ニュース

日産、2015年度通期決算を発表。営業利益は前年比34.6%増の7933億円

「軽自動車は日本で重要なセグメント。止めるつもりはない」とゴーンCEO

2016年5月12日 発表

日産自動車株式会社 社長兼最高経営責任者(CEO)カルロス・ゴーン氏

 日産自動車は5月12日、2015年度の通期決算を発表した。2015年度通期の売上高は前年比7.2%増の12兆1895億円、営業利益は前年比34.6%増の7933億円、当期純利益は前年比14.5%増の5238億円となっている。なお、当期純利益の数値には、910億円相当のタカタ製エアバッグのリコール費用による特別損失が盛り込まれた上での実績となる。

 このほか、グローバル販売台数は542万3000台で、日本、欧州(ロシア含む)、その他地域で台数が減少したものの、北米が9.9%増、中国が6.3%増となり、全体では対前年比2.0%増となった。

 この通期決算の発表に際し、日産自動車 社長兼最高経営責任者(CEO)のカルロス・ゴーン氏が登壇。項目ごとの詳細について説明したほか、2011年に6カ年計画として発表し、この2016年度が最終年度となる中期経営計画「日産パワー88」についての報告なども行なった。

 日本市場では、消費者心理の低迷による全体需要の前年比6.8%減(494万台)より大きい前年比8.1%減の57万3000台の販売で、市場占有率は11.6%と0.2%減となった。この理由について、商品ラインアップで新型車の投入から時間が経過していることと分析し、2016年度は主力モデルの刷新、「エクストレイル」などの好調な商品によって販売台数と市場占有率の拡大を見込んでいる。

販売台数、市場占有率ともにマイナスとなった2015年度だが、2016年度は主力モデルの刷新などが控えている
中国市場は「エクストレイル」や「シルフィ」などの堅調な販売で、前年比6.3%増の125万台を販売した
北米市場では前年比8.4%増の151万7000台。33万2000台を販売した「アルティマ」が大きく牽引している
欧州市場で日産は、EU圏におけるアジアの自動車ブランドでナンバーワンとなっているが、ロシアの全体需要が32.4%減と大幅に後退した影響を受けている
不安定な需要、不利な為替動向などの要因から、その他地域での販売台数も前年比で減少となった
インフィニティブランドのグローバル販売台数は19カ月連続で増加中。「Q50」「QX60」「Q30」などの新型車の市場投入を好調の理由として挙げている
2015年度の主要財務指標。為替変動によるマイナス、新興国市場での販売低迷といった厳しい市場環境にもかかわらず、確かな業績であるとしている
営業利益の増減要因。為替変動の133億円減は、主に新興国通貨によるもの
自動車事業におけるネットキャッシュ
2016年度の各種見通し。グローバル販売台数は3.3%増の560万台を見込む

ハイブリッドパワートレーン「e-POWER」システム搭載の新型コンパクトカーを国内導入

 最終年度となる日産パワー88では、開始前の2010年度からめざましい進歩を遂げ、「好位置についている」と表現。また、初年度の2011年度には他社に先駆けて東日本大震災の影響から回復を果たしたと語り、「これは日本の生産、サプライチェーンなどを支える人々の懸命な働きと危機対応能力の証です」と賛辞を送り振り返ったあと、計画の前半では6工場の開設に伴う多額の設備投資などを行ない、後半では新車攻勢と効率化を推し進めたことにより、営業利益率は2015年度に7.0%まで上昇。目標の1つとして掲げている「持続可能な8%の営業利益率」の達成に向け、正しい方向に進んでいるとゴーン氏は語った。

 このほか、商品ラインアップについては、すでに発表している「プロパイロット ドライブ」の採用車を日本市場で発売するほか、最新のハイブリッドパワートレーン「e-POWER」システムを搭載する新型コンパクトカーを国内導入するとコメント。このモデルはさらなる航続距離と燃費向上を求めるユーザーニーズを満たすクルマで、「リーフ」に匹敵する軽快な走りと静粛性、優れた加速性能、低燃費を実現するとしている。

 このほか、2015年12月に発表した新型3.0リッターV型6気筒ツインターボエンジンを、インフィニティブランドの新型クーペ「Q60」に搭載して発売することも明らかにされた。

日産パワー88の進捗状況。2010年度からめざましい進歩を遂げ、目標とする「持続可能な8%の営業利益率」の達成に向けて最終年度のスタートを切っている
新型ハイブリッドコンパクトカー、単一車線での自動走行機能「プロパイロット ドライブ」の採用車など、先進的なモデルを日本市場に導入する
中国市場では多彩な新型車で攻勢を続け、日系ブランドナンバーワンをキープしていく構え
好調な新型「タイタン」は、エンジンやキャブバージョンの拡充でさらにアピールしていく
好調なイギリス生産のQ30に加え、2016年後半には「QX30」も欧州市場に導入予定
コンパクトSUVとして中南米市場に投入する「キックス」。さらにグローバルでも展開を広げる予定とのこと
インフィニティブランドの新型クーペ「Q60」では、2015年12月に発表した新型3.0リッターV型6気筒ツインターボエンジンを搭載
ルノー・日産アライアンスの「コモン・モジュール・ファミリー」をさらに積極的に展開し、コスト効率を高めていく戦略
モータースポーツ活動やNISMOブランドの拡大、GT-Rのアピールでブランドの認知度と好意を高めることを目指す
先進技術についてのアピールも引き続き展開
2020年に向け、10車種以上の自動運転技術を持つモデルを市場投入する計画
ルノー・日産アライアンスを筆頭に、同日に資本業務提携を公表した三菱自動車工業などのメーカーとのシナジー効果を創出していく

 このほか、取材に訪れた記者からの質疑応答では、これからの1年で日産パワー88の目標が達成できないのではないかという記者からの疑念に対し、ゴーン氏は「ゲームが続いている最中に終わったあとの結果がどうなっているかを想像したくはない。まだ期間は残されている。ただ、『8%の営業利益率』というのは非常に厳格な目標であり、対して『8%の市場シェア』については努力目標で、できるだけ近いところまでは行きたいと考えている。ただし、株主にとっても大事なことは、日産が進歩して、多くのキャッシュフローを積み上げていることだ」と回答。

 また、三菱自動車によって4月20日に行なわれた燃費試験データに関する不正の公表以降、供給がストップして販売が停止している軽自動車についても数多くの質問がなされたが、まずゴーン氏は「それは三菱自動車が克服すべき問題で、公式決定は彼らがするべきところ。責任のある答えは私たち日産からは出せません」と語りつつ、「私の意図として軽自動車の販売を止めるつもりはない。軽自動車は日本市場で重要なセグメントだと考えており、我々は今後もこのセグメントで競争していきます」とコメントしている。

質疑応答のなかで、2016年度の見通しに対する為替変動の影響についての質問に、スライドのグラフを利用して回答するゴーン氏

(編集部:佐久間 秀)