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モータースポーツシーズンの開幕を告げる「2016モータースポーツファン感謝デー」

ジャンとジュリアーノ、アレジ親子がF1対決も

2016年3月12日~13日 開催

3月19日登場のアトラクションを使って12名のレーシングドライバーが真剣勝負を披露した「サーキットチャレンジャー開幕グランプリ」。最終コーナー立ち上がり。レーシングドライバーの表情が印象的だった

 モータースポーツシーズンが間もなく開幕する。その先陣を切って「2016 モータースポーツファン感謝デー」が、3月12日~13日に鈴鹿サーキットで開催された。2輪、4輪のマシン、ドライバー、ライダーがコースを疾走、会場に集まった延べ4万4000人のファンを魅了した。

GP2チャンピオンも参加したスーパーフォーミュラ

 4輪のイベントから見ていこう。2日間で最も多く走行したのはスーパーフォーミュラだ。土曜日、日曜日の約1時間のテストランに加え7周のデモレースが開催された。スーパーフォーミュラは日本最高格式のレースで、シャシーはワンメイクの「SF14」を使用、エンジンは直列4気筒 2.0リッター直噴ターボエンジンで本田技研工業製の「HR-414E」、トヨタ自動車製の「R14A」が用いられている。タイヤは今シーズンから横浜ゴムのワンメイクとなり注目されている。

 デモレースは2016年シーズンに参戦するドライバーが参加した。レースに先立ちトヨタエンジン搭載チームを代表して石浦宏明選手、ホンダエンジン搭載チームを代表して山本尚貴選手、新人ドライバーを代表して2015年GP2チャンピオンのストフェル・バンドーン選手、チーム監督の代表としてJRP会長も兼任する中嶋悟監督がファンに向かって今シーズンにかける思いを語った。

トヨタエンジン搭載チームを代表して挨拶した石浦宏明選手
ホンダエンジン搭載チームを代表して挨拶した山本尚貴選手
新人ドライバーを代表して挨拶したストフェル・バンドーン選手
チーム監督を代表して挨拶した中嶋悟監督
全ドライバーが参加した

 デモレースは石浦宏明選手がポールポジションから好スタートを決め、山本尚貴選手、野尻智紀選手と激しいバトルを繰り広げた。スーパーフォーミュラの開幕戦は4月23日~24日に鈴鹿サーキットで「2016 NGKスパークプラグ 鈴鹿2&4レース」として開催される。

スーパーフォーミュラはフルコースの走行を行なった

脇阪寿一監督が参加したGT500チャンピオンズトーク

 スーパーフォーミュラよりひと足早く開幕するのがSUPER GTだ。4月9日~10日に岡山国際サーキットで開幕戦を行ない、11月のツイリンクもてぎの最終戦まで全8戦が開催される。鈴鹿サーキットでは8月27日~28日に伝統の1000kmレースが行なわれる。

右から松田次生選手、脇阪寿一監督、本山哲選手。司会はピエール北川氏。

 会場では、SUPER GTでこれまでにシリーズチャンピオンを獲得した本山哲選手、松田次生選手に加えて、監督としてシーズンを迎える脇阪寿一監督によるトークショーが開催された。花粉症に苦しむ脇阪監督は「直前にマスクとサングラスを取って来ました。スタンドの皆さんもマスクを取ってください」などと挨拶して冒頭から会場を笑わせ、その後もF1マシンをテストドライブした際の裏話など軽妙なトークで会場を盛り上げた。トーク後は松田選手がフェラーリ F187のステアリングを握りコースを疾走した。

松田次生選手
脇阪寿一監督
本山哲選手
松田選手がフェラーリ F187をドライブ
走行後もマシンを前にトークが続いた

ジャン×ジュリアーノ アレジ親子 F1対決

 日本で人気、知名度が高いF1ドライバーの1人がジャン・アレジ氏だ。その奥さんは日本人タレントの後藤久美子さん。その2人の間に生まれた長男がジュリアーノ・アレジ選手(16歳)だ。昨年の鈴鹿ファン感謝デーに登場し、その様子はテレビのワイドショーなどでも紹介された。

 2015年シーズンはフランスF4に参戦して開幕戦で優勝、シリーズ4位を獲得した。2016年は故ジュール・ビアンキ選手を送り出したフェラーリの若手育成プログラムである「フェラーリ・ドライバー・アカデミー」に加わりGP3を戦う。今や世界が注目するドライバーの1人に成長した。

アレジ親子のトークショーが開催された

 ジャンはフェラーリ F187、ジュリアーノは父であるジャンが乗ったティレル 019をドライブした。ジュリアーノがF1マシンをドライブするのはこれが初めて。記念すべきF1初ドライブが父の乗ったマシンとなった。ジュリアーノはときおり日本語を交ぜながら「父の乗ったティレル019は僕の部屋に写真が飾ってある」と父への尊敬を表した。

ジャン・アレジ氏
ジュリアーノ・アレジ選手の胸には「フェラーリ・ドライバー・アカデミー」と書かれている
ティレル 019のステアリングを握るジュリアーノ
フェラーリ F187はジャンがドライブ
父が息子を気遣いながらスタートした
ジャンがドライブしたフェラーリ F187
ジュリアーノの初F1は父がかつてドライブしたティレル 019となった
走行を終えた2人

恒例の星野 VS 中嶋に関谷氏が参戦

 2012年のモータースポーツファン感謝デーから始まった星野一義氏と中嶋悟氏による対決は7戦目を迎えた。これまでは星野VS中嶋の争いだったが、今回は関谷正徳氏が参戦。日産の星野、ホンダの中嶋、トヨタの関谷という3メーカーを代表するレジェンドドライバーの対決が実現した。

星野VS中嶋に関谷氏も参戦

 これまでF1、スーパーフォーミュラなどを使用して対決してきたが、今回はSUPER GTマシンを使用。星野氏は日産 GT-R、中嶋氏はホンダ HSV-010、関谷氏はレクサス SC430をドライブした。レースは土曜日、日曜日と2戦行なわれ、1位 3ポイント、2位 1ポイント、3位 0ポイントで2戦の合計ポイントで争った。

「日本一速い男」 星野一義氏
日本人初F1フル参戦ドライバー 中嶋悟氏
日本人初ル・マン24時間優勝ドライバー 関谷正徳氏

 土曜日の第1戦は中嶋氏が独走で1位を獲得。2位は星野氏、3位は関谷氏となった。日曜日は中嶋氏が先行するが星野氏が抜きトップに浮上。そのまま逃げ切るかと思われたが逆バンクでラインを外して関谷氏がトップに立ち、そのまま逃げ切った。2位は星野氏、3位は中嶋氏となった。

土曜日は中嶋氏が独走で勝利
日曜日は土曜の結果順でスタート
中嶋氏に並びかける星野氏
関谷氏が勝利して中嶋氏と同ポイントとなった

 2日間の合計ポイントは中嶋氏 3ポイント、関谷氏 3ポイント、星野氏 2ポイント。中嶋氏と関谷氏のジャンケンによる決戦は1回目は引き分け、2回目で関谷氏が勝利し、初参戦した関谷氏が今回のチャンピオンとなった。

ジャンケン1回目は引き分け(左はジャンケンを邪魔する星野氏)
ジャンケン2回目で関谷氏が勝利
初参加でチャンピオンベルトを巻く関谷氏

ドライバーが異常に盛り上がった「サーキットチャレンジャー」開幕グランプリ

フロントローには石浦選手、山本選手、小暮選手、伊沢選手……

 鈴鹿サーキットの国際レーシングコース(東コース)を走行できるカートがEVカートとしてリニューアルされ、3月19日から営業を開始する。サーキットチャレンジャーと名付けられたEVカートは佐藤琢磨選手が監修。最高出力4.3kWを発生するSRモーターとリチウムイオンバッテリーを搭載し、最高速は30km/hとなっている。

 体格が小さい子供でも扱えるよう足下のペダルを廃止し、ステアリングの左右にあるアクセルレバー、ブレーキレバーを使って加減速し、シフトチェンジにも対応している。

 このサーキットチャレンジャーを12台使用し「Circuit Challenger開幕グランプリ」が開催された。ステアリングは12人のレーシングドライバーたちが担当、助手席にはコチラレーシングキッズが乗り込み真剣勝負が始まった。

東コース1周のレースがスタート

 普段のレースではあり得ない団子状態で東コースを走行し、最終コーナーからゴールラインまでコースいっぱいにマシンが並ぶ展開。争うレーシングドライバーの表情は真剣そのもの。冷静なキッズ達と対照的に異常に盛り上がるレーシングドライバーが印象的だった。

石浦選手が優勝した

新型NSXが全開走行を見せたHondaスポーツ タイムハンデマッチ

 遅いクルマが先行スタートし、速いクルマがそれを追うタイムハンデマッチも開催され、参加車両は新型NSX、新型シビック TYPE-R、S660、CR-Zとホンダのスポーツカーが勢揃いした。土曜日、日曜日と一部ドライバーを入れ替え2回のバトルを見ることができた。

 最初にスタートするのはS660。20秒後にCR-Z。さらに15秒後にシビック TYPE-R、さらにさらに10秒後にNSXだ。S660からNSXは45秒差となる。この手のイベントは市販車が先にスタートし、F1マシンが最後に追い抜くなど海外でも行なわれているが、実際に走行すると予定通りに行かないことが多いらしい。

 土曜日はジャン・アレジ氏がドライブするS660がスタート。CR-Z、シビック TYPE-Rと続き、45秒遅れでNSXがスタート……しない。電子式パーキングブレーキを解除し忘れた山本選手が3秒ロスでスタートした。

 シケインを最初に抜けたのはアレジ氏がドライブするS660。最終コーナーからメインストレートへの加速でバンドーン選手がドライブするシビック TYPE-RがS660を抜きトップでチェッカーを受けた。2位はアレジ氏のS660、3位は僅差でNSXとなった。

 日曜日は2台のS660にジャン・アレジ氏と中嶋大祐選手が乗り込みスタート。CR-Z、シビック TYPE-Rと続き、山本選手のNSXが45秒遅れできっちりスタートした。NSXは130Rまでにシビック TYPE-R、CR-Zを抜きシケインに進入するS660をロックオン。ところがアレジ氏はシケインのグリーンを突っ切ってショートカットし最終コーナーへ。併走していた中嶋選手のS660に大差をつけメインストレートに戻ってきた。

 アレジ氏がそのままトップでチェッカーを受け、ゴールライン直前で中嶋選手のS660を抜いた山本選手のNSXが2位となった。しかし、お茶目なアレジ氏にはペナルティが課せられ、2日目の優勝は山本選手がドライブしたNSXとなった。新型NSXがアクセル全開で疾走する貴重な姿を多くのファンは見ることができた。

日曜日はジャン・アレジ氏、バゲット選手、バンドーン選手、野尻選手、伊沢選手、山本選手、中嶋選手が参加した
アレジ氏と中嶋選手のS660がスタート
野尻選手とバゲット選手のCR-Zがスタート
伊沢選手とバンドーン選手のシビック TYPE-Rがスタート
最後に山本選手のNSXがスタート
両手を挙げトップでゴールしたアレジ選手のS660に山本選手のNSX、中嶋選手のS660が続いた
ホンダのスポーツカーが勢揃いした

鈴鹿8耐プレシーズンマッチ

 続いて2輪のイベントを見ていこう。"コカ・コーラ ゼロ"鈴鹿8耐 プレシーズンマッチにはトップチームの8人のライダーが登場した。参加したのはYAMAHA FACTORY RACING TEAMの中須賀克行選手、ヨシムラスズキシェルアドバンスレーシングチームの津田拓也選手、F.C.C. TSR Teluruの渡辺一馬選手、Team GREENの柳川明選手と渡辺一樹選手、Team KAGAYAMAの加賀山就臣選手、MuSASHi RT HARC-PRO.の高橋巧選手、Motorrad 39の酒井大作選手。トークショーの後、本番さながらのル・マン式スタートで4周のデモレースを行なった。

トップチームの8人のライダーが集合した
中須賀克行選手
津田拓也選手
加賀山就臣選手
柳川明選手
渡辺一樹選手
渡辺一馬選手
高橋巧選手
酒井大作選手
ル・マン式スタートでデモレースはスタートした
8耐マシンが本番さながらにコースを疾走した

2015年の覇者 YAMAHA チャンピオンマシン VICTORY LAP

 2015年シーズンはMotoGP、全日本ロードレース JSB1000クラス、鈴鹿8耐をヤマハ勢が席巻した。MotoGPと全日本ロードレース JSB1000クラスでチャンピオンを獲得、鈴鹿8耐では19年ぶりの勝利を飾った。MotoGPを戦ったYZR-M1、鈴鹿8耐とJSB1000クラスを戦ったYZF-R1を中須賀克行選手、野佐根航汰選手、藤田拓哉選手がライディングした。

中須賀克行選手、野佐根航汰選手、藤田拓哉選手が登場し、YZR-M1、YZF-R1を走らせた

グリッド&ピットウォーク

 グリッド&ピットウォークには多くのファンが集まった。ピットにはイベントに参加したマシンが並べられ、2輪チームはトップライダーがサインや撮影に応じていた。

ジュリアーノ・アレジ選手がドライブしたティレル019
当時アレジ氏がドライブしたマシン
ピットではコスワースエンジンが見られる状態で展示された
星野VS中嶋対決で使用されたホンダ HSV-010
新型NSX、新型シビック TYPE-Rも大人気だった
パイクスピークに参戦したMiEV Evolutionも展示された
スーパーフォーミュラの全チームが参加した
今シーズン、スーパーフォーミュラは横浜ゴムのワンメイクとなる
2輪のチームはトップライダーがサインや撮影に応じていた。子供をマシンに乗せるなど積極的にファンサービスを行なっていた

小倉茂徳氏が解説するバックヤードツアー

“オグたん”こと小倉茂徳氏が解説を担当し、ピットやメディアセンター、コントロールタワーなどを見ることができるバックヤードツアーが開催された。豊富な知識と丁寧な説明で子供達にも分かりやすく解説を行なっていた。

メディアセンターの解説をする小倉茂徳氏

 間もなくモータースポーツシーズンが開幕する。F1グランプリは3月18日~20日にオーストラリアGP、MotoGPは3月17日~20日にカタールGP、SUPER GTは4月9日~10日に岡山国際サーキット、全日本ロードレースは4月9日~10日に筑波サーキット、スーパーフォーミュラは4月23日~24日に鈴鹿サーキットで開幕戦が行なわれる。今シーズンも熱いバトルを期待しよう。

グリッドとピットがファンで溢れた

(奥川浩彦)