ニュース

岡本幸一郎の「SUBARU AWD オールラインアップ雪上試乗会」で雪上性能を体感

北海道の新千歳モーターランドをベースに行なわれた「SUBARU AWD オールラインアップ雪上試乗会」

4タイプのAWDシステムを展開

 スバル(富士重工業)といえば、水平対向エンジンを軸としたシンメトリカルAWDを自社で生産する多くのラインアップに採用しているのはご存知のとおり。その点では世界的に見てもユニークなメーカーであり、全生産車の実に94%がAWDであるという。そんなスバルによる雪上試乗会が、北海道の新千歳モーターランドで実施された。

スバルでは、

・アクティブトルクスプリットAWD
・VTD-AWD(不等&可変トルク配分電子制御AWD)
・DCCD方式AWD
・ビスカスLSD付センターデフ方式AWD

という4タイプの4WDシステムを展開している。

 最初に試乗したのは、WRX STI、WRX S4、レヴォーグの2.0リッター車、レガシィB4、インプレッサの5台。普段はラリーなどの競技に使用されている平坦路コースを活用して、非日常的なドライビングを体験できるようスピードレンジを高く設定し、走破性能や極限時の操作性能を体験できるようにしたコースだ。

 この5台には、全4タイプのうち、ビスカスLSD付センターデフ方式AWD以外の3タイプの4WDシステムが適宜搭載されているが、動作はそれぞれ。印象的だったのは、レヴォーグが搭載するVTD-AWDのハンドリングのよさ。挙動が乱れにくい中でも、後ろから曲がりたい方向に押し出してくれる感覚があり、雪道でもよく曲がる。

 一方で、WRX STIが搭載するスバル独自のDCCDは、積極的に走りを楽しもうというときには最高のアイテム。とてもコントローラブルである上、走り方を任意に選べるところもよい。

オフロードコースではX-MODEの恩恵を実感

 次いで、アウトバック、フォレスターのXTとX-BREAK、XVのハイブリッドとガソリンという、SUV系の5台の車種で、夏場のオフロードバイク用に設定されているコースを流用したと、アップダウンのあるオフロードコースを走行した。4WDシステムはすべてアクティブトルクスプリットAWDだが、X-MODEの有無や、最低地上高などに違いがある。

さまざまなスバルの4WDシステムを体感してきました
新千歳モーターランドを走行中

 もっとも走破性が高かったのは、やはりフォレスターだ。最低地上高が220mmとアウトバックやXVの200mmよりも高いのだが、こうした雪道を走ると、20mmの差は小さくない。サスペンションについても、リバウンドストロークがもっとも長いのはフォレスターだ。

 フォレスターとアウトバックに装備される独自の「X-MODE」も、こういうシチュエーションでは非常によい仕事をする。急な下り坂でも一定の車速をキープしてくれるし、「雪山クロール台」と呼ぶ箇所で、対角2輪が浮いた状態になっても締結を強めて乗り越えていく。実際の雪道でも、X-MODEがあるととても心強いことと思う。

 また、片輪氷板のスプリットミュー路での制動では、いずれも十分に安定した挙動を示したことをあらかじめ念を押してお伝えしておきたいのだが、その中でもホイールベースが長くいくぶん重心高の低いアウトバックがよいのではという予想に反して、もっとも制御が緻密で、左右のブレが小さく感じられたのはフォレスターだった。確認したところ、VDCのサプライヤーが異なるそうだ。

雪道を快適に走れる走行性能

 午後は、レヴォーグとアウトバックで公道をドライブした。レヴォーグは1.6リッターモデルなので、この2台の4WDシステムは同じくアクティブトルクスプリットAWDとなる。

 路面は、主要幹線道路は除雪がされていたものの、わき道に入るとほぼ圧雪という状況。しかもこの日は気温が上がって雪が溶けだし、滑りやすくなっているところも多かったのだが、そんな中でも2台は安定した走りを披露した。クセもなく、とても運転しやすい。

 また、アウトバックにもレヴォーグにもひさびさに乗ったのだが、両車のキャラクターの違いも垣間見えて興味深かった。レヴォーグGT-Sはスポーティさを強調していて、ホールド性を意識したシートは、ヒップポイントも低め。
握りの太いステアリングを操作すると、雪道でもタイヤのグリップの許す限り俊敏なハンドリングを楽しませてくれる。

 また、当初の1.6リッターエンジン搭載車は、飛び出し感が強く、滑りやすい雪道の発進性に難があるのではという気がしていたのだが、B型ではとくに変更は伝えられていないものの、心なしかリニアになり、乗りやすくなったように感じられた。乗り心地も、当初はピッチングが気になり、とくにリアの突き上げと上下動が気になったところ、現行型ではだいぶ低減されたようだ。

 続いてアウトバックに乗り換え、明るいベージュ色のシートに収まると、アイポイントがグッと高くなる。この目線の高さは、雪道を走る上でも心地よい。車内空間は広く、高級感もある。同程度の価格帯の競合車に対しても、これほど車格感を備えたクルマというのはそうそうないのではと思う。

 舗装路でも感じた軽快な走り味は、雪の上でも変わらず。操舵に対する応答遅れが小さいことは、サイズの大小を問わず最近のスバル車の美点だ。静粛性や振動についても、クレドール構造マウントのおかげか、アウトバックは一段上の境地に達している。また、雪道では凹凸の激しいところもあるが、そんな状況でもキャビンへの入力の伝わり方やステアリングのキックバックにおいても恩恵があるようだ。試乗した上級の「リミテッド」に搭載される「スタブレックス・ライド」は、よりフラットな姿勢を提供している。

 両車にはいずれもアイサイト ver.3が搭載されるが、異なる部分もある。雪道では車線の認識が難しいのは仕方がないとして、ステアリング操作をアシストして車線逸脱抑制を図る感覚が、両車では制御の味付けが異なり、レヴォーグのほうがマイルドになっている。また、レヴォーグに設定された死角となる左側方の前方を車内のディスプレイで確認できるサイドビューモニターも重宝する。

 こうして優れた走破性と安定した快適な走り、ひいては雪の上でも乾いた舗装路と同じような安心と楽しさを提供してくれる、スバルのAWDの価値をあらためて実感した次第である。

(岡本幸一郎)