以上の作業が発生しているという。

広大な敷地面積を持つ巨大ディーラー「ネッツトヨタ富山本店」。この本店会議室でキックオフミーティングが開催された
ネッツトヨタ富山株式会社 代表取締役社長 笹山泰治氏

 導入に伴うキックオフミーティングは、ネッツトヨタ富山本店で富山のネッツトヨタ店店長が一堂に会する形で開催。ネッツトヨタ富山 代表取締役社長 笹山泰治氏が導入の意義を語った。

 笹山社長は、12月1日が大安吉日であり、導入にあたっては新川神社から神主を招きお清めを実施。気持ちを新たにスタートする日であるという。

 ネッツトヨタ富山では、2014年12月に協力会社も含めてペイントを水性塗料に完全移行。環境に配慮した先進的な取り組みを行なっており、その水性塗料による塗装作業において自動車塗装乾燥機「3M クイックドライシステム」は強力な武器になるという。

 但し、導入することがゴールではなく、この3M クイックドライシステムの機能を最大限発揮して使ってこそ価値が出るとし、その価値をお客さまに提供していくという。

トヨタ自動車株式会社 カスタマーファースト推進本部 BPサービス推進室長 柳澤桂氏

 今回のネッツトヨタ富山の導入にあたっては、自動車メーカーであるトヨタ自動車、販売元であるスリーエムジャパンの3社の枠組みで行なわれている。この導入をサポートするトヨタ自動車からは、カスタマーファースト推進本部 BPサービス推進室長 柳澤桂氏が登壇。調色と乾燥に時間がかかっているBP作業時間を短縮し、エンジニアの残業時間が減ることによる「労働環境の改善」、乾燥時に使用する燃料が減ることによる「コストの低減」、ブツが減ることによる「品質の向上」などが期待でき、従来の1/4という工程時間は「生産性を画期的に向上できると考えている」と、導入についての期待を述べた。

 もちろん、導入して終わりではなく、「考えている」とあえて語ったのは、実際に現場に導入しての検証作業があるためで、従来の乾燥機械よりも高価な製品のため、本当に導入して価値を生み出すことができるのかをネッツトヨタ富山において確認していく。

 3M クイックドライシステムについては、同製品の販売を行なうスリーエムジャパンのオート・アフターマーケット製品事業部 技術部 部長 大関真弘氏が解説。3M クイックドライシステムは、ボディ形状に合わせて全自動制御を行なう「MODEL 3000」、3セットのパネルで短時間乾燥する「MODEL 2000」、パテやサフェーサーなどの部分乾燥に使う「TYPE P」、軽補修用の「ドライトロン」と各種あるが、ネッツトヨタ富山本店に導入したのは最上位機種のMODEL 3000になる。

 大関部長は、この3M クイックドライシステムのメリットなどを語り、生産性を改善するコンサルテーションと3M クイックドライシステムが、高い生産性が生み出す価値になると結んだ。

スリーエムジャパン株式会社 オート・アフターマーケット製品事業部 技術部 部長 大関真弘氏
3Mの自動車補修用製品
「3M クイックドライシステム」の特徴
製品ラインアップ
基本メカニズム
導入メリット
従来システムとの違い
高い生産性が生み出す価値

 最後に登壇したのは、ネッツトヨタ富山 サービス部 部長 村井忠嗣氏。村井部長はサービス現場の長として、3M クイックドライシステム導入に伴う検証内容を説明。3M クイックドライシステムで使用する作業記録簿や、その際にかかった作業時間・ブツ個数などを集計し、導入効果を検証していく。作業時間の記録などはなるほどと思えるところだが、ブツ個数、つまりホコリの数までも数えるのはサービス品質に気を配っているディーラーである証だろう。

ネッツトヨタ富山株式会社 サービス部 部長 村井忠嗣氏
導入のメリット
環境対応塗料である水性塗料のデータはネッツトヨタ富山で検証
スケジュール
検証方法
ブツの個数も数える
今後の展望
さらなる改善

 会議室でのキックオフミーティング後は、実際に3M クイックドライシステム MODEL 3000が導入された「ボディサービスセンター」へ移動。水性塗料による塗装ブースに設置された3M クイックドライシステムの稼働式が行なわれた。稼働式では、登壇したネッツトヨタ富山笹山社長、トヨタ自動車 柳澤室長に、ネッツトヨタ富山 代表取締役会長 品川鐵夫氏、スリーエムジャパン オート・アフターマーケット製品事業部 事業部長 秋山芳廣氏、アクサルタコーティングシステムズ 社長 林伸哉氏が加わり、司会の合図に合わせ稼働ボタンを押す儀式を行なった。もちろん何の問題もなく3M クイックドライシステムが稼働した。

3M クイックドライシステム MODEL 3000稼働式。左からアクサルタコーティングシステムズ合同会社 社長 林伸哉氏、トヨタ自動車株式会社 カスタマーファースト推進本部 BPサービス推進室長 柳澤桂氏、ネッツトヨタ富山株式会社 代表取締役会長 品川鐵夫氏、同 代表取締役社長 笹山泰治氏、スリーエムジャパン株式会社 オート・アフターマーケット製品事業部 事業部長 秋山芳廣氏
稼働ボタンを押し下げ
確認用のパトライトが回転
3M クイックドライシステム MODEL 3000が稼働した
コントローラ
パネルの動作デモ。左側のパネルを移動
次に右側のパネルを移動
天面のパネルを移動。天面のパネルは回転する

 稼働式後、トヨタ自動車 カスタマーファースト推進本部 BPサービス推進室長 柳澤桂氏に簡単にお話をうかがってみた。今回、ネッツトヨタ富山が最初に導入するディーラーとなったのは、ネッツトヨタ富山の先取の機運にあるという。ネッツトヨタ富山はすでに水性塗料100%を達成しているが、これは全トヨタディーラーの中でも進んだ取り組みになる。今後は、ネッツトヨタ富山、トヨタ自動車、スリーエムジャパンの3社で協力し、生産性・補修品質向上の効果を検証していくという。

(編集部:谷川 潔)